キングダム:穿紅の閃光 〜神速の槍と無敵の拳で中華を穿つ〜 作:キング・クリムゾン!!
ズドォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!
本気を解放した大将軍・廉頗の大刀が、天地を割るほどの質量を伴って猛然と振り下ろされた。かつて秦の六大将軍らと渡り歩いた「生ける伝説」の全霊。
だが、貫の瞳に宿る『流水岩砕拳』の静水は、その絶対的な破壊の嵐の渦中にあっても一寸の揺らぎもなかった。
(流水岩砕拳・柔流極意――水鏡受け流し・超螺旋反衝)
激突の刹那、貫は積層流星槍を真正面からぶつけるのではなく、その狂暴な大刀の刃を、超高速で逆回転を始めた流星管の表面に「滑らせるように」接触させた。工匠の拓が魏竜の流星鉄を組み込み、鉄の『真・流水反衝盾』と連動させた反衝回路が、廉頗の数万斤の破壊エネルギーを強行吸収し、同時にその力のベクトルを真横へと強引に「逸らした」のである。
「ぬ、おおぉっ!? 我が一撃の軌道が……曲げられただと!?」
廉頗の顔が驚愕に染まる。山をも断つはずの破壊の剛力が、貫の柔の極みと超螺旋の力によって虚空へと受け流され、平原の土盤を爆発させた。その反動により、無敗を誇る大将軍の無敵の構えに、これまでに誰も作り出せなかった「決定的な一瞬の隙」が生まれ落ちた。
「――仕留めろ、信! 王賁ッ!!」
貫の鋭い大号令が戦場を劈く。
「言われなくともォォォッ!!」
「我が槍の錆となれ、廉頗ァ!!」
左右から同時に飛び出したのは、秦国の若き二つの巨龍。
信は馬上の上から天高く跳躍し、王騎から受け継いだ大剣を両手で握り締め、己の魂のすべてを乗せて上段から一気に振り下ろした。同時に、王賁の白銀の閃光――玉鳳隊の至高の極みである『龍指』が、電光石火の速度で廉頗の喉元を目指して突き出された。
ズブゥゥゥゥッ!!!!
ザシュゥゥゥゥッ!!!!
信の大剣が廉頗の分厚い左肩を深く叩き割り、王賁の槍の穂先がその右胸の重装甲を貫いて鮮血を噴き出させた。
二つの若き「武」の結晶が、同時に生ける伝説の肉体を捉えたのだ。
「ぐふぅっ……!!」
さしもの廉頗の巨躯も、貫に一撃を受け流された直後の致命的な挟撃を喰らい、馬上の上で大きくよろめき、口から大量の血を吐き散らした。魏軍の五万の兵士たちから「れ、廉頗様がァァァ!!」と悲痛な絶叫が沸き起こる。
「……見事だ、秦国の雛鳥ども……。いや、新たなる時代の、本物の龍たちよ……!」
廉頗は血を流しながらも、どこか満足げな豪快な笑みを浮かべ、崩壊した本陣の残党へ向けて「全軍、撤退だッ!」と大号令を発した。魏軍は総大将を守るようにして、一斉に山陽の平原の彼方へと敗走を始めた。
数日後、山陽の大決戦は秦軍の完全勝利を以て幕を閉じた。
戦後の恩賞を告げる総本部の大天幕。介子坊、輪虎を討ち、廉頗本人をも撃退した若き将たちの武功は、まさに中華全土を震撼させるに十分なものだった。
「……しかし、これほどの武功を挙げながら、千人将のままで留まるとはな、貫」
天幕の隅で、傷を癒した王賁が冷徹に、しかし確かな敬意をはらんだ視線を貫へと向けた。
横では信が「おう、そうだよな! 介子坊を討って廉頗を止めたんだ、普通なら一気に五千人将か将軍だろ!」と不満げに声を荒げている。軍師の梁や、工匠の拓、副将の鉄たち穿紅軍の面々も、その言葉に頷いていた。貫の挙げた凄まじい戦功に、軍の正式な出世の手続きが全く追いついていないのだ。
だが、左腕の流星管をカチャリと鳴らし、仲間たちの不満を静かに受け止めながら、穿紅軍の将として、貫は淀みのない声を天幕へと響かせた。
「初めてお目にかかる。秦国軍総司令直轄、特殊遊撃千人隊『穿紅軍』を率いる千人将、貫だ。我が家に伝わる古流武術『流水岩砕拳』の呼吸法と、相棒の拓が命を賭して鍛え上げし左腕の『超螺旋・流星管』、あるいは『積層流星槍』を以て、山陽の地に集いし廉頗四天王、そして総大将・廉頗本人を正面から穿ち砕いた。王賁、信、戦功に出世が追いついていないなど、我が穿紅軍にとっては些事(さじ)に過ぎん。階級が何であれ、昌平君の直轄たる我が隊の放つ超螺旋の穿光は変わらぬ。天下にその名を轟かせたなら、地位など後からいくらでもついてくる」
貫の傲る高ぶることのない、しかし自身の力と仲間の絆に絶対的な自信を持つ将としての自己紹介の激。
それを聞いた蒙恬は、ふっと優しく微笑んだ。「相変わらず貫はブレないね。でも、総司令の昌平君も、これだけの武功を挙げた穿紅軍をこのままにしておくはずがないよ。きっと近いうちに、中華全土が驚くような次の一手が君に下されるはずさ」
廉頗という巨大な神話を終わらせ、山陽の戦いを完全勝利へと導いた四人の若き新星たち。階級という枠組みを遥かに超えた貫の『超螺旋』の武勇は、すでに秦国のみならず、中華全土の列強諸国にとって、決して無視できぬ恐怖の穿光としてその歴史に深く刻み込まれたのである。
次回:第54話 深謀の眼差し、新たなる脅威