【名誉クズ】転生~百合ハーレム系ラノベの百合に挟まろうとするかませイケメンになってしまったので、やりたいことのために全力で頑張ってみようかなって~ 作:ゴマ醤油
それからまたアンマルの街中を少し歩いたクー達は、冒険者ギルドらしき建物へと到着した。
「ほうほう。この如何にもな建物。ララよ、もしやここが……?」
「はい。遺憾ながら、こちらがアンマルの冒険者ギルドです。……あの、やっぱり考え直しません?」
「嫌だ。何ならララよ、そんなに嫌ならば先に宿へ帰ってもいいぞ?」
「お断りです。クー様の身に何かあれば、このララの沽券に関わりますので」
軽い雑談をしながら、微塵も緊張などなさそうに、クーはギルド内部へと入っていく。
「おお、おおお! これが冒険者ギルド! なんていうか……それっぽいな!」
「なんですその感想」
あまりもテンプレで、如何にもって感じの中に、クーは人目を気にせず大げさに感激してみせる。
『なんだあのガキ……? 山から出てきたお上りか?』
『いいとこの坊ちゃんの冷やかしだろうよ。それより後ろの女、えれえ別嬪だな』
『ばーか、ありゃ相当若作りだって美女ハンター三級な俺の勘が囁いて……ひっ!? 何か睨まれたんだがッ!?』
当然注目を集めたクーは、そこかしこでひそひそされるも、何ら気にせず受付へと向かっていく。
「ようこそお越しくださいました。登録ですが? 報告ですが? それともしょ・う・きゅ・う?」
「登録です。年齢制限とかあります?」
「大丈夫ですよ。冒険者ギルドは万年人員不足、完全自己責任の元、数多の依頼を斡旋していますので! 十歳でも五歳でも奴隷でも、規則を守れるのなら大歓迎ですとも!」
愛嬌ある受付嬢が、まだ年端もいかないのが一目瞭然なクーの問いを、にっこり笑顔で肯定する。
「それで、登録ですね! まずは手数料をいただきますね。登録はお二人でよろし──」
「手続きはクー様一人で、こちら登録料です。あ、私はこちらの方を、くれぐれも読み上げないように」
「ええっと、拝見しますね……って、う、うそぉ!? 貴女様は、まさかあのキルメぶぶっ!!?」
「読み上げないでと伝えましたよね? ギルドの受付嬢というものは、一体いつからピーピー他人の秘密を鳴くのが業務内容になったんですか? ええ?」
受付嬢が大きな声で何かを言い終わる前に、ララが片手で両頬を鷲掴んで言葉を止めてしまう。
「ククッ、ララよ。渋っていた割に、この荒くれの場に縁のあるようだな。似合ってるぞ?」
「お戯れを。そしてお言葉ですが、縁があるからこそです。……ごほん、失礼しました。どのような事情であれ、職員に手を上げるのは規則違反。罰金降格除名など、どうぞ如何様にも罰則を」
「い、いえ、し、こちらこそ、失礼な真似、失礼しました……!! ひゃい!」
手を放したララが丁寧に頭を下げると、受付嬢は息を整えながらも逆に謝り、さくっと切り替えて手津月を始めていく。
「……え、書類だけなの? 水晶玉に手を当てるとかステータス出るとか……そういうの、ないの?」
「す、ステ……? い、いえ、登録だけだとそういうのはないですね。あ、でも魔法ギルドの方の適性審査でなら使ったり使わなかったりですよ! 水晶玉とか魔道具は!」
「あ、そうなんですか……」
落ち込んでしまうクー。当然【めがゆりTS】の原作にはなかったのは理解していたが、それでもステータスだの魔力測定だの、そういったテンプレを心待ちにしていたのだ。
「では、本人画像を撮らせていただきますね。にっこりしないで、そのまま真顔で……はい!」
何枚かの書類を書かされ、拇印し、最後は撮影用の魔道具で一枚パシャリと撮られて手続きは終了。
「では、こちらが発行された冒険者証になります! 再発行には結構な手数料と軽い罰則、あとギルド内でこっそり付けられている信用数値に大きく影響しますので、くれぐれも紛失は避けてくださいね?」
「ありがとうございます。ところで、それを言ってしまっては、もうこっそりではないのでは?」
「大丈夫です! こういうのをないと思ってるのは、規則を守らない人だけですので!」
ふんすと、堂々と胸を張ってくる受付嬢。彼女の胸は大きくこそないが、確かな存在感があった。
「通例どおり、クー様の冒険者クラスはストーンからスタートになります! 気持ちは一番上のステラを! けれど生業としたいのなら二つ昇級してシルバーを! そんな心づもりで、地に足着けて頑張ってください! 命に大事にですよ、おー!」
受付嬢の声援を背に受けながら、手続きを終えて受付を後にしていく。ちなみに冒険者クラスは上からステラ、ミスリル、ゴールド、シルバー、ブロンズ、そして最低が今クーの属しているストーンの順である。先はまだまだ長いのだ。
「ククッ、中々に元気な受付嬢だったな。あれが俗に言う看板娘というやつなのだろうよ」
「でしょうね。こんな場所でああも愛嬌を撒き続けられるには、相応の才能がいりますから」
「……意外だな。ララも出来たのだな、素直に人を褒めるという行為が」
「お言葉ですが、やんちゃ極まりないクー様は特別待遇ですよ。気になるようでしたら、もっと堅実に振る舞ってくださいな」
見事なまでのカウンターを喰らってしまったクーは、「はっはっは」と誤魔化すしかなかった。
「さて、次は依頼ですが……恙なく終わったというのに、何故落ち込んでいるのですか?」
「……落ち込んでない。メニューを見て決めた一皿が想像と違った、それだけのこと」
「妙に具体的な例ですね、すごく落ち込んでるじゃないですか。顔の一枚であれば、撮り直しはしてくれたと思いますよ?」
「そっちじゃない。そっちじゃないんだよ、ララ──おっと」
登録が終わり、依頼の貼ってある掲示板へ向かおうとする最中。クーは前から来た大柄な女性とぶつかってしまう。
「失礼、こちらが少し不注意でした。それでは」
「おーおー待ちなって、そこな坊ちゃん。何もそんなにすぐ行くことはねえだろ、なあ?」
軽く謝罪し、そのまま去ろうとしたクーの肩を、大柄な女性はガシリと掴んで止めてくる。
『うわやばっ、ブロンズクラスのラリラとリラリじゃん』
『あの坊やまずくない? 今日シレンナ様いないのに、よりにもよってあの新人いびりのお局コンビ、行き遅れのゴリ……ラリラとリラリだよ?』
『わざとなのバレバレなのによくやるよね。規則スレスレで絡むからって本当にたちが悪い。……まあ新人の定着率が低いと仕事の競争率は上がらないし、こっちとしても助かるから何も言えないけどさ』
騒動に気付いた周囲が騒ぎ出す。クーを見下ろしながら、獲物を見つけたと下卑た笑みを浮かべる大柄なゴリ……女性コンビは、アンマルの冒険者ギルドではそれなりには有名人だった。
「……ご覧くださいクー様。冒険者ギルドとはこのように野卑なる場なのです。お金を稼ぐにしても、もう少しまともな場所で──」
「おお! どうだララ、こっちのテンプレはあるらしいぞ! やっぱりこうでなくちゃな!」
「……目を光らせてまで喜ぶ要素あります? ここで?」
ここぞとばかりに貶して冒険者は止めさせようと、目の前のラリラを出汁に企てたララだったが、クーは先ほどまでの消沈はどこへやらと、むしろ目を輝かせてしまう。
(やっぱりテンプレはないとな! 出来れば男の方がよりらしいのだが、まあゴリラ相手だしいいか!)
まったくもって中身の残念なクーは、もう絡んできたラリラのことを、定番シチュエーションのためのゴリラとしてしか見ていなかった。
「おう、ちょっと良い店知ってるからよ。先輩達が坊ちゃんに礼儀ってもんを教えて……ぶべっ!!」
クーをゴリ……ラリラだったが、一歩踏み出そうとした瞬間、まるでバナナの皮を踏んだみたいにそれはもう綺麗に転倒してしまう。
「ら、ラリあばぁ!?」
転倒したラリラに近寄ろうとしたリラリもまた、同様にツルリと見事にすっころび、床に頭やら顎やらケツやらをビタンと打ち付けてしまう。滑稽なほど、大惨状と言う他なかった。
「……はあっ」
(足裏に水を付着させ、雪から一日経った道路みたいにツルツルと滑らせる……当然、ララにはお見通しか)
隣から感じるララの鋭い視線をスルーしながら、クーは自身の魔法の出来に心の中で頷いた。
「用がないならこれにて。俺は前方に、貴方達は足下に注意していきましょうね」
「ま、待てごぐべらァ、あだぁ……!!」
逃がさないと言わんばかりの手を伸ばしたラリラだったが、再び転倒してしまい、去りゆくクー達を止めることは出来なかった。
『……だっさ、急に転けてやんの』
『あの少年が何か……いえ、出来るわけないか』
『……微弱な魔力。やるわね』
ギルド内で傍観していたそれぞれが、各々の感想抱くが、クーは我関せずと歩き続ける。
「さて、行こうかララ。黄金の果実採取とか、ドラゴン討伐の依頼とかないかな?」
「……水を差すようで心苦しいのですが、クー様の属するストーンクラスでは、街中での単発労働か薬草採取くらいしか受けられませんよ」
「……すとーん」