【名誉クズ】転生~百合ハーレム系ラノベの百合に挟まろうとするかませイケメンになってしまったので、やりたいことのために全力で頑張ってみようかなって~   作:ゴマ醤油

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冒険終わり、待つ者は

 クーとララ、そして金髪の少女の三人は、ブラッディボアの亡骸と共に街までの帰路をついていた。

 

「いやー、本当に助かったよ! ただボア一頭狩るだけの依頼だったのに、いきなりブラッディボアに遭遇したときは死ぬかと思っちゃった! あっははー!」

 

 ドシドシと、巨体であるブラッディボアを持ち上げながら、金髪の少女は陽気に笑ってみせる。

 

「……随分と力ありますね。それに多少手当をしたとはいえ、突進をもろに受けたにしては頑丈すぎません?」

「それが取り柄だからね! あ、そういえば自己紹介まだだったね! ……ごほん、あたしはルルラルル! 前から読んでも後ろから読んでもルルラルル! 歴史上二人のみとされるステラの冒険者『ランサー』に憧れ、槍一本と共に村を飛び出した女! いつか天下無双我にありと、この名を轟かせる冒険者だよ! ……まあ、今はまだブロンズだけどね?」

 

 えへへと、金髪の美少女──ルルラルルは自信満々な自己紹介の後、ちょっぴり照れくさそうに目を逸らしてしまう。

 

(愛嬌があり快活、槍を扱う怪力金髪美少女。まるでヒロインのような盛り具合だが……俺の記憶では【めがゆりTS】にこんなキャラはいなかったはず。……まあ、この世界の顔面偏差値の平均は前より高いからな。現地にいる一般美少女でしかないんだろう。……しかし可愛いな)

 

 ルルラルルを観察していたクーだったが、原作は関係ないだろうと早々に結論付けることにした。

 

「ご丁寧にどうもです。俺はクー、そしてこっちのメイド服のハイパーつよつよ女性は保護者件冒険者の先輩であるララです。どうぞよろしく」

「ララです。どうぞお見知りおきを」

「おーよろしくね! あ、それと敬語はいいよ! クー君達は命の恩人だしね! むしろあたしが使わなきゃいけないくらい! あっはは-!」

「……そうか。ならよろしく、ルルラルル」

 

 クーが敬語をやめると、ルルラルルも満足そうに「よろしく!」と笑みを作ってみせる。

 

「でもアンマルで冒険者かぁ。お局ラリラのやつに何かされなかった?」

「ラリラ?」

「昨日絡んできた大柄な女性ですよ。ほら、不敬にもクー様の肩を掴んできたあれです」

「……ああ、あのゴリラか。あの人そんな名前だったのか、見かけの割に可愛いな」

「ぶはっ! あのラリラを可愛いとかクー君やるぅ! 将来は天下無双のあたしに並ぶ大物になるかもだね!」

 

 ララに教えられたおかげでようやく思い出したクー。クー的にあれは終わった話でしかなく、またラリラなどという名前があのゴリ……大柄な女性と結びついてくれず、まったく思い至らなかったのだ。

 

「お、もう街着いちゃった! やっぱり人と話しているとあっという間だね! あっはは!」

 

 それから雑談しながら歩いていれば、あっという間にアンマルの街へと到着し、そのまま依頼達成とギルドへと足を運んでいく。

 

「ぶ、ブラッディボア!? うそ、もしかして進化個体いたんですか!? ええっー!?」

 

 ギルドの受付嬢が、ルルラルルとついでにクーの報告を聞き、大声で叫んでしまう。

 

『ぶ、ブラッディボア!? いくら怪力ルルラルルと言えど、流石に吹かしてんじゃねえか?』

『というか昨日の坊ちゃんとメイドもいるじゃねえか。まさか三人だけで狩ったのか……?』

『もしかして、昨日のラリラは事故じゃなかった……?』

 

 受付嬢の声は大きく、周囲は昨日に続いてざわつく。ちなみに今日はあのゴリ……大柄な女冒険者、ラリラともう一人の姿はなかった。

 

「どうです? すごいですよね? これは依頼も大成功をいただ

「あー、でも今回ルルラルルさんの依頼は通常種のボアなので……その……依頼の方はですね……残念ながら……」

「え、えー!?」

 

 受付嬢が申し訳なさそうに告げると、飼い主に投げられたフリスビーを拾ってきた犬みたいに目をキラキラさせていた、ルルラルルは笑顔から一転、驚きで顔を染めながら大声を上げてしまう。

 

「あっはは……そ、そんなぁ……」

「あ、でもルルラルル様が受けたご依頼の納期にはまだ二日ありますから! それまでに狩っていただければ問題はないので、あんまり落ち込まないでください!」

「え、本当!? いやー良かった、ありがとう! もう駄目かと思ったよ、あっははー!

 

 死んだ瞳に乾いた笑い。大快挙から急転落したルルラルルだったが、受付嬢が苦笑しながらフォローすると、再び生気を取り戻し、受付嬢の手を握りブンブンと振って感謝を伝える。

 

「依頼を受ける際は隅々まで要項を確認する。クー様、あれこそが駄目な見本の典型ですよ」

「ああ、契約書はちゃんと読まないとな。端っこに小さく利子の割合への追加事項があった際、あれよあれよと暴論で詰められ、法の助けてくれない仕事をやらされそうになったときの薄ら寒さはとても言葉に出来ないものだ」

「……どうしてそんなに実感こもってるんですか?」

 

 そんな光景を眺めていたクーはうんうんと、どこか過去を懐かしむように頷くばかりだった。

 

「いやー、一時はどうなるかと思ったけど、ブラッディボアを買い取ってもらえて助かっちゃった! もしなかったら今日のご飯は近所の野草と虫になる所だったよ! あっははー!」

「……進化個体はギルドないし生物機関の研究対象ですからね。生け捕りであれば倍は出たでしょうが……まあ、相当損傷しているでもなければ一定の価値で引き取ってもらえますよ」

「はえー!」

 

 何やかんやで納品を終えた三人は、ギルドを後にし、雑談しながらアンマルの街中を歩いていく。

 

(金貨数十枚、額にして云十万。突然進化を人工的に誘発出来れば、学費なんてちょちょいのちょい……流石に難しいか。生涯費やすのならいざ知らず、俺が五年で果たせるのなら先人達も苦労はしていないだろうよ)

 

 ララの話を聞き、間抜けな声と顔で感服を露わにするルルラルル。その傍らにて一つ良い感じの稼ぎ方を思いついた気がしたクーだったが、すぐに現実的ではないと捨て去った。

 

「……でも、本当に良かったの? あたしが狩ったことにしちゃって。報酬だってまあ」

 

 そんな会話の最中、突然ルルラルルがぽつりと、真剣に二人──特にララへ目を合わせながら、申し訳なさそうに尋ねたのは。

 

「大丈夫ですよ。相対していたのはルルラルル様で、私は少々お力添えをしただけですので」

「だそうだ。狩った本人が是としているのなら、傍観していただけの俺が口を挟む権利はないとも」

 

 あっけらかんと答えたララ。クーは肩をすくめながら、問題ないとルルラリアへと笑みを向ける。

 

「それに、心配するならルルラルル様の方です。進化個体を狩った期待の星、ルルラルル様はこれからギルドにそう認識されるのですから、一層力を付けなければなりませんよ?」

「……もち! あたしはいつか天下無双と名を轟かせる女、ルルラルル! ブラッディボアなんか一人で倒せるようになっちゃうし、いつかララさんだって超えてみせるよ! あっははー!」

「ふふっ、楽しみにしていますよ」

 

 力こぶを作り、手で押さえながらのルルラルルの宣誓に、ララは楽しげに微笑みを向けた。

 

「あ、じゃあこの後ご飯でもどうかな!? せめて奢らせてよ! お店の食べ物買い切るくらい!」

「悪いが、門限あるから帰らなくてはならないんだ。何せ俺、こう見えても十歳だからな」

「えー残念……じゃ、今度会ったら奢らせてね! 絶対だよ? 約束だよ? おっけい?」

「おっけい。機会があれば、ご相伴にあずからせてもらおう」

 

 ルルラルルと約束を交し、それからしばらく歩くと、それぞれが進む分かれ道へと到着する。

 

「じゃあねー! あっははー!」

 

 ブンブンと、手を振りながら走り去っていくルルラルル。金髪を揺らしながら小さくなっていく背を見送ったクーとララは、街外に止めてあった馬車へと乗り込み、別邸の帰路についていく。

 

「いやー、しかし楽しかったな。初めての二泊三日! 街にギルドに進化個体! あー、次が待ち遠しい! なあララ、来週にでもまた──」

「駄目ですよクー様。外出はお休みを先取りしているだけ。今週はもう授業で埋まっています」

「……残念」

 

 馬車内にて、今回の振り返りを上機嫌に語るクーだったが、ララの容赦ない突きつけにへこんでしまう。

 

「……しかしクー様。ブラッディボアの報酬に頓着しなかったということは、さては冒険者ギルド、お金のために出向いたわけではありませんね?」

「はっはっは。何を言うんだララ。そんなわけない、もちろんお金目的だぞ? ただ今はちょっと初めての経験に浮かれていただけだよ? はっはっは」

「……はあっ」

 

 ララの追求に対し、クーはわざとらしいほど大きな高笑いで強引に誤魔化してみせる。

 

(……まあ、今回は行ってみたかったからがメインなのは事実だけどな。流石はララ、よく分かってるよ)

 

 しかしながら内心では、ララに看破されたことに結構な冷や汗を掻くばかりだった。

 

「うーん。やはり住み慣れた故郷は良い。あと五年でおさらばなのが惜しくなって……おや?」

 

 そうしてしばらく。すっかり空色も暗くなった頃、無事別邸へと帰宅を果たしたクーは、馬車から飛び降り、三日ぶりの自宅に頷きながら自分で玄関の扉を開ける。

 

「まあ。お久しぶりです。婚約者を置いてどこかへ出掛けてしまっていた、クー・ズーハルト様?」

 

 クーを迎えた使用人達の中で存在感あったのは、貼り付けたような笑顔をした銀髪美少女。今のところクーの婚約者であるエステル・シルバリオが、どうしてかそこにはいた。

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