【名誉クズ】転生~百合ハーレム系ラノベの百合に挟まろうとするかませイケメンになってしまったので、やりたいことのために全力で頑張ってみようかなって~   作:ゴマ醤油

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シルバークラスになりたいな

 無事学園の試験に合格したクーは、意気揚々と凱旋気分でアンマルの街へと訪れていた。

 

「頼もー! はーっはっはっ!」

 

 すっかり馴染みとなった冒険者ギルドの扉を力強く開け放ち、ララを後ろに引き連れながら、ズカズカと我が物顔で受付へと向かっていく。

 

『うわ出た、クーじゃん。そういえば最近いなかったけど、あいつ生きてたんだ』

『最近妙に静かだったからなぁ。朝のコケコーの鳴き声くらいには慣れちまった自分が憎いぜ』

『嗚呼クー様♡ 今日も変わらず、お美しいお顔……♡』

 

 周囲はクーの登場に驚きはない。何なら顔は無駄にいいので、少々ファンがいたりするくらいだ。

 

「お久しぶりですねクーさん。今日はどのような御用で? 依頼ですか? 受注ですか? それともわ・た・し?」

「残念。君もいいが、今日はそれより昇格試験だ」

「やーんいけず……ひいぃ!?」

 

 一瞬わざとらしく身をくねらせる受付嬢だったが、すぐに後ろのララの笑顔にそれはもう身を震え上がらせてしまう。クーもすぐに察したのか、窘めるような視線をララへ向けると、メイド服の彼女は素直に頭を下げ謝罪をした。

 

「え、えっと、それで昇格ですか。クーさんも早いですねぇ。その歳でシルバーランクに挑戦出来る方は中々いませんよ。流石はあのララ様を侍らせているだけはあります!」

「はっはっは。そうだろうそうだろう? はーっはっは!」

 

 受付嬢の露骨な称賛に、相変わらずチョロすぎるクーは、それはもう上機嫌に笑ってみせる。

 

「まあでも、職員として言わせてもらうのであれば、受けられることと昇級出来ることは別ですけどね。……ふふっ、クーさんは一体どっちでしょうね?」

「ククッ、答えは決まっているとも。そうだろうララ?」

「さあ?」

「連れないなぁ……」

 

 辛辣なララに若干気落ちしてしまうクー。そんな彼の背後へ、二人の女性冒険者が近づいてくる。

 

「お、なんだクー。戻ってきたと思ったらいきなりシルバー昇格たぁ随分自信満々じゃねえか」

「……ラリラにリラリ。久しぶりだな、元気してたか? 風邪でも引いてなかったか?」

「オカンか己は。生憎あたいら、お前と違ってそこまで柔じゃねえっつーの」

 

 軽口を叩きつつ、気軽なグータッチで再会を祝うクー達。このコンビとの定番の流れだった。

 

「まあ、まだ受付しただけ。まずは筆記から、一つずつ気を引き締めていかなければな」

「筆記は大丈夫だろ。お前馬鹿じゃねえし、ルルラルルじゃねえんだし」

「面接も大丈夫でしょ。貴方そういうの上手そうだし、ルルラルルじゃないんだし」

 

 さっぱりと言い放つ二人。この場にいない金髪の槍使いに対して実に散々な言いようだが、件の彼女は筆記で六度、面接で二度落ちてるのは事実でしかないので、クーも苦笑する他に取れる反応はなかった。

 

「それでよ受付嬢。今日のこいつのシルバー昇格を阻止する勇者ってのはどいつなんだ?」

「ああ、今日はですね……なんとぉ……あのぉ……」

「私だよ。このシレンナが、君のシルバーランクに相応しいのかを見定めさせてもらう。そういうことさ」

「あーん! 今溜めに溜めてたのにぃ~!!」

 

 受付嬢の嘆く声の中、呼ばれたみたいなタイミングで姿を現したのは、プラチナブロンドの長髪を靡かせる、凜々しさを纏う妙齢の長身の美人。アンマルの冒険者ギルドにて最優と目される、風乗りのシレンナその人だった。

 

「お久しぶりです、シレンナさん。変わらずお綺麗ですね」

「ありがとう。クー君こそ壮健そうで何より。ところで、また少し背が伸びたようだね。もう少し経てば抜かれてしまいそうなのが嬉しくもあり、同時に少しだけ寂しくもあるよ」

 

 握手を交す二人。そこそこのいがみ合いの末に和解したゴリラコンビとは異なり、このシレンナとクーは出会った当初から真っ当に良好な関係を築き、今日まで至っていた。

 

「それでシレンナさん。いきなりで申し訳ないのですが、承認後に試験開始で大丈夫ですか?」

「ああ。この身は常在戦場の心構え。お望みならば、すぐにでも始めようと……くちゅん」

 

 可愛らしいくしゃみの直後、どこか気まずい空気が周囲に広がってしまう。アンマル最優ことシレンナ。彼女はこの街の誰かによって密かに集計されている、放っておけないアンマルの冒険者ランキング。クーが四位に位置するそれにナンバーワンとして長年君臨していることでも有名な冒険者だった。

 

「おーおーシレンナ。なんとまあ可愛いくしゃみ出しちゃって、もしかして風邪かい?」

「常在戦場が聞いて呆れちゃうね。そういえば、昨日は

「う、うるさいですね。最近は少し冷えるのでつい出てしまった。それだけです。それ以上はよしてください」

 

 ゴリラコンビのからかいを受け、つい顔を赤くしながらも誤魔化すシレンナ。

 

「ククッ、ではお手柔らかに頼みますよ──」

「へいへいそこの方々! その試験、ちょーっと待ったー! あっははー!」

 

 そんなアンマル最優にクーがよろしくとてを伸ばそうとした、その瞬間だった。まるで結婚式に物言いをかける彼の如く、ギルド内に大声を響かせながら、スタリと金髪の槍使い──ルルラルルがクー達二人の合間に着地してみせたのは。

 

『うわうるさっ、ってなんだルルラルルじゃん。相変わらずやかましいなぁ』

『やっぱコンビは似るものなのかな。あいつら揃ったら煩いもんな』

『嗚呼、ルル様尊い……。クールルてえてえ……』

 

 ギルド内はすぐに元の空気に戻る。所詮クーのコンビ扱いなので、そんな程度の扱いだった。

 

「久しぶり、ルルラ。もう街を出たと思っていたよ」

「それも考えたんだけどね、やっぱりクー君とはちゃんとお別れしたかったからさ! あっははー!」

 

 クーの挨拶ににっこり笑顔で返したルルラルルは、続けてシレンナへと身体を向ける。

 

「ねえシレンナさんお願い! クー君の試験官、あたしにやらせて! お願いしますっ!」

 

 勢いよく頭を下げて頼み込むルルラルル。角度九十度、実に綺麗な一礼であった。

 

「おうおう、談合は許されないぞルルラルル。シルバーはお情けで許される地位じゃねえぞ」

「そうだそうだー横暴だー。これを許しては最優の名が泣くぞー」

 

 ガヤるゴリラコンビ。完全にふざけている二人をよそに、シレンナは真面目な顔でルルラルルを見つめる。

 

「……一応、理由を聞いても?」

「クー君とやりたい! 旅立ち前にどうしても! それだけです! お願いします!」

 

 腹の探り合いなど一切ない、明け透けド直球なルルラルルの本音。それを聞いたシレンナは一度目を瞑り、少しの逡巡の後、目を開けてから小さくため息を零してしまう。

 

「クー君は、それでいいですか?」

「ああ。シレンナさんには悪いですが、俺も最後にやるならルルラがいいです。お願いします」

 

 クーもまた頭を下げる。しばし沈黙が刹那が永劫か、それはきっと人次第であろう。

 

「……はあっ、顔を上げてください。あくまでギルド長の承認次第ですが、私個人としてはその熱意を尊重します。受付嬢さん、ギルドの方はそれで大丈夫ですか?」

「え、あ、はい! 多分大丈夫だと思いますけど、一応ちょっと待ってくださいね! 今から承認のついでに確認取ってきちゃいますから!」

 

 ドタドタと、慌ただしく奥へと引っ込んでしまう受付嬢。その肯定に、ラリラはひゅーと無駄に上手い口笛を吹かしてみせる。

 

「ただし試験には監督役として私も同席させていただきます。そして貴女が手を抜いていると、或いは試験の領分から外れたと私の目から判断出来た場合、クー君の試験失格と共に貴女の降格処分をギルドに進言します。冒険者ルルラルル、我欲の前にギルドがシルバーランクと公認した立場であると、その認識を忘れないでくださいね」

「はい! ありがとうございます、シレンナさん! もちろん全力以上の全力でやったりますよ、あっははー!」

 

 シレンナに肩を叩かれたルルラルル。とびきりの声でお礼を言い、「よろしくね!」と満面の笑みを向けられたクーは、奮起からか降ろしていた手を握り締める。

 

「……ククッ、ただの試験のつもりだったが面白くなってきたな。そうは思わないか、ララ?」

「どっちでもいいです。ところで、そんな余裕ぶっていて大丈夫ですか? ぶっちゃけクー様的にはシレンナ様より、ルルラルル様の方がずっと厳しいと思うのですが」

「……それはちょっと思った。まあなんとか頑張ってみるよ、うん」

 

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