そして窃盗犯はいなくなる   作:haguruma03

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「    」

 

「話か——そもそも貴方にとっては自分が起こした犯行だと自覚しているだろうに、その話をする事自体不要の事なのだと思うが、大人しく自白してくれないか?」

 

「ずいぶんと口が回るね。本題入らないとお姉さん帰っちゃうよ?」

 

パラパラと雨音が窓越しにかすかに聞こえる部屋の中、机を挟んで向かい側に座る彼女に向けて放った私の棘のある言葉は、飄々と薄笑いを浮かべながら打ち返された。

そんな彼女はパイプ椅子に背を預けて座り、机に立てかけたビニール傘の持ち手を片手で手遊びしている。

彼女からは動揺も何も感じられない。リラックスしているのが一眼見てわかる。

そんな彼女を見るとこの方法が正しかったのかわからなくなるが、止まることはできない。

——いいだろう話を進めよう。

 

「そこまで聞きたいならさっさと話そうか」

 

私がやれやれとでも言いたげなジェスチャーをすると。彼女からの視線を強く感じる。

 

「そうしてもらうとありがたいね。それにしてもまるでなんでも分かっているって態度ね」

 

嫌味のような言葉。

だがその言葉が私に探りを入れる言葉なのは容易にわかる。

 

だから私の答えはこれしかない。

 

「分かっているからな」

 

 

分かっていない。

目の前の彼女の言葉に対してそう断言したが、何も分かっていない。

 

そんな内心の動揺を、目の前の彼女を嘲る様な笑みで隠す。

 

それでも話を進めよう、探偵が順序よく推理をする様に推理を披露し、それと同時に目の前の彼女を追い込む手段を頭の中で模索する。

一世一代の即興劇。牢屋敷の時と同じ。

 

ただ違うのは...これは殺すためのものではなく、救うためのものである事。

変わらないのは、間違っている事を正そうとしている事だ。

私はポケットの中の物を触り、一度深呼吸をして木ワイを入れ直し、口を開いた。

 

「まず消えた8人に関してだ。彼女達には共通点がある」

 

わかりきったことを話す様に滑らかに言葉を並べ立てる。

分かりやすく探偵然とした芝居。

そんな私に目の前の彼女はどうやら付き合ってくれる様だ。

 

「8人も人が消えたの?」

 

彼女の問いに私は頷いた。

 

「ああ、貴方が消した」

 

「覚えがないけれど?」

 

とぼけるようなジェスチャーを取る彼女。

それに対して呆れるかのようなジェスチャーを取る私。

テンポ良く彼女のアクションに答えを返していかなければならない。

彼女が話を打ち切ったら終わってしまう。

もう一度、目の前の彼女に『いなくなられて』逃げられた場合、もう会うこともできなくなる可能性が高い。

だから、刻みよく、不快になりすぎないように、私との会話を続けてもらう。

 

そのために私は彼女に悪口をアクセントに言葉を返す。

 

「痴呆にはまだ貴方は若いはずだが?...話を続けるぞ」

 

「どうぞどうぞ」

 

「消えた8人。前日までに起きた5つの事件と今日消えた3人。過去の事件情報は既に穴だらけになっており、手に入る情報は限られているが、それでも合致する情報はあった---天気、事件場所、そして検査結果。そこから調べれば証拠は容易に炙り出てきたよ」

 

ハッタリを含む私の言葉に彼女からの反応はない。

ただ彼女は、先ほどと変わらず私の言葉に耳を傾けている。

彼女の内心はわからない。だがそれでもいい。私の言葉に耳を傾け続けてくれればいい。

 

「天気は全て雨、そして事件場所は全てこの市内。事件場所がこの市内に限られるという事は犯人がこの市内周辺に住んでいる可能性が高い。ここまではいいか?」

 

私が問いを投げかけると、彼女は手を上げながら質問を飛ばしてきた。

 

「….仮に本当にその事件が起こっていたとしても、その市内に住んでいるのではなくこの市内を狩場にしてるって考えられない?」

 

「それもあり得るな、例えばこの市内に職場があるが故にこの市内の事を知っており狩場に選んだのだと...ああ、そういえばこの警察署の管轄はこの市内だったな?」

 

「そうだね。だから私が犯人だと?」

 

「そこまで言ってはいないし、貴方がこの警察署の刑事だと言ったわけではないが、それは自白か?」

 

「いや?ただ思春期特有の、空想と現実が曖昧になっているんだなって」

 

「どうやら年齢を重ねると現実逃避が上手くなるらしいな...とはいえ確かに貴方の言う通り、この市内に住んでいない可能性はある。だがどちらにしろ、犯人がこの市内で被害者を見繕った事には変わりはない。」

 

「見繕う?消したい相手を探していたって事?」

 

「その通りではあるが…違うな。そうだな、どう言えばいいか…」

悩んでるふりをする。

『消失の魔女』の魔女はこの市内で被害者を見繕っていた。

それは悪意からの行動なのか?

私はそれは違うと考える。もしそれが悪意ではなく...善意からの行動なら。

 

「被害者達を救うためだった。というのはどうかな?」

 

何気なしに呟いた言葉。

まるで思考がこぼれ落ちて口から出たかのように装った私の言葉。

そんな言葉に。

 

「...どう言う事?」

 

——釣れた。

隠し切れていない動揺を孕んだトーンに私は確信を得る。

 

「言葉のままだ。被害者達を助けるために被害者達を消す必要があった」

「なにそれ?家庭環境が劣悪な少女を救うために匿うみたいな感じ?」

先ほど漏れ出た動揺を隠すような飄々とした声。

思わず苦笑してしまう。その偽る姿と漏れ出た失言に。

「似た感じだろう。『救う』ために『消した』…ちなみに私は貴方に被害者が少女だと一言も言っていないが、どう思う?」

 

口を紡ぐ彼女。その視線は私から外れ、ある一箇所を見ている。

一瞬足が動きそうになるが我慢する。

まだだ、まだ早い。

彼女が動くよりも早く私は再び言葉を紡ぐ。

「一旦それは置いておこうか。…大切なのは、何から『救う』ためか、どうやって『救う』対象を見分けていたかだ」

消えた被害者達。彼女らを救うために消した『消失の魔女』

そんな被害者達全員は『消失の魔女』が消さなければならないと判断する共通の何かがあった事。

 

共通点。

それは、薄々気がついていた。

推測に近かった事だが、『』が消えた事と今の会話で確信を得た。

 

年ごろの少女。病院の検査。

彼女達が消えた共通点

それは

 

「全員が魔法を使えた…魔女因子を持っていたから。そうだろう?」

 

証拠を突きつけるように私は彼女にそう言い放つ。

 

この答えは私の推測に過ぎない。裏取りも何もしていないただの予想。

だが今の私にはそれしかないと信じている。

 

私と彼女の視線が交わる。

私の推理に彼女は何も言わない。

だが飄々とした表情が消えかけているのが見てわかる。

 

「だから消したのだろう?彼女達が連れて行かれる前に」

畳み掛けるような私の言葉。

その言葉はすぐに打ち返される。

 

「…魔法だなんて、魔女因子だなんて、君高校生でしょ?厨二病からはそろそろ卒業したほうが…」

「言ったはずだぞ?証拠は容易に炙り出てきたよ。と」

「….」

「先日までに消えた5人全員、『魔女因子検査』に引っかかっていた記録がある。そうだろう?ゴクチョー」

「そうですねぇ」

肩の錘に話を振ると間髪入れずに返事が返される。

すると示し合わせたかの様に目の前の彼女は驚いた。

「…え?鳥が喋った!?」

下手な芝居に付き合う必要はない。無視する。

「あとゴクチョー。重いから肩から降りてくれないか?」

「この後のことを考えると肩に止まっておきたいのですが?」

「—え?君たち私が疑問に思ったこと無視?聞いてる?」

私とゴクチョーの会話に再度茶々が入るが無視する。

どうせ芝居だ。これが芝居でなければ彼女が『消失の魔女』ではないことになる。

そうなれば打つ手はない。詰み。だからそこは考えない。

そもそもここまで話に付き合ってくれている時点で目の前の人物が『消失の魔女』

私から『   』を奪った窃盗犯だ。

このまま嘘に塗り固められた話に付き合ってもらう。

そもそも今の『魔女因子の検査に引っかかっていた記録』も嘘だ。そんな記録残っていない。あったかもしれないが、消えてしまっている。

だが、目の前の彼女がそれを知る術はない。

だから、いくらでも嘘を、偽証を重ねることができる

 

「窃盗犯の2人はあなたも知っている通り不良でな、健康診断を受けず検査を避けたためデータがない…だがこの2人はその検査がなくても魔法が使えたのだと、過去の事件調書で容易に推測できる。あなたもそこから情報を得たのだろう?」

 

「それは、二階堂ちゃんの妄想じゃなくて?」

 

「私の考えが妄想だというのならすごいな。私の妄想を元にあなたは2人を魔女だと知り、消したのか…まるで魔法使いだ」

 

「またそうやって、あなたの妄想に付き合ってられないんだけど?大体——」

 

呆れたような声で話を変えようと言葉を並び立てる彼女。

その意味のない言葉の羅列は再度無視するが、その様子から少しずつ彼女の調子が戻ってきたらしい事がわかる。先程の動揺が消えてきている。

いい具合に心を乱す事ができていたはずなのに、表情を隠すのは下手な様だが立て直しが早い。

——少し煽るか。

ゴクチョーをちらりとみる。

すると、表情は変わらないが不服そうなに首を小さく振る。

断るな。先ほど話し合ったはずだ、もしもの時はカマをかけろと。仕事は果たせ。

ゴクチョーを睨め付けると、『やれやれ』と言いたげに嘴を開いた。

 

「本人が魔法使いじゃなくても——ご家族に魔法使いでもいて教えてもらったのでは?知りませんけど」

 

——カタン

声どころか外の雨音にすら消えてしまうような音がした。

おそらく足か何かが机に当たった音だろう。

 

だがそれでも、私は動きを止めざる追えなかった。

先ほどと変わらぬ格好で彼女は座り私と視線を合わせている。

だが、その視線は変わっていた。

——覚えのある目だ。

牢屋敷に連れてこられた直後、『  』を見た時の私の目に似ている。牢屋敷で出会ったばかりのナノカの目に似ている。

大切な何かを消したモノを見る目だ。

その目がゴクチョーを、私を見ている。

彼女は大切な何かをゴクチョーに消されている。奪われている。

だからその目を私にも向けてくる。

ああ、わかりやすい。彼女のバックボーンを読み解くのはマーゴを相手にした時よりはるかにわかりやすい

ここまでの彼女の佇まい、会話、表情からわかる。

彼女は隠し事、謀が上手くない。

ハンナほど下手なわけではないが、マーゴと比べると天と地の差だ。

慣れない者が慣れない悪事に手を染める。そこには必ず粗が出てくる。そしてその粗が総じて大きくなる。

おそらく彼女は、こういった事件を起こすのに明らかに向いていない。隠し事をするのに向いていない。やらざるを得なかったのだろう。そうしなければ助けられないと思い込んでいるがゆえに。

 

私は彼女を観察しながら、テーブルの上のノートパソコンの画面の向きを彼女の方向に向けた。

画面を見た彼女は眉を顰めた。

 

「監視カメラ?」

 

私はその言葉に頷く。

映し出されているのはコンビニエンスストア入口の監視カメラのデータだ。

ちょうど私が入店する数分前で動画を停めている。

 

「今日窃盗事件が起きた際の映像データだ。貴方もいただろう?」

その言葉に彼女は首を振る。

「…いや、初めて見たね」

彼女の嘘を無視して私は動画の再生ボタンを押す。

すると、動画はすぐに動き始めた——が。

 

「なにこれ?めっちゃ画面が暗転するんだけど」

彼女から呆れた声が聞こえる。

それはそうだ。動画がスタートすると同時に画面が暗転し、数秒後元に戻るだけのぶつ切りの動画が始まったのだから。

不審に思うのも呆れるのにも理解できる。だがこれには理由がある。

「『いなくなった』2人が写った映像はデータが消失している」

「二階堂ちゃんの言う消えた人が写っていた箇所の映像データが消えるって事?」

「そうだな」

「…消えた二人が映らないならこれ見る意味なくない?」

「意味ならある。そろそろか」

私がそう言った時、監視カメラに新たな登場人物が現れた。

その人物は店の入り口で傘の水を払ったあと傘立てに傘を入れた。

傘立てには2本、私の傘とビニール傘が刺さっている。

「二階堂ちゃんがコンビニに入ってきたね」

「ああ…」

画面の中の私がチラリとカメラの死角に目を向けた後、店内に入店していく。

その視線の先に今は『いなくなった』2人がいるのだろう。

そう考えた瞬間画面が暗くなった。

「画面が暗転したね」

「『いなくなった』2人が私の傘を盗んで行った瞬間だろう」

「画面が元に戻ったら二階堂ちゃんが恐ろしい顔で店から出て行ったねぇ…いや、ほんと表情すごいけど、なに?殺す気だった?」

「正そうとしただけだ」

「殺す気だった?」

「この時点でおかしな点がある」

「いや、質問に答えてもらっても」

「おかしな点が2つある」

「…2つ?」

私は今も動く録画画面を指差した。

そこには私がコンビニを出て行って数秒の映像が続いている。

そしてその映像は----一瞬暗転した。

「1つ。『いなくなった』2人が既に外に出ているのに暗転する映像」

「...それがどうしたの?」

「どうしたも何も、窃盗犯2人が既に外に出た後なのに暗転している。これは新たに『消えた人間』がカメラに映ったと言う事だ。貴方だろう?」

目の前の彼女をジロリと睨むが彼女は笑って首を振った。

「そんなまさか。突然突飛な話を振るね二階堂ちゃん」

ここを追求しても意味はない。さっさと次に話を向ける。

「次に二つ目、傘が傘立てにある」

暗転の映し出された画像には傘立てには2本、私の傘とビニール傘が刺さっている。

「傘立てに傘があるのは普通じゃない?」

彼女は呆れるが、ここまで言っても気が付かない彼女に私も呆れてしまう。

「私は言ったはずだが?『彼女達が私の傘を盗んで行った』と、ならなぜ盗んで行った傘がここにあるのだろうか?」

そう指差した先は傘立て。

そこには変わらず2本の傘が立てかけられている。

「二階堂ちゃんの勘違いじゃない?」

「いいや、彼女らが私の傘とビニール傘を盗んで行った事を私は目にしている」

「…じゃあ何を盗んで行ったのさ」

「だから言っているだろう『私の傘を盗んで行った』」

「だからそこに傘が二つあるじゃん」

「付け加えると『私の傘のコピーを盗んで行った』だな」

「コピー?」

「そう、コピー。消えた二人のうち片方が持っていた魔法。手に持った物を増殖するみたいなものか?」

「そんな馬鹿な話が」

「あるんだ。だから彼女達が起こした過去の事件。多くの人たちが消えた彼女達に物を盗まれたと勘違いした」

私はそういい、PCのカーソルを動かし、動画の邪魔にならないように小さく資料ファイルを提示する。そこには、先ほど私が見た窃盗犯2人の事件調書が映し出されている。

見えにくいだろうが彼女にとっては関係ないだろう。なぜなら既に見た事があるだろうから。

彼女はちらりとその資料に目を向けた後口を開いた。

「…まぁいいよ。仮にその魔法があるとして、なんでそんな事を?」

「いたずら…いや、騙した相手を謝らせるためかな?」

「は?謝らせる?」

私の答えに彼女は呆れた声を上げる。

私も同じく呆れた顔をして同意した。

「ああ、私も呆れたよ。盗人扱いしてきた相手に盗んでいない事実を提示し、罪悪感を抱かせ謝らせる」

「ええぇ…まぁそりゃあ、冤罪を吹っ掛けちゃったら謝るのが普通だろうけど…」

ああ、そうだな。罪の所在を間違えてそれを追求するのは悪だ。覚えがある。

誠心誠意謝罪をしなければならない。だがそれは自発的にする事だ。

「土下座まで強要するのが普通だと?」

「…そこまで?」

「ああ、どうやらそこまでは把握してなかったようだな。それとも惚けているのか?」

私の言葉に彼女は首を振る。

「だから今回初めて知ったんだって…でも一人や二人、要求されたら土下座する人がいても」

「今まで彼女達が窃盗犯だと勘違いした全員が、冤罪だと言われた際に人が変わったかのように動揺し彼女達に土下座をしている。その記録も残っている」

残っていない。ただの嘘だ。

「….たまたま全員土下座するほど罪悪感を持っていたかもしれないね」

そんな嘘に律儀に反応する彼女に対して、私は真実を話しているように振る舞う。

「全員魔法によるものだ。対象に抱かせた罪悪感を増幅する魔法かな」

「そんな都合のいい。洗脳みたいなものがある?」

「もっとえげつない魔法をなら知っている」

「だからそれは二階堂ちゃんの妄想の産物じゃなくて?」

「妄想じゃない。情報源は今はこの手元の調書資料だけだが、調べていけばもっと多く情報を得られるだろう。意外と消去にも穴があるのだな」

彼女をまた煽る。

ちなみにこれ以上情報を得られるわけがない。

私の記憶ではまだ事件当時の記憶は持っており、思い出せないのは彼女達の顔だけ。だが、既に過去の調書やゴクチョーの記憶など多くの媒体で情報が消えていっている。

この魔法は人の記憶だけでなく電子機器紙媒体まで消失が侵食していく。なぜ私の記憶とその他の記録や記憶の消失の規模も速度が違うのか、検討も——違う?

1つの疑問が頭に浮かぶ。

私は、目の前の彼女の事を一度忘れている。

だが、窃盗犯の2人、そして『』のことは覚えている。

その違いはなんだ?

いや、逆だ。違いじゃない。考えるならば共通点だ。

窃盗犯の2人と『』を私が他者よりも覚えているのはなぜだ?

私が覚えているという事は、私がその3人に対して特定の共通事項を持っているという事。

『』は名前以外全部覚えている。思い出も多くある。だが窃盗犯の2人は今日出会ったばかり、それも一瞬だけだ。そんな2人と『』が同じ共通点を持っている….?

容姿?年齢?性別?

あまりにも定義が大きすぎるし、それだと私だけが覚えている理由にはならない。

私だけだと考えるのならば可能性があるのは———

 

頭の中で情報が回る。その答えが出る前に目の前の彼女は私の煽りに対して疑心の目を向けてくる。

 

「…さっきから聞いてたけれど、消えた子達の情報色々と消えているんでしょ?そんな都合よく、二階堂ちゃんが欲しい情報が残っている物なの?」

残っていない。残っているわけがない。その全てが嘘のハリボテで補強されたモノ。

だが、それを言うわけにはいかない。だから私は胸を張って嘘を吐く。

「残っている。だから私はあなたが『消失の魔女』だと確信しているんだ。そろそろ白状してくれないか?」

「やってもない事を誰が認めるかって話」

「こんなに資料や証拠が残っているのに?」

「だから、それが本当かどうかもわからないんだって。後それと、その2人が魔法を使えて、他のメンバーがそのなんとか因子って持っているのがわかったとして、今日消えたもう1人は何で消されたの?」

 

話を変えるかのように、彼女がそう聞いてくる。

『』を消したことを言っているのだろう。白々しい。その悪辣な態度に殺意が湧く。

『』が消された理由。いいだろうそんなに答え合わせがしたいなら話してやろう。

私は内心の殺意を隠し、告げる。

「ゴクチョーと話していた。それ以外の理由はないだろう」

「ゴクチョーって…その喋る変な鳥?」

「ああ」

「喋っていたとして、何でそれが消す理由に」

「ゴクチョーと喋っていた少女は消える…いや消えた少女はゴクチョーと喋っていた。だから消した。普通の理解力があれば確認は不要だと思うが。」

自分でも不要だと思う煽り文句が口から漏れ出る。

『』がいない現状に思わず口が勝手に動いてしまう。だが手が勝手に動かなかっただけ温情だ。

そんな苛々とした私の姿に溜飲を提げたのか、軽い口調で彼女は言葉を紡ぐ。

「なんか随分と生意気言うようになったね二階堂ちゃん」

「親友を消されればこうなる。だから——」

彼女を睨め付け吐き捨てる。

苛立つ。だが、この状況をどうにかできると思われるのも目の前の人物に他ならない。

苛立ちをぶつけても、私の溜飲が下がるだけ。

深呼吸をする。

彼女が首を傾げているのが見えた。

ここまでの会話で彼女がどんな人物なのかもう分かった。

そして彼女が犯人なのだろうとも分かった。

だから後できるのは二つ。

「貴方が『消失の魔女』だ。だから返してください。私の親友を」

そう願いを込めて彼女に告げる。

それを告げられた彼女は、突然の私の言葉と行動にに固まっているようであった。

言葉で解決するならそれでいい。彼女が悪い人間ではないのはわかっている。

だから…だから認めてくれ。

 

1秒、2秒と時間が過ぎる。

雨音はもうほとんど聞こえなくなっている。

ただ響くのは耳が痛くなるほどの静寂。

今この瞬間にも『』に関する記憶が消えてしまうと考えると気が気ではない。

 

だが、いくら待とうとも、彼女は喋らない。黙殺されている。

この沈黙自体が彼女が犯人と自白しているような物なのにそれでも話さない。

『沈黙していれば解決する』そう稚拙な判断していると認識してもおかしくない静寂に耐え切れなくなった私は机を叩いた。

 

「答えてくれ!貴方が全部白状してくれたら解決するんだ!」

 

私の心からの叫び。その叫びに彼女は視線を下げる。そして数拍の沈黙の後顔をあげた。

呆れた表情を顔に貼り付けて。

「だから、言っているでしょ?私は何もやっていないって」

——ああ、そうか自白してくれないか。

それを理解したとき、胸の内から澱んだものが溢れてくる。目の前の彼女が、容易く見破れそうな仮面を被り、言葉を続けていく。

「さっきから消えた消えたって言っているけど、どうやってその子達を消したっての?まさかそれも魔法っていうの?」

答えるつもりもないのに、私がどこまで把握してるのか知るための質問。

爪が手のひらに食い込むの感じる。

いいだろう。嫌でも自白させてやる。私は、苛立ちと共に私は彼女の質問に頷いた。

「そうだな。魔法で消したに違いない」

「また魔法。魔法って言えばなんでも説明がついちゃうじゃない。魔法を使って消したから犯人は魔法使いだーって」

「いや、犯人は魔法を使えるが魔女因子は持っていない。因子のあるなしで魔法使いと判断するのなら、犯人は魔法使いではない。そうだろう?」

私の答えの意味を掴み損ねたようで、一拍の間が生まれたが、彼女は首を傾げた。

「どういうこと?」

 

魔法を使えるのに魔法使いじゃない。矛盾するようなことを言われた時、そう疑問符を浮かべるのは正しい反応だ。

だが、目が泳いでいる。動揺している。

その動きで仮説が核心へと変わっていく。

思わず笑みを浮かべてしまう。

「魔法を使える一般人。誰かが残した魔法のステッキを持った一般人ってところだな」

「…..ステッキって…え?なに?消えちゃえ〜って言って呪文でも唱えてステッキから魔法でも撃っちゃうの?」

「ああ、そうだな」

「そうだって...そんな馬鹿な話あるわけ」

「『雨が降っているから貸してあげるよ』」

繰り出そうとした言葉が呼吸と共に止まる。

「…なにその言葉?」

「言葉通りだよ。そう傘を持ちながら言ったのだろう?」

「ちょっと待ってよ。一体なんで私がそんな言葉を…」

「警察の身分を明かしながらそう言えば大体受け取って使ってくれるはずだな…それに私は貴方が言ったセリフなど一言も言っていないが?」

「…」

「ボロが出てきたな。向いていない事をするからだ」

言葉を失っている彼女に私は語りかけ続ける。

「今日消えた二人に対してはわざと傘立てにおいて持っていかれたな?」

「…」

「二人の今までどうやって事件を起こしていたか貴方は知っていた。それはそうだ、何せ貴方も警察官なのだから。そう言った調書はいくらでも見れたはずだ、だから貴方は傘立てに傘を立てた。つまり、私がコンビニに行った際に先に傘立てに入っていた傘は貴方の傘だ」

私の言葉は止まらない。止めればいいのに彼女は黙り聞き入ってしまっている。

——本当に向いていないな。過去に相手をしてきた論敵を思い返しながら比べてしまう。

まぁ、彼女たちと比べるのは酷だろうが。

だから、こう言った相手には論法や正論ではなく、感情を煽ればいい。

「調書の記録から、彼女たちはより立場のある人間や同年代を狙っているのが見てわかる。頭を下げさせて満足感を得られる相手を探していたわけだな….それにしても不用心だな。彼女達窃盗犯に貴方の物を渡そうとするとは。大事なんだろう、それ」

「いいかげんに…」

言葉を紡ぐほどに彼女の表情が険しくなっていく。

だが止まる気はない。知ったことではない。

「いや、彼女たち窃盗犯2人が外に出る際にすぐに使うから盗まれる心配はないと思っていたのか…短慮だな、それでは無くしたくないものも無くしてしまうぞ?——その経験はありそうだと思うのだが?無くしたのは物ではなく者だと思うが」

最後につけた余計な言葉、それがトドメだったのだろう。

堪忍袋の尾が切れたかのように彼女は両手を机に叩きつけ、立ち上がり叫んだ。

「いいかげんにしてっ!何を勝手に話を進めて!!!」

「今あなたの傍にあるその傘が、貴方が、魔女から….家族からもらった魔法のステッキだ」

彼女の叫びを無視して、私は至極冷静に、彼女の手元で机に立てかけられているビニール傘を指差し告げた。

あの時、目の前で逃げていた窃盗犯は傘を開いた時に『いなくなった』

傘を開いた時、その人物が消える。それが魔法の発動条件。

そしてその後ビニール傘が消えたのは、それがコピーの魔法で作られていた偽物だから魔法の発動者が『いなくなった』ことで消えた又は時間経過で消えたと考えられる。

あまりに、ボロボロな予測。

ツッコミどころは数え切れないほどある。だが、それでも押し切る。

この場は真実を求める場所ではない。消えた者たちを救うための場。救うためならいくらでも私は嘘を操る。だから、話を詰めていこう。

私の言葉に彼女は首を横に振るう。

「そんな小学生の妄想みたいな事をいって」

「なら今貴方が持っているそのビニール傘を貸してくれないか?奇しくもこの監視カメラに写っている傘立てに架けられた傘と同じ様なその傘を。」

求めるように彼女に手を差し伸べる。

彼女の視線が私の手、自分の傘を交互に行き来する。

「…」

「どうした?返事がないが?」

ぎり、と奥歯を軋ませる音が彼女から聞こえてくる。

誤魔化せばいいのにそれすらしない彼女にふっ、と私は笑ってしまう。

「渡してくれたら傘を開いて確かめてみようか…まぁ開いても私にその消失は効かないがな」

嘘だ。実際に開いたら私は消えるだろう。

だが、それを知るのは私とゴクチョーだけ。

目の前の彼女はその可能性に気づくわけがないのは見てわかる。

今彼女の中でさまざまな葛藤が行われているはずだ。

そしてその中に、私の武力制圧も含まれているだろう。

だから——そっと後押しをしてやる。

皆を魔女化させたときに嫌な胸中が湧き上がるのを噛み殺し、私は笑う。

「渡すのが嫌なら….その傘をたたき折ってもらおうかな?今更いない家族の物を持っていても辛いだけだろう?」

意地の悪い声色で、ココの語り方を真似するように告げた

「——ッ!!」

声にならない怒号。

視線は殺意と共に私に固定され、彼女は傘を持ちながらパイプ椅子を蹴飛ばしながら立ちあがる。

——そうすると思っていた。

「——ごぇッ!?」

跳ね飛ぶ机、散乱するノートパソコン。、

私が蹴り飛ばした机が、彼女に鳩尾に突き刺さる。

彼女は踏鞴を踏むが、それは数歩で終わる。怯んでいない。目に殺意が見える。

久しい【死】の空気を感じる。

すると彼女は手に持った傘を開いた。

逃げる為か、それとも私を不意打ちする為かはわからない。

だがその瞬間彼女の存在がブレる様な感覚が襲う。

まるで記憶から突如ごっそり抜け落ちたかの様な気持ち悪い感覚。目の前の存在が誰かわからなくなる様な違和感。

だが記憶が抜け落ちるより前に、その記憶を私の【殺意】が引き留めた。

「アアアアッ!!」

私は叫び声と共に全身の筋肉を使い、自分が座っていたパイプ椅子を全力で彼女の顔面に向けて投げ飛ばした。

「は?———っ!?」

あっけに取られた彼女は、慌てて傘を庇いながら腕でパイプ椅子を受ける。

 

パイプ椅子が床を跳ねる激しい音が響く。

彼女は尻餅を突き倒れ、庇った傘がその手からこぼれ落ちた。そして私はいい早く手を伸ばし地面に転がったビニール傘を掴んだ。

「返せ!!」

彼女が鬼気迫る表情でこちらに手を伸ばす。大人と子供、組み合えばどちらが勝つか目に見えている。

だから私はこうする。

「動くな。折るぞ」

膝立ちの状態で傘の石付きと手元を持ち、膝に合わせる。

このまま両手に力を入れれば梃子の原理で容易くビニール傘など折れるだろう。

あまりに正しくない行為、悪と断じれる行為だが、効果は的面だった。

 

「やめて!!」

彼女の動きが石になったかのように固まる。

どれほど大事な物なのかは、その表情は恐怖で彩られた表情から容易に想像できる。

嘘偽りのない彼女の表情。それを引き出してしまったことに私は苦痛を覚えるも、それとは逆にニヤリと笑った。

「やっと顔にだしたな」

彼女は声に怒気を纏わせる。

「出すに決まっているじゃないっ!」

先ほどの出来損ないの仮面を被った彼女ではない、誠心誠意嘘偽りのない心からの殺意を私に向けている。

「やはりこの傘で人を消した。そしてこの傘は貴方の家族のものか」

確認のための質問。その質問に彼女は表情を苦々しげに歪める。

「やはり?…って事はさっきまでの話や質問はハッタリってこと?」

一つの単語で、そこまで気がつくか。

思わず感心する。

彼女が先ほどよりも頭が回っている気がするのは気のせいだろうか。もしかしたら先ほどまでは下手な芝居をするのに頭を使い過ぎているのではないか?

そんなどうでもいい考えを頭に浮かべ、私はやっと正しい話し合いができることに少し安堵しながら頷いた。

 

目の前の彼女が立てこもり犯を諭すかのように言葉をゆっくりと口を開く。

「それは…私の妹が届けてくれた最後のメッセージ。最後の魔法なの。だから、返して」

 

鬼気迫るようでありながら、静かなトーンで発せられた言葉。一体どれほどの感情が彼女の中で渦巻いているのかはわからない。

だが、今やっと彼女は、人質があるゆえに嘘のない対話を望んでいる。

「最初から嘘偽りなく話せばこんな面倒なことはしなかった」

「妹を連れて行って消したお前たちに嘘偽りなく?話せるわけがない」

ここまでくるのにかかった論争に思わず愚痴が溢れるが、その言葉は彼女に吐き捨てられた。

妹….消えたのは、この魔法を使ったのは妹か。

「その妹が失って何年経つ?」

「——っ!お前たちは自分が連れ去った子の事も把握していないのか」

「ああ、私は知らない」

「2年だ…2年もこの恨みを持って生きてきたっ。この恨みは忘れるわけがない!絶対に!」

2年…ナノカと同じ。

つまり、おそらくホノカと同時期に牢屋敷に連れてこられた魔女。

———そこまでわかればもう十分だ。

「その恨み….もう意味がなくなるのに?」

みしり。拳を握りしめるような骨の軋むような音が聞こえた。

彼女の目は血走る

「よくも、そんなことを言えたな!!そう言って妹を連れて行って、殺したのか!!お前は意味がないと——もうこの孤島で死ぬしかないとっ!!」

 

血反吐を吐くような絶叫。怒りも悲しみも恨みも全て孕んだ怒号は、過去に聞いた少女たちの悲痛な叫びと同種のもう聞きたくないもの。

だから、その声を私は止めよう。

 

「貴方の妹は生きている。」

 

「嘘だ!!」

 

私の言葉を彼女は否定する。

嘘を重ね、偽証をつき続けてきた狼少年の言葉が信じられなかったように、私の言葉もまた信じられるわけがない。

 

だから、物理的に信じてもらう必要がある。

ブルリとポケットの振動が太ももを叩く。

…予想よりもはるかに早い。

 

「え〜と…そろそろいいです?ヒロさん」

震動音が聞こえたのだろう。

現状の刺々しい空気など無視するかのような気の抜けた声と共に肩に止まったゴクチョーが私を伺う

「ああ、ポケットに入っている取ってくれ」

「自分で取ればいいのでは?」

「その瞬間、傘を奪われ、私もお前も目の前の彼女に殺されるな」

「私は別にそれでも」

「いい加減にしろっ!」

 

焦れた彼女の叫びを聞きゴクチョーを睨む。

 

「はぁ…メルルさんがいなくなったと思ったら今度はヒロさんですか。鳥扱いがひどいですねぇ虐待ですよ」

 

そうブツブツと文句を言いながらゴクチョーは私のポケットから、器用に携帯を取り出し、彼女に向けて放り投げ、彼女はそれを受け取った。

 

「いったい何を…通話中?」

画面を見て訝しむ。それはそうだ。画面は通話をONにしたまま、ずっと会話は気終えるようにしていた。

私は何も言わず、携帯を耳に当てるようにジェスチャーをする。

彼女は訝しげに怪しみながらも、言われた通りに耳を当てた。

 

一体何を話しているのかは聞こえない。

だが、端末から聞き覚えのある声が発せられているだろう。

彼女は私よりも口が上手い。今恨まれている私よりもはるかに信用できるだろう。

十数回の問答。

殺意と恨みに満ちていた彼女の表情が徐々に落ち着き、不信と苛立ち程度まで落ち着いてきた頃、

 

「変わる?まさか本当に——っ!」

その声と共に彼女は息を呑み固まった。その目は見開き信じられないものを見たかのように見開いている。

先ほどまでの私たちの会話は全て『彼女達』に聞かせていた。

だがリアルタイムで聞かせていても、それが誰かを探し出すのは時間がかかると思っていたが、予想以上に速かった。

今彼女の目の前に映し出された画面にはこちらからは見えない。

だがその様子にホッとすると共に手伝ってくれた仲間に感謝する。

 

私は呆然としている彼女に優しく語りかける。

 

「魔女化した少女は死ぬことはなく使用する魔法は凶悪なものになってしまう。だから魔女因子を持つ少女は連れていかれ魔女化した場合冷凍保存される」

完全な真実ではないが嘘でもない誘拐の建前、だが牢屋敷の真実は今は関係ない。彼女に取って必要なのはなぜ妹が生きていたかのみ。

「私たちもその牢屋敷につれて行かれ、その全てを解決した。その後牢屋敷では過去に魔女化した少女達を解凍し社会復帰させる為のリハビリをする場として使われている。貴方の妹は消失事件の規模から魔女化していた、魔女化した後に魔法を残したと予想していたが….正解だったらしい」

 

そういい、私は立ち上がり、彼女に持っていた傘の差し出す。

 

「先ほどは手荒な真似をして申し訳なかった。だが、もう魔女因子をもつ少女が国に連れていかれることはない。そしてあなたの妹はもうすぐ帰ってくるだから….貴方の仕事はもう必要ないんだ」

 

「——あ」

彼女は震える手で傘を受け取る。

突然のことに信じられなかったのだろう、そのまま力が抜けたかのように腰から崩れ落ちた。

携帯からかすかに声が聞こえる。

その声に彼女はただ頷くばかり。

そこで気がついた。雨の音が聞こえない。

外を見るが、相変わらず窓枠の額縁に飾られた漆黒の絵が置かれている。

だがその絵は先ほどまで見ていた時よりもどこか心を軽くさせる色をしていた。

部屋の中からポツリポツリと、先ほどとは違う雨音が部屋の音色を彩り始める。

 

今はまだ、何も言う事はない。

落ち着くのを待とう。

 

そう判断し先ほど投げ飛ばした椅子を起こして座ると再びゴクチョーが私の肩に乗ってきた。

「これで一件落着ですね」

やれやれとでも言いたげにそんな言葉をほざく。

人の心もない奴め。

私は肩に乗った全ての元凶を睨みながら首を振った。

「まだだ…今からが本番だ」

「ここから何をするんですか?」

あんまりな言葉に顔を顰める。

「貴様は犯人が見つかって終わりかもしれないが、まだ被害者はいなくなったままだ。それにいくつか気になる点が——」

「ならそれも含めて終わりですね」

ゴクチョーはそういい毛繕いを始めた。

「——は?」

ゴクチョーは話は終わりとでも言いたげに毛繕いをし始めたのを見ながら呆然とした声をあげてしまう。

 

そんな時だった。

「し、しつれいしまーす...」

控えめなノックと共にガチャリと音を立てて扉がゆっくり開いた音が聞こえた。

目を見開き振り返る。

 

そこには両手でゴクチョーを抱えた少女がいてー

 

「ああ、そんな顔だったな君は」

 

「えぇ!ひどいよヒロちゃん!!」

 

聞きたかった声と、足元から雨粒が落ちる音が聞こえた。

 

 

 

 

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