オペレーター・スペースマリーン   作:SECOND

1 / 2

ウォーハンマー40k x アークナイツというマイナーすぎるクロスオーバー。この小説を開いてくれた全ての読者様に感謝を。
ドクター達に分かりやすいよう、超簡単な用語解説を後書きにいくつか置いていきます。


異なるテラで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 In the grim darkness of the far future,there is only war.

 

 ――希望なき暗黒の遠未来、残されたのは戦争のみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【惑星テラ 某所】

 

 荒れ果てた荒野に、青い装甲服に金色の装飾を纏った巨人が膝を付いていた。

 

 彼はゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。

 

 帝国暦745.M41、ティラニッドの群巣艦隊(ハイヴフリート)ベヒモスが銀河東方から侵攻、進路上にあったウルトラマール星系――ウルトラマリーン戦団の拠点惑星(ホームワールド)マクラーグにも襲来した。マクラーグの惑星防衛軍及びウルトラマリーン戦団は必死の抵抗を続けたが、戦線は突破されるばかり。

 

 マルネウス・カルガー戦団長の近衛兵であるオナー・ガード(尊厳の守り手)である彼もまた、戦いに身を投じるウルトラマリーンのアスタルテスの一人であった。

 

 彼が北部の極地要塞でティラニッドの個体群に包囲され、死を覚悟した時。いつの間にかこの荒野に居た。

 

「ここは……マクラーグではない。周囲に友軍信号もなし、何処の惑星だここは」

 

 オナーガードが身に纏う装甲服の大気分析センサーが、ここは全く別の惑星であることを示していた。それに加えて、大気中には正体不明の謎の粒子が多く含まれている。

 

 彼はストームシールドとパワーソードを構え直し、周囲を見渡す。

 

 見渡す限り人口物はなし。あるのは荒れ果てた土地と謎の鉱物の巨大な結晶だけ。

 

 現状を把握する必要があると感じた彼は、ゆっくりと歩みを進めながら周囲を観察。数分も歩くと、未知の生体反応を感知した。

 

 石っころに棘が生えたような奇妙な見た目、だが動いていることから生物だということが分かる。周囲には大小様々なそれ――この惑星(テラ)ではオリジムシと呼ばれる生き物が屯していた。

 

(この惑星の原生生物か)

 

 明らかに知的生命体ではないその姿に、彼は警戒を緩めずに近づく。もしこれらがティラニッド由来の生命体であった場合、放置は惑星、ひいては星系や宙域全体への深刻な脅威となり得る。

 

 彼は脅威を確かめるため、ゆっくりとオリジムシの群に近づいていく。

 

 無論、これらのオリジムシの群れは通常の個体ではない。〈天災〉後の影響で極度に大型化し、危険性が上がった変異体なのだ。

 

 オナーガードが一歩踏み出した瞬間、オリジムシ達が一斉に彼へ襲い掛かる。

 

「――敵対行動を確認。排除する」

 

 先頭の個体の大きさは小型車両にも匹敵した。源石結晶に覆われた外殻が陽光を反射しながら、一直線にオナーガードへ迫る。

 

 しかし彼は動じない。

 ストームシールドを僅かに傾ける。

 

 轟音。

 

 激突したオリジムシの身体が弾かれ、体勢を崩した。

 その瞬間、パワーソードが振るわれる。

 

 青白いエネルギーを纏った刃が外殻を紙のように切り裂き、オリジムシは二つに分かれて地面へ崩れ落ちた。

 間髪入れず、左右から別の個体が襲い掛かる。

 

 オナーガードは一歩踏み出した。

 

 アスタルテスの強化筋肉が動力装甲と連動し、その巨体が信じ難い速度で加速する。

 

 踏み込み。

 

 衝撃。

 

 一体は装甲靴の下で潰れ、もう一体はストームシールドの一撃で数メートル先まで吹き飛ばされた。

 

 周囲のオリジムシが一斉に殺到する。

 

 パワーソードが閃くたび肉片が舞い、ストームシールドが振るわれるたび外殻が砕ける。

 

 数分後。

 

 荒野には静寂だけが残った。転がるのは無数の死骸。そしてその中央に、返り血ひとつ浴びていない青い巨人だけが立っていた。

 

 僅か数分、オナーガードは周囲のオリジムシを一掃した。

 

(ティラニッド特有のサイキックの波動や〈歪み〉由来の不浄な手応えもない。本当にただの原生生物なのか)

 

 四散したオリジムシの亡骸を見ながら、彼は少しだけ安堵する。少なくとも今すぐに対応しなければならない深刻な事態ではないと判断したからだ。

 

 だが、彼の装甲服のセンサーはまだ複数の生体反応を感知していた。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、冗談じゃないぞ。何だあれは」

 

 少し離れた岩場の影。

 そこには双眼鏡を構えた一人の男性――ロドス・アイランド製薬のオペレーターAceと、彼と共に行動していたscoutやその他オペレーター達。

 

 彼等の任務は〈天災〉後の周辺の環境を調査し、ロドスがチェルノボーグに向かう為の安全な経路を確保することであった。ロドスの予想通り、進路上には危険な存在……特にオリジムシの変異種や鉱石の結晶が多数確認されていた。

 

 だが、その直後に目の前で繰り広げられた光景は目を疑うものだった。

 

 〈天災〉が起きた方向から青色の装甲に金色の装飾を身に付けた巨人が現れたと思えば、次の瞬間には変異したオリジムシの群れを赤子の手を捻るように全滅させたのだ。

 

「な、なんなんですかアレは……?」

 

「サルカズの傭兵、なのか?」

 

 狼狽えるオペレーター達。

 Aceは冷静に答える。

 

「俺にも分からん。今まで色んな連中を見てきたが、あんなのは初めてだ」

 

 強力な青い装甲服――恐らくは強化外骨格の類だろうか、だがただ力任せではなかった。超人的な反応速度に効率的な動き。明らかに戦い慣れている。

 

 しゃがみ込んでオリジムシの亡骸をまじまじと観察している青い巨人に、Aceは眉間に皺を寄せる。

 

 普通ならこんな危険地帯に単独で居る者は事情を聞くか保護すべきなのだろうが、目の前の存在は明らかに訳アリだ。複数の変異したオリジムシを単独で制圧する戦闘力に、異様な外見。

 

 それに、Ace達が調査を行なっているのは〈天災〉が起きたポイントからかなり離れた地点であり、それ以上の調査はオペレーターに危険が及ぶため行われていない。

 

 にも関わらず、目の前の巨人は〈天災〉が起きた方向から現れた。

 何由来かも不明、目的も不明。

 

 Aceがどう行動すべきかを迷っていると、突然隣に居たscoutが叫んだ。

 

「……Ace!!」

 

 彼の声に反応し、再び双眼鏡を除く。

 

「クソ、気付かれていたか」

 

 Aceが静かに呟く。

 双眼鏡に写っていた青い巨人は、何がキッカケかは分からないが、既にこちらの存在に気付いたいた。

 

 既に青い巨人は何やら淡く青色の光を放っている物体をこちらに向け、ゆっくりと近づいてくる。

 

「……行くしかない、か」

 

 Aceが僅かに脂汗を浮かべながら、ゆっくりと岩陰から身体を出す。

 彼を視認した青い巨人は立ち止まり、武器らしきモノをこちらに向けたまま声を発した。

 

「汝らは何者だ、身分を明かせ」

 

 意外にも、巨人から発された言葉は案外理性的なものだった。

 Aceはできるだけ聞こえるように、大きな声で、しっかりと言葉を紡ぐ。

 

「俺達はロドス・アイランド製薬のオペレーターだ。ここ周辺で起きた天災の余波について調査していた――そちらこそ何者なんだ。レユニオンか? それともウルサス軍か?」

 

 彼の言葉を聞いた巨人は数秒ばかり硬直し、再び口を開く。

 

「私はウルトラマリーン戦団本部直轄近衛部隊、オナーガード(尊厳の守り手)である。ロドス・アイスランド製薬という名の組織名が戦団蔵書院(チャプター・ライブラリウス)に記されていたという事実は、私の知る限り存在しない。もう一度問う、汝らは何者だ」

 

 Ace達は訳が分からなかった。

 ウルトラマリーン戦団? オナーガード? チャプター・ライブラリウス?

 

 彼等はテラのことについて、博識と言い切らなくとも、少なくとも無知ではないことは自信を持って言える程度の知識は持ち合わせている。

 だが、今目の前の存在から明かされた名は、どれを取っても初めて聞いたモノばかりだ。

 

 そればかりか、相手はロドスを知らず、武器をこちらに突き付けている。はっきり言って最悪の状況だった。

 

「……待て、状況を整理しよう。俺達はウルトラなんちゃらとか、オナーガードについては何も知らないし聞いたこともない。それはそっちも同じ筈だ」

 

 青い巨人は再び数秒硬直する。

 

「我々ウルトラマリーン戦団の存在を認知していない――つまり、帝国行政局(アドミニストラトゥム)の手が及んでいない辺境惑星か」

 

 彼はそう呟くと、静かに武器を下ろした。

 安堵するAce達を他所に、再びオナーガードは問うた。

 

「汝らよ、この惑星の名を教えよ。して、惑星総督との話の場を設けよ」

 

 Ace達は再び困惑し、彼は困ったように言う。

 

「惑星? ここはテラだが……テラに惑星総督?などは存在しない。頼むから一度、お互いの状況を――」

 

貴様等(・・・)、辺境の惑星の立場でありながら皇帝陛下の御座所を騙るか」

 

 Aceの言葉は彼を激昂させ、再び武器を抜かせてしまう。

 その時に発せられた殺気はAceをも震え上がらせ、岩陰に隠れている他のオペレーターは恐怖で震えてしまうほどであった。 

 

 Aceは絶望した面持ちで、己の不運を呪った。

 ここから生きてロドスに戻れるのかという不安と共に。




〈用語解説〉

・40k世界について
銀河の半分を支配する人類と、無数のエイリアン、そして〈歪み〉の領域の悪魔の全てが絶滅戦争中の遠い未来(西暦四万年)の銀河。同作の標語の一つでもある“平和は無い。休息も無い。慰めすら無い。赦しなど、ある筈も無い。暗黒の遠未来に唯一残ったもの。それは戦争である”が示すように、希望と救いという概念が消滅したような世界である。

・ティラニッド
惑星に億〜兆単位で襲いかかり、全ての有機物を喰らい尽くしていく外宇宙由来の凶悪な宇宙怪獣。ドクター達に分かりやすく言うと、シーボーンの規模を銀河規模にして凶悪性を数倍増したような感じ。
作中ではティラニッドの群巣艦隊(ハイヴフリート)(生きた肉の艦隊)の一つが銀河の東から侵入し、後述のウルトラマリーン戦団の故郷ウルトラマール星系を襲撃する。ティラニッドという名前は東部辺境の惑星ティランを最初に襲ったことに由来する。

・人類の帝国
銀河の半分を支配する人類の帝国。狂気的な皇帝崇拝や異端審問、技術の衰退によって崩壊するなか、人類以外の全ての種族との超多方面戦争をしている。文化から政策まで全てがウルサスが可愛く見えるほどに最悪レベルであり、見た感じはほぼ敵サイドであるがウォーハンマー40kでは主人公陣営。

・ウルトラマリーン戦団
人類の帝国が誇る最高峰の兵士であるアデプトゥス・アスタルテス(スペースマリーン)と呼ばれる戦士の中の一団。アスタルテス達は強化手術により規格外の戦闘能力を有しているほか、感情や慈悲といったものは一部例外を除いてほぼ全て無く、人類の敵たり得る者を殺戮する無情の戦闘機械でもある。その中でもウルトラマリーン戦団は理性的且つ合理的(40k比)な事で知られている。

・テラ(帝国)
アークナイツの舞台である惑星テラ……ではなく、人類の帝国の首都であり、皇帝の玉座のある聖地である人類発祥の地。元の名はご存知の通り地球で、今はホーリー・テラと呼ばれている。惑星全体が巣窟都市(ハイヴシティ)と呼ばれる超多層都市に覆われており、その人口は数兆人とも、数十兆人とも呼ばれる。オナーガードが小説中でブチ切れたのは、帝国臣民にとっての聖地であるホーリーテラを侮辱されたと感じたから。名前が同じだと厄介だね(白目)

・オナーガードの装甲服
スペースマリーンが身に纏うパワーアーマーは強力だが、その中でも“戦団長の近衛”という名誉ある立場にあるオナーガードのアーマーはとりわけ強力である。基本的にはMk.Ⅶ アクイラ・パターン・パワーアーマーという型番を元としているが、防御力や性能が大きく向上している。アーマーの動力は小型フュージョン・リアクター(核融合炉)を基本としており、強化セラマイトで作られた装甲は歩兵レベルの攻撃ならばほぼ全て防ぐことができる。

・パワーソード
青く光る、スペースマリーンが扱う大型の剣。もちろんただの大剣ではなく、その実態は刃に纏わせたエネルギーフィールドで対象の分子結合に干渉し、これを崩壊させることであらゆる防御を無視して相手を斬ることが可能な凶悪兵器。もちろんエネルギーを纏わせなくても運用が可能で、単純な物理ダメージでもトラックを真っ二つにできるレベルはある。

・ストームシールド
こちらも青く光る、スペースマリーンが扱う大型の盾。実態はエネルギー防御フィールドを纏わせ、物質の位相に干渉することで敵の攻撃を阻害する防御兵装である。もちろん攻撃を受け流せる上限はあるが、フィールドなしでもロケットランチャー程度であれば受け止められる。フィールドがあれば悪魔の魔術や敵エイリアンのプラズマ砲などすら受け止めることが可能。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。