パトリオットもアスタルテスも戦闘中に喋るイメージがあまりないので、会話は少なめです。まあ、ブラックテンプラーは罵声が飛んでてもおかしくないですが……
黒い騎士が地を蹴った。
最初の一歩で石畳が陥没し、次の瞬間には巨体が宙へ舞い上がっていた。あれほどの重量を持つ装甲が跳躍するという光景に、周囲の誰もが一瞬だけ認識を遅らせる。
アスタルテスはチェーンソードを右手一本で振り上げ、パトリオットの頭上へ躍りかかった。稼働限界まで回転数を上げた鋸歯が唸り、付着していた血液と肉片を周囲へ撒き散らす。
その勢いは、単純な剣撃という範疇に収まるものではなかった。
落下するパワーアーマーの重量。強化された筋肉と装甲内部の人工筋肉が生み出す膂力。そして、接触した物体を食い破るチェーンソード。
正面から受ければ、重装甲の兵士であろうと身体ごと地面へ押し潰される。
パトリオットは退かなかった。
巨大な盾を僅かに傾け、身体の前へ掲げる。
直後、振り下ろされたチェーンソードが盾へ激突した。
轟音と共に鋸歯と装甲板が噛み合い、耳を塞ぎたくなるほど甲高い金属音が路地へ響き渡る。接触部分から大量の火花が噴き出し、黒い騎士とパトリオットの巨体を橙色に照らした。
盾の表面が削られる。
回転する刃が分厚い装甲板へ食い込み、金属片を撒き散らしながら内側へ進もうとする。パトリオットの足元へ衝撃が伝わり、石畳がさらに深く沈み込んだ。
それでも盾は下がらない。
パトリオットは攻撃を真正面から止めてはいなかった。
盾を僅かに斜めへ構え、上方から加えられた力を地面へ逃がしている。同時に左腕を捻り、食い込んだチェーンソードの軌道を外側へ逸らそうとしていた。
アスタルテスの赤いレンズが細く明滅する。
黒い騎士の身体が着地するより早く、盾の陰から長槍が放たれた。
槍先が炎を切り裂く。
狙いは胸甲ではなく、アスタルテスがチェーンソードを振り下ろしたことで露出した、脇腹の装甲接合部だった。
巨大な武器からは想像できないほど鋭い刺突。
盾の陰に隠されていたため予備動作も見えず、槍先は既に黒い装甲の目前まで迫っている。常人であれば攻撃を認識する前に身体を貫かれていた。
だが、アスタルテスは人間の限界から解き放たれた戦士だった。
兜内部の警告表示が視界を走る。
黒い騎士はパトリオットの槍を目で追うより早く、腰を捻って身体を射線から外した。装甲内部の人工筋肉が動作を補助し、着地直後とは思えない速度で上半身が傾く。
槍先が胸甲の脇を通過した。
鋭利な穂先が黒い塗装を僅かに削り、胸部から垂れ下がっていた祈祷文の一枚を切り裂く。千切れた紙片が炎に巻かれ、黒く焦げながら宙へ消えていった。
回避が僅かでも遅れていれば、槍は装甲の継ぎ目へ突き刺さっていただろう。
黒い騎士はチェーンソードを盾から引き抜き、着地と同時に後方へ跳ぶ。
分厚い装甲を身にまとった巨体が、重力を無視するようにパトリオットの間合いから離れた。
その直後を、引き戻された槍先が薙ぎ払う。
穂先は黒い騎士の腹部を捉える寸前で空を切った。風圧が地面の砂塵を吹き飛ばし、背後の石壁へ浅い傷を刻む。
両者の最初の攻防は、ほんの数秒で終わった。
だが、その一度で互いに理解していた。
目の前にいる存在は、これまで相手にしてきた兵士とは違う。
パトリオットは盾を構えたまま、後方へ退いたアスタルテスを見据える。
「早い、な」
彼は短く、そう呟いた。
確かに自分は今、常人の反応速度では決して反応不可能での連撃を行った筈だった。
着地前で姿勢も定まらず、振り下ろした武器を引き戻すこともできない。通常の相手であれば、回避の余地は存在しない。
それを黒い騎士は、上半身を僅かに動かすだけで躱した。
分厚い装甲は防御力を得る代わりに機動力を犠牲にする。それが戦場における常識だった。
だが、目の前の黒い戦士にはその常識が通用しない。
「……侮るべき異形ではないか」
アスタルテスから機械処理された低い声が漏れる。
彼もまた、パトリオットへの認識を改めていた。
黒い騎士の左手が腰へ伸びる。
引き抜かれたのは、アスタルテスの巨体に合わせて作られた大型拳銃だった。テラに存在する拳銃と比べれば銃身も弾倉も異様なほど太く、片手で扱う武器というより、小型の砲を切り詰めたように見える。
銃口がパトリオットへ向けられる。それと共に、パトリオットは即座に盾を前へ出した。
そして、発砲と同時に路地の空気が震えた。
エクシアたちが使う銃器とは根本から異なる、腹の底まで揺さぶる重い爆音。銃口から炎が噴き出し、大型の弾丸がジェットを引きながら飛翔する。
ボルト弾は盾の中央へ命中した。最初の衝撃が分厚い装甲板を歪ませる。直後、弾頭が盾の内部で炸裂した。
爆炎が盾の表面を覆い、金属片が四方へ飛散する。パトリオットの巨体が衝撃によって押し戻され、装甲靴が石畳を抉った。盾を支えていた左腕から肩へ強烈な震動が走り、重装甲の内側で筋肉が膨らむ。
そして、パトリオットの足が半歩下がった。
「なっ……!?」
「ば、馬鹿な!! たった一発で!?」
ただの半歩。
だが、これまで数多の敵の猛攻を正面から受け止めてきた彼が、片手で放たれた一発の銃弾によって後退させられたという事実は、遊撃隊員やレユニオン兵の間に小さくない動揺を生んだ。
盾の中央には拳ほどの窪みが生まれている。
装甲板の表面が内側へめくれ、命中箇所から黒い煙が立ち昇っている。貫通こそ許していないものの、同じ位置へ数発を受ければ耐えられる保証はなかった。
「……砲撃、か?」
パトリオットが低く呟く。
銃という形状をしている。
だが、威力は個人が携行する武器のものではない。単純な貫通力だけでなく、装甲へ食い込んだ後に炸裂し、内側から防御を破壊するように作られている。
受けた盾だけでなく、支えていた腕へも衝撃が残っていた。
パトリオットが驚きを表へ出すことはなかった。それでも仮面の奥の目は、黒い騎士が左手に構えた武器へ警戒を強めている。
二発目を食らってはならない。
戦士としての勘がそう告げていた。
二発目を受ける前に、パトリオットが動いた。
盾を前面へ構え、黒い騎士へ突進する。巨体が石畳を踏み砕き、凄まじい勢いで間合いを詰めた。
アスタルテスがボルトピストルを構える。
その銃口へ向けて、盾の陰から長槍が突き出された。
黒い騎士は身体を捻って刺突を躱す。槍先が左腕を掠め、ボルトピストルの銃身へ火花を散らした。
パトリオットは槍を引き戻さない。そのまま腰を回し、穂先の軌道を横薙ぎへ変える。
アスタルテスはチェーンソードを振り上げた。
高速回転する刃と槍が激突する。
甲高い金属音が響き、二人の間で火花が弾けた。チェーンソードの鋸歯が槍の表面を削るが、分厚い柄を断ち切るまでには至らない。
パトリオットは槍を回転させて刃を受け流す。
武器が離れた瞬間、黒い騎士が踏み込んだ。
チェーンソードが低い位置から薙ぎ払われる。
パトリオットは盾を下げ、脚部を狙った一撃を受け止めた。回転する鋸歯が盾の縁へ噛みつき、装甲板を削り取っていく。
黒い騎士は構わず振り抜いた。
盾が横へ押し流され、パトリオットの守りが僅かに開く。すかさずボルトピストルの銃口が、露出した胸部へ向けられた。
だが、槍の石突きが下から手首を打つ。
轟音と共に放たれたボルト弾はパトリオットの肩を外れ、背後の建物へ突き刺さった。壁面が内側から爆発し、煉瓦と木片が雨のように降り注ぐ。
アスタルテスは銃を手放さない。跳ね上げられた左腕を引き戻しながら、右手のチェーンソードを振り下ろす。
パトリオットは上半身を沈め、唸る刃が兜の角を掠める。
黒い騎士の腕が伸び切った瞬間、パトリオットの槍が胸甲へ突き込まれた。
鈍い衝突音。槍先は装甲を貫けなかった。だが、そこへ込められた力までは殺せない。
アスタルテスの巨体が後方へ押し戻された。装甲靴が石畳を削り、二本の深い跡を残す。黒い騎士はチェーンソードを地面へ突き立て、数メートル先でようやく踏み止まった。
赤いレンズがパトリオットを見据える。
装甲に致命的な損傷はない。それでも、パワーアーマーを正面から後退させる一撃だった。膂力だけではない踏み込み、腰の回転、槍先へ力を集める技術。
目の前の異形は、長い戦場経験を持つ一人の戦士だった。
「戦い方を心得ているな、異形」
彼の言葉、パトリオットは盾を構え直した。
「お前も、見た目ほど、鈍くない」
アスタルテスの内心に、僅かな焦りが生まれる。
自分の今の武装はチェーンソードに弾数の限られたボルトピストルだけ。対して相手は、これだけ戦闘を繰り広げても強さの底が見えない。
同時に黒い騎士が再び地面を蹴り、再び激しい衝突が繰り返された。
パトリオットの盾がチェーンソードの繰り返される斬撃で削れていき、肩当てに槍の刺突が繰り出され、白い装甲板に亀裂が走り黒い騎士の上半身が揺れる。
「くッ……!! これでは迂闊に近づけん……!!」
周囲の遊撃隊員やレユニオン兵は武器を構えていたが、容易に援護できなかった。
二人の動きが速すぎる。
術師が狙いを定めたときには立ち位置が変わり、弩兵が射線を確保したときには盾と黒い装甲が重なっている。無理に攻撃すれば、パトリオットを巻き込みかねない。
テキサスたちも、その攻防を見つめていた。
「……あの大きさで、あんな動きができるの?」
エクシアの呟きに、誰も答えない。
パトリオットが再び盾を前へ出す。
黒い騎士はボルトピストルを腰のホルスターへ戻し、チェーンソードを両手で構えた。
両者が再び踏み込もうとした、その瞬間だった。
大気を震わせる轟音が、龍門の上空から降り注いだ。
黒い騎士とパトリオットが同時に動きを止める。
最初に変化したのは、路地を満たしていた炎だった。猛烈な風圧によって火柱が地面へ押し倒され、燃え上がっていた廃材が火の粉を撒き散らしながら吹き飛んでいく。
続いて、頭上へ複雑に張り巡らされていた電線が激しく揺れ始めた。
錆び付いた看板が壁面から引き剥がされ、瓦礫や砕けた石材が路地の奥へ転がっていく。遊撃隊員たちは武器を下げ、倒れた負傷者を庇うように身を伏せた。
「上空!」
誰かが叫ぶ。
パトリオットは盾を構えたまま顔を上げた。
薄暗い空を、巨大な影が横切る。
その姿を一目見ただけでは、飛行機械だと理解することすら難しかった。
テラで運用されている飛行車輌とは、あまりにも規模が違う。装甲に覆われた機体は一棟の建物に匹敵するほど巨大で、左右へ広がる短い主翼の下には幾つもの兵装が吊り下げられていた。
複数の推進器が炎を噴き出し、機体の周囲に黒煙と熱気を撒き散らしている。
その巨体が、スラム街の建物を掠めるほどの低空を通過した。
頭上が一瞬にして暗くなる。
直後、遅れて到達した噴流が路地を蹂躙した。窓という窓が震え、屋根へ積もっていた砂塵が滝のように流れ落ちる。軽い瓦礫や廃材は容易く宙へ舞い上がり、周囲の壁へ叩きつけられた。
「伏せて!」
リスカムが動く左腕だけで盾を支え、エクシアたちの前へ押し出す。噴流によって飛来した石片が盾へ衝突し、乾いた音を立てた。
「こんなものまで龍門に……?」
フランカが壁へ身体を預けながら機影を見上げる。
テキサスは答えなかった。
機体の表面には、龍門でもウルサスでも見たことのない文字や紋章が刻まれている。胴体と主翼を覆う装甲は深い緑色で塗装され、側面には炎を吐く竜の紋章が大きく描かれていた。
サンダーホーク・ガンシップ。
アデプトゥス・アスタルテスが惑星軌道上から戦場へ兵員を送り届けるために運用する、重装甲の強襲輸送機だった。
その装甲には無数の戦傷が残っていた。
主翼の一部は新たな装甲板で補修され、機体側面には溶接された跡が荒々しく走っている。推進器の一基からは黒煙が漏れ、機体が方向を変えるたびに不安定な振動を見せていた。
それでも飛行能力は失われていない。
サンダーホークは龍門の建物の上を旋回し、戦闘が行われている路地へ再び接近する。
黒い騎士の兜内部に、幾つもの情報が表示された。
機体構造を照合。
識別――サンダーホーク・ガンシップ。
所属戦団を示す信号は損傷によって不安定だったが、深緑の装甲と炎竜の紋章を見間違えるはずはない。
「サラマンダー……」
黒い騎士が低く呟く。
この異界へ転移して以来、初めて目にする明確な帝国の兵器だった。
チェーンソードの鋸歯が回転を続けている。それでも赤いレンズはパトリオットから離れ、上空を旋回する機体へ向けられていた。
パトリオットはその僅かな変化を見逃さなかった。
黒い騎士は、あの機体を知っている。
だが、だからといって警戒を解く理由にはならない。むしろ同じ勢力に属する増援であるならば、状況はさらに悪化したことになる。
「盾兵! 負傷者を、守れ」
パトリオットの命令を受け、遊撃隊の盾兵が上空へも備えるように陣形を変える。負傷者を中心へ集め、その周囲へ盾を並べた。
槍や弩の一部がサンダーホークへ向けられる。
しかし、地上から見上げる者たちの武器と比較すれば、上空の機体はあまりにも巨大だった。主翼の下へ取り付けられた砲塔一つだけでも、路地の一角をまとめて消し飛ばしかねない。
サンダーホークは速度を落とし、戦場の頭上で機首を持ち上げる。
幾つもの姿勢制御用スラスターが同時に点火した。
白熱した噴流が下方へ叩きつけられ、周囲の建物を激しく揺さぶる。黒煙と砂塵が渦を巻き、機体の下へ巨大な雲を作り出した。
だが、サンダーホークは高度を下げない。
下げられなかった。
戦闘が行われている路地は、人間や小型車輌が通行することしか想定されていない。左右には無計画に増築された建物が迫り、頭上には配管や電線が幾重にも渡されている。
サンダーホークが着陸できる空間など存在しない。
無理に降下すれば、主翼と周囲の建物が衝突する。路地へ機体を収められたとしても、その重量に耐え切れず地盤が崩落する可能性すらあった。
機体は屋根よりも高い位置で静止した。
推進器の轟音がスラム街全体を震わせる。
「何をするつもりだ……?」
遊撃隊員の一人が盾の陰から上空を見つめる。
サンダーホークの下部で、装甲板が動いた。
重い機械音と共に強襲用ハッチが開き、機内を照らす赤い光が薄暗い空へ漏れ出す。ハッチの向こうには、巨大な人影が立っていた。
飛び降りるつもりだ。
そう理解した瞬間、最初の人影が機体から身を投じた。
深緑の巨体が落下する。
人間とは比較にならないほど分厚い装甲。両肩を覆う装甲板は頭部よりも高い位置まで張り出し、その全身は歩兵というより、一人乗りの装甲車輌を思わせた。
トゥシャン・カール。
サラマンダー戦団第一中隊に所属する
着地と同時に、砲弾が撃ち込まれたような轟音が響いた。
石畳が陥没し、粉砕された石材と砂塵が円形に噴き上がる。衝撃が地面を走り、周囲の瓦礫が一斉に跳ねた。
トゥシャンは片膝をついた姿勢で着地していた。
装甲内部で衝撃吸収機構が作動し、関節部から白い蒸気が噴き出す。巨大なパワーフィストが地面へ触れ、その重量だけで残っていた石畳へ新たな亀裂を刻んだ。
彼はゆっくりと立ち上がる。
ただでさえ巨体を持つアスタルテスが、最重装型のターミネーターアーマーの中でも更に大型のカタフラクティ型をまとっている。全高も横幅も黒い騎士を上回り、その姿は人型の要塞に等しかった。
黒い肩当てへ刻まれた火竜の紋章が、路地の炎を受けて揺らめく。
「新手か……!?」
遊撃隊員たちが一斉に盾や武器を向けた。
トゥシャンは攻撃しない。
周囲へ鋭く視線を走らせ、黒い騎士とパトリオット、そして両者を取り囲む遊撃隊の配置を確認する。腕部へ組み込まれたヘヴィーフレイマーからは、まだ炎が放たれていなかった。
次の影が、開いたハッチから飛び降りる。
今度はインドミタス型ターミネーターアーマーに身を包んだアスタルテスだった。
ダキール・シャル。
トゥシャンとは異なる形状の深緑の装甲をまとい、片腕には多銃身式の巨大な火器が備えられている。
彼もまた、減速装置を使うことなく地面へ落下した。
二度目の轟音。
トゥシャンから数メートル離れた石畳が爆ぜ、衝撃波が砂塵を吹き飛ばす。ダキールは着地と同時に姿勢を低くし、アサルトキャノンを遊撃隊へ向けかけた。
「待て、ブラザー」
トゥシャンの声が飛ぶ。
短い制止を受け、ダキールは引き金から指を離した。だが、火器そのものは下げない。兜の赤いレンズが、盾を並べた遊撃隊と黒い騎士を交互に見据えている。
二人のターミネーターが路地へ立ったことで、戦場はさらに狭く見えた。
遊撃隊の兵士たちは息を呑む。
先ほどまでパトリオットと互角に打ち合っていた黒い騎士と同じか、それ以上に巨大な巨人。それが今、さらに二人も現れた。
しかも、どちらも黒い騎士以上に分厚い装甲と重火器を備えている。
「さ、三体も……」
エクシアが思わず呟く。
「いえ…まだです」
リスカムが上空を見たまま答えた。
サンダーホークのハッチには、もう一人の人影が立っていた。
青い装甲。
深緑と黒に染まっていた戦場へ、鮮やかな青と金の装飾が姿を現す。
右手には青白い光を纏うパワーソード。左腕には分厚いストームシールドが固定され、腰部にはプラズマガンが収められている。
肩当てには白地に青い逆さオメガの紋章。
ウルトラマリーン戦団の〈
ヴァレリウス・アウルスは眼下の戦場を一瞥した。
パトリオットを中心として展開する遊撃隊。傷ついたテキサスたち。そして、その中央で血に濡れたチェーンソードを構えている、黒い装甲のアスタルテス。
白い肩当てに刻まれた黒十字を認めた瞬間、ヴァレリウスの赤いレンズが僅かに明滅する。
彼は躊躇しなかった。
ストームシールドを身体へ引き寄せ、サンダーホークのハッチから飛び降りる。青い巨体が砂塵を切り裂きながら落下する。トゥシャンとダキールの間へ、ヴァレリウスは片膝をついた姿勢で着地した。
石畳が砕け、青い装甲の周囲から白煙が立ち昇る。
やがて彼は立ち上がった。
ストームシールドを左腕へ構え、右手のパワーソードを下げたまま、黒い騎士とパトリオットの間へ視線を向ける。
上空では、深緑のサンダーホークが推進器を轟かせながら旋回を続けている。
地上には黒、緑、青の巨人たちが立ち並んでいた。
そして戦場の中央へ、ウルトラマールの〈