パトリオットの前脚が動いた。ヴァレリウスも足を運び、再び槍の届く距離へ入った。
赤い鉱石から供給されていた力は失われている。パトリオットの踏み込みには先ほどまでの勢いがなく、左腕を塞いだ源石も、傷ついた筋肉の動きを完全には補えていなかった。
それでも、老戦士の技は衰えていない。
水平に構えられた槍がヴァレリウスの盾を避け、右脚の付け根へ伸びる。ヴァレリウスは剣を下げて穂先を受け、軌道を外側へ滑らせながら盾を押し出した。
パトリオットは残された大盾を僅かに傾け、正面から力を受けることを避ける。盾の縁同士が擦れ、火花が二人の間へ散った。
ヴァレリウスの剣が下方から返る。
青白い力場を纏った刃を受ければ、残った盾も長くは持たない。パトリオットは身体を捻って斬撃を避け、槍の石突きをヴァレリウスの胸部へ打ち込んだ。
金属同士が激突する音が広場へ響いた。
ヴァレリウスは半歩下がったが、それ以上は退かなかった。腹部の傷へ再び痛みが走る。兜内部では損傷した装甲の警告が明滅していたが、視線はパトリオットの肩と腰から離れない。
赤い鉱石を破壊されても、パトリオットは戦い続けている。巫術によって動かされていたのではない。ここに立ち、道を塞いでいるのは、最後まで自らの意志だった。
広場の左右でも、遊撃隊とロドスの前衛による戦闘が続いていた。
術式を守る必要がなくなった遊撃隊員たちは、残る兵力を前方へ集め始めている。後退した盾兵の間を槍兵が通り、負傷者を後方へ運びながら、崩れかけた陣形を組み直していた。
アイゼンヴァルトは、その一角をアーミヤと並んで支えていた。
彼のチェーンソードは停止したままだった。回転する鋸歯を使えば盾ごと敵を引き裂くことはできるが、武装解除と捕縛を目的とする戦いではあまりにも殺傷力が高い。
突き出された槍を剣の腹で受け、横へ押し流す。空いた左手で柄を掴み、遊撃隊員を盾の外へ引き出すと、アーミヤのアーツがその両腕へ絡みついた。
「武器を離してください!」
兵は槍を手放さず、身体を捻って抵抗した。
アイゼンヴァルトが穂先を踏みつけ、柄を握った腕へ剣の護拳を押し当てる。装甲に包まれた指が僅かに力を加えただけで、兵の手から槍が落ちた。
「後方へ送れ」
「はい!」
重装オペレーターが倒れかけた兵を受け取り、拘束班のいる位置まで運んでいく。次の盾兵が前へ出るとアーミヤは手を構え直し、黒いアーツを相手の足元へ伸ばそうとした。
その時、広場の中央から流れ込んできた感情が、彼女の意識へ触れた。
最初は、先ほどから感じていたパトリオットの気配だと思った。鉱石が砕かれて以降、周囲の精神を引き寄せていた力は消えている。それでも、長時間にわたって巫術の中心へ置かれていたパトリオットの感情は、残響のように広場へ残っていた。
アーミヤは戦闘の中で、その残響へ意識を向けてしまった。
視界が揺れると、盾兵の姿が薄れ、代わりに知らない大地が現れた。
雪と泥に覆われた土地。自分たちウルサス軍の前に斃れ伏す多くの人々と、その中に同じように斃れる、武器を手にするにはあまりにも若い息子。
別の光景では、一人の女性がいた。
長い戦いの中で失われた、妻の記憶。声も、表情も、触れた手の温度も、長い年月によって輪郭を失いかけている。それでも、彼女を守れなかったという痛みだけは薄れていない。
そして雪原に倒れていた、幼い少女。冷え切った小さな身体を、角を持つ巨体が抱き上げている。少女はエレーナと呼ばれていた。血の繋がりはなくとも、パトリオットにとっては最後まで守り抜くべき娘だった。
成長した彼女が、白い息を吐きながら笑っている。病に蝕まれ、身体の内側へ源石が広がっていることを知りながら、それでも仲間たちの前では立ち続けようとしている。
その姿へ重なるように、今もロドスの病棟で治療を受けているフロストノヴァへの不安と心配する気持ちが流れ込んできた。
生きていると聞いたが、どれほど傷ついているのか分からない。
自分がここで戦っている間にも、娘の命が失われるかもしれない。
それでも、彼女一人のために道を開けば、後ろにいる感染者たちを見捨てることになる。
息子を救えず、妻も守れなかった。娘にまで、自分と同じ戦いを背負わせた。パトリオットの内側では、数え切れないほどの後悔が長い年月を経ても消えずにのたうち回っていた。
「……パトリオットさん」
アーミヤの口から、無意識に名が漏れた。
目の前へ槍が迫っている。アイゼンヴァルトが横から腕を伸ばし、アーミヤの前へ割り込んだ。槍の穂先が彼の前腕装甲を擦り、火花を散らす。黒い巨人はそのまま相手の盾へ肩を打ちつけ、数歩後方へ押し返した。
「戦場で意識を逸らすな。……負傷したのか?」
アイゼンヴァルトが振り返ったが、アーミヤは答えられなかった。
兜の赤いレンズが自分へ向けられている。その視線と正面から重なった瞬間、パトリオットのものとは異なる感情がアーミヤの精神へ流れ込んできた。
彼女が意図して触れたわけではなかった。
広場を満たしていた巫術の残滓によって、普段は閉じているはずの感覚が開かれたままになっていた。彼女の身を案じてアーミヤへ意識を向けたアイゼンヴァルトの感情を、そのまま受け止めてしまった。
最初に感じたのは、敵意だった。
だが、それは目の前の遊撃隊だけへ向けられたものではない。人類へ牙を剥くあらゆる存在に対する、際限のない憎悪。交渉、憐憫、恐怖といった感情が入り込む余地を初めから切り落とし、敵と認めたものを滅ぼすためだけに研ぎ澄まされた意志。
そこには、戦場を離れた人間が持つ日常の感覚がほとんど残されていなかった。
故郷への郷愁も、安息を求める気持ちも、長い生涯の先にある穏やかな死への望みもない。次の戦場へ向かい、次の敵を見つけ、それを滅ぼす。傷を負えば立ち上がり、兄弟が斃れればその死を新たな憎悪へ変える。
長い戦争と教練の中で、人格そのものが一振りの武器へ作り替えられていた。
その中心にあるのは、〈皇帝〉への信仰だった。
遠い世界の玉座に座す存在。一度も言葉を交わしたことも、その姿を見たこともない主君へ、魂の全てを差し出すほどの絶対的な忠誠。
もし〈皇帝〉が命じるなら、自らの命も、他者の命も、惑星一つさえ迷わず差し出す。その信仰だけが敵への憎悪と共に、アイゼンヴァルトの精神を形作っている。
アーミヤは息を詰めた。
パトリオットの心には、失われた家族の姿があった。守れなかった者への後悔があり、その痛みから感染者を守ろうとする意志が生まれていた。
アイゼンヴァルトの感情からは、そうした記憶へ続く道を見つけられなかった。
何も持っていないのではない。普通の人間だった頃の記憶も、兄弟たちと過ごした時間も、彼の奥深くには残されているはずだった。しかし、それらは幾重もの教練と精神統制、戦いのために築かれた壁の向こうへ封じられ、アーミヤの力でも触れることができない。
表層へ現れているのは、信仰と憎悪だけだった。
「……アーミヤ?」
アイゼンヴァルトの声が聞こえた。彼の中にあった僅かな懸念――目の前の少女に異変が起きているという認識が、再びアーミヤへ流れ込む。
彼女は一歩後ろへ下がった。
同時に、広場の別の場所から、強く意識を引かれる感覚があった。
赤い鉱石の残骸から戻ってくるストーンファングだった。ボルトガンを片手に持ち、倒れた遊撃隊員を避けながらこちらへ向かっている。彼はアーミヤを見ていなかった。視線は周囲の盾兵へ向けられ、ロスモンティスが作った前線の隙間を確認している。
それにもかかわらず、彼の精神だけが、周囲の誰よりも鮮明に感じ取れた。
アイゼンヴァルトとは異なる、怒りと戦いを好む気質も強い。だがその奥には同胞と酒を酌み交わした記憶、獲物を追って雪原を駆けた喜び、焚き火を囲みながら古い英雄の物語を語った夜が残っている。
氏族と群れを重んじる精神。勇敢な敵へ敬意を払い、弱者を傷つける者へ怒り、戦いの後には仲間の生還を喜ぶ。過酷な改造と長い戦争を経ても、アイゼンヴァルトより遥かに人間へ近い感情が息づいている。
だが、そのさらに奥に何かがあった。
記憶に似ているが、パトリオットの過去を見た時とは感覚が違った。
隠されておらず、むしろアーミヤが触れることを
「待て、何を見ている。私の声が聞こえないのか」
アイゼンヴァルトの声が遠ざかるが、アーミヤは答えなかった。意識がストーンファングへ引き寄せられていく。
触れてはいけない。
そう思った時には既に遅かった。開かれていた道の向こうへ、アーミヤの精神が触れた。
直後、何かが彼女を見返した。
ストーンファングの記憶ではない、彼の魂へ刻みつけられた傷。その奥に残り続けていた残響が、触れてきたアーミヤの意識を捉え、一気に内側へ流れ込んできた。
空が赤く、大地は見渡す限り血に染まり、焼けた金属と肉の臭いが充満している。
装甲を血で染めた戦士たちが、巨大な斧と剣を振るっていた。彼らは倒れた者の身体を踏み砕き、飛び散る血を浴びながら笑っている。引き裂かれた肉体、砕ける骨、地面へ積み上がる頭蓋骨。その全てが彼らにとっては勝利の証であり、捧げ物だった。
敵も味方も関係ない。血が流れれば歓喜し、誰かが苦痛の声を上げるほど、彼らの動きは激しさを増していく。鎖に繋がれた武器が肉体へ食い込み、折れた骨が血と共に地面へ散った。
その光景の中心で、現実には存在しないほど巨大な「何か」が立っている。
アーミヤはその姿を見上げようとした。
見てはならない――自分の中から警告が上がるが、視線を外すことができなかった。
赤い霧の向こうで、無数の目が開く。炎の中から伸びた影がアーミヤの意識へ触れ、彼女が何者なのかを確かめようとする。
血塗れの戦士たちが武器を掲げた。
幾千、幾万もの声が重なり、一つの咆哮となって世界を揺らす。
――血の神に血を!
――髑髏の玉座に髑髏を!
アーミヤは絶叫した。アーツユニットがひび割れる。両手で頭を押さえ、その場へ膝をついた。黒いアーツが制御を失い、彼女の周囲から不規則に噴き出す。
「アーミヤ!?」
ドクターの声が飛んだ。
アイゼンヴァルトは即座に彼女の前へ立ち、迫っていた槍をチェーンソードで弾いた。遊撃隊員の胸へ蹴りを入れて後退させると、アーミヤへ顔を向ける。
「何が起きた!」
離れた位置にいたストーンファングも、彼女の絶叫を聞いた瞬間に動いていた。
アーミヤが自分へ意識を向けた時、彼の中にも異物が触れたような感覚があった。戦場で敵の視線を察するものとは異なる。肉体ではなく、魂の奥へ指先を差し込まれたような感触だった。
ストーンファングはボルトガンを腰部へ戻し、遊撃隊員の間を強引に抜けた。
「道を開けろ!」
ストーンファングは倒れた盾を飛び越え、アーミヤの前へ膝をついた。装甲に覆われた両手が彼女の肩を掴む。力を加えれば骨ごと砕きかねない指は、身体を支える最低限の強さに抑えられていた。
「何をした!? 俺の中へ何をした、嬢ちゃん!!」
兜の音声装置を通した怒声に、アーミヤの耳が大きく震えた。
「わ、分かりません……記憶が、何かが、急に……!」
「俺の精神を覗いたのか!!」
「覗くつもりは……ありませんでした。向こうから、開いているみたいに……それで、触れたら……」
アーミヤの呼吸は乱れ、瞳の焦点も定まっていない。
ストーンファングの手に、さらに力が入った。
「何を聞いた」
「え……?」
「その様子、何か悍ましいものを見聞きしたのだろう。何を聞いた!?」
アーミヤは答えようとしたが、喉から掠れた息しか出なかった。頭の奥ではまだ幾千もの声が反響している。理解したくないのに、一度耳へ入った言葉が何度も同じ形で繰り返されていた。
「血の……神に、血を……」
ストーンファングの身体が止まった。
「それから……髑髏の、玉座に……髑髏を……」
その言葉を聞いた瞬間、三人のアスタルテスが同時に反応した。
「――
アイゼンヴァルトの絶叫が広場へ響いた。
彼は遊撃隊員へ向けていたチェーンソードを引き、アーミヤの方へ身体を向ける。先ほどまで彼女の身を案じていた気配が消え、兜の赤いレンズが射撃照準器のように少女を捉えた。
中央では、パトリオットの槍がヴァレリウスの盾へ向かっていた。
ヴァレリウスは刺突を外側へ弾くと、ストームシールドをパトリオットの大盾へ打ちつけた。互いの身体が離れた瞬間、装甲の補助機構を最大出力で作動させ、後方へ跳ぶ。
青い巨体が戦場の中央を越え、アーミヤの近くへ着地した。石畳が装甲靴の下で割れ、周囲へ破片が散る。
「その言葉を理解しようとするな!」
ストーンファングがアーミヤへ怒鳴った。
「意味を探るな! 見たものを思い返すな! 声も、姿も、記憶へ留めようとするな!!」
「でも、頭の中から……消えなくて……!」
「忘れろ! どれほど気になろうと、二度と触れるんじゃない!!」
ヴァレリウスが二人の前へ歩み寄った。
手にしたパワーソードの力場は、なお青白い光を放っている。ストーンファングは彼を止めなかった。アイゼンヴァルトも、剣を構えたまま道を空ける。
アーミヤが顔を上げた時、パワーソードの切っ先が胸元へ向けられていた。刃との距離は一歩にも満たない。
「ヴァレリウスさん……?」
周囲のロドスオペレーターに動揺が走った。
重装オペレーターが盾を持ち上げ、射撃隊の銃口が一斉にヴァレリウスへ向く。負傷者の搬送を行っていた者まで足を止め、何が起きたのか理解できないまま武器へ手を伸ばした。
ロスモンティスの戦術装備が宙へ浮かぶ。四枚の巨大な金属板がアーミヤの周囲へ集まり、そのうち二枚がヴァレリウスを挟める位置へ移動した。少女の瞳には困惑と、隠しきれない怒りが浮かんでいる。
「………剣を下ろして」
ロスモンティスが告げた。
「全員、撃つな!」
ドクターの命令が飛んだ。その声で同士討ちこそ止められたが、誰も武器を下ろそうとはしなかった。ドクター自身もアーミヤへ近づこうとし、アイゼンヴァルトの腕によって進路を塞がれる。
「……退いてくれ」
「拒否する」
「アーミヤに、何をするつもりだ!」
遊撃隊も前進を止めていた。つい先ほどまで自分たちと戦っていた者たちが、突然武器を互いへ向けている。盾兵は崩れた陣形を立て直しながらも攻撃へ移れず、射手たちも弩を構えたまま指示を待っていた。
パトリオットは槍を持ち上げた姿勢で、青い戦士とアーミヤを見ている。
「……コータスの少女よ」
ヴァレリウスの声が低くなる。
それまで彼女へ向けていた穏やかさは消えていた。目の前にいる者が守るべき仲間なのか、今すぐ処分しなければならない脅威なのかを見定める戦士の声だった。
「今、何者かの声が聞こえるか」
「……いいえ」
「自分のものではない感情、衝動、あるいは命令を感じるか」
「感じません」
「血を流したいと思うか。他者を傷つけることへ、以前にはなかった喜びを感じるか」
「違います!!」
アーミヤは震えながらも、ヴァレリウスから目を逸らさなかった。
「そんなことは思っていません。頭の中に言葉が残っています。でも、従いたいとは思いません。あれは……怖くて、気持ちが悪くて……」
「その嫌悪すら、偽装されている可能性がある」
ヴァレリウスは剣を下ろさなかった。彼の視界では、アーミヤの心拍、体温、瞳孔の変化、呼吸の乱れが記録されている。恐怖を示す反応は本物に見える。それでも、混沌が肉体の反応まで偽装し、本人に汚染を自覚させない例を、彼は知っていた。
背後から足音が迫った。
後方及び側面の戦線を維持していた部隊の一部が、広場へ到着したのだ。Aceは残存兵力と退路を守るため後方へ留まり、ケルシーとブレイズが増援のオペレーターを率いて前線へ出てきていた。
「ドクター、状況は――」
広場へ入ったブレイズの声が止まった。
最初に目へ入ったのは、地面へ蹲るアーミヤだった。その前にはストーンファングが膝をつき、ヴァレリウスのパワーソードが少女の胸へ向けられている。周囲ではロドスとアスタルテスが互いへ武器を向け、少し離れた場所にはパトリオットと遊撃隊が立っていた。
「……なに、これ」
ブレイズの表情から、戦場へ到着した時の僅かな笑みが消えた。
「ヴァレリウス。今すぐにその剣を下ろせ」
ケルシーの声にも、普段の冷静さを保ちきれない硬さが混じっていた。
だが、ヴァレリウスは振り返らなかった。
その反応を見た瞬間、ケルシーの背中から黒い物質が押し出された。脊髄の内側から直接引き出されるように、黒と緑の鉱物質が空中へ伸びる。幾つもの結晶が組み合わさって爬虫類に似た頭部と胴体を形作り、その左右から、鎌のように鋭い四本の鈎爪が展開した。
後ろ脚は存在しない。長い尾を揺らしながら宙へ浮かんだ怪物は、ケルシーの背後からヴァレリウスを見据え、低く唸った。
Mon3trの身体を走る緑色の光が強まり、四本の刃が攻撃に移れる角度へ開いていく。
ブレイズはチェーンソーを起動した。
「アーミヤから離れろ!!」
彼女が駆け出す。その進路へ、アイゼンヴァルトのボルトピストルが向けられた。黒い銃口がブレイズの胸部を捉える。
「止まれ」
ブレイズの足が石畳を擦った。チェーンソーを両手で握ったまま、アイゼンヴァルトを睨みつける。
「退きな。今の私は、警告を二度する気分じゃない」
「次の一歩を踏み出せば撃つ」
「やってみなよ」
「ブレイズ、止まれ!」
ケルシーの声が二人の間へ入った。Mon3trを呼び出した本人も、既に攻撃を命じる寸前まで来ていた。それでも、ここで一人が武器を振るえばロドス、アスタルテス、遊撃隊を巻き込む乱戦へ発展することを理解している。
ブレイズは歯を食いしばり、その場へ踏み止まった。
「……説明しろ、ヴァレリウス。何故、アーミヤへ武器を向けている」
ケルシーが告げる。
「彼女が触れてはならない存在を認知した可能性がある」
「何を根拠にしている」
「ストーンファングの精神へ接触し、我々の世界に存在する、認知そのものが危険となる存在の言葉を聞いた。彼女自身がその言葉を口にしている」
ケルシーの瞳が僅かに動いた。
「……アーミヤ」
呼ばれた少女が、ゆっくりと顔を向ける。
「ストーンファングの記憶を見たのか」
「分かりません……」
アーミヤは自分の肩を抱くように両腕を回した。
「最初は、記憶だと思いました。でも、違います。あれはストーンファングさんが見ていたものじゃなくて……もっと悍ましい何かが、私に見せようとしていたような……」
ストーンファングが低く唸った。ヴァレリウスは剣先を動かさないまま、その言葉を検討していた。
ストーンファングは第一次アルマゲドン戦役において、アングロンとその軍勢が現実へ侵入した戦場にいた。混沌の力が大地を覆い、悪魔と接触した生存者がその記憶を理由に処分の対象となった戦い。
彼の精神には、その時に受けた傷が残っている可能性がある。もし、ストーンファングの魂が本人にも察知できない形で侵食されているならば、アーミヤはそこへ触れたことになる。
あるいは、精神へ残された傷を起点として、遠い領域にいる何者かがアーミヤを認識した。混沌が存在しないはずのテラへ、彼女を通じて手を伸ばし始めた可能性も否定できない。
しかし、アーミヤの言葉自体が既に偽りである可能性もあった。
混沌へ汚染された者は、自らが正常であると信じたまま周囲を欺く。自分の意思で話しているつもりでも、その思考を導いている存在が別にいることすらある。
たが、ヴァレリウスはその推測を口にしなかった。今ここで混沌の性質を詳しく説明すれば、それ自体が周囲の者へ新たな知識を与える。理解させるための説明が次の汚染経路となることもあり得た。
「……認知してはならない存在。以前、ヴェイルとストーンファングが話していた悪魔と呼ばれるものか」
ケルシーが言葉を繰り返す。
「そうだ」
「その表現では判断できない。宗教上の罪や信仰上の敵ではなく、観測可能な現象として説明してほしい」
「比喩ではない!!」
ストーンファングが立ち上がった。その怒声に、近くのオペレーターが思わず武器を持ち上げる。
「奴らは実在する! 言葉で人を狂わせ、記憶から魂へ入り込み、現実の形さえ捻じ曲げる!! ただの思想でも、信仰に反する者へ貼りつける名でもない!!」
「ならば、侵入経路と感染条件を説明しろ」
「説明を知ることが、奴らへの道を開くのだ!」
「知らなければ対策も隔離も不能だ」
「知ろうとした者から堕ちる!! それが分からないのか!?」
ケルシーとストーンファングの間へ、Mon3trの低い唸りが続いている。
アーミヤは二人の声を聞きながら、震える呼吸を整えようとしていた。ドクターがもう一度近づこうとしたが、ヴァレリウスの剣が残っているため、踏み込むことができない。
ケルシーはアーミヤへ視線を戻した。
「他にも、誰かの精神へ触れたか」
アーミヤの身体が小さく強張った。
「……はい」
「誰だ」
「最初に、パトリオットさんの記憶を見ました」
広場の空気が変わり、遊撃隊員たちが一斉にアーミヤへ顔を向ける。パトリオットも、槍を構えたまま動きを止めていた。
「何を、見た」
低い声が広場の反対側から届いた。
アーミヤは迷った。本人の許可なく触れてしまった記憶を、周囲にいる者の前で口にしてよいはずがない。それでも、何も答えなければ、目の前で武器を向ける者たちの疑念は深まる。
「ご家族のことです。息子さんと、奥様。それから……幼い頃のフロストノヴァさんを」
アーミヤはパトリオットを見て、パトリオットの槍が僅かに下がった。
「それだけではありません。救えなかったことを、ずっと後悔していることも。フロストノヴァさんが今どうなっているのか、怖いくらい心配していることも……感じました」
パトリオットは答えなかった。遊撃隊の兵たちも、すぐには動けなかった。家族について自ら語ることのない老戦士。その胸中を、初めて会ったはずの少女が言い当てている。
ケルシーの表情に、困惑と驚きが混じった。
彼女はアーミヤが他者の感情へ触れ得ることを知っている。パトリオットの記憶や感情を感じること自体は想定の範囲内だった。だが彼女の〈権能〉がテラ外の存在であるアスタルテス達にまで及ぶというのは、あまりに予想外の事態だった。
アーミヤの精神に異常が生じたのか、パトリオットを中心に組まれていたウィンディゴの巫術が彼女の力へ影響したのか。あるいは、アスタルテスを通じた世界の繋がりがイレギュラーをもたらしたのか。
ケルシーは何も答えず、思考を巡らせていた。
「……隔離しろ」
ストーンファングが突然告げ、ブレイズが彼を見る。
「何を言ってるの?」
「嬢ちゃんだけじゃない。俺もだ」
ストーンファングは自らの胸部装甲へ拳を当てた。
「俺の中に、アルマゲドンから持ち帰った何かが残っている可能性がある。それが記憶なのか、傷なのか、奴らが仕掛けた楔なのかは分からん。だが嬢ちゃんが俺を通じて奴らへ触れたのなら、俺も安全とは言えぬ」
「……ストーンファング」
ヴァレリウスが名を呼ぶ。
「俺と嬢ちゃんを分けて閉じ込めろ。互いへ接触できず、外とも話せない場所がいい。灰色の騎士に調べさせるんだ。問題がないと確認されるまで出すな」
「アーミヤを隔離することは認められない。本人に異常があるという証拠はない、彼女はただ混乱しているだけだ。今必要なのは治療と検査であって、危険物のように閉じ込めることではない」
ドクターが即座に答えた。
「異常が表へ出てからでは遅い」
「だからといって、何が起きたかも分からない状態で拘束するのか!」
「混沌の存在が確認された」
ヴァレリウスが二人の間へ言葉を置いた。
「それ以前と同じ基準で扱うことはできない。我々はこの世界のアーツ、種族的差異、鉱石病を未知の現象として受け入れ、即時の危険が確認されない限り、ロドスの判断を尊重してきた」
パワーソードの切っ先はアーミヤへ向けられたままだった。
「だが、混沌については譲歩できない。僅かな見落としが一人の精神では収まらず、都市、惑星、さらにその先まで破滅させる。アーミヤが無事であることを願う気持ちと、無事であると確認する必要性は分けて考えねばならない」
「……確認のためなら、ロドスでも協力できる。君たちだけの基準でアーミヤの処遇を決めることは認めない」
ドクターが答える。
「ならば、汝らの検査で混沌を見つけられるのか」
ドクターは答えられなかった。ロドスには精神干渉やアーツによる異常を調べる手段がある。鉱石病に起因する神経症状にも対応できる。
しかし、アスタルテスがこれほどまでに恐れる存在については、名前と僅かな説明しか知らない。検査結果に異常がなくとも、それを安全の証明としてよいのか判断する知識がなかった。
その沈黙の中で、パトリオットが動いた。
老戦士はアーミヤを見つめている。目の前の少女が他者の感情だけでなく、深く隠された記憶へ触れた。息子も妻も、幼いエレーナも、レユニオンの誰にも詳しく語ったことはない。
心を読み取る力、黒いアーツ、周囲の者を引き寄せ本人さえ知らない過去へ触れる少女。
「……後継者は、いたのか」
パトリオットが呟き、アーミヤが顔を上げる。
「テレシスは、嘘をついた。魔王の力は、失われていなかった」
パトリオットの声は遊撃隊へも届いた。
「ならば、あの予言も、まだ生きている。最後の、純血のウェンディゴは。魔王の手によって、死ぬ」
傷ついた喉から重い息が漏れる。槍の穂先がゆっくりと持ち上がった。
「運命には、逆らえぬと、いうのか」
アーミヤは何を言われているのか理解できなかった。ケルシーの瞳が鋭くなり、ドクターもパトリオットへ顔を向ける。遊撃隊の中では動揺が広がり、魔王という言葉が低い囁きとなって交わされた。
「……戦闘は休止だ。現在発生した事態を確認するまで、これ以上の交戦は行わない。汝の兵にも武器を収めさせろ」
ヴァレリウスが告げた。剣先はアーミヤへ向けたまま、声だけをパトリオットへ送る。
「認めぬ」
パトリオットは即座に答えた。
「諸君らの内に、何が起きようと。私の戦いを、止める理由には、ならない」
「このまま戦えば、敵味方双方が制御できない危険を生む可能性がある」
「それも、諸君らの、事情だ」
パトリオットは一歩を踏み出そうとした。
その時、ヴァレリウスの兜内部へ優先通信の表示が現れた。
『全員、その場から動くな』
ヴェイルの声だった。主力部隊の共通回線へ直接接続されている。普段の冷静さは保たれていたが、その奥には鋭い緊張が混じっていた。
『一瞬だけ混沌の気配を感知した。極めて微弱だが、見誤るものではない。何が起きた』
ヴァレリウスが答えるより早く、ストーンファングが通信へ入った。
「コータスの嬢ちゃんが俺の精神へ触れた。そこで何かを見たらしい」
『……何を見た』
「俺にも分からん。アルマゲドンで刻まれた記憶か、傷に残ったものか、それとは別の何かだ。嬢ちゃんは血の神を称える言葉を聞いた」
通信の向こうで沈黙が生じた。風の音も、装甲が動く音も聞こえない。
『……おかしい』
やがてヴェイルが言った。
「何がおかしい」
『彼女がその言葉へ触れ、私が反応を感知したのであれば、混沌との接続が一時的に成立した可能性はある。だが現在、チェルノボーグ内部のどこにも混沌の気配は存在せぬ』
ヴァレリウスの赤いレンズが明滅した。
「完全に消えたのか」
『ああ。先ほどの反応も、外から何かが侵入したというより、閉じられた記憶が一瞬だけ開いた時の残響に近い。だが混沌がこの世界へ入り込もうとして失敗したのか、痕跡を隠しているのかは判断できぬ』
「アーミヤ自身は」
『遠隔で確認できる範囲では、彼女の魂へ表立った変質はない。悪魔の憑依、混沌神への接続、魂の一部が置換された兆候も感じ取れぬ』
その言葉を聞き、ヴァレリウスの剣先が僅かに下がった。
『ただし、安全を保証したわけではない。本人の傍で調べる必要がある。ストーンファングも同様だ。二人を互いから離し、精神的な接触を禁じよ。私は直ちにそちらへ向かう』
ヴェイルが続ける。
「現在地は」
『主力から東へ二街区。数分で到着する』
「了解した。到着まで二人を監視下へ置く」
『彼女へ、先ほど聞いた言葉を二度と口にさせるな。周囲の者も意味を探ろうとするな』
通信が切れた。
ヴァレリウスは数秒間アーミヤを見つめた。彼女は震えている。視線に不自然な動きはなく、表情に敵意も恍惚も見られない。ヴェイルも、現時点で明確な汚染は感じ取れないと判断した。
パワーソードがゆっくりと下がる。
切っ先はアーミヤの胸元から外れ、石畳へ向けられた。周囲のオペレーターたちから、押し殺していた息が漏れる。それでも、ヴァレリウスは力場を解除せず、剣を鞘へ戻そうともしなかった。
「ドクター、アーミヤをこの場から動かすな。ヴェイルが到着するまで、誰とも精神的な接触を行わせるな」
「彼女の傍には私がいる」
「構わない。ただし、異変があれば即座に離れろ」
ドクターは答えず、アイゼンヴァルトが道を空けた瞬間にアーミヤの元へ駆け寄った。膝をついて肩へ手を置き、呼吸と意識の状態を確かめる。
ロスモンティスの戦術装備もアーミヤを囲む位置へ下がったが、ヴァレリウスへ向けた一枚だけは残されていた。ケルシーもMon3trを消さないまま、二人の傍へ歩み寄る。彼女はアーミヤの瞳と脈拍を確認しながら、ヴァレリウスへ視線を向けた。
「ヴェイルの検査には立ち会う。結果と判断基準も全て説明してもらう」
「認めよう」
「アーミヤへ危害を加える判断をする場合も、先に私たちへ伝えろ」
「即時の危険が生じない限りは従う」
完全な約束ではなかった。ケルシーはそれ以上を求めず、アーミヤの診察へ意識を戻した。
ヴァレリウスはパトリオットへ向き直った。老戦士の槍は、まだ下ろされていない。魔王の後継者という存在を目の前にし、自らの死に関わる予言が現実となった可能性に直面しても、その構えは崩れていなかった。
「……パトリオット」
「戦いは、終わっていない」
「承知している」
ヴァレリウスはストームシールドを下げた。
「だが、僅かな時間が欲しい。彼女に起きたことを確認するまで、この戦いを止めてもらいたい」
先ほどの一方的な休止命令とは違っていた。敵へ退くことを要求する命令ではなく、刃を交えた戦士としての頼みだった。
パトリオットはヴァレリウスを見た。
自らの傷を顧みず正面から槍を受け、遊撃隊を殺すことより生かして再び話す道を選んだ戦士。その男が今、剣を下げて自分へ時間を求めている。その背後には魔王の力を継ぐかもしれない少女がいる。
パトリオットは槍の石突きを路面へ置いた。
「……灰色の戦士が、来るまでだ」
「十分だ」
「それ以上は、待たぬ」
「約束しよう」
パトリオットが片手を上げる。遊撃隊の盾兵が前進を止め、射手たちも弩を僅かに下げた。武器を手放す者はいなかったが、広場を満たしていた戦闘音は途絶えた。
ロドス側もドクターの指示を受け、前衛を維持しながら負傷者の回収を始める。
つい先ほどまで敵だった者たちが数歩の距離で互いを警戒しながら、倒れた仲間をそれぞれの側へ運んでいく。その中央には、砕かれた赤い鉱石と戦いとは別の理由で武器を向け合ったアスタルテスとロドスが残されていた。
ブレイズは暫く動けなかった。ヴァレリウスの剣が下がり、アーミヤの傍へドクターとケルシーがついたことで、ようやく張り詰めていた身体から僅かに力が抜ける。
しかし、納得したわけではなかった。チェーンソーの駆動を止め、ストーンファングの方へ歩き出す。
「説明して」
ストーンファングは彼女を見た。
「……できん」
短い返答だった。ブレイズの足が止まる。
「……今、何て言った?」
「説明はできんと言った」
「君が?」
ブレイズは信じられないものを見るように、狼の毛皮を纏った巨人を見上げた。
ロドスへ来てからのストーンファングは、自らの世界について尋ねられれば、多くのことを話していた。戦団の暮らし、フェンリスの獣、酒、武器、戦いの作法。ヴェイルが口を閉ざす場面でも、彼は笑いながら自分の知る範囲を語っていた。
その彼が、今は一切の説明を拒んでいる。
「アーミヤが何を見たのかも?」
「聞くな」
「聞くなで済むと思ってるの? あの子は君の中を見て倒れた。ヴァレリウスは殺す寸前まで剣を向けた。理由も知らずに放っておけるわけないでしょ!?」
「放っておけとは言っておらん。灰色の騎士に任せろ」
「ヴェイルが何を調べるのかも分からない。君たちだけで話を決めて、アーミヤを危険だと判断されたら、今度は何をするつもり?」
ストーンファングは答えなかった。ブレイズは彼の脇を抜け、アーミヤの方へ向かおうとした。
「それなら本人に聞く。何を見たのか、何をされたのか――」
金属の擦れる音がした。
ストーンファングが腰からパワーアックスを抜いたのだ。破壊力場は起動していないが、分厚い片刃の斧がブレイズの前へ下ろされ、進路を完全に塞いだ。
「……そこを退いて」
「退くわけにはいかん」
「私とやるつもり?」
「貴様を傷つけるつもりはない」
ストーンファングの声から、普段の豪快さは失われていた。
「なら、斧を下ろして」
「頼む。ここから先へ来るな」
ブレイズは目を細めた。
ストーンファングは斧を構えながらも、戦う姿勢を取ってはいなかった。刃は彼女へ向けられず、地面へ下げられている。それでも、どれほど押しても退かないという意志が、その巨体から伝わってくる。
「知ろうとするな。嬢ちゃんが見たものを聞くな。言葉の意味を考えるな。何故俺たちが恐れているのか、それすら詳しく知ろうとするな」
ストーンファングが言った。
「そんなことを言われて、納得できると思う?」
「納得しなくてもいい。臆病者と罵っても構わん。だが、今だけは言うことを聞け」
ストーンファングは恐れていた。悪魔の軍勢へ自ら突撃し、敵の血を浴びながら笑うはずの戦士が、アーミヤの見たものについて語ることさえ恐れている。それは敵への恐怖というよりは、根源的な何かがテラへ来ることを恐れているようだった。
「貴様を傷つけたくない。だから頼む。知ろうとするな。考えようとするな。あれに自分から近づくような真似だけはするな」
ストーンファングはもう一度言った。
ブレイズは何も言えなかった。周囲にいたオペレーターたちも、武器を握ったまま動きを止めている。
これまでアスタルテスは、ロドスの方針へ自分たちを合わせていた。
敵であっても投降すれば生かす。負傷者へ治療を行う。未知のアーツや種族的な差異を、それだけで脅威と判断しない。彼ら自身の世界では当然ではない考え方であっても、ここがテラであり、ロドスの者たちと共に行動しているという理由から受け入れていた。
その譲歩が、どれほど意識的に行われていたのか。
今、目の前にいる三人の変貌によって、ロドスの者たちは初めて理解した。
アイゼンヴァルトは、先ほどまで肩を並べて守っていたアーミヤを、混沌という言葉一つで脅威として捉え直した。
ヴァレリウスは彼女を気遣っていた記憶を捨てたわけではない。それでも、その情を押し退けて剣を向けた。
ストーンファングは、自分自身が汚染されている可能性を認め、隔離を求めた。そして、自分を信頼し始めていたブレイズにまで斧を向け、知識から遠ざけようとしている。
彼らが恐れているものは、強大な敵というだけではなかった。
存在を知ること。名を覚えること。意味を考えること。
それだけで人を破滅へ近づける何かが、彼らの世界には実在している。
そしてアーミヤは、その何かと接点を持ってしまった可能性がある。
ブレイズはアーミヤを見た。ドクターに支えられ、ケルシーの診察を受ける少女は、まだ両手で頭を押さえている。長い耳は力なく垂れ、唇は何かを堪えるように固く閉じられていた。
彼女を心配する気持ちは変わらない。同時に、アーミヤが何を見たのか知りたいという思いが、自分の中にあることにも気づいた。その好奇心すら、目の前の巨人たちは危険だと告げている。
やがてブレイズはチェーンソーから片手を離したが、完全に武器を下ろすことはできなかった。ストーンファングも斧を収めない。
少し離れた場所では、Mon3trがケルシーの背後へ浮かび、四本の鈎爪を開いたままアスタルテスを監視している。ロスモンティスの戦術装備も、ヴァレリウスへ向いた一枚だけは位置を変えていなかった。
先に言っておくと、アーミヤが混沌堕ちすることはありません。