あなたのバスケットボールは何色か。   作:バレテーラ

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 なんか青箱と黒バスのクロスオーバーってちょいちょいあるけど、こういうのないよなって。



もういいや

 

 

 

 この世に生まれて十五年……。

 俺の人生の半分はバスケで占められていると言っても過言じゃない。

 元々母親がバスケをやっていたこともあって物心つく前からボールには触っていたし、小学生になる頃にはミニバスも始めて、もっぱら友達と遊ぶよりバスケをやっていた。

 そんなバスケ馬鹿の俺は当然ながら中学に上がればバスケ部に入部した。

 帝光中学バスケットボール部。

 全国でも屈指の超強豪校。

 ミニバスとは違う本格的なバスケに、強豪ゆえの濃密な活動にワクワクした。……入学早々インフルに罹って出鼻を挫かれたが。

 出遅れて入部した俺を待ち構えていたのは大勢の部員を選別するための実力テスト。

 ミニバスではそれなりに活躍していたし、他人よりは体力に自信があったこともあって、なんとか一軍に入ることが出来た。

 ……そういえば、あの不良も同じタイミングで入ったんだっけ。

 さらに一軍に入ると俺の特性を考慮した上でスタメン入りすることに。

 といっても、とにかく動き回って相手チームの体力を消耗させたり撹乱目的だったりと、いわゆる陽動要員という立ち位置だったわけだが。

 それでも文句なんてなかった。

 チームの役に立てるなら、勝利に貢献出来るなら、そんなことは些細なもので、実際一年目にして全中*1優勝を果たしたときは立場とか先輩後輩とか関係なくメンバー全員で喜んだ。

 それから新しい仲間が加わって……。

 キツい練習をこなして、放課後はみんなで遊んだりして、さらに全中二連覇を果たして。

 本当に楽しい日々だった。

 充実した毎日だった。

 

 けど、それはいつまでも続かなかった。

 

 何が原因かなんてみんな理解ってる。

 アイツらの才能が開花したからだ。

 あの監督がいなくなったからだ。

 チームがただの個人技になったからだ。

 全力も本気になることもなく、勝っても誰も喜ばない、ただ淡々とこなすだけのバスケ。

 それどころか、仲間内で誰が一番点を取れるかなんて “遊び” に興じる始末。

 ……それなのに全中三連覇なんて快挙を成し遂げてしまって。

 その結果、アイツが「バスケはもうやめます」なんて言い出して。

 誰よりも苦悩し、誰よりも努力し、誰よりも影でチームを支えてきたアイツがそんなことを言うほど追い詰められてしまっていた。

 多分、そこで俺の箍も外れてしまったんだと思う。

 アイツらで事足りるようになってからは俺も試合に出ることがめっきりなくなって、やっていることといえば1on1でアイツらの練習相手としてボコボコにされることくらい。

 試合に出ることもなく、ただの経験値として扱われて、勝っても喜ばず、あげく仲間が「やめる」だなんて……。

 そんなバスケのどこに楽しみを見出せって言うんだか。

 考え出したら止まらなかった。

 『また誰かがやめるのを見るのか』『どうせアイツらが勝利をもぎとっていくんだ』『楽しくないバスケに価値なんてない』『高校バスケ界はアイツらが中心になる』『これ以上続けても辛いだけ』

 そうやってバスケを続ける理由すら見出せなくなって。

 だから、

 

 俺も「もういいや」って。

 

 ちょうど中学卒業と同時に父親の仕事の都合で引っ越すことになった。

 今までバスケしかやってこなかったから、新しいことを始める良い機会だったんだと思う。

 

 

 そうして俺、茶城(ちゃしろ)颯斗(はやと)はバスケをやめることにしたのだ。

 

 

 

 *

 

 

「あ、そうそう。今日私の友達が来るからよろしくね」

 

「えぇぇ……」

 

 残すところ卒業式のみとなって、早々に引っ越してきた新居で母さんから突然そんなことを言われた。いや、本当に急すぎる。

 

「そういうのは早く言ってくれよ。じゃあテキトーに外でぶらついてくるから……」

 

「何言ってんの。あっちは娘さんも連れてくるんだから、あんたも挨拶くらいしていきなさい」

 

「なおさら嫌なんだけど」

 

 なんて家庭内カーストの頂点の母さんの前で俺の意思が汲まれることはなく、不本意ながら家に残ることに。

 まだ片付けていない荷物の荷解きや掃除なんかをして時間を潰すこと一時間。

 

 ピンポーンッ

 

「はーいっ。颯斗はお茶淹れといて」

 

「へいへい」

 

 インターホンが鳴ってぱたぱたと母さんが玄関に向かう。

 息子使いが荒いお母さまだこと。

 内心嘆息してながらお茶の用意をしていると、母さんがお客を連れて戻ってくる。

 

「どうぞどうぞ〜。まだ引っ越してきたばっかりで面白みはないけど、二人ともくつろいで〜」

 

「お邪魔しまーすっ」

 

 最初に顔を出したのは母さんと同い年くらい(けど母さんより美人)な女性。

 

「おじゃまします」

 

 それに続いて入ってきたのは娘さんと思われる美少女だった。

 見た感じこっちも俺と同い年くらい、か?

 

「……?」

 

「……あ」

 

 そうやって不躾に眺めていると視線に気付いたのかこっちに気付いて目が合ってしまう。

 

「「……」」

 

 しかも、お互い何を話すわけでもなく見つめ合うだけ。

 き、気まずい……。

 

「ちょっと、千夏ちゃんが可愛くて見惚れちゃうのはわかるけどさっさとお茶を淹れちゃいなさい!」

 

「そ、そんなんじゃないって!?」

 

「あら良かったわね千夏、可愛いですって〜」

 

「もうっ揶揄わないでよお母さん!」

 

 母さんたちにおちょくられつつ、お茶を用意して四人でテーブルにつく。

 

「それじゃあ改めて、久しぶりね春香〜。あ、こうして直接会うのは初めてよね。こっちは息子の颯斗」

 

「……ども」

 

 ドムっ!

 

 ぉお” お” お” お” ッッ……!!

 あまりに無愛想な挨拶だったからか隣にいた母さんから肘鉄を喰らう。

 痛みに悶絶しながら改めて「……ちゃ、茶城颯斗です」と自己紹介をするとそんな光景が可笑しかったのか二人はくすっと笑われた。

 

「ふふっ。颯斗くんのお母さん、楓ちゃんと仲良くさせてもらってる鹿野春香です。それでこっちが娘の……」

 

「鹿野千夏です。よろしくね?」

 

 やっぱり親娘なのか咎めることも不機嫌そうな顔もすることなく笑ってくれるお二人さん。こんなとこ見せて申し訳ないですハイ。

 ちなみに千夏さんは俺の一個上の先輩らしい。

 どうりで雰囲気が落ち着いているというか余裕があるというか……。

 とまあ、そんな感じで自己紹介をし終えると、新居に対する感想だったり昔の思い出話なんかに花を咲かせていた。

 大体が母さんたちが楽しんでいるだけだったが。

 そんな時だった。

 ふと春香さんが何かを思い出したように話をふってくる。

 

「そうだ! 颯斗くんは春から栄明に入学するのよね? なら、ちょうどいいから千夏に案内してもらったらいいわよ!」

 

「え」

 

「そうねぇ……。この子ったら入試で行ったきりみたいだし、千夏ちゃんお願いしてもいいかしら?」

 

「私は大丈夫、ですけど」

 

「ちょ」

 

 春香さんの思わぬ提案からとんとん拍子に話が決まっていく。

 いや、いやいや、急すぎるでしょうが。

 なんて俺の困惑を他所に母さんがいつの間に用意していたのか、部活で使っていたバッシュ*2の入ったカバンを「ほらっ」と渡してくる。

 

「……何でバッシュ?」

 

「だってあんた、校内を裸足で歩き回るわけにもいかないでしょうが」

 

「だったらスリッパでもいいだろ。何でよりによって……」

 

「はいはいッつべこべ言わずに行った行った! 千夏ちゃんも待たせてるんだから!」

 

 ……と、半ば追い出されるような形で家を出る。

 本当に何なんだか。

 心底嘆息しつつ、きょとんとした表情で一緒にいる千夏先輩と顔を合わせて苦笑い。

 

「すみません。急にこんなことになってしまって」

 

「ううん、私は大丈夫。それに言い出したのはうちのお母さんなんだから気にしないで」

 

 にこり、と笑ってくれる千夏先輩。

 良い人だ。

 

「せっかくだし学校行こっか。ちゃんと案内はしてあげるから」

 

 さらには乗り気で提案を受けてくれる。

 こうなったら家に戻っても母さんにボヤかれるだけだし、確かにどうせなら案内してもらった方がいいかもしれない。

 

「……そうですね。じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」

 

「うん、お願いされましたっ」

 

 俺はカバンを背負い直し、()()()()()()()()()()()()千夏先輩の後に続いて足を向ける。

 春から通うことになる学校、栄明高校へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜、まったくあの子ったら世話が焼けるわぁ。……春香もごめんね、面倒なこと頼んじゃって。千夏ちゃんにもあとでお礼言わないと」

 

「いいのいいの。うちの子のことだから、どうせバスケやれてラッキーとしか考えてないだろうし。それにこっちも相談したいことがあったしね」

 

 

 

 

 

 

 

*1
全国中学校バスケットボール大会

*2
バスケットボールシューズ




 最初は黒バスに鹿野千夏としてTS転生した主人公が帝光でキャラたちと関わっていく話を描こうとしていたのである。
 ……誰か描いてくれないカナー、チラチラ
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