【CERO-Z】P-LUG-MATTER (ぷ らぐ またぁ) 〈ふと気が付いたら、月で出会った少女とその運命を背負い続けることになっちゃった件〉 作:をよよ
「背負い続ける。君と、君との運命を」
それなら「PRAGMATA」じゃなくて「P-LUG-MATTER」じゃね?
と着想を得て書き始めた、PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした再編ストーリーです。
【あらすじ】
「……帰ろうか、レナ」
辿り着いた先は、人の気配を失った月面基地のショッピングモール。
敵は境界線を越えられない。
束の間の安全地帯。
そこでレナが望んだのは――戦うことでも、逃げることでもなく。
お洋服屋さんごっこ。
レストランごっこ。
映画館ごっこ。
もう戻らないかもしれない「家族の日常」を、
必死に演じ続ける少女と、
その意味を少しずつ理解していく特務警備官。
そして浮かび上がる、レナの失われた記憶の空白。
今回は戦闘少なめ。
廃墟ショッピングモール編です。
【各種ご注意】
※PRAGMATAロスの方向け
※オリキャラ。完全シリアスです
※CERO-Z相当:極端な暴力・人体損壊・子供トラウマ描写あり
※PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした二次創作
※独自設定・独自解釈多数
※ホラー・SFサスペンス・ボディホラー要素あり
※執筆に当たっては生成AIを活用しています
――深い暗黒の底から、聞き慣れた無機質なシステム起動音が響いてきた。
カチ……カチ……カチ……。
「……っ、は……!?」
激しいスノーノイズと共に、視界がパッと明るくなる。何度かのエラー訂正を経て、ようやく焦点が合った。
だが、そこは先ほどまでいた殺風景なステーションの天井ではなかった。
割れたガラスドームの向こうには、ところどころデータが欠落した疑似空のプロジェクションマッピングと、色褪せた広告ディスプレイがぼんやりと浮かんでいる。薄暗い巨大な吹き抜けは、完全に廃墟と化したショッピングモールの残骸だった。
ポラックスはゆっくりと両手を顔の前に掲げ、その鉄の指を握りしめた。
「……私は、生きているのか?」
網膜ディスプレイに表示されたステータスを確認する。
装甲の破損率【0%】。バッテリー残量【92%】。
フレームの不整合も、駆動系の違和感も、まるで何もなかったかのように滑らかだった。先ほど重機BoTに無残に粉砕されたはずの身体が、完全に元通りになっている。
「馬鹿な……。わずか数分の間に、誰がここまで完全に修復したというんだ?」
あり得ない事態だった。しかし今は、それ以上考えるのは無駄だ。彼は即座にその思考を切り捨てた。
ガシャリ、という金属音を立てて身体を起こすと、視界の端に小さな影が引っかかった。
干上がった噴水の縁で、膝を抱えて丸くなって震えている、レナの姿だ。
「……レナ」
その声に、レナがビクッと肩を跳ねさせる。
ポラックスはゆっくりと近づき、彼女の前に片膝をついた。怯えさせないよう、内蔵スピーカーの音量を最小限に絞る。
「レナ……私だ。心配をかけた」
レナが恐る恐る顔を上げた。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔が、バイザーの奥の淡い緑色の光を見つめて凍りつく。
「……ポ……?」
次の瞬間、レナは噴水から飛び降りるようにして、ポラックスの胸部装甲に全力で飛びついた。小さな両腕が首のジョイントに必死に絡みつき、鉄のヘルメットに顔を押し付けて激しく泣きじゃくる。
「ポ! ポーーー!! よかった……! おいていかれたかと思った……! もう動かないかと思ったよぉ……!!」
「……レナ、落ち着け。衣服の気密性が損なわれる」
「バカ! ポのバカ! 生きてるなら早く言ってよぉ!!」
激しく胸元で泣きじゃくる小さな身体。溢れる体温と涙が、白い防護装甲を濡らしていく。
ポラックスは何も言わず、ただ静かに、血の跡がきれいに消えた新しい腕を回し、少女の背中をそっと抱きしめた。
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レナがポラックスの胸元でようやく涙を拭い、鼻をすすり上げたその時――。
スピン・クロッシュ(居住区)の入り口である、先ほど閉鎖されたアクリルガラス製のドームゲートの向こうから、ガシャ、ガシャ、と重々しい金属音が響いてきた。
薄暗いステーション側の闇から現れたのは、先ほどポラックスの機体を無残に踏み潰したはずの、あの黄色い作業用BoTたちだった。
「……ポ、ヘンなの、また追ってきた! はやく逃げなきゃ……!」
レナはヒッ、と息を呑んで再びポラックスの背後に隠れる。
「落ち着け、レナ。奴らを見ろ」
ポラックスはレナを背中に庇いながら、電磁銃のない両手を軽く構えてゲートを凝視した。
作業用BoTたちは、赤く染まったセンサーライトを不気味に明滅させ、アームのクラッシャーを回転させながら猛烈な勢いで突っ込んでくる。……しかし、ドームゲートのわずか数センチ手前、居住区の境界線(ライン)に達した瞬間、まるで目に見えない壁に衝突したかのように、ガガガッ!と激しい制動音を立ててピタリと足を止めた。
ガラスの向こうで、作業用BoTたちはアームを虚しく振り回し、ガラスをガシガシと引っ掻くような動作を繰り返しているが、その足は一歩も境界線を越えようとしない。不快な混線ノイズが、微かにスピーカーから漏れ聞こえる。
「……? はいってこない……? ガラスが硬いから?」
レナがポラックスの影から恐る恐る覗き込みながら、首を傾げた。
「違う。ガラスの強度ではなく、『ゾーニング(空間規制)』の法律に縛られているんだ」
ポラックスは冷静にログを分析する。
「この『クリブ』の全BoTは、メインシステムが定義したエリアのルールに絶対従うようにプログラムされている」
ポラックスのHUD上には、侵入不可(RESTRICTED)のエラーログが点滅していた。
レナはホッと胸を撫で下ろし、ガラスの向こうのBoTに少しだけベロを出してみせた。しかし、ふと疑問に思ったように、ポラックスのヘルメットを見上げる。
「行くぞ。ここに長居はできない。別ルートを探す」
「ねぇ……他の人たちは? 隊長さんたちは一緒じゃないの?」
一拍の沈黙。嘘を吐けない彼は、淡々とした口調で事実だけを告げた。
「……3人いたが、2人はロストした。残り1人の信号も途絶えている。現在、生存が確定しているのは私たち2人だけだ」
レナは悲しみに視線を落としたが、自分の小さな唇をぎゅっと噛んで頷いた。
「……ねぇ、どっかで隠れてるかもしれないよ。さがそうよ、ポ」
「……了解した。生存者の捜索を最優先する」
人気のない静寂の中、二人は電力を失い静まり返ったショッピングモールの薄暗いメインストリートへと歩き出す。
背後では、ガラスの向こうの作業BoTたちが、越えられない法律の壁に阻まれながら、いつまでも無機質な赤いライトを明滅させ続けていた――。
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天窓から差し込む冷たい疑似空の投影光が、埃の舞うモールのメインストリートを白く照らしている。
静寂の中、レナはポラックスの大きな人差し指を両手でしっかりと握り、あちこちへ引っ張っていった。辿り着いたのは、色褪せた看板が残る子供服のテナントだった。
その中央に佇む無人衣料品3Dプリンター『ディロス・アパレル・キオスク』の前で、レナは楽しそうに声を弾ませる。
「ねぇ、ポ! 『ごっこ遊び』しよう! ポは……そう、お父さん役ね!『 お父さん、わたしに新しいお洋服つくって!』」
「却下する。私は特務警備員だ。親族関係のロールプレイ(役作り)は任務に含まれていない」
バカ真面目に返すポラックスだったが、その指先はすでにキオスクのコントロールパネルへ直接有線コードを接続していた。
「だが、確かに君が着用している衣服は損壊している。更新が必要だ」
彼のHUDに緑色のハッキングログが高速で流れる。スキャン領域へレナを立たせ、プリンターを強制起動した。
「スキャンを開始する。……じっとしていろ」
ブゥゥゥン、と微弱なレーザー成形音が響き、数分で新しい白いポンチョ型のEMU子供服がプリントアウトされる。レナは試着室で手早く着替え、新しい服のフードを被って嬉そうに飛び出してきた。サイズは完璧だ。
しかし、レナはニヤニヤしながら、わざと出力トレイの脇に残っていた、明らかに大人用の、ぶかぶかで真っ赤な試作用コートを引き抜いて自分の体に当てて見せた。
「じゃーん! お父さん、これ似合う?」
「適合率ゼロだ。引きずって転倒するリスクしかない」
「もー、お父さん役なんだから! 役に立たないな、ポは!」
コートの袖を振り回しながら、レナはジト目でポラックスを見上げる。
「こういうときはね、『これ似合う?』って聞かれたら『とっても可愛いよ、お姫様』って言うの! はい、やり直し!」
(……理解不能だ。彼女の行動原理が全く分からない)
ポラックスは内心で舌打ちしながら、冷淡に告げた。
「無駄口はいい。古い衣服から、生存記録(ライフログデータ)を移行する」
ポラックスが古い服の小型デバイスをキオスクにセットし、データ転送コマンドを実行した、その瞬間だった。
キオスクのプロジェクターがハッキングの負荷で誤作動を起こし、周囲の空間全体に、淡い青色のホログラム画像が【走馬灯】のように一斉に浮かび上がった。レナがこれまでその服を着て過ごしてきた日々の、記憶の断片のはずだった。
「わあ……きれい……。これ、わたし?」
浮かび上がった立体画像群をポラックスは凝視した。
「……待て。これは、どういうことだ……?」
ホログラムの光の中に映し出されていたのは――ほんの数十分前、薄暗い連絡チューブカプセルの中で、大真面目な顔で「私はポだ!」と叫んでいるポラックス自身の姿。そして、それを見て笑っているレナの姿。……【それだけ】だった。
(異常だ。データ容量のインジケーターは『満杯』を示している。にもかかわらず、あの連絡チューブでの出来事より【過去の記録】が何一つ存在しない。彼女の父親の顔も、母親の顔も、この基地で暮らしていたはずの日常の画像データも、すべて綺麗に削ぎ落とされている)
「レナ。質問がある。君がこの服を着る前、君は誰と、どこで暮らしていた? 君の親は……どんな顔をしていた?」
楽しそうにホログラムを眺めていたレナの動きが、ピタリと止まった。彼女は自分の新しい服の裾をぎゅっと握り締め、困ったように眉を寄せる。
「え……? ママは……優しくて、パパは……お仕事が忙しくて……。……あれ? どんな、お顔だっけ……? わたし、ポと会う前のこと、よく思い出せないの……」
彼女のバイタルが急上昇したのを確認し、ポラックスは慌ててその小さな肩に手を置いた。
「……レナ。もう考えるな」
ポラックスは有線コードを引き抜いた。周囲のホログラムが、粒子となって静かに消えていく。残された少女の、あまりにも不自然な記憶の空白。ポラックスの胸に、冷たい違和感が居座った。
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気まずい沈黙を破るように、レナはわざと明るく振る舞い、アパレルショップのカウンターの奥へとトコトコ回り込んだ。画面の割れた古いレジスターの前に立ち、壊れたキャッシュドロワーを無理やり引き出し、大真面目な顔でポラックスを見上げる。
「はい! 気を取り直して、お買い物つづき! いらっしゃいませー! お会計です! ええと……さっきの新しいお洋服と、お父さんのお説教代を合わせて、じゅうおくえんです!」
ポラックスはデータ分析の思考を切り替え、レジの前に直立不動で立った。
「……法外な請求だ。それに、今の出力は私の不正なハッキングによるもので──」
「お父さん! はやくお財布だして! お顔が怖いよ!」
「……」
数秒のデッドロックの後、ポラックスは排気音のようなため息を漏らし、腰のポーチからスラッグ弾の空薬莢を一個、カウンターにカツンと置いた。
「……これで支払う。電子決済は不可能だ」
「はーい、お預かりしまーす! 毎度ありー、パパ!」
レナはその薬莢を大切そうに両手で受け取り、レジの引き出しに仕舞ってにんまりと笑った。
レナの「お散歩」は止まらない。続いて二人は、隣にあるファミリーレストランの廃墟へと足を踏み入れた。
埃を被った食品サンプルが並ぶ店内で、レナは慣れた手つきで、テーブルの上に残されていたプラスチック製の『空のスープ皿』と『空のスプーン』を引き寄せ、ポラックスの巨体を強引にソファ席へと座らせる。
「つぎはレストラン! はい、お父さん、今日は何食べる? メニューどうぞ!」
渡された、カビの生えたプラスチックのメニュー表を大真面目に開き、ポラックスは凝視した。
「……厨房の備蓄はすべてバイオ汚染のリスクがある。注文は不可能だ」
「もう、ポはすぐそうやってすーじや、りつく(理屈)ばっかり言うんだから! お父さんには、この特製コーンスープをあげまーす!」
レナは楽しそうに、何も入っていない『空のスープ皿』をポラックスの前に差し出した。そして、自分の前にも空の皿を置き、小さなスプーンで、存在しないスープを器用に掬って口に運ぶ。
「あむ、おいしい!」と、レナは嬉しそうに微笑んだ。
ポラックスはその様子を、バカ真面目に観察している。
「……レナ。皿の中身はゼロだ」
「コーンスープ! ほら、お父さんもスプーン持って、あむってして!」
「……任務外の、極めて非論理的な行動だ」
ポラックスは再びため息を漏らしながらも、その太い鉄の指先で、壊れそうな小さなプラスチックのスプーンを不器用に摘み上げた。
そして、レナの手本に合わせるように、『完全に空っぽの皿』の底を、カチ、カチ、と無機質にノックするように掬い、ヘルメットの顔面装甲の前へと運ぶ。当然、装甲は閉じたままであり、中身を流し込む口すらない。
「……評価不能だが、君の満足度から察するに、栄養価は極めて高いのだろう」
「なにそれ! お父さん、食べ方ロボットみたい!」
レナは空のスプーンを咥えたまま、クスクスと笑った。だが、ふと動きを止め、誰もいない、料理の出てこないテーブルを見つめて目を細める。
「……でもね、パパとママとここに来たときは、いつも本当に美味しかったんだぁ」
その笑顔の裏にある、痛烈な寂しさと飢え。ポラックスはただそれを見つめることしかできなかった。
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最後に二人が辿り着いたのは、静まり返った映画館のロビーだった。
レナは自分の唇に人差し指を当て、「しーっ」とポラックスを見上げる。
「映画館では、静かにしないとダメだよ。お父さん、お口チャックね」
「……私は元から発声を最小限に制限している」
「お口チャック! ……ねぇ、ポ。なんか映してよ。真っ暗だから」
「エンターテインメント用の映画データは持ち合わせがない」
「なんでもいいから! おねがい、ポ!」
レナがポラックスの膝を揺らして懇願する。ポラックスはため息を漏らし、ローカルメモリの数少ない映像ファイルを検索した。
ヒットしたのは、『ディロス社・PURE計画プロモーション映像(一般広報用・3分)』。これしかなかった。
シアターの暗がりの壁に向かって、青白いホログラムが投影される。
アップテンポな社歌と共に、「月面太陽光発電の仕組み」や「軌道エレベータの建造」の3Dグラフィックが虚しく回り始める。映画とは程遠い、ただの退屈な企業説明動画だった。
「……これしかない。3分で終了する」
「……うん。静かに観ようね、お父さん」
レナはポラックスの硬い、冷たい金属の腕に小さな頭を預け、映し出される青い光の環をじっと見つめ始めた。
3分が経ち、動画が暗転する。
「もう一回」
レナが小さく呟く。ポラックスは無言で再生をリピートした。
また3分が経つ。
「もう一回」
ポラックスは文句も言わず、再生を繰り返した。
退屈極まりない3分間の広報動画が、誰もいない映画館で、延々と、4回、5回と繰り返されていく――。
(……理解した。訂正する。彼女は危機感が欠如して遊んでいたのではない。……こうして、明るくて、楽しかった家族の『日常』の真似事をしていないと、極限状態の恐怖で、心が壊れてしまうのだ。たった一人で)
6回目の動画が終了し、静寂が戻ったシアターで、ポラックスはゆっくりと声をかけた。
「……レナ。上映時間は終了だ」
レナは彼の腕に頭を預けたまま、目から大粒の涙をポロポロと流していた。その声が激しく震えている。
「……うん。……お父さん、お買い物、たのしかったね……っ。パフェ、おいしかった……ね……っ」
ポラックスは、血の汚れの消えた白い鉄の手で、彼女の小さな頭を不器用に撫でた。金属の擦れる音が優しく響く。
「ああ。パフェの糖分は、次の行軍のエネルギーとして十分に蓄積された。……映画も、ディロス社の技術力を示す非常に有意義な内容だった。……満点の評価を与える」
「なにそれ……やっぱり、ポはお堅いロボットみたい」
レナは涙を拭いながら、くすっと笑った。
「……私は冷静沈着な特務警備員だ」
ポラックスは立ち上がり、彼女に向かって、不器用な右手を差し出した。
「……帰ろうか、レナ」
「……うん」
レナは涙を拭い去り、最高の笑顔でポラックスの手をギュッと握り締めた。
ポラックスはホログラムの立体マップを投影した。PURE計画の広報用に作られた、月面基地『クリブ(CRIB)』の美しい全体図だ。数十ものドーム状ブロックが、まるで蜘蛛の巣のようにチューブで連結されている。
「君の家——つまり、君が保護されるべき場所はどこだ?」
レナはホログラムの光の球に近づき、小さな手を伸ばした。彼女の指先が、いくつものブロックの境界線を通り過ぎ、ある一つの、ひときわ古い規格で作られた居住区のアイコンの前で止まる。そこには『コミュニティ・クロッシュ(中央避難所区画)』という文字が浮かんでいた。
その場所をそっと人差し指で触れる。ホログラムの光が彼女の指先で波紋のように広がった。
「……ここ。ここに、みんながいるの。あいつらが攻めてきたとき、パパがわたしをダクトに隠して、みんなはここに逃げるって言ってたから。……ここに行けば、パパもママも、きっといる」
「確認した。目標地点『コミュニティ・クロッシュ』。……ここから別ルートの連絡チューブを使えば、作業用BoTの包囲網を完全に迂回して到達可能だ」
ポラックスはマップのホログラムをパッと消去し、再び鉄の仮面をレナへと向けた。
映画館の勝手口のハッチを開け、ショッピングモールの華やかな廃墟に背を向けて、暗いバックヤードの管理通路へと再び足を踏み出した。二人の足音が、静かに闇へと吸い込まれていった。