【CERO-Z】P-LUG-MATTER (ぷ らぐ またぁ) 〈ふと気が付いたら、月で出会った少女とその運命を背負い続けることになっちゃった件〉 作:をよよ
「背負い続ける。君と、君との運命を」
それなら「PRAGMATA」じゃなくて「P-LUG-MATTER」じゃね?
と着想を得て書き始めた、PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした再編ストーリーです。
【あらすじ】
墓所からの脱出後、ポラックスとレナは『PURE展示館』へと逃げ込む。
激しい怒りと悲しみのあまり、ポラックスを殴りつけるレナ。
しかし、展示館の誤作動によって生まれた一瞬の美しい「虹」が、
二人の間に静かな安らぎをもたらす。
地球儀を回しながら地名を学ぶ無邪気な時間。
レナの小さな願い——
「エイダも一緒に連れて帰れないかな」。
その言葉を受け、ポラックスは静かに決意する。
次に向かうのは、管理AIのいるデータセンター——。
美しさと残酷さが交錯する、切ない休息の章。
【各種ご注意】
※PRAGMATAロスの方向け
※オリキャラ。完全シリアスです
※CERO-Z相当:極端な暴力・人体損壊・子供トラウマ描写あり
※PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした二次創作
※独自設定・独自解釈多数
※ホラー・SFサスペンス・ボディホラー要素あり
※執筆に当たっては生成AIを活用しています
墓所ブロックからの、文字通りの命からがらとなる脱出劇。
ポラックスはレナの小さな身体をしっかりと抱えたまま、激しいステップを踏みしめ、ディロス社・広報展示ホール『PURE展示館』の冷たいロビーへと滑り込んだ。
電力を半分失った館内は、非常灯の赤白い光が不規則に明滅し、まるで巨大な怪物の胎内のような不気味さを醸し出している。
――ガシャン!
重厚な防爆ハッチが閉鎖され、ひとまずの安全が確保された。
しかし次の瞬間、レナはパニックの余震に突き動かされるように、ポラックスの頑丈な胸の装甲を小さな拳でポカポカと涙ながらに殴りつけた。
「なんで……っ、なんで助けなかったの! お姉ちゃんがあんなに苦しそうに紐で縛られてたのに! プのわからずや! ロボット!」
真空を裂くような少女の罵声。
ポラックスはその激しい衝撃を重装甲の質量で淡々と受け流しながら、ただ一言、低く応じた。
「助けた」
「エイダを!?」
レナが涙に濡れた目を剥く。
ポラックスは重い駆動音を響かせ、ゆっくりとレナの目線まで膝を突いた。目線をまっすぐに少女へと合わせる。
「違う」
一拍の静寂。
「……君をだ」
レナはハッとしたように拳を止め、息を呑んだ。
己を最優先に守るために、あの白い鉄の巨躯が非情な決断を下したのだと、少女の幼い理性がようやく理解した瞬間だった。
---
ポラックスが立ち上がり、二人が展示ホールの中央部まで進んだ、その時だった。
死に体となっていた館内システムが二人の動体反応に誤作動を起こし、頭上のスピーカーから、あの管理AI『リンセウス』と同じ美しい声色で、場違いなガイダンス音声が流れ出した。
『——ようこそ。PURE展示館、虹の懸け橋へ。人類の夢見た輝かしい未来が、ここにあります』
――ゴォォン……
重々しい駆動音と共に、昏い館内の中央に、ホログラムで投影された【巨大な地球儀】が眩い青い光を放って浮かび上がった。
ずっと暗闇に慣れていたレナは、そのあまりの眩しさに小さく悲鳴を上げ、思わずポラックスの太い鉄の腕に強く抱きつく。
「……っ! ポ、あれ……!」
身を震わせるレナ。
ポラックスは即座に腕の電磁銃を正面へ構え、迎撃の戦闘態勢を取った。
「……ラベリングを」
「……敵……っ!」
レナがコクンと小さく頷き、震え声で確定(ラベリング)を返す。
――ズドン!
迷いはなかった。ポラックスは即座にトリガーを引き、五月蠅(うるさ)く未来の栄華を喋り続けていたスピーカーの筐体を完璧に撃ち抜いた。
火花を散らし、完全に沈黙するスピーカー。
しかし、その激しい銃撃の衝撃波が、今度はホールの防災システムを誤動作させた。
――プシューッ!!
凄まじい噴射音と共に、天井に配置されたノズルから霧状の細かい水が激しく噴出される。スプリンクラーの作動だ。
非常灯の白い光が、ロビーを満たしていく細かな水霧を斜めに白く突き抜けていく。
すると、巨大なホログラム地球儀の背後、噴霧された無数の水滴が光を綺麗に分光し――小さな、しかし息を呑むほどに美しい【七色の光の帯】が、空間にフワリと出現した。
「……あれはなに?」
降り注ぐ冷たい霧雨の中で、レナはその幻想的な光の美しさに見とれ、衣服のフードをきゅっと掴んだ。
「スプリンクラーの誤作動だ。じき収まる」
ポラックスの声はどこまでもバカ真面目だ。
完全に危機が去ったことを理解すると、同時に、極限状態を生き延びてきたレナの足からガクンと力が抜けた。
ポラックスはすかさず彼女の小さな身体を支える。そして、自らが「人間椅子」となる形で冷たいレゴリウムの床に深くしゃがみ込んだ。
二人は静かに降り注ぐ霧雨のなかで、ゆっくりと消え残る七色の光を見つめ合う。
「あれはなに……?」
レナがもう一度、今度はポラックスのヘルメットを見上げて尋ねた。
「スプリンクラーの誤作動だと言った」
「もう……ちがうの! あれは何ていうの?」
「……ただの分光現象だ」
「ちがうの! あの綺麗なのは何ていうの?」
レナは少しだけジト目になり、ポラックスのバイザーを睨みつける。
数秒の間、固まった後、ポラックスはようやく少女の意図に気付いた。
「……虹ともいう」
「……虹?」
「偽物だ」
「もう! こういうときは、きれいだねっていうの!」
ぷくっと頬を膨らませるレナ。
「……評価不能だ。基準が分からない」
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ややあって、人工の虹の美しさにいくらか元気を取り戻したらしいレナは、ポラックスの膝から立ち上がった。
そして、目の前でゆっくりと自転を続ける、青く輝くホログラムの巨大地球儀へと近づいていく。
彼女は小さな指を伸ばし、青い大陸のあちこちを、インタラクティブUIを突くように楽しげに指差していった。
「ここ」
レナが指を差す。
「……ベネズエラ」
ポラックスは不動のまま、瞬時に答える。
「ここは?」
「マレーシア」
「ここは?」
「デンマーク」
レナは今度は、地球儀を小さな手でビュンビュンと猛スピードで回し、気まぐれにピタっと指で止めた。
「ここは?」
「マダガスカル」
地球の地名を無邪気に覚えていくレナ。
しかし、ひとしきり遊び終えると、彼女はふと寂しげにうつむき、ぽつりと小さな声を漏らした。
「……エイダも……連れて帰れないかな」
ポラックスの脳裏に、あの資源再生プラントの墓所で見た、エイダのあまりにも不審な挙動とログがフラッシュバックする。
少しの間を置いてから、彼は静かに告げた。
「……可能性は、ゼロではない。すべてを『確定』させた後ならばな」
十分な休息を終え、ポラックスは重い駆動音を響かせて立ち上がった。
彼の視線は、展示館のさらに最奥――データセンターへと続く、ひときわ分厚いハッチへと向けられている。
「レナ、エイダを助けたいか?」
「……うん」
レナは強く頷いた。
「それなら、次は管理AIに会いに行こう」
「喧嘩?」
レナが首を傾げる。
「確認だ」
「わん!」
いつの間にか足元に寄り添っていたわんこBoTが、調子を合わせるように元気よく吠えた。
色褪せた人工の空の隅で、ショートした電気配線がパチパチと小さく音を立てている。
ポラックスは、この美しくも切ない展示館の静寂を「満点」と評価しつつ、次なるデータセンターへの最適ルートを、HUDの奥で静かに策定し始めるのだった――。