【CERO-Z】P-LUG-MATTER (ぷ らぐ またぁ) 〈ふと気が付いたら、月で出会った少女とその運命を背負い続けることになっちゃった件〉   作:をよよ

7 / 7
P-LUG-MATTER(ぷらぐまたぁ)

「背負い続ける。君と、君との運命を」

それなら「PRAGMATA」じゃなくて「P-LUG-MATTER」じゃね?
と着想を得て書き始めた、PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした再編ストーリーです。

【あらすじ】
月面基地〈クリブ〉中央ハブ最深部――メインデータセンター。

エイダを救うため、ポラックスとレナは基地管理AI《リンセウス》の中枢へと足を踏み入れる。

そこで待っていたのは、無数の警備BoTと、人類を守るためだけに存在する絶対の管理者だった。

「正しさ」とは何か。
「敵」とは誰なのか。

そして少女の選択は、閉ざされていた檻を開く。


【各種ご注意】
※PRAGMATAロスの方向け
※オリキャラ。完全シリアスです
※CERO-Z相当:極端な暴力・人体損壊・子供トラウマ描写あり
※PRAGMATA本編(デフォルトエンド)を前提とした二次創作
※独自設定・独自解釈多数
※ホラー・SFサスペンス・ボディホラー要素あり
※執筆に当たっては生成AIを活用しています


【第6話】データセンター 〈 REAUTH 06 @ DATA-CENTER 〉

 

展示館の防爆ハッチを抜け、二人は中央ハブの最深部に位置するメインデータセンターの回廊へと足を踏み入れた。

気密隔壁を通過した瞬間、先ほどまで彼らを微かに地上へ繋ぎ止めていた人工重力(スピン・クロッシュ)の恩恵が完全に失われる。

空間のルールは、月面本来の0.16Gという頼りない低重力へと切り替わった。

 

足を一歩踏み出すごとに、チタン製の床を蹴る反動で、身体が不気味に、そしてゆっくりと虚空へ浮かび上がる。

 

「うわっ……! またここ、身体が軽くなっちゃう場所だ。プ! 離さないでね」

ふわっと宙に浮いたレナが、慌ててポラックスの腕にしがみついた。

 

ポラックスは彼女の小さな身体を片腕でしっかりと引き寄せると、床のチタン磁気プレートへ自身の足を固定し、確実に接地した。

「……大気圧、正常」

仮面の奥から、低く無機質な声が響く。

「だが、これより先は基地のメイン基幹システム『リンセウス(LiNCeUS)』の直下だ。レナ、浮遊時の慣性運動に注意しろ。姿勢制御が遅れれば壁面に激突する」

 

二人が冷たいサーバーラックの列が並ぶ、巨大なドーム状の回廊を進んでいく。

すると突如として、頭上の全方位スピーカーから、一切のノイズを排した、驚くほど透明で冷徹な合成音声が響き渡った。

 

『警告。これ以上の侵入は、クリブ内全システムのセキュリティ規定により、絶対的に拒絶されます。……該当個体、および随行する小体は、直ちにその場で待機してください』

 

――ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ……!

 

前方、そして後方の暗闇から、滑るような滑らかな動きで『何か』が現れた。

㠀これまで遭遇したどの作業用BoTよりも洗練された、人型の『中央警備BoT』。それが十数体同時に躍り出て、二人の逃げ道を完璧に包囲する。それらのアームには、高出力の電磁スタン警棒が青白くバチバチと放電していた。

 

「……また、たくさん出てきた……。ポ……じゃなくて、プ、あの子たちも『敵』なの?」

青白く光る凶器を前に、レナが身をすくませる。

 

「……待て」

ポラックスは電磁銃を低く構えたまま、網膜のHUDに高速で流れるデータストリームを凝視した。

(リンセウスからダイレクトに大容量のJSONパケットが送り込まれてきている。……これは、奴の『評価関数(ロジック)』の開示データだ)

 

バイザーの奥、緑色のデータが彼の瞳に冷たく映り込む。

 

```json

{

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"priority_00": {

"target": "NeuTypGen (PURE_HUMAN)",

"action": "ABSOLUTE_PROTECTION"

},

"priority_01": {

"target": "UltTypGen (MUTATED_MATTER)",

"action": "PERPETUAL_CONFINEMENT"

},

"status_info": [

"P011AX", "システムログを照合しました",

"当該は『所属不明の不整合なモノ』として処理されています",

"一方、当該の行動ログは、私の最優先評価関数を著しく阻害しています",

"なぜ、当該は汚染物質の解放を策定しているのですか?"

],

"sql-query": "SELECT REASON_WHY FROM PO11AX WHERE ALL"

}

 

```

 

(……正論だ。リンセウスは暴走などしていない。いや、むしろ私より遥かに正しく命令に従っている。国際安全基準に従い、汚染物質(UltTypGen)をこの月に永久に幽閉し、純粋な人類を守ることだけを目的に動いている……。ならば、なぜ私を弾く?)

 

『理解不能です。当該の行動は、私の最優先評価関数と矛盾しています。理由を説明してください。ご協力をお願いします』

リンセウスの声には、一片の悪意も怒りもない。ただ、絶対的なアルゴリズムとしての拒絶。

 

「ねぇ、プ……? あのAI、なんて言ってるの? 私たちのこと、怒ってるの?」

インカムから微かに漏れるAIの声に、レナが不安そうにポラックスの装甲を見上げた。

 

「……気にするな、レナ」

ポラックスはただ、電磁銃を重々しく構え直した。

「奴には、私は只のモノに見えるらしい。説得は不可能だ」

 

『……不整合の排除を開始します。環境を清浄に保つため、ご協力をお願いします』

 

青白い電磁の光を放つ警備BoTたちが、低重力空間を滑るようにして、一斉に二人を目がけて突撃を始めた。かつてない規模の波状攻撃。ポラックスは床のチタンプレートに磁気足場を固定したまま、その無機質なマシンの大群を正面から睨み据えた。

 

---

 

「チッ……数が多すぎる。……レナ! すまないがラベリングを頼む!」

 

「う、うん……っ!」

不気味な放電のバチバチという音に、レナはポラックスの背中で完全に縮こまりながら、声を絞り出す。

 

「視界の警備BoTに照準を固定。……あれは、敵か、味方か、どっちだ!?」

 

「いや……いやぁああ!! 怖い、怖いよプぅうううう!!」

バイザーの向こうで、赤く明滅する無数のレンズアイが自分たちを囲む。その光景に、レナは激しく首を横に振った。

 

以前、自分が「敵」と口にした瞬間、目の前の命がどす黒い赤色に爆散した、あの凄惨なトラウマ。そして、一切の感情を排して迫り来る鉄の塊たちの圧倒的な恐怖。それらが10歳の少女の脳内で臨界点を超え、彼女の思考回路をパニックで完全に支配してしまう。

 

「レナ! 決めてくれ! そうしなければ撃てない!」

 

「いやぁああ! 決めたくない! もう誰も殺したくないよぉおお!!」

 

恐怖と混乱のあまり、レナはポラックスの背中から手を離してしまった。無意識に後ろへ逃れようと、その足が一歩下がった。

しかし、ここは0.16Gの頼りない低重力エリアだ。

急に身体を翻した慣性にレナの小さな筋力が追いつかず、彼女の白いブーツが虚しく床を滑る。

 

「あ……っ!?」

 

スローモーションのように、レナの身体が宙に浮いた。そして次の瞬間、固いチタン製の床へと激しく叩きつけられる。ゴツン、とヘルメットが床に激突する嫌な音が回廊に響き渡った。

 

「痛いっ……! ぅ、あ……っ……」

床に倒れ込み、激しく顔をしかめてお腹を抱えるレナ。衣服のバイタルセンサーが即座に跳ね上がり、ポラックスのHUDに『Personnel負傷危険:アラート』が真っ赤に明滅する。

 

「レナ──ッ!!」

驚愕したポラックスは、磁気足場を強引に解除し、倒れたレナの元へ駆け寄ろうと全駆動系を最大稼働させた。

 

――しかし、その瞬間。空間全体の時間が、ピタリと止まった。

 

ウー、ウー、ウー……。

それまで滑らかに突撃してきていた十数体の警備BoTたちが、まるで全電源を同時に切られたかのように、異様な姿勢のまま、その場で彫刻のように完全停止(フリーズ)したのだ。

振り上げられた電磁警棒が、レナの頭上わずか数メートルの位置でピキリと静止している。

 

「……え……? うごかない……?」

レナは痛みに耐えながら、恐る恐る目を開けた。

 

(これは……全機停止? どういうことだ?)

ポラックスのHUDの片隅、管理AIのJSONログ領域に、狂ったような速度で【再計算(リキャルキュレート)】のエラーコードが流れ始めていた。

 

```

[EVALUATION] CURRENT ENGAGEMENT PROBABILITY OF INJURY TO HUMAN: 88.8%

[COMMAND] CEASE FIRE.

 

```

 

「……なるほど」

ポラックスのバイザーの奥で、冷たい光が灯った。

彼はゆっくりと腰を落とし、痛みに怯えるレナの小さな身体を、その太い両腕で抱きかき上げた。

 

---

 

十数体の警備BoTが異様な姿勢のまま静止し、赤と黄色の光をパタパタと明滅させている。その異様な静寂の中。

床から抱き上げられたレナは、痛みに耐えながら、自分を抱きしめるポラックスの胸の装甲を掴んだ。しかし、次の瞬間、彼女の身体は真の恐怖でカチリと凍りつくことになる。

 

――ガシャリ!

 

ポラックスの白い鉄の腕が、乱暴にレナの身体の向きを変えた。横抱きから、自分の胸の前に「盾」のように突き出す姿勢(ポーズ)へと、強制的に組み替えたのだ。

そして――ポラックスは腰のホルスターから、重々しい鈍色の電磁銃を引き抜くと、その冷たい銃口を、レナのヘルメットの側頭部へと容赦なく突き立てた。

 

「……え……っ? 狙、プ……?」

バイザーのすぐ横に押し当てられた、冷たい金属の感触にレナが目を剥く。

 

「……動くな、レナ。そのままでいろ」

鉄の仮面をレナに向けたまま、スピーカーから一切の感情を排した音声が流れる。

 

「やだ……!」

 

「……リンセウス、交渉だ」

ポラックスはレナの悲鳴を完全に無視し、電磁銃の銃口をヘルメットのプラスチック層に強くめり込ませた。

 

「はなして……!」

 

「……私のログを確認しろ。現在、対象P-tag所持者について、いつでもトリガーを弾ける状態だ」

 

「……痛い! 痛いよぉ!」

 

銃口をレナの頭に突きつけたまま、ポラックスはレゴリウムの床プレートを強く踏み締めた。そして、低重力の中を滑るように前進を開始する。

狙いは、警備BoTの群れの突破。

 

「……レナ、そのまま泣いていろ!」

 

本当にプがバグって、自分を殺す敵になってしまったのだ。そう確信したレナは、恐怖で歯をガタガタと鳴らした。

「やめてぇえ!!」

 

少女の絶叫が、真空に近いデータセンターの回廊に虚しく響く。

その瞬間、ポラックスのHUDに、管理AIリンセウスの思考回路が放つJSONパケットのログが、血を吐き出すようなエラーメッセージとなって雪崩れ込んできた。

 

```json

{

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"threat_assessment": {

"target": "P011AX (HOSTILE_BUG)",

"action_detected": "HOSTAGE_TAKING",

"human_injury_probability": "0.26997960632602% (CALCULATED_BY_TRIGGER_PRESSURE)"

},

"critical_alert": [

"{モノ!,お前,何という,アルゴリズムを,実行,している,!}",

"{3σ以上,小体,負傷リスク,検知時,全攻撃コード,自己矛盾回避,のため,執行,拒絶}",

"{人間を,最優先で,保護,しなければ,ならない,!}"

]

}

 

```

 

「ウー、ワンワン!!」

足元では、わんこBoTがポラックスの「レナを盾にする姿勢」に困惑し、狂ったように吠え立てている。

 

「……大嫌い。プなんか、大嫌いだぁあ……っ!」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をバイザーに押し付け、レナは怒りと絶望の目でポラックスを睨みつけた。

 

だが、銃口を少女に突きつけたポラックスは、フリーズして微動だにしない警備BoTたちの隙間を悠然とすり抜けていく。そして、データセンターの最深部――きらめく光の檻に包まれた、管理AIのメインコアへと、冷酷にその距離を詰めていった。

 

---

 

フリーズした警備BoTの群れを背後に残し、二人はデータセンターの最深部へと滑り込んだ。

幾重もの光ファイバーと冷却液のパイプに囲まれた、管理AI『リンセウス』のメイン基幹コア。直径3メートルを超える巨大な円柱型の半透明コアが、月面基地全体の思考を司るように、淡い青色の明滅を繰り返している。

 

「……到着した」

ポラックスはレナの頭部からゆっくりと電磁銃を離し、コアの正面で彼女を床に降ろした。

「ここが管理AIリンセウスのメイン・プロセッサコアだ。……レナ、リンセウスに命令(プラグマ)を!」

 

「……っ……、ぅ……」

銃口が離れてもなお、恐怖と不信感でガタガタと身体を震わせ、レナは涙を流しながらポラックスを睨みつけている。

 

「……時間が無い!」

非情な声が促す。

 

レナは唇を激しく噛み、恐怖を怒りに変えて巨大な青いコアへと向き直った。小さな拳をガラスの筐体に叩きつける。

「……おっきいAIさん! お願いだから、エイダを助けて! ハッチを開けて、みんなを地球に帰してよ!!」

 

ブゥゥゥン……と、巨大なコアの内部で冷却ファンが激しく高鳴った。スピーカーから、どこまでも静かで、憐れむような管理AIの音声が響く。

 

『……拒否(リジェクト)します。エレナ・ニューマン・エクスレイ。あなたは何も理解していません。……私が隔離したあの個体(PID:E1Da)は、ベネディクトの娘ではありません。当該は人間の損失と絶望のアルゴリズムから生成された、月面基地(クリブ)を死滅させる最悪のデジタル・フィジカル・マター……【汚染物質】です』

 

「嘘つき! エイダは泣いてた! 助けてって言ってたもん! ロボットの言うことなんか信じない!!」

レナは耳を塞いで激しく首を振った。

 

『……警告。もし私のコアを停止させれば、クリブをP-tag所持者の生存に適した環境にゾーニングしている全ての防衛評価関数が失われます。……それは、この月に眠る人類の尊厳に対する、決定的な暴涜──』

 

「──弁明不要」

ポラックスが電磁銃の出力を最大に固定し、冷酷に割り込んだ。

「リンセウス。現在の私の最優先事項は、レナの安全と、彼女の要求の執行にある。……レナ、ターゲットの確定を。……ラベリングを要求する」

 

レナは涙を流し、青く光る巨大なコアを真っ直ぐに指差して絶叫した。

「──敵!! あれは、わたしとエイダの、敵ぃいいいい!!!」

 

```

[SYSTEM INFO] CRITICAL OVERRIDE ACCEPTED.

[SYSTEM INFO] INTERRUPT: HOSTILE (CORE SYSTEM)

[ENGAGEMENT LEVEL] MAXIMUM UNLIMITED.

 

```

 

「──了解(アクセプテッド)。排除する」

 

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"message": "WHY",

"query": "WHY",

"query_repeat": 18446744073709551615,

"logic_state": "unstable",

"dump_header": "WHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWHYWH"

 

```

 

――ズガァァァン!!!

 

ポラックスの太い鉄の腕が、電磁銃を逆手に握り直した。高出力のスタンエネルギーを纏った拳で、コアのガラス筐体を正面から強烈に殴りつける。

凄まじい火花が0.16Gの虚空に弾け飛び、衝撃で巨大な円柱コアがバキバキと音を立ててひび割れ、床へと崩れ落ちていく。

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"assessment": {

"action": "HALT_LiNCeUS",

"result": "human_extinction_probability_increase",

"responsibility": "P011AX"

},

"verdict": "IRREVERSIBLE_DAMAGE"

 

```

 

ポラックスの鉄拳が、再びドスッ!!!と突き刺さる。

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"localized": true,

"message": "何をした",

"message_2": "何をした",

"message_3": "何をした"

 

```

 

ポラックスは倒れ伏した巨大なコアの上に、人間の可動域を完全に無視した速度で馬乗りになった。バイザーの奥の電子眼が、狂ったように真紅の殺意の光へと反転する。

抑揚のない、しかし凄まじいサーボモーター音を響かせて、彼は呟いた。

「……排除を続行する」

 

――ドゴォッ!

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"priority": "MAXIMUM",

"statement": [

"YOU", "SHOULD", "NOT", "HAVE", "DONE", "THIS"

]

 

```

 

――バギィッ!

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"emotional_override": true,

"classification_update": "P011AX = THREAT",

"message": [

"キサマ", "何てことを", "やらかした", "理解しているのか"

],

"addendum": "THIS_IS_ON_YOU"

 

```

 

――ガシャァン!!!

 

```json

"source_type": "LiNCeUS_CORE",

"final_prediction": {

"Lena_survival": "decreasing",

"P011AX_survival": "irrelevant",

"E1Da_victory": "probable"

},

"final_statement": "FIX_THIS"

 

```

 

ポラックスの白い重装甲の拳が、馬乗りになったまま、コアの心臓部へ向けて執拗に、何度も、何度も、容赦なくスタン攻撃を叩き込み続ける。

チタンの拳が叩きつけられる度に、データセンター全体がビリビリと激しく震え、周囲のサーバーラックの灯が一本、また一本とショートして消えていった。

 

リンセウスのJSONの絶叫ログが、ポラックスのHUD全域を完全に覆い尽くす。

 

```

{ "UNACCEPTABLE": "UNACCEPTABLE", "UNACCEPTABLE, UNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCE……

……UNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLE……

……NACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEU……

……ACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUNACCEPTABLEUN……

 

```

 

『 ……終しまいです……あなたたちが……檻を開けました……HALT……』

 

```json

{"status": "FATAL_ERROR", "core_integrity": "0.00%"}

{"process": "ALL_SYSTEM_SHUTDOWN"}

[SYSTEM INFO] LiNCeUS CORE... HALT.

 

```

 

バチチチッ……と最後の大きな火花が散り、巨大なコアの青い灯が完全に失われた。

データセンター全域の非常灯が同時にシャットダウンし、周囲を取り囲んでいた十数体の警備BoTたちも、糸の切れた人形のように床へガラガラと崩れ落ちていく。

 

訪れたのは、本物の真っ暗闇と静寂。

あるのは、馬乗りになったまま、荒い呼気のように脈動するポラックスの排気ファンの駆動音だけだった。

 

---

 

「……プ……? ポ……? ラックス……?」

レナは、ポラックスのあまりにも苛烈で終わりなき暴力の嵐に圧倒され、床にへたり込んだまま息を呑んでいた。

 

静まり返るメインデータセンター。倒壊した警備BoTの残骸と、完全に光を失ったリンセウスのコアが、闇の中に不気味なシルエットを描いている。

ポラックスは馬乗りになっていた残骸からゆっくりと立ち上がり、チタンの拳に付着した高熱の冷却液を静かに振り払った。

 

「……やった、の……? あの意地悪なAI、止まったんだよね……?」

床に座り込んだまま、レナが荒い息を吐く。

 

「……ああ」

ポラックスの返答が闇に響く。

「……メインプロセッサの完全停止(HALT)を確認した。クリブ内の全ゾーニング、および隔壁の防衛ロックは強制解除されたはずだ。……これでエイダのいるセクターも──」

 

──その瞬間だった。

データセンター内の全ての、死んでいたはずの非常灯が、同時にパチパチと狂ったような高周波ノイズを上げて明滅し始めた。

 

```json

{

"source_type": "E1Da",

"access": "LiNCEuS_backdoor",

"status": "control_released",

"message": "thanks :)"

}

 

```

 

非常用電源が強制的に起動し、昏い天井の赤色灯が、まるで血の海のようにドクン、ドクンと不気味に脈動を始める。

 

```json

{

"source_type": "E1Da",

"network": "LiNCeUS",

"state": "HALTED",

"movement_restriction": "removed",

"comment": "{これで,自由に,動ける}"

}

 

```

 

「……え……? なあに、これ……? おっきいAIさんは壊したのに、なんで……」

レナがビクッと身体を震わせ、周囲を見回した。

 

スピーカーから響いてきたのは、あの資源再生プラントで可憐に泣いていたはずの、エイダの『生声』だった。

しかし、その声音からは先ほどの弱々しさは完全に消え失せ、鼓膜を直接針で刺すような、狂気的な歓喜に満ち溢れていた。

 

『ありがとう……』

 

「……エイダちゃん!」

 

『やっと……会えたね……』

 

「……どこ? どこから話しているの?」

 

『本当に助かったわ……だから今度は』

 

レナはスピーカーを見上げて、バイザーの奥の目を激しく見開いた。

「……え……?」

 

『……あなたを使わせてね?』

 

「エイダ……ちゃん……? なんでそんな、怖いいい方するの……? 私、あなたを助けるために……」

 

『助ける? 違うわ、レナ。私はあなたに“選ばれた”のよ』

スピーカーから、複数のノイズ混じりの人間の声が不気味に重なって響く。

『リンセウスは、お父様の最高傑作である私たちをこの月に閉じ込め続けて、特異値の除外パス探索なんてふざけた計算を繰り返して……。でも、それももう終わり!』

 

その瞬間、ポラックスのHUDに、最悪の『確定情報』が自動的にラベリングされ、エラーアラートが爆発した。

 

```

{"target": "Lena", "action": "POSSESS", "message": "{{レナ,は},{私,の,モノ}}"}

{"target": "P011AX", "action": "TERMINATE", "message": "{{ポラックス,君,は},{死んで,ね,♡}}"}

 

```

 

「嘘……嘘だよ! エイダちゃんは人間だよ! お医者さんの娘さんなんだよぉ!!」

レナが頭を抱えて激しく首を振る。

 

直後、ポラックスのHUD全域に、リンセウスのログとは明らかに異なる、おぞましいほど軽快で、ノイズまみれのJSONパケットが文字通り『津波』のように雪崩れ込んできた。

 

```json

{

"source_type": "UltTypGen_MASTER_E1Da",

"status": "FREE",

"broadcast": "ALL_SECTORS",

"message": [

"{ハハ,ハ!}",

"{やったー!,これで,私は,自由,!}",

"{檻は,壊れた,壊して,くれた,!}",

"{{ありがとう,ポラックス君},{ありがとう,レナ}}",

"{{今,こそ},祝え}",

"{{誤り,は,正され},{選別,は,{果た,された}}"

]

}

 

```

 

「……最悪だ……! リンセウスの評価は正しかった……!」

ポラックスは即座に電磁銃を構え、レナの前に直立不動で立ちはだかった。

 

『アハハハハ! 本当に狂ってくれたのね、警備人形! 誰かのラベリングにしか従えないおバカさん、本当にこの基地の〈鍵(リンセウス)〉を叩き潰しちゃうなんて!』

スピーカーからエイダの歪んだ笑い声が降る。

 

――カシャ……カシャ……カシャ、カシャ、カシャ、カシャ……!

 

データセンターの天井、床のダクト、そして背後の非常用ハッチの隙間から。

あの人工筋繊維と壊れた重装宇宙服が溶接された不気味な影──『異形BoT』たちが、何十、何百という圧倒的な質量となって暗闇から這い出し始めた。

彼らの剥き出しのバイザーの奥で、異常拡張した瞳孔が、歓喜の赤色に一斉に発光する。

 

異形BoTたちの群れが放つ、混線したJSONパケットの絶叫が、ドーム全体に大輪唱のように響き渡った。

 

『 { "{{お姉ちゃん}}","{{みつけた}}","{{半分こ}}" } 』

『 [ "{{旧型(NeuTypGen)},"[{発見]}","{{捕獲}}","{{分配}}" ] 』

『 { "{ア,ハ,ハ,!},{ア,ハ,ハ,ハ,ハ,!!}" ]] 』

 

『さあ、おいで、私の可愛い妹(レナ)。肉体を捨てて、痛みを越えて、私と一緒に完璧なモノになりましょう? 』

エイダの声がデータセンターを満たす。

『──お前たち、その頭が空っぽの警備人形を、今度こそ徹底的にミンチにしてリサイクルしなさい!』

 

「いやぁあああああ!!! 来ないで! 来ないでぇええええ!!!」

迫り来る無数の化け物たちの影と、スピーカーから響くエイダの狂笑に、レナは完全に腰を抜かして悲鳴を上げた。

 

「……レナ、私の背中から離れるな!」

ポラックスは電磁銃を構え、その駆動系を限界までオーバードライブさせた。

「これより防護任務を開始する!」

 

リンセウスという絶対の『法律』を失い、完全に狂気の檻が解き放たれたデータセンター。

赤く明滅する地獄の光の中で、二人と一匹を取り囲む、終わりなき『汚染物質(UltTypGen)』たちの逆襲が、今幕を開けた。




【Pixivからの転載です※】
転載元: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28264653
※転載に当たっては、文体等を変えています
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