透き通る世界に響く雷鳴外伝:便利屋68の副社長は雷神の成り代わり   作:おやおや、おやおやおやおや

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3作目イエーイ


とある世界のプロローグ

 

 ゲヘナ学園のとある倉庫街に鹿紫雲一……否、鹿紫雲ハジメはいた

 

「あー……何してたんだ?」

 

「え、えっとぉ……」

 

 目の前に座り込む、涙を浮かべて困り果てている少女を見下ろしながら……

 

────────────────────────

 

 入学まで残り1ヶ月を切ったが変わらぬいつも通りの日々、アビドス砂漠で呪力操作の細かな感覚を体に刻み込み、ついでに反転術式の上達を狙った自傷。そして、拡張術式及び極ノ番の習得

 

 ゲヘナ学園に入学するまでに習得しようと試みているが、名前と呪詞を決めただけで何も進展は無い。ただの呪力の塊のようなナニカが出来上がるだけだった

 

「(やっぱダメか……)」

 

 軽いため息をつきながら手のひらに浮かんだ呪力の塊を握り潰して消し、踵を返して柴関ラーメンへと歩いていく。いつもと変わらない、ルーティーンとなったものだ

 

 今日もユメはいるだろうか、今日もお気に入りの柴関ラーメンをハムスターみたいに頬張っているのか……

 

 そんな他愛もないことを考えながら、アビドス砂漠の砂を踏みしめていく。ところどころ電気の呪力によりガラスと化した砂が太陽光を反射し、直接目に攻撃を仕掛けてくるがいつもの事だった

 

「(呪術ってイメージが大事だよな……なら、極ノ番の具体的な見た目とかをイメージすれば形を成せるのか……?)」

 

 今日も今日とて、呪術師としての知識など原作の物しかないペーペーの呪術師として、原作ほんものの雷神を超えようとするために脳内で必死に考えていた

 

 

 ゲヘナ地区の駅から徒歩20分に位置する、鹿紫雲ハジメが目覚めた自分のアパートへと向かって歩いていた。爆発音、銃声、罵声に怒鳴り声……転生一ヶ月で既に慣れた雑音をBGMにしながら

 

 転生して一週間あたりは流れ弾や爆発に怯え、細心の注意を払いながら移動していたが、さすがに同じことを何十回も見れば慣れる物だ……まあ、キヴォトスではこれに慣れないとやっていけないのだが

 

 銃弾か当たっても痛い程度で済んでいるキヴォトス人特有の耐久力を持つ不良を横目に、内心羨ましがりながらも時々飛んでくる流れ弾を避ける。何なら欠伸をする余裕まである

 

 不良の目の前で欠伸をしてしまえば「私のことを舐めてんのか!?」と怒鳴りながら銃を乱射してくることを、同じことを5回もやって学んだ鹿紫雲は目尻に少し溜まった涙を指で拭き取りながら歩く

 

 と、そうしている時、一際目立つ地点があった

 

 奥の奥の方にある倉庫が連なった地点。銃声や罵声が聞こえるのはいつも通りだが、奇妙な気配が一つだけあった

 

 立ちながら銃を撃っている不良のすぐ側、その近くに座り込んでいる小柄な気配。その小さな気配を、鹿紫雲は感じていた

 

「(……人助けは柄じゃねぇんだけどな)」

 

 そう思いながらも、今の鹿紫雲の中身はバリバリ現代の日本人。困った人に気づきながら見て見ぬふりをするというのは気分が悪い

 

 部屋に置いていた、今では自分の相棒にまでなっている赤・い・如意棒を握りしめ、呪力で身体能力を強化してその地点へと走って向かっていく

 

 

 倉庫の屋根から見下ろせば最悪な景色が広がっていた

 

 火薬の匂いが辺りを満たし、ノズルフラッシュが絶えず起こり、周りの倉庫もボコボコどころか殆どの倉庫の壁が剥がれ落ちていた。血を流し倒れている不良までいる

 

 そして何より数が多い。不良グループ同士の抗争のような物だろうが、見た感じ60人は軽く超えている。鹿紫雲はここに来たことを少しだけ後悔していた。これだけ人数がいるのなら怪我は免れないし、反転があるとしても痛いものは痛いのだ

 

 肺を撃ち抜かれるかも、脇腹を貫通してしまうかも、骨が折れ内蔵に刺さるかも、頭を撃ち抜かれてそのままお陀仏……骨が折れ内蔵が傷つく痛みは想像を絶するだろう。そんな考えが脳を支配する、だが──

 

 

それは雑魚の思考だ

 

 

 原作で鹿紫雲一の発したその一言が脳裏を過ぎり、今までのネガティブな考えが払拭された

 

「(そうだな……痛みに怯えて退くなんて雑魚のやる事だな……はっ)」

 

「サンキューな、カッシー」

 

 口元が歪み、戦闘狂としての狂気の笑みが顔に浮かんだ

 

 

 鹿紫雲ハジメという突然の侵入者、そしてただでさえ多い不良の人数により戦場は完全に混沌を極めていた

 

 銃を扱うキヴォトス人にとって銃を使わない戦い方など有り得ない。その常識が、如意を扱う近接戦闘術を使う鹿紫雲ハジメには通じない

 

 懐に潜り込まれて思いっきり殴られ、横薙ぎにされた如意が腹を叩き、呪力で強化した身体能力を前に、ただの不良程度では手も足も出ずに一方的な蹂躙となっていた

 

 そしておよそ6分、ボロボロの倉庫街に静寂が訪れた

 

「ふぅ……よし。無傷、とまではいかなかったが上出来だな」

 

 頬にできた赤い線を親指で拭き取り反転で治す。親指についた血を舐め取りながら呪力で感覚を研ぎ澄ませて、あの小柄な気配があるか辺りを見渡している。と──

 

コンッ

 

 背後で石が転がる音が聞こえた

 

「……あ」

 

 やってしまった、と言わんばかりに発せられた小さな声。振り向けば丸メガネをかけ、角の生えた少女が忍び足でその場を去ろうもしている最中だった

 

「おい──」

 

「っ!!」

 

「あぇ!?」

 

 鹿紫雲にバレたと分かった瞬間に全速力で逃げる少女。あの量の不良をたった一人で全て鎮圧した化け物が自分に気づいたのだ、何をされるか分からないという一種の生存本能から逃走の判断が出たのだろう

 

 だが、足下を見ていなかった

 

「あぁっ!?」

 

 大きめの石に躓いて転んでしまう。それでメガネが遠くに吹っ飛び、膝や肘に少しだけ擦り傷ができた。痛みを堪えながら急いで立ち上がり逃げようと──

 

「おい、大丈夫か?」

 

「えっ?」

 

 振り向けば自分と離れていたはずの鹿紫雲が目の前にいた。音も一切聞こえず、まるで最初からそこに居たかのようだった。これ以上に怖い出来事があるだろうか、見下ろされる恐怖に耐えきれなくなった少女の目に涙が浮かぶ

 

──────────

 

──────

 

──

 

 そして、最初に戻る

 

「あー……何してたんだ?」

 

「え、えっとぉ……」

 

 目の前の見知らぬ少女を怖がらせないように優しく語りかける鹿紫雲。怯えている理由がさっきの抗争の影響がまだ残っているんだろうと鹿紫雲は思っているが、怯えている原因がまさか自分だとは思いもよらないだよう

 

 少女はなにかを言おうと必死に頭を回すが言葉が何も出てこない。あの人数の不良を倒した未知の人間が目の前にいるという極度の緊張状態により、口が開いたり閉じたりを繰り返していた

 

「そんなに急がなくてもいいぞ……ゆっくり、深呼吸をして……落ち着いてきたら話してくれ」

 

 片膝を立ててしゃがみ少女との視線を合わせたことにより、少女は緊張が幾分かマシになったのか呼吸を落ち着かせてゆっくりと口を開く

 

「そ、その……私、アウトローっていうのに憧れてて……それで今日、ここでとある取引があるって聞いたんです……」

 

「だから見に行こうって思って……陰から見てたら、急に始まって……」

 

「……それで逃げるタイミングを失ったと」

 

「はい……」

 

「何してるのさ……てか、膝擦りむいてるじゃん。大丈夫?」

 

 額に手を当てて視線を下の方に向けた鹿紫雲の目に、擦りむいて赤くなっている少女の膝が映る。頑丈な肉体だからか、ほんの少しだけ血が滲む程度の怪我だった

 

「だ、大丈夫です……」

 

「んー……余計なお節介かもしれないけど処置をしてもいい?俺の家すぐそこら辺だし、そこから救急箱持ってくるから少し待ってて」

 

「え?いや、大丈──」

 

 少女が答えを言う暇もなく鹿紫雲は既にその場から消えていた。微かに砂埃の舞うそこに居たのは、キョトンとした顔で座っている少女と遠くに見える大量の気絶した不良達だけだった

 

 

「お待たせ。少し染みるかもしれないけど我慢してね」

 

 救急箱片手に戻ってきた鹿紫雲は少女の前に膝を立ててしゃがみ込むとピンセットで綿を摘み、そこに消毒液を少量かけてから優しくポンポンと少女の膝の傷口を消毒していく

 

 消毒が傷に染みて痛いのか時々ビクッと体が震えているが、声は出さずにただ淡々と処置をする鹿紫雲を眺めていた

 

「──よし、終わりっと」

 

 最後に可愛いパンダの絆創膏を傷口に貼ってから、取り出したピンセットやら何やらを救急箱に収める。まさかこんなに可愛い絆創膏を貼られるとは思っていなかったのか、座ったままの少女はジーッと自身の膝に貼られた絆創膏を見ていた

 

「……あ、パンダ嫌いだった?」

 

「え?あ、いや……そういう訳じゃ…ちょっと珍しいなって……」

 

「確かにそっか、パンダの絆創膏なんてあんま見ねぇし。んで、立てそうか?」

 

「は、はい……大丈夫です」

 

「……あ、そういや自己紹介がまだだったな。俺は鹿紫雲ハジメ、来月からゲヘナ学園に入学する……中学3年生だ」

 

「わ、私は陸八魔アルって言います……えっと、ゲヘナ中等部の2年生です……」

 

「(陸八魔アル……?なんだっけ、Twitterとかで良く見かけたあの白目剥いてる子だっけか……見た目が全然違うな、高校デビューってやつなのか?)」

 

「陸八魔ね。よろしく」

 

「は、はい!よろしくお願いします、鹿紫雲さん!」

 

 自己紹介を終えた鹿紫雲が踵を返して帰ろうと何歩か歩いた時、後ろから聞こえた陸八魔の声に呼び止められる

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「その……わ、私!高校に入ったら会社を立ち上げようと思ってるんです!だから、その……良ければ入ってくれませんか!お願いします!」

 

 90°きっかりで勢いよく頭を下げた陸八魔。メガネが再び落ちそうになるが手で抑え、そのままの体制で鹿紫雲からの返答を待っていた

 

 鹿紫雲の少し驚いた表情は可愛い後輩を見るような優しい笑みへと変わり、帰ろうとしていた足を再び陸八魔の前まで運んでから手を差し出した

 

「……顔を上げてくれ、陸八魔。俺なんかでいいなら是非とも入らせてもらうよ」

 

「……!ありがとうございます!」

 

 差し出された手を両手でしっかりと握る陸八魔の顔には安堵と嬉しさが混じった表情が浮かんでいた。ハードボイルドなアウトローを目指す少女は、また1歩その夢に近づいて行っただろう

 

 

 




薬指の方もそろそろ書かなアカンな……
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