透き通る世界に響く雷鳴外伝:便利屋68の副社長は雷神の成り代わり   作:おやおや、おやおやおやおや

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これから『便利屋68』って事でこの作品は午前か午後の6時8分に投稿します
それと多分ですが、明日か明後日に本編が投稿されると思います。明日の俺を信じてくれ


幼馴染

 

 ゲヘナ学園への入学を一週間後に控えた今日、アビドス砂漠での特訓を終え、いつも通り駅から帰路に就こうとしていた鹿紫雲ハジメ。今日はいつもより喧嘩をしている不良達の数も少なく、久しぶりに伸び伸びとしながら歩いていた

 

 陸八魔との出会いから約3週間。その短い期間で鹿紫雲の反転術式の出力は少し上がり、小さい傷程度なら瞬きをする合間に治っている次元にまで到達した

 

 天性の術師としての才能か、それとも転生特典か、それとも鹿紫雲一の肉体のおかげか。その辺はあまり分からないが、少なくとも強くなっていってる事は確かだった

 

 歩みを止めて大きく息を吸えば、微かに漂う硫黄の匂いと硝煙の酸化臭が鼻を突く。そのまま空を見上げれば、雲ひとつ無い青い空と巨大なヘイローらしき円の一部が見える

 

 再び前を向いて歩こうとした時、腰辺りに何かが突きつけられた。それと同時に、微かに幼さが残る声も聞こえてくる

 

「鹿紫雲ハジメさん、だよね?あ、怪我したくないなら振り向かないでね」

 

「……誰だ。というか、何故俺の名前を知っている」

 

 少なくとも、今まで過ごしてきた中では聞いた事のない声だった。可愛らしさがあり、それでいて揶揄っているような、今の状況にあまり似合わない声

 

 超近距離で何をされるか分からない状態の為、大人しく如意を地面に落とし、抵抗しないことを示すために両手を上げる

 

「なんでかって?それは〜、ひ・み・つ。大丈夫だよ?ちょーっと私と『お話』してくれるだけでいいからさっ」

 

「お話ね……それじゃあ今、俺の背中に突きつけてるブツを収めてくれねぇか?とてもお話するような雰囲気じゃねぇんだが」

 

「ごめんけど、それはできないかな。逃げられちゃったら私が困るし♪」

 

「逃げねぇよ、約束する」

 

 背中に突きつけられているのは形状からして小型拳銃、流石にこの距離から撃たれたら避けれるはずもなく重症を負う。反転で治せる範囲だと思うが、痛いものは痛い

 

 だから撃たれる前に振り向いて制圧するというのも手だが、まだ何か隠し持っている可能性もある。俺のことを知っている以上、拳銃ひとつで脅しに来るとは考えにくい

 

 そもそも俺自身、何か恨まれるようなことをした覚えは……少しあるが、それだけだ。多分だが片手間に制圧したどこかの不良が、仕返しに俺の事を襲うために依頼したとかだろう

 

「えぇ〜?約束するって言葉が1番信用できないんだけど」

 

「信用できねぇってのなら俺の腕を賭けてもいいぞ」

 

「クフフ、覚悟凄いねぇ。というか、別に腕は要らないよ?」

 

「……例えみたいなもんだよ。それだけその約束を守る覚悟があるって事だ」

 

「んー、それなら信用しても良さそうだね。ごめんね〜?怖がらせちゃって」

 

 その言葉の後に、腰あたりに突きつけられていた物の感覚が無くなるのを感じると、すぐさま後ろを振り向いて制圧を──

 

「あれ、振り向いちゃった?」

 

 しようとしたが、そこに居たのは小さめの白髪でサイドテールの少女で、その手には黄色いバナナが握られていた。片方の手がバナナの先端に添えられていたことから、ここで食べようとしていたのだろう

 

「……バナナだ」

 

「うん、バナナだよ」

 

「……じゃあさっき、俺に当てていたのは…」

 

「クフフ〜、もちろんコレだよ?お兄さん、随分と素直に騙されちゃったね〜、武器まで落としちゃってたし」

 

「誰だって後ろから尖ったもん突きつけられたら、銃だって思うだろうが……」

 

 ため息をつきながらしゃがんで地面に落とした如意を取る。あの時、何故か揶揄っているような感じがしたのは気のせいじゃ無かったようだ

 

「……じゃあ、お話ってのは隠語とかじゃなくて、マジで話したいだけだったのか?」

 

「せいかーい!」

 

「コイツ……わざわざこんなことやらなくても、話したいなら付き合ったっての……」

 

「面白い反応してくれそうだったからね〜。それもムツキちゃんの予想通り、いい反応してくれたし」

 

 ムツキちゃん……ムツキ、という名前なのだろう。どこか聞き覚えのある名前だが、生憎思い出せそうにない。()()()()で聞いた事があるのだろうか

 

「それじゃ立ち話も何だし、近くのお店に行こっか!」

 

 

 選ばれたのはとある飲食店。昼時ということもあり、お腹を空かせていたのだろうか、手を引っ張っられてここに連れられてしまった。既に机には様々な料理が置かれてある

 

 それと来る途中で名前を聞いたが、浅黄ムツキと教えてくれた。俺がこの前出会った陸八魔と幼馴染らしく、話を聞いて気になったから俺に話しかけたそうだ。……ファーストコンタクトは物騒だったが

 

「……それで、話ってのは何だ?」

 

 昼は既に柴関ラーメンで済ませていた俺は、特に何か頼むということはせず、机に置かれていたお冷をくいっと呷る

 

「えーっとね?聞きたいことは色々あるんだけど〜、まずひとつはね?」

 

 食事の手を止め、人差し指を立てたムツキ。子供らしい笑顔とは裏腹に、その声には若干の疑いが乗っているように感じられる

 

「アルちゃんがさ、『私が作る会社に、早速社員がついてくれることになったの!』って喜んでたけどさ。どういう意図なの?」

 

 机に両肘をついて手を組むその姿は、その小さな姿とは違ってとても様になっていた

 

 笑顔だが目が笑っていないその視線が向けられた時、背筋が冷える感覚を覚える。何も意図は無いはずなのに、その視線に当てられるとビタッと縫い付けられたようにお冷を持つ手が空中で止まった

 

「アルちゃんってさ、昔から人の事を何の疑いもなく信じちゃうお人好しなの。だからさ、今回も何か裏があるんじゃないかな〜、って」

 

「それで、どうなの?」

 

「……面白そうだったから。それ以外にねぇよ」

 

「ふ〜ん。面白そうだったから、ね」

 

「別に信じなくていい……だが、俺がアイツに何かしようって思う気持ちが無いのはホントだ」

 

 半分ほど残っていたお冷を一口で飲み干してから机に置く。この返答を聞いたムツキは俺のことを信じてくれたのか、雰囲気がさっきより少しだけ和らいだ

 

「それでいっか。本当に何かするつもりは無さそうだし」

 

「随分と簡単に信じてくれるんだな」

 

「こう見えても言ってる事が嘘か本当かくらいは分かるからね〜。それで、聞きたいことの2つ目なんだけど」

 

 

「アルちゃんを見てさ、最初にどう思ったの?」

 

「なんだその質問、さっきとの温度差凄いな」

 

「別にいいじゃん?それでそれで、どう思ったの?」

 

「どう思ったって……んー」

 

 顎に手を当てて、初めて会ったあの時の事を思い出す

 

 わざわざとある取引を見るためだけに危険なところに行き、そこで逃げるタイミングを失って陰で大人しくしてて、さらに転んで膝を擦りむいて、アウトローに憧れてるとは思えないほど雰囲気が柔らかい……

 

「……律儀で良い娘?」

 

「ふ〜ん、そういう印象なんだね」

 

「ドジっ娘とか他にもあったけど、そういう印象が強かったな。立ち上げる予定の会社に入ってくれませんか、ってわざわざ頭を下げてまで言ってたし」

 

「クフフ、アルちゃんはやっぱり律儀だね〜。ま、そういう所が良いんだけどさっ」

 

「そういえばアルちゃんもさ、戻ってきて早々お兄さんの事を話してくれたよ?怪我した私の膝に、パンダの絆創膏を貼ってくれた優しい人だーって」

 

「というか、あの絆創膏ってどこに売ってるの?見たことないけど」

 

「探せば見つかるでしょ」

 

「投げやり〜……それじゃ話を戻して、3つ目の質問なんだけど──」

 

────────

 

──────

 

───

 

「──それで11個目の質問だけど〜」

 

「多い!」

 

 この店に入っておよそ30分と言った所か、未だムツキからの質問責めは終わる余地を見せない

 

 机に置かれていた皿はすっかり綺麗になり端に重ねられ、ムツキの目の前にはイチゴが乗ったデザートのパフェが置かれていた。質問の最中に時々スプーンで掬って食べては、幸せそうな顔で頷いている

 

「まださ、うん。6までは分かるよ?なんで2桁に到達するのさ」

 

「別にいいでしょ〜?お兄さんもそう言ってるけど、私の質問にちゃんと全部答えてくれてるじゃん?」

 

「そりゃ質問を返さなかったら失礼に思われるだろ……」

 

「所々変な質問あったしさ……。何だよ、8個目で出てきた『お金の使い方』然り、10個目で出てきた『仕事をするならどんなのがいい』って……ほぼ初対面のやつに聞くことじゃねぇだろ」

 

「じゃあお兄さんはどんな質問をされるのがいいの〜?」

 

「どんな女性(おんな)がタイプか」

 

「もっとダメじゃん。それこそ初対面の人に聞いちゃダメでしょ」

 

「そうだな、これこそ言っちゃいけねぇな。例えが悪かった」

 

 本能的にポケットから煙草を取り出そうとして、未成年よりもそもそも煙草を持っていない事に気づき、紛らわすように追加したお冷を手に取って飲む

 

「……てか、さっきからしてた質問、なんか面接っぽかったな。長所や短所の所とか」

 

「だってアルちゃんの会社に入るのが相応しいかの質問だったからね♪」

 

「マジか……それじゃ、質疑応答をしてのアンタの判断は……?」

 

「もちろん合格!いやぁ、アルちゃんってばいい人拾ってきたね♪」

 

「拾ってきたってなんだよ、捨て子か俺は」

 

 笑顔でサムズアップをするムツキに、鹿紫雲はツッコミをしながら呆れたようにため息をつく

 

 その対面でムツキはパフェの最後の1口を食べ終わり、その場で軽く伸びをしてから満足そうに息を吐いていた。満腹なのか腹を二度摩っている

 

「んー、お兄さんから聞きたいことは色々と聞けたし、そろそろ終わりにしよっか」

 

「随分食ったな、成長期だからか?」

 

「ちょっと〜?女の子にそういう質問はご法度なんだけど?」

 

「ははっ、悪い悪い。んじゃそのお詫びって事で、ここは俺が払っとくよ」

 

「ホントに?クフフ、お兄さんやっさし〜♪」

 

 元から全部払う気だった、という言葉を呑み込んで立ち上がり、会計を済ませる。店に来た時に空の一番上に位置していた太陽は、少しだけ西に傾いていた

 

 ……奢ったのは良いものの、1人分だとしてもよく柴関ラーメンに行く鹿紫雲の財布には、かなりのダメージが入ってしまったのは言うまでもない

 

 

 




ムツキのエミュが分からない(n回目)
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