漆間隊の暗殺者   作:気高き犬

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ストックがなくなったので止まらないよう頑張ります。

追記:誤字報告ありがとうございます!助かりました。



5話 B級ランク戦ROUND1 ①

 B級ランク戦ROUND1、転送開始。市街地D時刻昼

 

 視界が一瞬白く染まり、次の瞬間、ぼくは高層マンションの屋上に立っていた。昼下がりの強い日差しが、建物の影をくっきりと落としている。中央には巨大なショッピングモールがそびえ、周囲に雑多な建物が広がっていた。

 

 ぼくはすぐにバックワームを起動して移動を開始する。六田さんがマークを付けてくれているスポーン位置を確認すると漆間くんは中央よりの北。ぼくは南端だった。付近には南西と南東にスポーンしている隊員がいるみたいだけどどちらもレーダーからすぐ消えてしまったようだ。

 

 作戦通り中央のモールを狙える場所に潜む狙撃手を狙いに行くためスポーン位置から狙撃手が隠れそうな場所を想定しながら移動する。その時一瞬ここから見て西に中央に向かって動くオレンジ色の人影を見た気がした。恐らく柿崎隊の誰かだと思う。

 

『六田さん、南西にスポーンしてた隊員は柿崎隊みたいです。中央に向かっています』

『わかりました。ありがとうございます、渚くん』

 

 南西が柿崎隊でこっちに向かってきていないということは南東は別の隊の可能性が高いと思う。もし南東にいる人物が狙撃手ならどう移動するだろう。南側にはぼくがスポーンしていて来づらいはずだから東に移動するだろうか。その時東端にあるの高層ビルが目に写った。なぜだかそこに誰か居るとぼくにはわかった気がした。

 

 建物の影を伝いながら、ぼくは高層ビルに向かって移動を開始した。道中は足音を殺し、気配を徹底的に消しながら最速で駆ける。こういった技術は全てE組で散々訓練を受けたものだった。そのせいか自然と体が動いた。

(……いる)

 

 ビルの屋上の縁に、狙撃姿勢を取っている人影が見えた。たしか学校で一度だけ話したことがある……半崎くんだったと思う。ぼくは気配を殺しながらスコーピオンをナイフ状に展開し、死角から一気に間合いを詰めた。そして半崎くんに気づかれることなくその背後に忍び寄り、片手で半崎くんの目を塞ぎ、優しく喉を切り裂く。

 

《戦闘体活動限界——緊急脱出》

一瞬。

半崎くんの体が光に包まれ、べイルアウトした。

ぼくはすぐに屋上から離れ、次の位置へと移動を開始しながら報告をする。

 

『1人取りました』

『よくやった、チビ』

『すごいです、渚くん』

 

漆間くんの内部通話の声が少し満足げに聞こえた。六田さんも喜んでくれた。

心臓が少し速く鳴っている。E組の頃の緊張感が、久しぶりに蘇ってきた。

ぼくは静かに息を整え、次の標的を探した。

 

 

ーーーー

 

 誰かがべイルアウトしたのを柿崎国治が確認したのは、中央ショッピングモール2階で隊員の照屋と合流した時だった。

「文香、無事か」

「はい、隊長。南西には敵はいません」

「誰かがべイルアウトしたみたいだ。真登華、わかるか?」

『東端の高層ビルだったからたぶん荒船隊の誰かだと思う。』

「……わかった。また何かわかったら教えてくれ」

柿崎は会話を続けながら周囲を見回した。もう1人の隊員である巴は北東のエリア端に転送されたためまだ合流に時間がかかるようだった。

 

その時、内部通話に巴の声が入った。

『隊長! 来馬さんと別役先輩がモールに向かってます! 北東側からです!』

柿崎は驚いた。

「本当か?近くに鋼はいないか?」

『村上先輩はいないです。今3階に二人とも向かっています』

その時宇井から通信が入る。

『たぶん、西側からこっちに向かってる反応が1つあるからそれが村上先輩だと思う。でもモールとの間にも反応が2つあるから、それで足止めされてるみたいね』

「隊長、ここは挟み撃ちをしましょう。村上先輩がいない今がチャンスです」

『俺も行けます!どこから攻めますか?!』

 

部下3人から進言された柿崎は一瞬躊躇した。西側の村上とモールの間の反応をレーダーで確認したとき違和感を感じたからだ。だが今はチャンスであり、柿崎には考えている時間はなかった。

 

「わかった、文香と俺で迎え撃つ。虎太郎は足が止まったところを後ろから奇襲してくれ。鈴鳴が鋼と合流する前に仕留めるぞ」

「了解!」

 

照屋と柿崎は突撃銃を構え、3階に向かった。転送開始直後からバックワームをつけ続けているため、まだ柿崎隊の場所は割れていないはずだった。

モール内の空気が張りつめていく。遠くから足音が2つ聞こえてきた。続けて来馬と別役の姿が現れる。

「行くぞ、文香」

「はい!」

 

 2人はバックワームを解き、シールドを展開しながら突撃銃を連射した。

「な……柿崎隊! 外にいるはずじゃ……!」

来馬が驚いた声を上げ、慌ててシールドを展開する。別役も即座に援護に入ったが、突然の銃撃に足が止まった。

そこへ巴が弧月を展開して後ろから奇襲を仕掛けた。

「うわっ……!」

別役の足が弧月の一撃で大きく削られる。来馬も意識を割かれ、柿崎と照屋の集中砲火を浴びて左腕と足を削られた。

 

(……勝てる)

柿崎はそう思った瞬間、巴の背後に漆間恒が静かに現れた。

漆間はサイレンサーを発動したまま、気づかれることなく巴を銃撃する。巴はシールドを張ることもできず頭部に何発か被弾した。巴の体はひび割れていき、光の束に変わる。

《戦闘体活動限界——緊急脱出》

 

「虎太郎!?」

柿崎が動揺したその隙に、漆間は鈴鳴第一に向けて銃撃を開始した。

 柿崎と照屋は動揺しながらも、なんとか挟み撃ちの態勢を取ろうとした。しかし、次の瞬間——

ガラスが大きく割れる音が響いた。

窓から村上鋼が猛烈な勢いで飛び込んできた。弧月を大きく振りかぶり、柿崎に一撃を放つ。

 

「っ……!」

柿崎は咄嗟に弧月を展開してガードしたが、強烈な衝撃で体ごと吹き飛ばされた。壁に激突し、息が詰まる。

「隊長!」

照屋が即座にカバーに入り、突撃銃を連射した。しかし村上はレイガストをシールドモードに展開して全ての弾を弾き返し、逆に照屋を圧倒していく。

 

漆間は鈴鳴第一に突撃銃を乱射しながら、現在の状況を冷静に分析していた。

(村上が想定より早く来ちまったな……ここは一旦退くか)

漆間は素早く判断し、退却しようとしたその瞬間——

背後から冷たい声が響いた。

「旋空弧月」

荒船哲次が振り抜いた延長された弧月のブレードが、漆間の左足を容赦なく切り飛ばした。

「ぐっ……!」

漆間が片膝をつく。

荒船は弧月を構え直し、冷たい声で言った。

「ちっ、足だけか。まあいい……うちの半崎をやってくれた落とし前は、きっちりと付けてやる」

 

ーーーー

【B級ランク戦 ROUND1 実況中】

 

武富桜子:「おおっ! 一体これはどういうことでしょうか! 現在モール内3階で激しい戦闘が発生しています! 鈴鳴第一を挟み撃ちにしていた柿崎隊の巴隊員が、漆間隊長に後ろから撃破されました! そこに現れた村上隊員と荒船隊長により、状況は非常に混沌としてきました! 時枝さん、当真さん、これは一体……!?」

時枝充:「そうですね。柿崎隊はモール内で固まる作戦をしていましたが、モール内を経由して北西に向かう鈴鳴第一を巴隊員が見つけたことで状況が大きく変わりましたね。」

当真勇:「鈴鳴第一は、漆間のダミービーコンにまんまと騙された感じだな。北西にいるのは柿崎隊だと完全に思ってたはずだろ。」

時枝:「漆間隊員らしいやり方ですね。村上隊員に姿を見せず、アステロイドの銃撃だけで足を止めて、メテオラのトラップだけ残して自身はモールに向かっていました。」

当真:「漆間の誤算は荒船がモール内に来ていたことと、鋼が予想以上にこっちに来るのが早かったってところだな。」

武富:「荒船隊長は半崎隊員がべイルアウトした直後にはショッピングモールに向けて移動しているように見えました!」

時枝:「半崎隊員が潮田渚隊員の奇襲にほぼ気付けていなかったので、隠密勝負は不利と見た可能性がありますね。」

当真:「ここで漆間を落とせなかったのは痛ぇけど、漆間もこれで攪乱もしにくくなっただろ。」

武富:「現在、漆間隊2点、他チームは0点となります! ますます目が離せない状況になってきました!」

時枝:「まだどのチームも逆転のチャンスはあると思います」

武富:「果たして、この混沌とした戦いを制するのはどのチームか! 熱きB級ランク戦第一戦、勝負の行方から目が離せません!!」

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