漆間隊の暗殺者   作:気高き犬

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ワートリの最新号が早く読みたくて寝れない毎日




7話 B級ランク戦ROUND1 ③

 荒船哲次はモール内の煙と炎の中で、削られた左足を庇いながら村上鋼と相対していた。

(……潮田が穂刈のところに来るまでが勝負だ)

 

 半崎が何もできずにペイルアウトした直後、荒船は即座に隠密は不利と見てモール内へ移動した。その後漆間への奇襲は一応成功したが、漆間の反応が早かったため左足を切り飛ばすにとどまった。結果的にそのおかげでメテオラの連鎖爆発が発生し射線が通り、穂刈の狙撃によって村上の腹を貫くことができた。

 

(鋼は落ちる寸前だ……狙うなら照屋からか)

荒船は内部通話で穂刈に指示を飛ばした。

『穂刈、照屋を狙え。鋼はもう長くない。潮田の位置はまだわからないが、あと一発は撃てるはずだ』

『了解』

穂刈の返事を聞きながら、荒船は村上と照屋に視線を戻した。村上は腹に大穴を開けながらも、弧月を構えて立っている。照屋も突撃銃を構えまだ戦える状態だ。

 

荒船が照屋に向かって切りかかろうとした瞬間——

 

「スラスターオン」

 

村上がレイガストを盾にして一気に荒船に距離を詰めてきた。

 

 「チ……旋空弧月!」

荒船が横薙ぎに弧月を振るう。延長されたブレードがレイガストのシールドを切り裂く——が、村上は地面スレスレに屈み、回避する。そのまま弧月を振り上げる。

荒船はなんとか後ろに下がることで避けたが、バランスを崩して倒れ込んだ。

そこへ照屋が突撃銃を連射する。

「っ……!」

荒船はシールドを展開して防いだが、数発が胴体や足を削りダメージを与えた。

その瞬間——

モール外から放たれた狙撃が、照屋の頭部を正確に撃ち抜いた。

 

《戦闘体活動限界――緊急脱出》 

照屋の体が光に包まれ、べイルアウトする。

「……!」

荒船が体を起こそうとしたその時、村上鋼が猛烈な勢いで迫ってきた。腹に穴を開け、大量のトリオンを流しながらも、村上は弧月を振り下ろした。

「これで……終わりだ!」

村上の弧月が荒船の肩から胸元にかけて深く切り裂いた。

荒船は顔を歪めながら光の束に包まれていく。

《戦闘体活動限界――緊急脱出》

 

 村上は荒船が転送されていくのを見届けながら体がひび割れていくのを感じた。

 (来馬さん、太一、すみません、自分はここまでです……)

《トリオン漏出過多、戦闘体活動限界――緊急脱出》

 

 虚ろとしたショッピングモールは、戦いの跡を残したまま、ただ佇んでいた。

 

 一方、穂刈は照屋を撃ち抜いた達成感に、ほんの一瞬、肩の力を抜いていた。

その直後——背後で、空気がわずかに揺れた。

彼はゆっくりと振り返った。

振り返った穂刈の視界に、小柄な少年の姿が映る。

潮田渚。

二人は静かに相対した。

 

ーーーー

 

 屋上に到着した時、荒船隊の狙撃手――穂刈さんはすでに狙撃を終えたようで、肩の力を抜いている様子だった。こちらに気づき、ゆっくりと振り返る。

「……来たか、潮田渚」

冷静にイーグレットを構え直した穂刈さんの鋭い視線が、ぼくを捉える。

ぼくは静かに息を整え、ゆっくりと距離を詰めた。

穂刈さんのの指が引き金にかかる――その瞬間、ぼくはカメレオンを展開して、右に大きく避ける。

 

 「っ……!?」

穂刈さんは姿の消えたぼくに照準をあわせられない中、必死にレーダーを見てイーグレットで狙撃してくる。高速の弾丸はぼくのすぐ横を掠め、屋上の床に火花を散らした。耳元で風切り音が響く。しかし、連発のできないイーグレットはまもなくリロードに入った。

その間にぼくは穂刈さんの背後に回り込み、カメレオンを解除する。左手で彼の後頭部を軽く押さえ、そのまま右手に持ったナイフ型のスコーピオンで喉を突き刺した。

「…………」

一瞬の沈黙。

刃が穂刈さんの喉を貫く感触が、手に伝わった。

 

「強いな。お前」

 穂刈さんはそう言い残し、光の束に包まれる。

 

《戦闘体活動限界――緊急脱出》

 

 ぼくは静かにスコーピオンを解除した。

喉を貫いた感触が、まだ手に残っている。E組の頃には遂に感じることのできなかった――冷たい感触だった。

(……これで、終わった)

モール内から聞こえる爆発音と銃声が、少しずつ遠のいていく気がした。

ぼくは屋上の縁に立ち、静かに息を吐いた。

 

 

ーーーー

 

 【B級ランク戦 ROUND1 実況中】

 

武富桜子:「……皆さん! モール内の戦いが決着しました! 荒船隊長と村上隊員がほぼ同時にベイルアウト! 続いて穂刈隊員も潮田隊員に撃破されました!! 現在、エリア内に残っているのは……潮田隊員ただ一人になりますので漆間隊には生存点2点が入ります。総合結果は漆間隊6点、鈴鳴第一が3点、荒船隊が2点、柿崎隊が1点になります!!」

時枝充:「……これでB級ランク戦ROUND1は終了となりますね」

当真勇:「最後まで先のわからねーいい試合だったが、結果だけ見りゃ漆間隊の圧勝だったな。」

武富:「では、ここでこの試合を最初から振り返っていきましょう!」

時枝:「最初は潮田隊員の完璧な奇襲から始まりましたね。半崎隊員に全く気づかれることなく背後まで回り込んだ隠密能力は素晴らしいものだと感じました。全体を通して、漆間隊の奇襲と隠密が光っていた試合でしたね」

当真:「漆間がしっかり試合をコントロールしていたな。ダミービーコンを使って鈴鳴をモール内に誘導したのは天晴だったぜ」

時枝:「中盤は村上隊員の強さが光る試合でしたね。狙撃の射線さえ通らなければモール内は鈴鳴第一が制圧してもおかしくなかったように思います」

当真:「鈴鳴は鋼以外の2人がもっと動けるようになれば安定して強い部隊だと思うぜ」

武富:「途中でモール内に乱入した荒船隊長の判断はどう思われますか?結果的に村上隊員を落とすことに繋がっていますが……」

時枝:「確かに元アタッカーの荒船隊長にしかできない動きでしたね。ただ、漆間隊長がメテオラを起動させなければ射線が通らなかったことを考えるとそうとも言えないと思います」

当真:「漆間なら荒船がモール内に来なくてもメテオラ使って射線が開いてた可能性があるから狙撃に専念するのもありだったと思うぜ」

武富:「そうですね。では、柿崎隊についてはどう思います?今回は最下位で終わってしまいましたが……」

時枝:「柿崎隊は合流を徹底した点は非常に良かったですね。普段はあまり採用されない鈴鳴への奇襲など部隊としての成長も見えてきています。」

当真:「でも悪かった点も目立ったな。挟み撃ちに飛びついた判断は結果的に漆間に利用されたし、最初のマップ選択からして漆間隊に有利すぎたと思うぜ」

武富:「なるほど! 今後の成長に期待ということですね!」

時枝:「そうですね。あと今回の試合で最も注目すべきは漆間隊の成長でしたね。初参戦の潮田渚隊員の隠密能力が予想以上に高く、漆間隊長との連携が徐々に見えてきました。今後の試合が非常に楽しみですね。」

当真:「漆間とチビがちゃんと連携できれば、上位で勝つのも夢じゃねえかもな。」

武富:「ありがとうございます! 熱きB級ランク戦ROUND1は漆間隊の勝利で終了です! 次戦もどうぞお楽しみに!!」

 

 

【B級ランク戦ROUND1 終了】

 

 

ーーーー

 

 ランク戦が終了し、ぼくたちは隊室に戻った。

六田さんがいつものように温かいお茶を用意してくれていた。彼女は少し疲れた顔をしながらも、柔らかい笑顔を浮かべた。

「渚くん……本当にありがとう。あなたのおかげで、こんなにいい結果が出せたよ」

ぼくは小さく首を振った。

「六田さんのおかげです。指示が的確だったから、動けました」

そこへ、ドアが開いて漆間くんが入ってきた。まだ少し苛立った表情をしていたけど、ぼくを見て口の端を少しだけ上げた。

「やるじゃねえか、チビ」

ぼくは少し照れくさくなって、微笑んだ。

「……漆間くんもね」

三人は自然と視線を合わせた。

言葉は少なかったけど不思議と心が落ち着いた。

 

隊室の窓から差し込む光が、ゆっくりと床に落ちる。

E組の頃も、戦いの後にこんな風に仲間と静かに言葉を交わしたことがあった。

命がけの訓練の後で、ようやく感じられた「生きている」という実感。

 

ぼくは湯飲みを両手で包み、温かさを感じながら目を閉じた。

 

 

 

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