ブサイク得点王だった俺、最強スペックでサッカー人生やり直し〜今度こそ美女も世界一もすべてを奪い取る〜 作:クズ吉
2014年8月
8月の最終日、今日は望結とデートだ。
名古屋に水族館を見に行く。
俺は茉那と行った以来の水族館なのでそれほど久しぶりという感じではない。
同じものを何度も見るのは正直辛い。
だが望結は家族以外と水族館に行くのが初めてだと言って、楽しみにしていた。
俺の二股に付き合ってくれてる貴重な彼女だ。
ちゃんと楽しませてあげなければ。
「望結、電車賃俺払うよ」
「えっ?いいの?大雅君」
「うん。だって名古屋港までは結構高いし」
「ありがとう!カッコいいよ大雅くん!」
地元の駅の券売機の前で俺達は話している。
望結は俺の腕に抱きついて笑顔を見せる。
鼻の下が伸びそうになるが、ここは大人の余裕を見せつけるべきだ。
「俺も給料貰えるようになったから、望結遠慮しないで俺に頼っていいよ」
「そっか。お給料貰えるようになってよかったね。一杯甘えちゃおっと♡そういえばさ、大雅君はアマチュアだったけど、W杯日本代表の報酬って貰えるの?」
切符を買って電車を待つ間に望結と小声で話す。
「うん、貰えるみたい。まだ振り込まれてないけど口座はサッカー連盟の人に教えたよ」
「へぇ…楽しみだね。どれくらい振り込まれるかさ」
「一応前回大会の後に日本代表の報酬基準は公表されてるんだよ。前もって計算してみたら5月から7月の間の報酬は…1500万円くらいかな」
「せっ…!?」
俺が耳打ちで日本代表の報酬を伝えると、ひどく驚いた顔をする望結。
可愛いなぁ。
高校生からすれば1500万円は大金だろう。
高校生じゃなくてもそうか。
俺は報酬が振り込まれたとしても、望結の金銭感覚を狂わせないために、高級バッグをプレゼントなんてことはしないつもりだ。
「まぁ税金で半分持ってかれるんだけどね」
「それでもすごいよ。はぁ…改めて大雅君の隣にいると自分ももっと頑張らなきゃってなるなぁ…」
望結が少し落ち込んだ顔をする。
「望結は十分頑張ってるよ。毎日学校行って、絵を描いて、英語も勉強してるんでしょ?」
俺は望結の頭を撫でる。
「うん。だけどさ…私には大雅君みたいな成果がないというか…」
望結はとても頑張り屋さんだが、俺と比較して自分を卑下してしまっているようだ。
これはよくないな。
「望結は美術予備校以外で他人に絵を見せる事ある?」
「えっ?いやあんまりないかも」
「美術予備校の事は俺よく分からないけど、多分絵を描いて当たり前の環境に望結はいると思うんだ。でもさ、絵を1枚完成させるだけでも本当はすごい成果なんじゃないかな?少なくとも俺は望結が毎日絵を描いてるって聞いた時正気の沙汰じゃないと思った」
「ふっ、ねえそんな事思ってたの?」
望結が小さく笑ってからムクッと頬を膨らませた。
あざとい。でもかわいい。
「運動音痴な望結からしたらサッカーばっかりしてる俺も変に思えるんじゃない?」
「運動音痴って言うな!まぁ…でも大雅君のこと変だと思うことはたくさんあるかな」
「人ってさ自分が簡単に出来ることには結構鈍感なんだ。普段やってること、当たり前に慣れてしまって、それが自分の特性だったり特技の一部だってことに気づかないんだよ」
「特性…特技の一部…」
望結は今度は真剣な顔で俺を見つめる。
「つまりね、望結は成果がないって言ったけど、成果ってコンテストで表彰されたり、望結の志望校の美大に合格した途端に姿を現すわけじゃなくて、普段の積み重ねも成果だと思う。望結が練習用に描いた絵にも価値はきっとあるんだよ」
「うーん…そうなのかなぁ…」
望結はまだ納得のいってない様子だ。
「望結ってtmitterとかministudioやってる?」
「うん?何急に。やってるけど見る専かな」
「望結の絵、tmitterとミニスタで公開したらどうかなって。もちろん本名じゃないアカウントでさ」
「ええっ?私の絵を公開するの?」
望結は驚いた様子で俺を見る。
「うん、練習用に描いてる絵を毎日上げたっていいし、完成させた絵だけをアップしてもいいと思う。それは別に誰かに見せるためじゃなくてもいいんだ。この時の自分はこういう絵を描いてたんだって後から振り返る用にしても面白いかも」
「それは…いい考えかもしれないね」
「まぁ気が乗ったらやってみて。俺は望結が絵を上げる度に裏アカでイイね押すからさ」
「大雅君が私の絵を見てくれるの?だったら…やってみようかな♡」
望結は乗り気になったようだ。
絵を描く人なんてこの世には沢山いる。
まだ学生の望結が描く絵なんて価値はそんなにないのかもしれない。
だけどこんなにも頑張って背伸びしようとしている彼女を俺は賛美したい。
俺にとって望結の絵は、きっとどんな絵よりも綺麗に見えることだろう。
・・・・・・・
「大雅君!見てみて!チンアナゴだって!チン!アナ!ゴ!」
「はいはい、変な区切り方しない」
望結と水族館の館内を回る。
館内は夏休み最終日ということもあってか、子供が沢山いる。
俺はサングラスと帽子を被って変装しているものの、身長のせいで通りすがりの子どもたちに「あの人でっけー!」と注目されまくっている。
望結は俺とのデートが嬉しいのかはしゃぎっぱなしだ。
水族館の入場料はもちろん二人分俺が払った。
望結は先程の宣言通りちゃんと甘えてくれた。
遠慮されると逆に俺がモヤモヤしそうだから、彼女は男を立てるというか、気持ちよくさせる方法を分かってるなと感じる。
・・・・・・・
水族館を満喫した後は名古屋港の海沿いを2人で散歩する。
「茉那ちゃん連れてこなくてよかったの?」
「茉那とは前に1回2人で来たからいいんだ。それにデートは2人でするほうがいい」
「その感覚があるのになんで3股なんかするのかなぁ大雅君は。なんか根本的に頭おかしいよね」
「言い過ぎじゃない?」
望結から結構辛辣な言葉を頂戴する。
「言い過ぎじゃないよ。茉那ちゃんと復縁するって聞いた時もあぁ、この人はきっとこれからも変わらないんだろうなぁって思ったもん」
「やっぱり嫌だった?茉那と俺が復縁するの」
「嫌じゃないってば。ただ自分がおかしな人を好きになっちゃったなってだけ」
「そっか…」
そんなにおかしいかな俺って。
「大雅君、好きだよ。君がどんなに頭おかしくてもいい。君が私を求めてくれる度に私は君を好きになるんだ」
ちゅっ…
望結が俺の両肩に手を置いてきたので、俺は少し身を屈めて望結にキスをする。
「俺も望結の事好きだ」
「うん、知ってる」
はにかむ笑顔でそう言う彼女はやっぱり可愛い女の子だ。