ブサイク得点王だった俺、最強スペックでサッカー人生やり直し〜今度こそ美女も世界一もすべてを奪い取る〜 作:クズ吉
ずっと王子様を待っていた。
子供の頃読んだ絵本や見たアニメの影響からだろうか。
私はいつか王子様と結ばれることを夢見ていた。
それは高校生や大学生、社会人になっても漠然とした夢として常に抱いてきた。
その夢を周りに言うと「現実見なよ」と笑われるので段々と隠すようにはなったけど。
私の王子様の定義。それは残念ながら年を追うごとに変化してきている。
子供の頃は本当の王族である事を求めていたけど今は違う。多少は現実的になっている。
・私を一生養ってくれる程の稼ぎがあること。
・私が心の底からカッコいいと思えること。
・おじさんじゃないこと。
とりあえずこの3つが揃っていれば、今現在の私の王子様たりえる。
でもこの条件に合う人なんて普通に生活してたら見つからない。
だから逆に王子様に私を見つけて貰おうと学生時代の私は考えた。
そのために有名大学に入ってミスコンのグランプリを取ったり、その実績を持ってテレビ局にアナウンサーとして入社したりした。
そしてアナウンサーとしては新人ながら『好きな女性アナウンサーランキング』の上位に入るなど、最近は結構顔が売れてきたと思う。
でも私の存在が世間に知れ渡ると王子様に見つけてもらいやすくなる反面、嫌な思いも沢山する。
街を変装なしで出歩くことも最近は難しい。
私は現在入社3年目の24歳。
社会人としてはひよっこなのは分かっているけど、早く王子様に出会って仕事を辞めたいと常日頃思っている。
30歳になっても王子様に出会いたいとか思っていたら、流石に痛い事は自分でも分かる。
だから早く…早く私を見つけて王子様!
そんな事を思っていたある日のこと。
「二山さんもう聞きました?」
「何をですか?」
「明日のスポーツコーナー、サッカーのクラウチ大雅選手がゲストとしていらっしゃるそうですよ!」
「え!すごいじゃないですか!」
アシスタントディレクターから聞かされた情報に私は驚く。
クラウチ大雅選手。
彼の事はもちろん知っている。
今年の春のNリーグ開幕戦から毎週のように結果を出す彼を、この数カ月間私達の番組は大きく放送時間を割いて報道したからだ。
そしてなんと言っても2014W杯での活躍。日本中が彼に注目していた。
私もW杯の期間は他の番組も合わせて毎日のように彼の顔を見ていた気がする。
「サッカー選手かぁ、あと10年早く生まれてくれたらなぁ」
家に帰って私は彼のMikipediaを見ながら独り言をつぶやく。
クラウチ大雅、1998年6月9日生まれ。
私は1989年12月21日生まれ。
9歳の差がある。
彼から見たら私はおばさんだろうか。
「あーもう!同世代なら王子様にピッタリなのに〜」
彼はまだアマチュア選手なので稼ぎはない。
だけどこのままプロサッカー選手になったら10年後、20年後…どれだけ稼いでいることだろう。
「うわーん。カッコいいよ〜大雅くーん!」
私は寝る前にMoutubeで彼のプレー集を見て明日に備える。
〜翌日〜
私が担当するスポーツニュースの打ち合わせでクラウチ大雅選手の控室にスタッフ数名と訪れる。
「クラウチ大雅です。今日はよろしくお願いします」
彼はとても大きかった。情報としては知っていたけど実際に見ると190cmとはこんなにも大きいのか。
私は身長160cmなので30cmも差がある。
スタッフと自己紹介しあいながら順番に握手していくクラウチ選手。
向こうから握手してくれるなんて!こんな嬉しいことはない!
そして私の番が来た。
「二山夕梨です。クラウチ選手W杯ベスト8おめでとうございます!クラウチ選手の活躍をずっと見てました!お会いできて嬉しいです!」
にぎっ
私もクラウチ選手と握手をする。
「ありがとうございます!あの実は僕、今日は番組に出ることもですけど、二山さんにお会いするのを楽しみに来たんです」
へ?
「ほ、ほんとですか?」
「はい!僕の特集をこの番組はよくしてくださるので、母が録画しているのを僕も見ることがあるのですが、二山さんのことはいつも可愛らしい方だなーと思って見てました」
クラウチ選手はそう言ってニコッと笑う。
どうしよう顔が熱い。
可愛らしいなんて今まで散々言われたことあるのに、クラウチ選手の様な私が出会った中で一番カッコいい人にそんな事を言ってもらえるととても恥ずかしくなってしまう。
他のスタッフさんもいるのに…なんて返答をしよう。
「わ、私も!毎週この番組でクラウチ選手の事を取り上げる度にカッコいい方だなと思ってました!昨日も寝る前にクラウチ選手のプレー集を見てカッコいいなと…」
やばい。今の私、ものすごく女の顔をしてないかな?
9歳も年下の男の子に褒められて何をマジになってんだってスタッフさんに思われてそう…
「二山さんにそう言ってもらえてとても嬉しいです。おっとごめんなさい。打ち合わせでしたよね。始めましょうか」
クラウチ選手は他のスタッフさんが置いてきぼりになっていたことを気にしてか、私との会話を切り上げた。
もっと話したかったな…
いけない、いけない。仕事中だぞ私。
「今日はクラウチ選手お一人ですか?」
ディレクターがクラウチ選手に聞く。
「いえ、今日は母が連れ添ってくれてるんですが、お手洗いに…まぁ出演するのは僕だけですし進めて頂いて大丈夫です」
そんなこんなで打ち合わせは始まった。
・・・・・・・・
「流れとしてはこんな感じで。何かNGな質問はありますか?」
「この恋愛に関する質問はちょっと…」
「え?何か問題あるの大雅?」
クラウチ選手のお母様もお手洗いから戻られた。
私も気になる。彼は高校1年生。今までどんな恋愛をしてきたのだろう。
それとも私と同じでまだ恋愛をしたことがないのかな?
「いや、問題はないんだけど…なんか恥ずかしいじゃん」
か、かわいい〜。今まで大人っぽい態度で私達に接していた彼が母親に見せる思春期の男子の顔。
「そうだね。全国放送で恋愛事情を話せってのも確かに嫌かもね」
クラウチ選手のお母様はそんな彼をからかうことなく同調した。いいお母様だな〜。
「では恋愛関係の質問はなしということでいきましょうかね。何か質問がなければ打ち合わせはこれで終わりですが…」
プロデューサーがそう言って、クラウチ選手とお母様も質問はなかったようなので打ち合わせは終了。
私達番組スタッフは控え室を後にする。
「二山さん!ちょっといいですか?」
控え室を出て廊下を少し歩き始めたら後ろからクラウチ選手に呼び止められた。
「ちょっと…」
そう言ってクラウチ選手は私を手招きして他のスタッフがいる方とは反対側に誘導する。
「これ、もしよかったら後でLIMEしてください」
渡されたのは黄色い付箋。そこに書いてあるのは…
彼の名前と…電話番号!?
私は驚いて彼の顔を見る。
「しーっ、内緒でお願いしますね。じゃあまた後で」
顔の前に人差し指を当てながら控え室に戻るクラウチ選手。
こ、これって…
これってもしかして…
ある!?
彼は…
彼は私の王子様になってくれる人かもしれない!