ブサイク得点王だった俺、最強スペックでサッカー人生やり直し〜今度こそ美女も世界一もすべてを奪い取る〜 作:クズ吉
「うーんどうしよう」
会社から帰宅してソファーで缶チューハイを飲みながら私は悩む。
いつクラウチ選手にLIMEで友達申請しようか。
早く申請しすぎると気があると思われそうだし、申請が遅すぎると怠惰だと思われそうだし。
私は普段LIMEにすぐ反応するタイプだ。後でやろうとしていたら忘れてしまうから。
だけどなんだろう。今回の場合はすぐに友達申請したら私が鼻息荒く彼に迫っている感じにならないだろうか。
もちろん彼からLIMEしてきてって言ったんだからいつしても良いんだろうけど…
そもそも私は社会人として未成年の彼とLIMEで繋がっていいのだろうか。
ふと私はアナウンサーの研修で受けたニュースの読み上げの例題を思い出す。
未成年・・・
わいせつな行為・・・
淫行・・・
うわあ!だめだー!私捕まっちゃう!
で、でもまだそういう行為をするって決まったわけじゃないし!
それに高校教師と生徒とか未成年と付き合う事例は沢山あるはずだ。
恋愛関係であれば社会も許してくれるはず!
・・・それにしてもクラウチ選手と私が恋愛関係かぁ。なんか想像つかない。
今日初めて実際に彼に会ったけど、爽やかだし、なんか色気?というのだろうかそれがムンムンだし、余裕のある男性というイメージを私は抱いた。
やはりサッカーで結果を出して女の子からキャーキャー言われると、男性ホルモンがマシマシにでもなるのだろうか。
とにかくアナウンサーとしてそこそこ有名になってきた私でも『存在感の違い』みたいなものを感じた。
それこそ一般人から見た王子様のような…
「う〜王子様なんだけど…たしかに王子様なんだけど〜」
せっかく私の王子様候補が現れたというのにいざ目の前にすると臆してしまう。
自分の夢に近づくとはこんなにも怖いものだったのか。
結局私は勇気が出ないまま友達申請することに数日かけてしまい、彼とのLIMEの1つ目のメッセージは謝罪から始まった。
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2014年9月
「よしっバッチリ!」
私は今2014W杯用の日本代表ユニフォームレプリカを着て、自室の鏡の前に立っている。
背中にはもちろん『CROUCH』の文字がある。
これは2014W杯での活躍で爆発的な需要が生まれた事により、増産に増産を重ねたと言われているクラウチ大雅選手のユニフォームレプリカだ。
W杯が閉幕して2ヶ月経つ今もまだ手にできていない人が沢山いるらしい。
私はW杯前の結構早めのうちに注文していた・・・
とかではなく、番組でクラウチ選手が来た時にスタッフさんが用意してくれたものを今着ている。
「ユニフォームを持って帰ってもいいですか?」とスタッフさんにおねだりしたら普通に貰えた。
でもそれだとクラウチ選手に申し訳ないから、今日会場にアビーネジャパンの新しい背番号の入ったユニフォームがあったら買おうと思っている。
今日は日本代表VSメキシコ代表のサッカーの試合だ。
それも日本代表であるクラウチ選手から直々に招待してもらった。
彼とはLIMEで友達になってから定期的にやり取りをしている。
主には私が彼の試合での活躍を祝ったり、彼が私が出演する番組を見たという報告をしてくれる。
そんな中で突然横浜で開催される日本代表の試合に来ないかというお誘いを貰ったので、当初は驚いた。
でもすぐに行きたい!という感情が湧いて、即OKの返信をクラウチ選手に送った。
私は初めてサッカーを現地観戦する。ワクワクする気持ちが抑えられない。
今日は有給休暇を取って夜の試合に向けて朝から準備をした。
クラウチ選手が郵送してくれたチケットも持ったし、周りの人に私だとバレないようにキャップも深く被って…準備万端!
「よし、いこう!」
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試合会場がある横浜へはタクシーで向かった。
私は学生時代から基本電車は使わない。
昔満員電車に乗ってたら痴漢行為をされてしまって、それ以降苦手意識がある。
ちなみに痴漢してきたのは恐らくおじさんだったのでおじさんも苦手だ。
恐らくというのは犯人を特定して警察に通報しなかったから。
怖くて声も出なかったのだ。
それはさておき、職場へは親に徒歩圏内の部屋を借りて貰って歩いて通勤している。
私がわがままを言ったわけではなく、親が甘やかしてくれるのでそれに便乗する形だ。
私が王子様を求めるのは親の影響も大きい。
私の父は不動産会社の3代目社長、母は専業主婦。
母は昔数多くのライバルを蹴落として父と結婚したらしい。
私の目から見ても父の容姿はとても整っていると思える。しかも若い頃からお金持ち。
彼がかなりの優良物件である事は言うまでもない。
母は私によく言った。
「お父さんは私の王子様なの。夕梨には夕梨の王子様がきっといる。だから王子様が現れたら絶対に逃しちゃだめよ」と。
今がそうなのかな。クラウチ大雅。彼を逃せばもう私の前に王子様は一生現れないかもしれない。
彼と結ばれなかったら両親が生きている間は甘えて、亡くなった後は遺産を食いつぶして1人で生きていく人生を歩むのだろうか。
なんだかそれは虚しい気がする。
やっぱり私は親からの愛と王子様から貰う愛、その両方が欲しい。
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ざわざわ…
早めに試合会場に来たのにもう既に凄い数の人がいる。
クラウチ選手のユニフォームを着た人も沢山!
「グッズ販売はこちらでーす!」
まずはクラウチ選手の新しいユニフォームを買わないと。
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無事にユニフォームを買えた。今は試合会場に入場して席に座っている。
クラウチ選手は関係者席を用意してくれた。試合がとても見やすそうだ。
しばらく時間をつぶしていると会場内でスタメン紹介があった。
・・・あれ?クラウチ選手がスタメンじゃない。
まぁそういうこともあるか。少しでもプレーしてる姿を見たいけど…
お願い、アビーネ監督!なるべく早めにクラウチ選手を出して!
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前半は0-2でメキシコにリードを奪われたままハーフタイムを迎えた。
ベンチにいるクラウチ選手をチラチラ見ながら試合を見てたら、時間があっという間に過ぎてしまった。
ざわざわ…
「ほら!クラウチ出るんじゃない?」
「え?ホント!?楽しみ!」
ハーフタイムにスマホを見ていたらそんな声が周りから聞こえた。
えっ、もう後半始まる?
慌ててピッチの方を見ると、確かにピッチの端でクラウチ選手が交代の準備をしている。
「選手交代をお知らせします。14番向井頼明選手に代わり19番クラウチ大雅選手が入ります!」
場内アナウンスで彼の名が呼ばれると会場の雰囲気がガラリと変わった。
ざわざわ!ざわざわ!
ざわめきが大きくなり…
パチパチパチパチ!
大きな期待を込めた拍手が会場に鳴り響き…
キャー!! タイガクーン!! キャー!!
女性達は皆クラウチ選手にメロメロだ!いくつもの黄色い声援が飛び交ってる!
「きゃー!大雅くーん!がんばれー!」
その雰囲気につられた私もいつの間にか自然と声が出ていた。
それにしてもすごい。こんなにも沢山の人の期待を背負って彼は今からサッカーをプレーするんだ。
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「えっ!えっ!一人でいっちゃうの?うそ!わぁぁぁぁ!」
後半開始からすぐにクラウチ選手がゴールを決めた!
サッカーを1試合通して見たことがないからあまり分からないけど、あそこから一人でゴールを決めるのは中々見られないプレーなのでは?
「すごい!すごい!カッコいい!大雅くーん!」
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その後2点目、3点目と得点をきめてメキシコ代表に勝利した日本代表。
良い試合を見れた!クラウチ選手も大活躍だったし!
名残惜しいけど試合終了と同時に私は席を立った。
明日は仕事なのでできるだけ早めに家に帰りたい。
それに試合途中に今日の来場者数は7万人を超えたと場内アナウンスがあった。
タクシーが捕まるといいのだけど…
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なんとかタクシーを捕まえて自宅に帰れた。お風呂にも入って現在の時刻は夜の11時。
そうだ。タクシーの中でクラウチ選手に送信したLIMEメッセージの返信が来てるかも。
「えっ、LIME電話?」
クラウチ選手から返信が来ていた。
でも最後の方に時間があったらLIME電話がしたいと要望が書いてある。
「いいですよ…と」
ポポポポポポポポン♪ ポポポポポポポポン♪
返信するとすぐにLIME電話の着信音が鳴った。
「えっ、はや!よし…はい!二山です!」
「こんばんは。クラウチです!ごめんなさい夜遅くに、でもどうしても二山さんの声で感想聞きたくなっちゃって」
「全然大丈夫ですよ!クラウチ選手は今ホテルですか?」
「はい!二山さんも無事にご自宅に戻られたんですよね?」
電話越しに聞く彼の声からは彼のテンションが高揚している事が感じられる。
あんな素晴らしい試合をした後だからか。それとも私と電話しているからか。
後者だと嬉しいな。
「はい。何とか早めの時間に帰れました!それにしてもクラウチ選手!今日の試合すごかったですね!1ゴール目なんて…」
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「やっぱり二山さんに電話してよかったです。こんなに褒めて頂けてとても嬉しい気持ちで一杯です」
「ふふっ、それならよかったです。あれ、次の10月の代表戦はアルゼンチンとブラジルでしたっけ?確かものすごく強いんですよね?」
「ものすごく強いです。コテンパンにやられるかもしれない…だけど精一杯自分達の実力を発揮すれば勝てない相手じゃないと思います」
「クラウチ選手、今インタビューモード入っちゃってましたよ」
私がそう言って笑うと、クラウチ選手も笑う。
「ええ?ホントですか?そんなつもりじゃなかったんですけどね。でも二山さんにカッコ悪いところは見せられないので絶対に勝ちます」
「私はクラウチ選手が負けてもカッコ悪いなんて思いませんよ。だってもうカッコいいが限界を超えてますもん」
「ははっ、ありがとうございます。その言葉があれば今後負けても挫けないで済みそうです」
「でもクラウチ選手が勝ってる姿をずっと見ていたいので、アルゼンチンにもブラジルにも勝ってほしいです」
クラウチ選手は「わかりました」と言って数秒沈黙する。
「クラウチ選手?」
「いや、今の言葉も勇気を貰えてよかったんですけど、直接会って聞けたらもっとよかったのになーと思いまして」
「直接…ですか」
「今日は同じ試合会場にはいましたけど直接は会ってないですよね?だからまた二山さんにお会いする機会があればなと…」
それはつまり…二人きりでってことだよね?
ここは…攻めよう!
「デートでもしますか?」
「えっ、そんな…いや望んでたのはそれなんですけど」
私の攻めの一言にうろたえるクラウチ選手。
このまま押せ押せだ!
「でも私とクラウチ選手が外でデートしたら絶対に週刊誌に撮られます」
「あっ、そ、そうですよね」
ふふっ、落ち込んでる。かわいい〜。
「だから私のお家でデートしましょう」
「お家で、ですか?」
「嫌ですか?」
「いえ!行きたいです!二山さんのお家!」
よし!後は日程調整だけど…
「クラウチ選手のオフシーズン、いつなら空いてますか?」
「えっと確か12月16日から12月27日の間であれば今のところ空いてます」
クリスマス…は流石に初デートに相応しくないよね。なら…言っちゃえ!
「それなら12月21日とか…どうでしょう?実は私の誕生日なんです。クラウチ選手がお祝いして下さるととても嬉しいのですが…」
「いいんですか?そんな大切な日に僕とデートなんてご家族とかは…」
「家族は社会人になってからは電話でしかお祝いしてくれないので、寂しいんです」
「なるほど。分かりました。じゃあ12月21日二山さんのお家に行きますね!」
やったー!クラウチ選手と誕生日にお家デートだ!
「あっ、ケーキは自分で買うので大丈夫です。クラウチ選手は好きなケーキありますか?」
その後11時30分くらいまでクラウチ選手とお話してその日は寝た。
それにしても自分の誕生日が楽しみなんて感覚はいつぶりだろう。
それも私の王子様候補に祝ってもらえる!人生最高の誕生日になりそうだ。