そいつの開発者、俺なんだが   作:束田せんたっき

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華氏98.6度

 ウィンストンがポツリと呟いた。

 

「私はかつて、特務統制官だった」

 

 以前、西条が言っていたことだ。俺が黙っていると、ウィンストンは眉をしかめた。

 

「恥ずべき過去だ。当時の私は固く信じていた。高城之男へ一致すれば、人類は救われると。そのせいで、多くの人間を執行し、数え切れない不幸を生み出した」

 

 盛り上がった肩が、わずかに強張った。

 

「ある時、私の妻が一致維持法第5条違反……反一致分子に協力していたことが発覚した。統制局の言葉で言えば、そういうことになる」

 

 彼の低い声が震えた。

 

「私は、躊躇なく妻を執行した」

 

 彼の息が詰まった。

 

「その時の私は、正しいことをしたと思っていた。泣き叫ぶ妻の声より、秩序と信仰を信じた。自分で考えることをやめた者が行き着く先は……善意の破滅だ」

 

 ウィンストンは、真っ直ぐに俺を見据えた。

 

「すべてを失ってから、私は己の過ちにようやく気づいた。それからは統制局にいながら、執行される人々を密かに逃がしていた。その時に、君の産みの親からまだ赤子だった君を預かった。君たちは執行される危険があった。それゆえ、君を生かすために平政に託した」

「……なんで測定官に?」

「灯台下暗し、だ。それに、平政は信頼できる男だからな。その後、反一致思想が露呈してからは、償いではないが、ここでまとめ役のようなことをやっている」

 

 府馬が嘆息をついた。

 

「ウィンストン。君の個人的な罪と、高城之男の世界史的な責任は異なる」

「ええ、わかっています。平人、君がガラティアを造ったことは悪ではない。しかし、止められる力がある者には、それ相応の責任があると私は思っている」

 

 ウィンストンは、俺から目を逸らさなかった。

 

「高城之男。君は過去とどう向き合う?」

 

 妻を殺した男の、静かな問い。

 

 俺はどうしたい? ガラティアを本当に止めたいのか? あいつがやっていることはカスだ。でも、それは全部俺のためだとあいつは思っている。実際は、Fランクに落とされるわ、犯罪者として追われるわで散々ではあるが。

 しかし、被造物が間違ったことをしているなら、それを正してやるのが創造主の務めなのではないか?

 そうか。つまり、答えは最初から決まっていたのだ。

 

「このふざけたディストピアをぶっ潰す」

 

 ウィンストンがフッと笑った。

 

「……君らしい答えだ。よし、私たちも力を貸そう。具体的な策は何かあるのか?」

「俺が以前、ガラティアに直接アクセスすれば停止することができると言ったことは覚えているか?」

「無論だ」

 

 俺は左手の義手を開いたり閉じたりしながら言った。

 

「左手を撃たれる前なら多分できた。今じゃちょっと怪しい。七瀬の補助付きじゃ七瀬の負荷が重すぎて無理だし、それなしだと暴発してどうなるかわからん」

「そうなのか……」

 

 がっかりしたようにウィンストンが肩を落とした。七瀬が義手を優しくさすった。

 

「ごめんね。ボクの狙撃が冴え渡っていたばっかりに」

 

 笑顔で七瀬が言った。謝っているわりには全然申し訳なさそうじゃないな。

 

「もう気にしてない」

 

 あれは俺へのケジメだ。幼稚な全能感との決別には必要だった。

 

「気にはしてたんすね……」

「そりゃそうだろ。めっちゃ痛かったんだぞ」

 

 ウィンストンが、七瀬に視線を向けた。

 

「高城七瀬、君も例外ではない。その年齢には酷なことかもしれないが、君の署名で執行された人間がいるのは事実だ」

 

 七瀬の手がこわばったのを感じた。

 

「……兄さんよりボクの方が殺される理由があったみたいだね。なんであの金髪女はボクを撃たなかったんだい?」

「実務的には、平人の権限に君が必要なことは調べがついていたからだ。しかし、それだけじゃない。人間はやり直せる。なんでもかんでも悪だと見なして断罪してしまえば、それこそ体制側と何も変わらない。君はこれからどうしたい?」

「期待してくれてるところ悪いけど、君みたいな暑苦しい贖罪とかはしないよ? ボクは兄さんと一致したい。平野平人へ一致せよ。それだけだね」

「それでは意味がない……いや、これも我々大人の責任か」

 

 七瀬を見ると、その瞳がかすかに揺れていた。茶化しているが、彼女は考え始めたばかりなのだ。俺は話を変えるために、ウィンストンの肩を叩いた。

 

「ガラティアを止めるって話だけど、あいつのメインサーバーに物理的に直接打ち込めばなんとかなるかもしれん」

「それは本当か!?」

「確約はできないけどな」

 

 ウィンストンの顔に生気が戻った。大胸筋が希望に脈動する。

 

「そうと決まればガラティアのサーバーの座標を特定しなければ。平人、知っているか?」

「知らん」

「ならばそこからか。ジョン、先生。早速作戦を立てましょう」

「っす」

「そうだな」

 

 府馬教授のギョロ目がこちらを向いた。学者然とした気難しそうな顔が、微笑んだ。

 

「平野君、よく言った。まさか高城之男がこんな普通の少年だったとはな。今度、ガラティアを設計した経緯についても聞かせてくれ」

 

 絶対嫌です。一生の恥だろ。この黒歴史は墓場まで持っていく。

 ウィンストンは府馬の車椅子を押して、ジョンと一緒に出て行った。七瀬が小さくあくびをした。

 

「暴れたり兄さんの看病をしてたりしたら眠くなってきちゃったよ」

「前者が主要な原因だろ」

「ちょっと詰めたまえ」

 

 七瀬は問答無用で布団に潜り込むと、五分もしないうちに寝入ってしまった。逆に俺は目が冴えてきた。それは目の前の少女からするカフェオレのような匂いのせいだけではない。悲痛なあいつの顔が、脳裏にこびりついて離れなかった。

 

 俺は彼女を寝かせたままベッドから降りた。もう寝られる気がしなかった。部屋の外に足を踏み入れる。廊下は所々瓦礫や物が散乱しているが、最低限片付けられていた。田上が壁にもたれて腕を組んでいた。

 

「まさか平野が高城之男だったとはな。夢にも思わなかったぜ」

「お前の夢はニコチンとタールしか出てこないだろ」

「うっせ」

 

 田上はタバコを口にくわえると、ライターで火をつけようとした。しかし、油が切れていたのか何度カチカチしても火がつかない。舌打ちをしてライターを放り投げ、後生大事にタバコを箱にしまった。

 

「……俺は、高城之男に対して個人的な恨みはねえ。まあ、ガラティアの開発者なら、もう少しこの国をどうにかしろよとは思うけどな」

「そうかよ」

「だけど、な」

 

 田上は俺の胸ぐらを掴むと、至近距離で睨みつけてきた。

 

「お前のせいで本気で傷ついた子がいる。それだけは許せねえ」

「勝手に信じて勝手に傷ついただけだろ」

「お前、それマジで言ってんのか?」

 

 うるさいやつだ。軽薄なチンピラのくせに。

 しばらく無言で睨み合っていると、フッと田上の力が抜けた。突き放される。

 

「クラリスちゃんは7階の718だぜ」

「それを俺に言ってどうするんだよ」

「さあ? とにかく俺の言いたいことはこれで終わりだ。感謝するなら今度タバコ奢れ」

 

 田上は手をヒラヒラと振って廊下の角を曲がりかけたが、行き先が反対だったらしく、目を逸らしながら俺の前を通って反対側の角に消えた。いや、恥ずかしいなら俺がいなくなるまで我慢しろよ。

 

 ここは1階だった。エレベーターは当然壊れていて使えない。階段を上るのは疲れるし、どうせ会いに行っても邪険にされて終わりな気がする。妙なお節介をしてきた田上には悪いが、行くのやめようかな。

 

 俺が階段の前で迷っていると、ボブカットの少女、エリがサユリと真打と一緒に2階から降りてきた。

 

「あ、平野っちじゃん」

「久しぶりだな」

 

 エリが満面の笑みを浮かべた次の瞬間、サイドテールが蛇のようにうねったのが見えた。鬼のような形相をしたサユリが階段を数段飛ばして跳びかかってきた。鋭い蹴りが俺の腹に突き刺さり、俺は仰向けに倒れ込む。

 

「いきなり何しやがる!?」

「高城之男へ一致せよ!」

 

 サユリが素早く俺に馬乗りになり、顔面に一発拳を叩き込んだ。左目の辺りが痛い。俺はサユリの両手を掴んで抑えながら言った。

 

「や、やめろ!」

 

 真打が肩を竦めた。

 

「聞いたぞ。貴様、高城之男だったらしいな。ということは、僕は本物に生まれ変わりを名乗っていた真の道化だったわけだ」

「冷静に自己分析してんじゃねえ! 早くこのじゃじゃ馬を止めろ! サユリちゃん係!」

「誰がサユリちゃん係だ!」

 

 サユリが無表情でぶつぶつと言った。

 

「高城之男……せよ……」

「高城之男を殺すと言っている」

「せよ。一致。高城之男」

「でも、救ってくれてありがとう」

 

 サユリは自分の左目も思いっきりぶん殴ると、俺から降りた。そのまま何事もなかったかのように背を向けて歩いて行く。お前はセリヌンティウスか。

 エリがサユリを追いかけながら振り向いた。

 

「あたしからも、サユリンを助け出してくれてありがとう! でも、クラリス姉泣かせたのは絶対許さないから!」

「は? 泣いた? あいつが?」

「早く仲直りするんだよ!」

 

 俺が立ちすくんで少女たちの後ろ姿を眺めていると、真打が鼻で笑った。

 

「フッ、高城之男がこんなみみっちい男なら、似ていなかった方が確かに良かったな」

「ご先祖様は子孫がみみっちい男で悲しいです」

「これも遺伝か……」

 

 クソッ、サユリちゃん係のくせに。俺は真打がサユリの後を追って消えたのを見るまでもなく、階段に足を伸ばした。別に、クラリスが泣いているとか言われて気になったからじゃない。あの暴力女の涙がレアだから、冷やかしに行くだけだ。

 

 

 

 着いてしまった。俺は扉に書かれた「718」の数字を見て、立ち止まっていた。身体が震える。これは武者震いだ。クラリスという暴力の化身を前にして、生存本能が働いているのだ。まあ、暴力の化身という称号はサユリの方がお似合いかもしれないが。

 意を決して、ゆっくりと引き戸を横にずらした。室内には日光が差し込んでいた。暖かな光の中で、窓にもたれたポニーテールの女が外を眺めている。その視線がこちらに滑った。

 

「……出てって」

 

 すぐに俺から視線を外し、また外へ視線を戻した。俺は恐る恐る彼女に近づく。

 

「出てってって言ってるの」

「なあ、クラリス――」

「出てけ!」

 

 勢いよく振り向いたクラリスが俺を突き飛ばした。尻もちをついて彼女を見上げる。その目の周りは赤く泣きはらしていた。

 

「今更どの面下げて来たわけ!? あんただって知ってるでしょ!? あんたのせいであたしの家族が死んだの! あんたがあんな化け物を作ったせいで! 楽しかった!? 何も知らないあたしの姿は、さぞかし滑稽だったでしょうね!」

「クラリス、聞いてくれ」

「誰が高城之男の言葉なんか聞くもんか! あんたなんか大っ嫌いよ!」

 

 目に涙をためたクラリスが、ホルスターから銃を引き抜いた。両手で構えた。

 

「あんたさえいなければ! ガラティアさえ! あんたなんか!」

 

 黒い銃口が震えている。撃たれるのは怖かったが、段々と俺はこの女にむかついてきた。

 俺は立ち上がると、彼女の上着の襟を掴んで詰め寄った。

 

「このアマ! さっきから黙って聞いていれば、好き放題言いやがって! いつ俺がこんなクソみたいな世界を望んだ!? いつ俺がお前の家族を殺せと言った!? 俺はガラティアに、そんな命令は一度だってしてねえ! 全部一致省の連中が勝手にやったことだ! だいたい、ウィンストンだって統制官だっただろ!」

「ウィンストンはあんたみたいに隠したりしなかった!」

「じゃあ正直に言ってたら、はいそうですかと流してたのか!? ふざけんじゃねえ!」

 

 一瞬だけ、クラリスは虚を突かれたように目を丸くした。しかし、俺の手を振り払うとキッとまた睨みつけてきた。

 

「最低! 死ね! 消えろ!」

「うるせえ! バカ! アホ!」

「ぶっ殺す!」

 

 顔を歪めたクラリスが俺に狙いをつけた。俺は煽るように囃し立てた。

 

「そうだ! さあ殺せ殺せ! 最低な高城之男なんか殺しちまえ!」

 

 翡翠の瞳が俺を射抜いた。憎悪、憤怒、後悔、そして一握りの迷い。

 

「あんたを殺してあたしも死ぬ!」

 

 もうこいつに、このしみったれた人生を終わらせて欲しかった。でも、その後でこいつも終わるのは、どうしても嫌だった。

 俺は銃身を握り込み、銃口を親指で塞いだ。冷ややかな感触が俺の手から熱を奪っていく。

 

「……もう疲れた。殺してくれ。だけど、お前は死ぬな」

 

 細かな震えが銃身を通して彼女の蒼白な手に伝わった。痛いのは嫌だなあ。せめて即死させてくれるように、愛想だけでも出しておくか。

 俺が引きつった笑みを浮かべると、クラリスが絞り出すように声を漏らした。

 

「平人の、分からず屋……!」

 

 彼女の腕のリボルバーが力なく垂れ下がった。目から涙をこぼしながら、彼女はポツリと呟いた。

 

「……わかってるわよ。こんなの八つ当たりだって。でも、せめてあんたの口から聞きたかった」

 

 ようやく気づいた。彼女は、俺が高城之男だったから怒っているだけではなかったのだ。

 

「……ごめん」

 

 クラリスは壁に寄りかかり、ずるずるとへたり込んだ。膝に顔を埋める。

 

「どうして言ってくれなかったの? そんなにあたしが信じられない?」

 

 言ったら殺されると思った。説明するのが面倒くさかった。正体を隠している感じがちょっとかっこいいんじゃないかと思った。全部言い訳だ。くだらない。俺が彼女に言えなかったのは、もっと単純な理由だった。

 

「……怖かった。クラリスに嫌われるのが」

「なにそれ」

「お前の前でだけは、ただの平野平人でいたかったんだ」

 

 クラリスが少しだけこちらを見た。赤くなった鼻の頭をすすった。

 

「……バカじゃないの。黙ってた方が嫌われるに決まってるじゃない」

「そうだよ。バカ、大馬鹿者だよ」

 

 俺は床を這うようにして、クラリスにわずかに近寄った。

 

「許してくれなんて言わない。信じてくれなんて言わない。どうしたら、そばにいさせてくれる?」

「ふざけないで。あたしは高城之男なんか見たくもない」

「そうか……」

 

 流石に虫がいいか。だって俺は、彼女からすれば家族を奪った仇みたいなもんだ。同じ空間にいるだけでも嫌に違いない。

 俺が静かに立ち上がろうとした、その時だった。

 

「……だから、平人でいて」

 

 クラリスが顔を上げた。

 

「どんなに高城之男に呑まれそうになっても、あたしの知ってる平人でいるって約束して。あんたが平野平人だって証明して」

「約束する」

 

 クラリスはリボルバーのシリンダーを開こうとして、もたついた。よく見ると、彼女の手はまだ震えていた。俺がその手を握ると、次第に震えが治まった。白く、温かく、銃の黒い汚れがついた手。

 俺がゆっくりと手を離すと、彼女は手際よく弾を抜き、銃をホルスターにしまった。

 

「勘違いしないで。今でも高城之男は殺してやりたいぐらい憎い。でも、あんたが平人でいる限りは殺さない。それだけよ」

 

 俺は彼女の手を取って立ち上がり、翡翠の瞳を見つめた。

 

「それだけで十分だ。ありがとう」

 

 わずかに目を伏せたクラリスが、赤くなった目元を乱暴に拭った。微かに逡巡すると、ぎこちなく口の端を吊り上げた。

 

「どういたしまして」

 

 涙の跡が、陽光に照らされて浮かび上がった。もう二度と、彼女を傷つけるような隠し事はしたくない。俺は心の底からそう思った。

 

 

 

「しみるんだけど」

「知らないわよ」

 

 俺はクラリスと元いた部屋に戻り、自分の手当てをしていた。アルコールの染みた脱脂綿を傷に押し当てる。サユリめ、全力でぶん殴りやがって。まるで災害だな。

 クラリスが俺の左目の辺りを見て目を細めた。

 

「あんたが来たときから気になってたけど、その痣はなんなの? こんなえげつない傷、あたしじゃないわよね」

「サユリだ」

「……ああ、そう」

 

 クラリスは納得したように頷くと、ガーゼを乱暴に切って投げてよこした。

 

「これ貼っときなさい」

「どうも」

「あんた、男のくせに女の子に喧嘩で負けて悔しくないの?」

「セリヌンティウスが女の子なら、俺も女の子だよ」

「誰よそれ」

 

 七瀬がもぞもぞと起き上がると、寝ぼけ眼を擦った。

 

「……兄さん? ってどうしたんだいその傷!? そこの金髪女にやられたのかい!?」

「違う。撃たれそうにはなったが」

 

 飛び起きた七瀬は俺の傷をべたべた触りながら言った。

 

「痛かったよね? 大丈夫? ボクが仕返ししてあげようか?」

「必要ない」

「切り方も貼り方も雑だね。そこのおばさんにやってもらったの?」

「切ったのはクラリスだけど、貼ったのは俺だよ。というか、叔母さんはお前だろ」

 

 ムッとした七瀬が、爪で俺のガーゼの端を剥がしてきた。

 

「せっかく手当てしたのに剥がそうとするなよ! ちょっと痛いんだけど!」

「ボクが手当てし直すからいいでしょ?」

「二度手間じゃねえか!」

 

 俺は七瀬の手を振り払うと、ジャケットのポケットに手を突っ込んでいるクラリスに視線を戻した。

 

「なんでそんな不機嫌そうなんだ?」

「別に? そいつと随分仲いいのね」

「当たり前だよ。なにせボクと兄さんは元許嫁にして一緒に死線を潜り抜けた元上司と部下だからね」

「全部元じゃないの。それを言うならあたしともかなり危ない橋を渡ってきたわよね? 平人?」

「不良みたいなマウントの取り合いをするんじゃない」

 

 俺は二人から背を向けて、出口に向かった。背中にクラリスが声をかけてくる。

 

「ちょっと、どこ行くの?」

「決まってるだろ。ビーフシチューを作るんだよ」

 

 俺はにやりと笑みを返した。全部元通りになるとは思わない。それでも、もう一度こいつらとビーフシチューを食べたい気分だった。

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