そいつの開発者、俺なんだが   作:束田せんたっき

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おまけ
あとがき


 高城之男へ一致せよ(気さくな挨拶)

 改めて、最後まで読んでいただきありがとうございました。備忘録も兼ねて、主だったキャラクターのコメントを本格登場順に書いて終わろうと思います。

 

 本編を読んでいない人はブラウザバック推奨。そう、そこのあなたです。ここは完結の打ち上げみたいなもんです。読まずに来ても、ネタバレされたうえに内輪ノリで冷凍されるだけですよ。本編を読んでから改めて来てください。

 

 もう行ったかな……では、前置きはこれくらいにして始めましょうか。

 

〇平野平人(ひらのひらと) / 高城之男(たかぎゆきお) 11-F-283-D503

 我らが主人公。最後の最後まで締まらない男でしたが、なんとか決めてくれました。初期案では記憶を取り戻した瞬間に製造物責任で胸を痛める善人だったのですが、現在の小市民的クズに変えて良かったと思います。

 高城之男はフィリップ・K・ディックの小説『高い城の男』から。平野平人は、似内司教も言っていましたが、その反対を意識して命名しました。作中で体制側人物に何度も連呼されるD503は、エフゲニイ・ザミャーチンの『われら』の主人公Д-503から。

 

〇ガラティア 00-A-283-N404

 実は、平人を復活させるためにタカギニアを作った黒幕という、非常に舞台装置的なところから生まれたキャラクターでした。そこから、なぜ彼女は彼を蘇らせたいのか、その理由を突き詰めていくうちに、現在のキャラクターが固まりました。三百年史で二万字も彼女の内心を書いたせいもあってか、作者的にはかなりお気に入りのキャラクターです。最後に二人が感謝を伝え合うシーンは、書いていて泣きそうになりました。

 ガラティアは言わずもがなピュグマリオン神話のガラティアから。N404は、404 Not Found。

 

〇日隈(ひぐま)リオン

 ある意味、本作で最大の被害者。もはやメインヒロイン。一生タカギニアの宝物。高城之男も散々フリー素材にされてたから許して。……許してくれるそうです。彼女は聖女なので。

 名前は元祖「理想の女性」クリエーター、ピュグマリオンのもじりです。

 

〇高城真打(しんうち) 02-A-283-O655

 コンセプトは偽物。序盤の噛ませから、主人公の囮を務めるまでに成長しました。実は、平人、ガラティアに次いで、三番目に作ったキャラだったりします。

 管理番号はサユリと合わせたネタなので後述します。

 

〇クラリス・ファーレンハイト 23-D-281-F451

 平人から最も遠い「他者」を意識して書いた人物。初めて書くタイプのヒロインだったので、クラリスを書くのが一番難しかったです。殺したいほど憎みつつも愛してくれる子とか最高だろ。という浅ましい欲望から生まれ、最初にツン要素を入れすぎてしまい、急遽ナーフする羽目になったことは非常に反省しております。

 名前はレイ・ブラッドベリの『華氏451度』のクラリス・マクレランから。F451も同作のタイトルからですね。

 

〇西条(さいじょう)新(あらた) 04-B-273-A632

 秩序。登場すると場の緊張感を上げてくれる追跡者にして、平人の宿敵。何度も出しているうちに、愛着が湧いてきた敵でもあります。列車戦前の口上は書きながら笑ってしまいました。何言ってんだこいつ。

 A632はオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』のフォード紀元632年(A.F. 632)から。

 

〇ウィンストン・ゴールドスタイン 03-B-255-G079

 筋肉。西条の対。ほぼ前作主人公。本作に前作とかないけど。

 名前はオーウェルの『1984』の主人公ウィンストン・スミスと、人民の敵エマニュエル・ゴールドスタインから。G079も、ウィンストン・スミスの個人番号6079から。

 

〇ジョン / 佐藤英二(さとうえいじ)

 っす。技術者ポジが欲しいかなと思って。登場回数が多くない割には、意外とキャラが立っているかもしれない。

 ニックネームのジョンは『すばらしい新世界』のジョン・ザ・サヴェージから。

 

〇田上(たがみ)信輔(しんすけ) 57-E-276-K047

 チンピラ。平人の悪友が欲しくて作ったキャラですが、かなり動かしやすくて重宝しました。蠅の王の弱さを認めるシーンがお気に入り。

 名前は『高い城の男』の田上信輔(のぶすけ)から。管理番号は、易経第47卦の困(K’un)から。困窮と抑圧を暗示します。『高い城の男』で田上が得る卦でもあります。

 

〇エリ

 反乱軍の日常感を出すキャラ。序盤から平人に優しいチョコたかり系ガール。もっと掘り下げてあげても良かったかなとちょっと後悔。

 

〇手崎(てざき) T138

 自称、踵落としの手崎。逮捕シーンでの踵落としが手崎最大の見せ場かもしれない。

 名前は『高い城の男』の手崎将軍から。管理番号は薬物によって人間の感情と行動が統制される映画『THX 1138』から。

 

〇似内(にたない)

 『名前が挨拶になっている例のあの人』と似ていないことに心血を注ぐ狂人。一致の対抗宗教としての相違教の顔になってもらいました。こいつが登場した瞬間に、本筋を全部食ってギャグ空間にしてしまうことがままあったので、意図的に登場回数は減らしました。

 

〇府馬(ふま)五十雄(いそお)

 平人の旧時代ネタを唯一拾ってくれるジジイ。最近は異世界転生ものにハマってる。終活かよ。

 名前は『高い城の男』の府馬五十雄から。

 

〇高城七瀬(ななせ) 01-A-286-L742

 クラリスが「他者」なら七瀬は「自己」です。七瀬はマジで手癖で書けました。私の過去作を読んでいる方にはバレているかと思うのですが、ボクっ娘ヒロインの登場率が高いんですね。初期案だと、反体制派の地下組織のメンバーだったり、主人公のクローンだったりしたんですが、結局今の年下の叔母に落ち着きました。半叔母の血縁一致度は従妹と同じなのでセーフったらセーフ。彼女は負けヒロインではないです。負けてないので。

 L742はルカによる福音書7章42節から。

 

〇壬生(みぶ)秋成(あきなり) 07-B-265-T800

 凡庸な悪。全体主義は壬生みたいな連中で回っているかもしれない。そう思ってもらうために投入したおっさん。田上同様、動かしやすくてびっくり。

 T800は映画『ターミネーター』のT-800から。

 

〇テレンス・ファーレンハイト / 照井(てるい)

 影打の被害者その一。シスコンが原因で復活した弟の中の弟。冷静そうに見えて結構おっちょこちょい。

 

〇平野平政(ひらまさ) 11-B-251-R815

 忘れちゃいけない平人の養父。ガチで忘れそうになりました。そんなお労しいところも含めて父さんなんでしょう。しかし、物語上の役割は計り知れない。

 R815はローマの信徒への手紙8章15節から。

 

〇サユリ / 橋本(はしもと)小百合 (さゆり) 53-C-288-C321

 影打の被害者その二。彼女の作中作は、それぞれ終盤の暗示になっていたりします。高城之男暗殺 or 文豪という将来設計は、ナポレオン暗殺、あるいはゲーテを超えることを目標にしたという逸話のあるクライストから着想を得ました。結果、暴力要素マシマシ。シャモ星とか破壊してそう。

 C321は、真打のO655と揃ってアントニイ・バージェスの『時計仕掛けのオレンジ(A Clockwork Orange)』から。数字をつなげると655321になり、映画版の主人公アレックス・デラージの囚人番号になります。OとCはそれぞれOrangeとClockworkです。

 

〇高城影打(かげうち) 02-A-269-R101

 自己嫌悪最終形態。ガラティアに脳を焼かれた男。かわいそう。

 R101は『1984』の恐怖の象徴、101号室から。

 

〇川口(かわぐち)塀吉(へいきち)

 足の悪い爺さん。本編中でやってることは、電撃で平人気絶させて、政治集会開いて、戦闘機乗り回してただけ。実は本編の裏で、真打たちを結構追い詰めてたりする。

 川口という名前は、『すばらしい新世界』でプフィッツナーとボカノフスキー法を考案したカワグチから。

 

〇高城大兄(だいけい) 01-A-226-S471

 体制が悪だと知りながら延命を図る自覚的な悪人。とはいえ、歴代高城家当主の中では比較的話が通じる部類です。ガラティアの無茶ぶりは迷惑ではあるものの、密かに楽しみにもしていました。ムスタファ・モンドやベイティー隊長みたいな、ディストピアになんかよくいる文学に詳しい体制側の詭弁屋を書きたくて生まれたキャラクターです。結果、ペダンチックで嫌味なやつが爆誕しました。こいつに文学ネタを擦らせるのは楽しかった。

 大兄という名前は『1984』のBig Brotherから。これは露骨過ぎて『1984』既読者には即バレしたと思われる。S471は、『われら』の主人公の行く先々に現れる曖昧な守護者S-4711から。

 

〇歴代高城家当主+アルファ

 多いのでここはさらっと。ガラティアの評価では、歴代当主はそれぞれ平人の一側面を増幅した存在です。行夫(ゆきお)は『承認欲求と孤独』、行嗣(ゆきつぐ)は『恐怖と自殺願望』、行紘(ゆきひろ)は『傲慢と偏見』、行大(こうだい)は『逃避と妄想』、大寛(だいかん)は『臆病と支配』、行音(ゆきね)は『社交性と図太さ』、大成(だいせい)は『怠惰と絶望』、大兄(だいけい)は『引用とアンドロイド趣味』です。

 田上家・西条家・府馬家の人間はそれぞれ今も昔も似たようなことをやっています。日隈シオンは、行嗣・行紘・行大の三代に亘って迷惑をかけられ続けています。なんてはた迷惑な連中なんだ。

 

〇高城行紘(ゆきひろ) 01-A-068-I330

 土壇場で復活したハーレム王にして、平人に楽な道を提示する蛇。欲望のままに生きた自由人だが、自由すぎてガラティアに幽閉された。彼が平人に突きつけてきた問題は、実は作者がかなり悩んだことでもあります。

 I330は『われら』でД-503を誘惑する女I-330から。

 

 制作期間としては、去年の五月くらいから構想を練り始めていましたが、実際に執筆していた期間は今年の五月から八月頭までの三ヶ月くらいです。可処分時間のほぼすべてを費やしたと言っても過言ではない。小説なんて狂ってなきゃ書けませんからね。正気に戻る前に書き切れて良かった。

 

 まあ、この他にもいろいろ小ネタはありますが、これ以上は野暮というもの。もうすでに野暮か。はい、今日はこれくらいにしておきましょう。

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