深夜一時。
悠斗の部屋にはマウスのクリック音だけが響いていた。
モニターには、Attoが第2回真佐杯後に公開したnote。
『NRヴェンデットのすすめ』
数日前から読み始めたそれを、悠斗は既に三周はしていた。
第2回真佐杯。
ここ数日ディスコードのやり取りを眺めていて分かったことだが、悠斗がNRに興味を持つきっかけとなったこの大会は、NR対戦においても大きな転換期となったようだった。
まず、大会規模が64人と第一回を上回る大きさとなったこと。
公式のNRイベントから1年が経とうとしている今、これだけのプレイヤーが盛り上がりを見せているのははっきり言って異常だ。
そして何よりヴェンデットというデッキの台頭。
これまで注目されていなかったテーマがいきなり環境を破壊する程の結果を残した。
この間のAttoとの戦いで悠斗もその圧倒的な強さを肌で感じた。
そのAttoが公開したNoteは、ヴェンデットの構築記事だったものの、ただのデッキ解説記事以上の情報量が詰め込まれていた。
曰く
「NR環境において対象耐性は非常に価値が高い」
「誘発による妨害がないNR環境において、再現性・質の高い先行制圧ができる」
「リソースを継続的に押し付けることで、相手の継戦能力を削ることも可能」
悠斗は画面を見つめる。
対戦中、意味不明だったものが、少しずつ線で繋がり始めていた。
このデッキは“強いカード”の集まりではない。
“強い構造”だった。
悠斗はデッキ画面を開く。
ヴェンデット。
数日前まで知らなかったテーマ。
今では、気づけば毎日触っている。
Noteから構築を拝借し、先行の展開ルートを覚えた。
悠斗が手も足も出なかったヴェンデット。
あの時のスレイヤーの無法っぷりは、このnoteを読んでようやく理解した。
ヴェンデットは儀式テーマだ。
下級ヴェンデットを儀式素材にすることで、儀式モンスターのスレイヤーに効果を付与することができる。
モンスターの除外はヴェンデット・レヴナント
魔法・罠の除外はヴェンデット・ヘルハウンド
対象耐性はヴェンデット・コア
これらを組み合わせ、あるいは全て儀式素材にすることで、突破不可能な除去要塞が誕生する。
しかし、スレイヤーのレベルは6。
レベル4のレヴナント、レベル3のヘルハウンド、レベル1のコアの全てを素材にすることはできない。
その不可能を可能にするのが汎用リンクモンスターの“落ち消しのパズロミノ”だ。
パズロミノはリンク先のモンスターのレベルを変更することができ、それにより本来成立しない3種類の付与を可能とする。
Attoの展開の凄まじいところは、パズロミノを経由して3種類の付与をするルートが基本展開として確立されているところだ。
NRのカードプールでこれを処理する方法はかなり限られている。
汎用罠で対象を取らない代表的な除去札として激流葬が挙げられるが、ヴェンデットスレイヤーを呼び出す儀式魔法には墓地効果があり、墓地から除外することで場のスレイヤーの破壊を無効にしてしまう。
つまり、スレイヤーの効果・戦闘破壊を1度だけ無かったことにできる。
更に、ヴェンデット名称ではないものの、“アルグール・マゼラ”と言うモンスターもスレイヤーの要塞化に一役買っている。
アルグールマゼラは手札か墓地にある時、場のアンデット族モンスターの破壊を無効にして場に出てくる最上級モンスターだ。
これにより、付与する為の下級ヴェンデットモンスターを守ることすらできる。
「隙がないな、本当に」
そう、隙が無い。
構築を見ても自由枠はほんの僅か。
既に完成された構築だということが良くわかる。
「けどなぁ……。ムズすぎんだろ! 何だこのデッキ!」
そう、プレイの難しさは段違いだった。
スタンダードレギュレーションのデッキを含めても、歴代でブッチギリの難易度だと言ってもいい。
このデッキの難しさは択の多さにある。
最終的に付与スレイヤーを着地させるのはもちろんだが、先行で成し遂げられなかった場合、無数の勝ち筋が用意されている。
少しずつ付与をして相手を削る、リソース差を押し付けて相手が息切れしたタイミングで完全体の付与を通す、アンデット特有の場持ちの良さでビートダウンしながらリーサルを狙う。
柔軟な強さと難易度の高さは表裏一体で、デッキが器用過ぎる余りどの勝ち筋が適しているのか判断するのが難しく、相手のテーマ、引きに合わせてこちらも動きを変えなければならない。
「……また足りねぇ」
墓地。
儀式素材。
儀式魔法。
回していても上手く噛み合わない。
対戦で見た時、Attoのヴェンデットはまるで無限に動いているように見えた。
デッキが1つの生き物のように途切れなくモンスターを、魔法を供給していた。
だが実際触ると違う。
一手間違えるだけで止まってしまう。
コアを切る順番。
ボーンの回収。
ヘルハウンドの除外。
全部に意味がある。
だが、まだ悠斗にはそれが分からない。
それでも、とても楽しかった。
マスターデュエルをプレイする人口のほとんどがスルーしているであろうソロモードがこんなにも楽しいとは思わなかった。
すまん、エレボス。
何度この冥帝をボコボコにしているか数えられない。
回すたびに発見があり、発見があるごとに沼にハマっていく。
気づけば時計は二時を回っていた。
Discordの通知が光る。
悠斗が登録しているのはNRの全体サーバーのみ。
誰かからのDMだろうか。
しかし、悠斗が知る限りNRでDMを送り合う仲になったプレイヤーはいない。
Attoの使うヴェンデットをもう一度見たくて対戦部屋に顔を出すものの、あれ以来Attoに出会えたことはおろか、リプレイに残った試合を見ることすら叶っていない。
訝し気にスマホを開いた悠斗は、差出人とメッセージを確認した。
『ぽん酢:おっす!おら悟空ゥ! あっ、違うぽん酢ゥ! この度はDMにて上座をいただきました。僭越ながら上から失礼いたします』
悠斗はそっとスマホを閉じた。
「なんだコイツ」
文章も意味不明だったが、アイコンも褐色のムキムキな男の頭部がぽん酢という意味不明さだった。
せっかくヴェンデットの奥深さが見えてきたんだ。
こんなのに構っている暇はない。
しかし、ぽん酢は短文を分けて送信するタイプだったらしく、ひっきりなしにスマホが振動する。
「あーーーうるせぇ! スマホの振動で家が倒壊したらどうすんだ!」
いい加減通知を切ろうとスマホに手を伸ばした際、メッセージの一つに目が吸い込まれた。
『YutさんもKnoxさんが作ったサーバーでヴェンデットの研究をしませんか?』
Yutというのは悠斗のプレイヤーネームだ。
なぜ悠斗に声がかけられたのは分からないが、そこに書かれていたある名前に目を食い入るように見つめる。
「knox……か」
第1回真佐杯優勝者の名前だ。
悠斗はAttoに敗北して以来、NRの情報をできる限り集めた。
しかし、No Richesを適応した大きな大会は真佐杯くらいしかなく、他はメガリスが無双するだけの無慈悲な映像ばかりであった。
そのため、数少ないNo RichesでのNRの大会である第1回真佐杯のアーカイブを見たのだが、第2回とはまた違った雰囲気の大会だった。
元々NRはカジュアル色が強かったのだろう。
大会においてもカジュアルと競技デッキが入り交じっていた。
低レアリティ故にテーマをドッキングさせたデッキも多く、しかし、NRのカードだけで動いているとは思えない程デッキとしての完成度が高かった。
そして、その中でもKnoxの花札は異様に強かった。
NRにおける花札は上級のシンクロモンスターが使用できないこともあり、とにかくデッキをめくり相手の盤面を破壊していくワンショット型のデッキだった。
デッキをめくる際にモンスター以外だと効果が不発になってしまうのだが、恐らくKnoxは構築段階であらゆる確率計算を終わらせているのだろう。
そう思わずにはいられないほどの効果の的中率、外した後のケアが完璧だった。
そして、KnoxはNR界隈だけではなく、スタンダード環境においても有名なプレイヤーでもある。
悠斗はあまりマスターデュエルの大会にでたことはないが、それでもSNSを通じて強者の情報はある程度入ってくる。
悠斗は少し迷ってから、Discordを開いた。
『初めまして、ぽん酢さん。Yutと申します。Knoxさんのサーバーの件ですが、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?』
送信後、スマホから目を離すか離さないかというタイミングで返信がくる。
『初めましてYutさん! この間の対戦卓でAttoさんと対戦してるのを見かけました! もし第3回真佐杯で優勝するつもりなら、一緒に練習しませんか? うおおおおおおおあたあああおおとお』
後半はともかく、これはとても魅力的な誘いだ。
悠斗はNRで遊ぶ知人はおらず、集められる情報に限界を感じていた。
『NRを始めたばかりでお力になれるかどうか分かりませんが、それでも良ければ参加させていただきたいです』
『うおぉNR初心者マジすか!! これはすぐ囲まなければ!! 今すぐここ入ってきて下さい! ビール片手に是非どうぞ!』
悠斗は苦笑しながら送られてきたリンクからサーバーに入ってみる。
警戒心を抱かせながらも何やかんやでこの人のいるサーバーなら入ってみたいと思わせるぽん酢の謎の魅力。
それに、knoxの名前はやはり大きく、その強さの秘訣に近付きたい気持ちもあった。
入室したサーバー名。
『knoxのぽん酢鍋』
「あっ……knoxさん既にぽん酢さんに侵食されてますやん」
knoxのサーバーだと聞いていたが、文字数的にはぽん酢に半分乗っ取られている。
気を取り直してサーバーの情報を確認すると、人数は悠斗を入れて4人。
knoxとぽん酢の他にはmonoというアイコンが光っていた。
入室した瞬間から、チャットは騒がしく盛り上がっていた。
「先行展開がまずムズかしいですよねもう」
「よく考えれば最大展開できるんだけど、ぱっと見で判断できん」
「かなり練習量が必要そうですね」
「みなさん鍋を! お疲れのところにぽん酢鍋をどうぞ!」
「酒もお願いします酒も!」
「はいただいまァ!!」
悠斗は少し驚いた。
もっと殺伐としていると思っていた。
「おっ、来ましたかYutさん!」
悠斗の入室に気付き、反応してくれたのはぽん酢だ。
チャット欄の履歴を見ても、この人だけ遊戯王の話をしていなかった。
何をしている方なんだろう。
「初めまして、Yutと申します。先程ぽん酢さんに誘っていただき、私も参加させていただくことにしました」
「Yutさん硬い硬い! もっと柔らかくていいですよ!」
「はぁ。最近NRを始めたこともあって、どうしても集められる情報に限りがあったので今回の提案はかなりありがたかったです。よろしくお願いします」
「よっ、にっぽん酢いち!」
「今NRが一番熱い時期ですからね、一緒に楽しみましょう! 私はmonoと言います。実家住みなこともあって基本ボイチャには参加できませんので影は薄いですが、よろしくお願いします」
「いよっ! にっぽん酢いちィ!」
やんややんやとボイチャが盛り上がるが中、奥から静かな声が聞こえた。
「Yutさん、はじめまして」
発言をした時に光るアイコン。
knoxだった。
思っていたより大人しめな口調だ。
「Attoさんとの対戦見てました。」
「はい。負けましたけど」
「でしたね。NRは初心者だろうとは思いましたけど、かなり遊戯王が上手い方だと思いました」
「……と言いますと?」
「初手の手数から相手の妨害どころに上手く隙を見せていました。最後のベトール(多面除去)を通すためですよね」
「まぁそうです……ちなみに、初心者だろうってのはどうして?」
「スレイヤーの対象耐性を知らないNRプレイヤーは初心者かエアプのどっちかしかいません」
「はは……。まぁ確かにそうかもですね。Attoさんもヴェンデットも本当に強かった」
「そうだすね。そして、その後も対戦部屋であなたの名前はチラホラ見かけていました」
「あっ、俺も戦ったぜ! 久々にメガリスとやれて楽しかった! 負けたけど!」
「いやすみません。みなさん思ったよりカジュアル寄りというか、たまにいる競技志向の方もNo Richesに準拠してましたよね」
「ルールがない以上何使ってもいいんだから気にしなくていいんですよ」
少し間。
それからknoxが言う。
「後はまぁ……決め手と言うわけではありませんが、Attoさんがあなたに返信していましたね」
「NRサーバーのやつですか? ひとことだけでしたけどね」
「そのひとことがすげぇんじゃん! あの人殆ど発言とかしないんだぜ! ホルアクティくらいレア!」
「あっ、そうなんですね。確かにチャット欄にいるの見たことないかもです」
「まぁそれがAttoさんの気まぐれだったのか、それともYutさんに何か見出したのかは分かりませんが。それでも、対戦部屋でのあなたの実力やNRサーバーでしているヴェンデットの質問の着眼点からYutさんに提案があります。ヴェンデット、一緒に研究しませんか?」
悠斗は即答した。
ぽん酢も怪しいだけで悪い人ではなさそうだし、knoxもmonoも常識人に思えた。
ここ数日で行き詰まっていたのは確かだし、実力者と研究できるのであれば断る理由も無い。
「もちろんです。よろしくお願いします!」
「ひゅーーーパフパフパフゥ!!」
「ぽん酢さん、やかましいです。で、Yutさんはどこまで分かってる感じでしょうか?」
「Attoさんのnoteは見て、先行展開までならって感じです」
「そこまで分かっていれば上出来です。Yutさん的に、ヴェンデットの強みはどこだと思いますか?」
「そうですね。まず何と言っても制圧力です。突破不可能な除去要塞」
「イカれた効果ですよね」
「ホントです。ただ、スレイヤーのレベルは6なので、本来であれば下級ヴェンデットの全ての効果を付与することはできません。そこで活躍するのが……」
「パズロミノですね」
「あの展開最初に見た時マジで震えた」
「そうですよね……。初手でパズロミノが出るように回しながら3種類の付与を準備する。あの展開を最初に思いついた時、Attoさんどんな気持ちだったんでしょうね。」
「そらもう脳汁出まくりよ。中日ドラゴンズが優勝するくらい凄い」
「ぽん酢さんって東海圏なんですか?」
「いんや、九州。もちろんホークスファン」
「えぇ……?」
「まぁYutさん、ぽん酢さんは今に始まったことではないので。ヴェンデットの制圧力は対象耐性と除外効果があるからということでいいですか?」
「いえ、それだけじゃありません。スレイヤー専用の儀式魔法は墓地から除外することでスレイヤーの破壊を無効にできます。また、アルグールマゼラは場のアンデット族モンスターの破壊を肩代わりにして場に出てくる最上級モンスターです。つまり、破壊も効かない」
「Yutさんの仰る通りです。NRの汎用除去として使われることが多いものは、激流葬、バージェストマディノミスクス、月の書などです。いずれも破壊や対象を取ることで除去をします」
「つまり突破方法が無いんだよなぁ」
「ですね。また、付与ができなかったとしても、アンデットの場持ちの良さで耐えることはできますし、事故ったとしても豊富なサーチ効果によって数ターンあれば動き始めます。」
「ですね。僕が前回の真佐杯で負けたのもヴェンデットの場持ちの良さを突破できなかったからです」
「僕はその試合からNRを知りました。会場の盛り上がりも凄かったですよね!」
「そうですね。ヴェンデットの強さはYutさんも正しく認識されているようです」
「ただ、そうなるとミラーの場合コイントスで勝つしかなくないですか?」
「そうも限りません。ヴェンデットが先行で理想展開を押し付ければそうなりますが、現に第2回真佐杯では配信された2試合は両方とも初手で事故を起こしています。つまり、お祈り+実力ですね」
画面共有が始まる。
悠斗の見慣れたヴェンデットの構築。
「Attoさんの構築、綺麗なんだよな」
ぽん酢が言う。
「完成度が高すぎる」
「でもそのままじゃ勝てません」
knoxが返す。
「次は皆ヴェンデットを意識してくるでしょうからね」
悠斗は少し鳥肌が立った。
ヴェンデットを回すのに精一杯の自分とは違い、この人たちはさらに先を歩いている。
「ミラー増えると思います?」
悠斗が聞く。
するとknoxは即答した。
「増えます」
迷いが無かった。
「今NRで一番強いので」
通話が少し静かになる。
それからぽん酢が笑った。
「だからこそ面白い。どんなメタを張るよりも、ヴェンデットをより強く、早く動かした方が勝つ。スタンダードじゃこんなバランス崩壊は起こり得ない。」
その言葉に、確かにと皆が少し笑う。
悠斗は不思議な感覚になった。
ここには、
“最強デッキ叩き”
が無い。
むしろ皆、
“どう勝つか”
を楽しんでいる。
「とりあえず回そう」
ぽん酢が言う。
「回さないと始まらん。ぽん酢鍋が欲しくなったら直ぐにご用命を!」
「それ何なんです?」
「あれですYutさん。発作的な」
「ひどいよknoxさん!!」
対戦が始まる。
ヴェンデットミラー。
墓地。
場。
儀式召喚。
悠斗は全くついていけなかった。
「待ってください、何で今墓地から除外しなかったんですか?」
「次ターンの墓地枚数です」
「……?」
「コアの温存です。このターンはコアにマスカンが飛んできます。つまり、マスカン+αで攻めるには次のターンのリンク値を稼ぐ必要があります。」
「ンンンンン?」
通話が笑いに包まれる。
「皆そこ通るから大丈夫」
ぽん酢が笑う。
だがknoxは真剣だった。
「このテーマ、盤面だけ見てると負けます」
「盤面だけ……?」
「墓地と、おまけに除外も本体みたいなものなんです。もちろん、付与スレイヤーで制圧する事が第1なんですが、そうできない場合は罠を踏みつつ致命傷を避けて有利に戦う必要がある。その先に付与がある場合もあります。」
その言葉が、
悠斗の中で引っかかる。
もう一度盤面を見る。
墓地。
除外。
確かに。
誰も“今”だけを見ていない。
次のターン。
さらにその次。
全部が繋がっているが、悠斗にはまだそこまで見えていない。
数時間後。
悠斗は少しだけ、ヴェンデットの対戦中の動きが分かり始めていた。
ヘルハウンド
レヴナント
コア
一見弱く見える下級カード達が、突然噛み合い始める。
墓地へ送り、除外する。
回収し、リソースを把握する。
その全てが次の動きへ変わる。
「あ……」
初めて、初動以外で綺麗に繋がった。
《ヴェンデット・スレイヤー》
NRで数少ない召喚演出を持つモンスター。
ドス黒いオーラが画面を染める。
対象耐性。
除外。
その強大なスレイヤーの姿を見て、悠斗の背筋に電流みたいな感覚が走った。
「……これヤバっ!」
思わず漏れる。
通話が笑いに包まれる。
「脳汁出た?」
ぽん酢が笑う。
「それがヴェンデットだ」
悠斗はモニターを見つめる。
気づいてしまった。
このテーマ、
強いだけじゃない。
“気持ちいい”。
リソースが繋がる感覚。
墓地が第二の手札みたいに動く感覚。
一つのシステムとして完成している。
通話の奥で、
knoxが静かに言った。
「……Attoさん、凄かったんですよね」
空気が少し変わる。
ぽん酢も笑うのをやめる。
knoxは続けた。
「今までNRやってきて、“理解できない強さ”ってあまり無かったんです」
静かな声。
だが、その奥には確かに悔しさが滲んでいた。
「でもあれは違った」
悠斗は黙って聞いていた。
「花札ならコアが絡んでいても、盤面だけなら何とか返せるんです。でも返しても、次が来る」
少し間。
「しかも、恐らくあの人は一人で研究しています」
その言葉に、悠斗は少し驚く。
今ここには4人いる。
皆で研究している。
だがAttoは違う。
一人だった。
誰にも共有せず、誰にも頼らず、あのヴェンデットに辿り着いたというのか。
「でも、だからこそ次は勝ちます」
knoxが言う。
静かだったが、確かな熱があった。
ぽん酢が笑う。
「うわ、出たよライバル宣言」
「まさか。僕の方が強いです」
「同じデッキを使えばって話? まぁ確かにそうかも。でも俺だって負けやしないぜ」
通話がまた少し明るくなる。
悠斗はその空気をぼんやり聞いていた。
不思議だった。
少し前まで、自分の遊戯王は“答え合わせ”だった。
でも今は違う。
知らないカード。
知らないルート。
知らない世界。
そして何より皆、自分で考えている。
画面の右下。
時刻は午前四時十三分。
外は少し白み始めていた。
数時間後には仕事がある。
普通なら最悪だろう。
でも、不思議と嫌じゃない。
今日は、今日だけはこれでいい。
むしろ楽しかった。
あのどうしようもなく輝いていた遊戯王の思い出に限りなく近い時間を過ごしている。
遊戯王がまたそう感じさせてくれる。
「そうだ、さっき真佐さんがポストされてましたけど、前回の真佐杯で定員が埋まったせいで、今回は早めの参加を推奨ってことみたいです」
「そうなんですね。じゃあ、今日の締めとしてエントリーしておきますか。」
knoxは短く息を吐き、画面を操作し始めた。
「せっかくなので僕も今やっておきます」
「んじゃ、俺も」
第3回真佐杯 エントリー
「ヴェンデット祭り始まるよなぁ。ミラー地獄だけどさ」
ぽん酢が笑う。
「でも勝ったら気持ちいいぞぉ?」
knoxは静かにエントリー画面を開いていた。
悠斗もまた、画面を見ていた。
少し前まで、大会なんて縁遠いただのイベントだった。
でも今は違う。
この数日間。
研究して。
負けて。
回して。
今日初めてできたNRの知人達と戦って仲間になって理解して。
少しだけ、この世界の言葉が分かり始めている。
このサーバーの仲間達となら、もっと遠くにいける。
もしかしたらAttoの知らないヴェンデットの展開までたどり着けるかもしれない。
悠斗は小さく息を吐く。
それから、エントリーボタンを押した。
NRヴェンデットのすすめ↓↓
NRヴェンデットのすゝめ|アッチャン https://share.google/BwhFfEFcGd5vK5VVb
第1回真佐杯↓↓
https://www.youtube.com/live/J3LlxO6H-gY?si=gqIvMywOM5ED_7Nm
NR週末大会(夜)のアカウント↓↓
https://x.com/norichesjp
NR毎日大会(昼)のアカウント↓↓
https://x.com/NoonRiches