Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜   作:パンダ三十六か条

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22日目〜23日目 狂う戦力図。

22日目

 

引きこもり期間の終了は突然だった。

俺は今日も家に引きこもってダラダラ過ごすつもりだった。生産職としての高い技術を生かして皆へ武器や防具を作るつもりだった。だが、そんな甘い考えは早々に打ち砕かれた。

 

狗竜長(ドスジャギィ)の出現。

 

その情報が入ってきたのは今朝方の事だ。どうやら雄達の部隊が巨大な足跡を発見したらしい。

狗竜長(ドスジャギィ)は戦闘力の高いモンスターだ。動きは小回りが利くし、1つ1つの攻撃が洗練されており隙が少ない。また、知能もとても高く自分より弱いジャギィ達を支配下に置く事ができる。

これまで、この渓流にドスジャギィが出現していなかったのは、メラルー達のお陰らしい。彼らは訓練された兵と質の良い道具を併せ持っていたので、ボス相手にも立ち回る事ができた。それにより、彼らは自らの領域を護っていたのだ。

だがしかし、彼らが死んだ事により今、この地域は支配者のいない場所とかしている。おそらくドスジャギィは空いたこの土地を侵略し自分の餌場にしようとしているのだろう。

 

せっかくのボス個体だ。食わなければもったい無い。ドスジャギィは今手に入るモンスターの中でも明らかに上物だ。食っておかなければ「何故あの時食わなかった……」と後悔する羽目になるだろう。

 

という訳で、早速敵の所へこっそり向かい、【竜毒投与】と【麻痺毒生成】と【特殊攻撃威力上昇】の併用で作った超強力な麻痺毒により相手を動けなくした後、取り巻きを全員倒してから、【竜尾攻撃】で頭を切り落として倒した。

『存在進化』によってボス個体級の身体能力となった俺の肉体に【攻撃力強化】や【攻撃強化の歌声】などを使う事で筋力を高める。それにより生身でも大岩を砕くような威力の攻撃が、強化によって鉄塊をも穿つ一撃へと変わるのだ。それに耐えられるような生物はそうそう存在しない。

 

 

『能力名【仲間を呼ぶ声】のラーニング完了』

 

『能力名【群友統括】のラーニング完了』

 

『能力名【鳴き袋】のラーニング完了』

 

『能力名【体温調節】のラーニング完了』

 

『能力名【群の長】のラーニング完了』

 

『能力名【悪知恵】のラーニング完了』

 

『能力名【精力絶倫(リビドー)】のラーニング完了』

 

『能力名【孕ませる】のラーニング完了』

 

 

仲間を支配するのに使えそうな能力のラーニングができた。この狗竜長はどうやら群を支配するのがとても上手かったらしい。ただ、その分自らの戦闘力自体は低めだったのか、個人の戦いで使えそうな能力は手に入らなかった。残念である。

にしても、【精力絶倫】【孕ませる】を同時に獲得できるとは……。コイツは、ジャギィ界では超イケメンの種まき野郎だったのか。この前のはぐれジャギィとは大違いだ。

 

ドスジャギィを狩った後は他のアイルーと一緒にジャギィ達を狩る作業に移行。【群友統括】と【群の長】の活躍により、スムーズに狩りを行う事ができた。

『能力名【早熟】のラーニング完了』

 

23日目

 

昨日のように他の地域から来るボス個体から渓流を守るため、狩りのついでに見回りをする事にした。【気配察知】を使って周辺を探りながら歩いていたが、他のモンスターとはあまり合わなかった。

 

……うん、どうやら俺は強くなりすぎたらしい。なんせ近づくだけでモンスターが全員逃げていくのだ。【隠れ身】を使っていればバレないのだが、この能力はキープするのが結構ダルいのであまり使いたく無い。

ただ、喧嘩っ早いブルファンゴなど、一部のモンスターは立ち向かってきたので大きく口を広げる【大顎】で食べさせていただいた。ブルファンゴよ、戦力差を気にせずに立ち向かうお前たちの勇気は流石だ。お祝いに熱いキスをかましてやろう。

 

そんなこんなで奥へ奥へと進んで行ったところ、【気配察知】に謎の気配が引っかかる。それは林の奥の大きな木の下から出ていた。掘ってみると、そこには真っ赤なキノコが生えていた。禍々しい力を秘めていて、心なしか人の形をしているようにも感じる。鑑定してみると、マンゴンドラという秘薬の材料となる素材だった。

 

せっかくなので、【調薬の心得】を使って『いにしえの秘薬』作りに挑戦することにした。

材料は【隠れ身】と【蜘蛛の糸生成】で捕まえたニガ虫と【蜂蜜生成】で作った甘い蜂蜜、取れ立て新鮮なマンゴンドラと前に保存しておいたケルビの角である。

いにしえの秘薬は1から作る場合、『増強剤』、『活力剤』、『いにしえの秘薬』と順に作っていかなくてはならない。本来なら行商人から買った方が手間が省けるのだが、あいにくメラルーの巣には増強剤は無かったのだ。ただ、薬自体は無かったが調合について載っている本があり、それを元に作ってみることにした。

 

まず、ニガ虫を解体し使える部分を選出する。これは生薬の加工の工程の一つである『選薬』という作業である。薬剤として必要な部分は残し、残りは排除しなくてはならないのだ。そうして取り出された薬効成分の多い部分を【風起こし】で作った熱風で乾燥させ、居住区にあった乳鉢で摩り下ろす。ゴリゴリと細かくなるまで根気よく行う。そして、粉末状になったニガ虫に蜂蜜を加えて、乾燥させて固める。これで増強剤の完成である。

次に、マンゴンドラを刻んで根などを取り除き、少し【火属性攻撃】を付与した【風起こし】によって乾燥させてからすり潰す。マンゴンドラは薬品としての成分が強いのでまるごと使える所が魅力的である。そうしてできた粉末に、増強剤を適量混ぜ合わせる。これで、活力剤の完成である。

最後に、砕いたケルビの角を活力剤に加えて、水を加える。後はこれに菌を加えてしばらく発酵させれば、いにしえの秘薬は完成だ。ケルビの角は単体だと薬に適さず、マンゴンドラは通常だと身体を壊す劇薬だ。発酵させる事で薬に適した成分を作り出さなくてはならないのだ。この工程は温度を時期によって的確に管理しなければならないし、菌が入らないように最大限の注意を払う必要がある。はっきり言って並みの物では難しい作業だ。

 

……まあ、俺には【体内熟成】があるからできた液体を口に含んで能力を発動させれば秘薬は簡単に完成する。口に含んだ瞬間旨味が広がったかと思えば、それが発酵してどんどん味が深まっていき、最終的には口の中にプロのバリスタの入れたコーヒーのようなコクが生まれる。後は【薬物効果上昇】でその味を更に高みへと持って行き、一気に飲み込む。ついでに薬の生産過程で使っていて割れた乳鉢も食べる。

 

 

『能力名【秘薬の血潮】のラーニング完了』

 

『能力名【調合】のラーニング完了』

 

 

【秘薬の血潮】という能力には見覚えがあった。確かこれは自分の血液が回復薬としての性質を得る能力だったはずである。非常に使える能力であることは間違いないだろう。

 

そして、もう1つの能力【調合】。どうやらこれは、持っている物を使って薬の調合などを一瞬にして行う能力らしい。調合の過程を省く能力、といったところだろうか。どうやらアイテムボックスに素材を入れておくだけで、念じれば一瞬にして薬を作り出せるようだ。

 

そして、この能力。しばらく使ってみて気がついたのだが、どうやら『Re:Monster』の【合成】と似た性質を秘めているらしい。【合成】とは異なる物達を一つに合わせる能力だったが、【調合】もそれと似た性質を秘めている。少し違う所は、【合成】は能力と能力を完全に融合する能力だったが、【調合】は【能力】を分割してその能力の一部どうしを融合させる能力のようだ。

つまり、【調合】の場合、【龍属性攻撃】を【竜爪攻撃】と【竜尾攻撃】のどちらにも合わせたい場合は【龍属性攻撃】を分割してそれぞれに合わせる事も可能なのだ。使った能力が無くなる【合成】より使い勝手が良さそうである。ただし、能力は分割すると性能がダウンするそうなのでそういう所は注意する必要が出てくるだろう。

 

これからは【調合】を使って持っている能力の強化を行ってみることにしよう。

 

 

【爆竹生成】+【火薬生成】+【爆裂】=【爆薬生成】

 

【火属性攻撃】+【水属性攻撃】+【雷属性攻撃】+【氷属性攻撃】+【龍属性攻撃】=【5属性攻撃】

 

【蟻の筋力】+【猪の筋肉】+【脚力上昇】=【黒猫の剛力】

 

【独り身の戦闘】+【命知らずな心】=【独り善狩りの勇者(ブレイブ・フォーマイセルフ)




というわけで、【調合】を【合成】代わりに使うことにしました。
いやあ、「黒竜からラーニング」などのアイデアも頂いてのですが、今の状況でどうやって手に入れたら良いのか分からなかったので、こういう形に落ち着きました。
ちなみに分割で能力が弱体化しても、その能力を得られる物を食べることにより強さは元どおりになります。

7月26日
矛盾点が見つかったので修正しました

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