Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜 作:パンダ三十六か条
戦闘開始から数時間。依然としで戦いは続いていた。
【黒猫の激突】の突進能力と【属性解放突き】による刺突で、相手の身体を貫く。
【蟻酸生成】による高濃度の酸の霧で、相手の呼吸器官にダメージを与える。
【翅生成】【高速飛行の心得】【滑空】【ホバリング】【噴射飛行】で空を自由自在に動き回り、【素材玉生成】の玉をばら撒く。
【花の香り】【悪臭】で嗅覚に、【辛味成分生成】で味覚に、【閃光】で視覚に、【威嚇咆哮】で聴覚にダメージを与える。
【罠生成】【爆薬生成】で逃げようとしたら進行方向に地雷を作る。
【蜘蛛の糸生成】【操糸術】【拘束】により相手を縛って動けなくする。
【植物生成】で作った蔦に【生肉生成】で作った筋肉を合わせて触手を作り出す。
いくつも能力を組み合わせる事で、敵が想像もできないような戦法をする。相手の予想を超えて、常に特殊な攻撃を繰り出し続ける。
まあ、敵もそう簡単にやられようとはしない。こちらの大技を何回も回避しているし、ゲームでは使わなかった攻撃を何回か行ってきた。まあ【猫の回復力】で身体の傷は治るし、【癒し】で精神面の疲れもとれるので特に大きな問題は無かった。
相手は全身から血を流していて、俺も外骨格がダメージの受けすぎで解除されて展開できなくなっている。そろそろ決めた方が良いかもしれない。
俺は【蜘蛛の糸生成】の糸を飛ばして相手の角につけると、跳躍して相手の頭へと飛ぶ。更にそこから相手の背中に移動すると【大顎】【牙の一撃】【大食漢】を発動し、相手の首元を齧って食い荒らす。
『能力名【
『能力名【直感】のラーニング完了』
『能力名【強打乱舞】のラーニング完了』
『能力名【雷光虫活発化】のラーニング完了』
ジンオウガは悲鳴を上げて転げ回ろうとするが、間一髪で飛んで脱出する。
今の攻撃で相手の首の動脈を一本噛み千切れた。かなり深い所まで抉る事ができたので、後は出血多量で死ぬのを待つだけ。失血毒を【猛竜毒投与】で投与して血を固まりにくくしたので、おそらくもう少しで相手は死ぬだろう。
さっき少しつまみ食いしたけど、ジンオウガの肉は今までに無いくらいに美味だった。これはもう頭からつま先まで全部食い尽くさなきゃ気が済ま無い。
さあて、今すぐ殺してやるよ。ジンオウガ。
【迅雷祐吉は能力【
【申請中……申請中……申請中……】
【申請が通りました。新たな能力が迅雷祐吉に与えられられます】
【能力【
【能力【
【迅雷祐吉は【
【迅雷祐吉は自分の肉体を分解しエネルギーに変えた】
【獲得したエネルギーにより、迅雷祐吉のレベルが上昇した】
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《大軍虐殺》《竜種滅殺》《王道闊歩》《万夫不当》《戦力渇望》クリアしているため、【
【
《Yes》《No》】
【???は特定階位にまで【
【???は【
【真名・
【能力【
【アザゼルは
【アザゼルは
【アザゼルは
【アザゼルは特定条件種、特定条件行動、特定指定個体をクリアしている為、※※※から
【エラーが検出されました】
【五つの
【未解放である二つの
【アザゼルは【
【アザゼルは【
【アザゼルは【
【
【
【 戦闘中のため、【
ぽたり
「ん?」
ジンオウガに新たな攻撃をしようとした瞬間、ニャー郎の頬に水滴が当たった。
空を見るとそこには何も無かった。だがぽたりぽたりと水滴が落ちてくる。そのうちに落ちる水滴の量が増え、みるみるうちに落ちる水の量は多くなった。最初は小雨だったのがみるみるうちに土砂降りへ変わる。
「……雨?」
どうやら雨がふってきたようだった。この世界はゲームの渓流とは違い雨が降るので、不自然なことではない。でも今回はタイミングが悪かった。せっかくの火が水に濡れて消えてしまう。
あー、これじゃあ火で与えるダメージが無くなってしまう。
俺はため息をつきながらジンオウガを見る。そして衝撃を受けた。
ジンオウガの傷がどんどん治っている。切り裂かれた皮膚は閉じていき、空いた孔は塞がり、穿たれた肉は再生する。
ジンオウガは雄叫びを上げた。すると、その身体が黒い雷に包まれる。雷はジンオウガの身体を焼き、新たな肉体をそこに作り出していく。
この時、俺の中に強い恐怖が湧き上がった。今手に入れた【直感】が、俺に向かって呼びかけていた。 目の前の存在を倒さなくては、目の前の存在から逃げなくては、俺は死んでしまう、と。
【力の解放】【攻撃力強化】【攻撃強化薬】【薬物効果上昇】【黒猫の強靭な肉体】【鬼人化】による身体能力の強化。
【防御力強化】【防御強化薬】【切れ味上昇】【武器攻撃威力上昇】【形状記憶】による身体の硬度の上昇。
【黒猫の激突】で相手へ一気に迫りながら、【武器威力上昇】【5属性攻撃】で尻尾に力を貯めて、【黒猫竜の尾攻撃】を発動。
【弱点見切り】【情報簒奪の鑑定眼】で相手の皮膚の弱い所を見抜き、【属性解放突き】【岩切り】【4連突き】を発動。
俺の渾身の攻撃。相手の防御をすり抜け、莫大なダメージを与える俺の本気の一撃。それはジンオウガの体にクリーンヒットする。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
だが、その攻撃で傷ついたのは、攻撃を放った俺自身のみだった。
コイツの周りを取り巻く黒い雷を突き破ろうとした瞬間、触れた俺の尾が蒸発していた。激痛と驚嘆により、俺の口から悲鳴が飛び出す。
「何なんだその雷……? そんな技、ジンオウガが使ってるの見た事ない……」
俺が痛みを堪えていると、ジンオウガを包み込んだ雷が晴れる。
そこに居たのは、黒い毛並みのジンオウガだった。さっきより一回り小さくなっているものの、まとっている雰囲気は何倍も強かった。その姿には見覚えがあった。確かモンハン4から出てくるジンオウガ亜種だ。3DSを持ってなかったので俺は4以降のモンスターを全然知らないが、ジンオウガ亜種は雑誌の広告で何度か見た事があった。
まさか、この黒い雷はジンオウガ亜種の能力だというのだろうか。
嘘だろ。このジンオウガ。戦闘中に進化したっていうのかよ。さすがにチートすぎるだろ。
ジンオウガは俺を見ると、角に黒い雷をまとわせる。俺は咄嗟に【竜鱗生成】で身体を覆う。
しかし雷が当たった瞬間、俺の両脚は千切れた。
「ぐあぁぁぁあ!」
おかしい。今は竜鱗で身体を覆っていたからそれなりに強度があったはずなのに!
今の攻撃はその防御を簡単に貫き、俺の両脚を切り落としていた。その攻撃が未知の攻撃でも、さすがにここまで威力が高いのは変だ。
……まさか、【龍気脆弱】のせいか?
【龍気脆弱】。俺がリオレイアを倒した時に得た、龍属性に弱くなる能力。
敵の能力を取り込んで強くなる俺が、取り込んだ能力のせいで死ぬって事か?さすがに酷すぎるだろ。
ジンオウガがゆっくり近づいてくる。
考えろ、考えるんだ。もう相手を殺すのは諦めよう。今は助かる方法を考えなくては。
どうやったら逃げられるのか。どうやったら生き残れるのか。それのみを考える。
恐怖は忘れろ。怒りも忘れろ。欲求を忘れろ。疲れを忘れろ。痛みを忘れろ。思考の邪魔になるものは全部排除しろ。
そうこう考えているうちに、ジンオウガはすぐ前に迫っていた。ジンオウガは前足を上げると、俺の頭の上に掲げる。どうやら頭を潰す気らしい。
まあ、それもそうだろう。コイツとの戦いで俺は【黒猫の回復力】で傷を何回も治している。確実に殺すために脳を破壊しようとしているのだろう。
ああ、時間が足りない。このままでは何もできずに死ぬ。
だから、最後まで無駄に足掻こう。
【燃える拍手】【演奏】発動。
俺は両手を思いっきり打ち鳴らす。【燃える拍手】の効果でその手から炎が生まれ、【演奏】の効果で神経を揺さぶるような音が辺りに響き渡る。それはジンオウガを怯ませ、その足を退けさせる。
俺はジンオウガを睨む。できる限りの怒りと闘志と憎悪をこめて、相手と真っ直ぐ目を合わせる。強がりでもいいから、反抗心を相手に見せる。
ああ畜生。許せない。俺に勝つコイツを俺は許せない。コイツに負ける自分が何より許せない。死に対する恐怖がどうでもよくなるほどの怒りが俺の中で込み上げてくる。
だけど、今俺にできるのはこれくらいしかない。だから、コイツの前で無様な姿を晒すことになる。
ジンオウガは俺の頭に再び腕をそえて力を込める。
だが俺は攻撃系能力と防御系能力を全て発動し、最後の力を全て込めた【頭突き】でそれを受け止める。
「待ってろジンオウガ。俺は例え、生まれ変わってもお前を絶対に────」
────お前を殺しに行く。
そう言い終わった時、俺の体に残っていた力はほとんど無くなった。全てが終わったと、俺は意識を身体から手離す。
グチャっと音を立て、俺の頭が踏み潰された。
能力説明
【
ジンオウガに転生した男、迅雷祐吉の持つ転生特典。状況や敵に応じて様々な能力を作り出す。発動条件は一定時間、一定量のダメージを受ける事。成長に補正がかかったり、【存在進化】をサポートしたりなどの効果もある。
相手の力を奪うニャー郎とは違い能力を獲得するのが非常に面倒だが、相手に有効な能力を戦闘中に獲得できるという大きなメリットがある。
追記
【自己進化】という能力は既にあったので、能力名を【逆境進化】へ変更しました。