Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜   作:パンダ三十六か条

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大変お待たせして申し訳ありません。作者の一身上の都合により、長い間執筆できませんでした。次回からは、今までと少々形式を変えて投稿させていただきます。


就職しました

41日目

 

ユクモ村。ゲームの中で主人公が生活するのどかな村で、名所は温泉。周りは柵や篝火などで囲まれていて、モンスターから守られている。普通に使われている出入り口は原作通り二箇所で、今回は正面の方から入ることになった。

 

門を開けてもらうと、そこには圧巻の景色が広がっていた。現実になったユクモ村は前よりもたくさんの建物が増えていて、広く大きくなっていたのだ。

原作では、道具屋や鍛冶屋などの主人公に関係のある店しか存在していなかったユクモ村。しかし、よく考えてみれば、村に住んでいるのはハンターだけでは無いのだから、大工や陶芸家などといった他の職業の人もいなければならないだろう。温泉で有名な観光地なのだから、土産物屋や宿屋なども必要だ。そもそも住んでいる人の家だって存在していなければおかしい。

 

現実となったユクモ村は、ギルドの赤い屋根の建物を中心として、たくさんの建物が集まってできた町になっていた。ユクモの木の赤い木でできた家々の連なる様子は、江戸の城下町のようだった。

ただ【気配察知】で探ってみると、ちらほらと空き家があった。原作の話から考察するに、おそらくジンオウガが暴れているせいで村に来る人が少なくなったせいだろう。人も商品も流れこなければ、観光地的にはかなり辛いはずだ。原作で主人公が使っていたのも、案外誰かが住んでた所だったのかもしれない。

 

まあ、いちおう原作の村と同じ所もあった。

「む、なんだお前。見たこと無いアイルーだな。怪しいやつめ。狩人達に紛れていれば俺の目を欺けると思っていたのか!」

そう、みんなお馴染み「ユクモ村の鬼門番」である。ブルファンゴに体当たりされたり、木を斬り倒そうとして腰を痛くしたりなど、かっこよくない話をよく聞くあの男である。

ちなみに俺に話しかけた瞬間に、「昼間っから何をやってるんだお前は」と鬼門番はおっさんハンターに拳骨を食らっていた。どうやらコイツは定職につかずに門の前でダラダラしているせいで周りからは呆れられているらしい。コイツは本当にゲームと変わってない。

 

他にも鍛冶屋の爺さんとかモミジィとかの原作にいた人らしき人も多かった。どうやら原作通りの人も多いようだ。

……と、言うことは原作の村に存在するやつで、現実的に考えれば存在するのがおかしい「アレ」も手に入るのかもしれん。あれは強くなるためにかなり使えるものだ。今持ってる使い勝手の良いあの能力を強化するには、喰って能力を取り込まなくてはならないだろう。

 

 

 

とりあえず、今は職場を見つける方が先だ。おっさん曰く、アイルーはまずネコバァの元で戦闘職のアイルーとして登録してもらうらしい。その後、適正を試すための試験を受けてから、それぞれ狩人や料理人などとして奉公する先を探すのだとか。

 

おっさんや他の人たちに挨拶して別れ、しばらく村を歩き回った。すると、ネコバァをギルドに向かう階段の下の所で発見した。どうやら村は大きくなり人の数も増えたが、ゲームの村人がいるだいたいの位置との変化はないらしい。原作ではそのリュックから何匹ものアイルーが顔を覗かせていたが、現実ではそれだけでなく周りにもたくさんのアイルーを連れていた。

 

話しかけてみたところ、どうやら周りにいたのは日雇いのアイルーらしい。アイルーとの契約をしていない狩人が、クエストにサポートが欲しい時に一時的に契約するのだとか。

リュックに入っているのは生まれたばかりののアイルーで、ネコバァが育てているらしい。人間社会のアイルーは、成長が野生種と比べて遅いようだ。その分伸びしろが大きく、知能も高いので人間社会で生活するにはそっちの方が良いのだろう。

ちなみに彼らの色が野生種と違ってカラフルなのは、亜種というわけではなく、ヘアカラー的な薬で染めているかららしい。縁日のピンク色のヒヨコと一緒だ。

 

 

少し世間話をした後、俺はネコバァに正式なアイルーとして登録してもらった。【職業・隠者】の力で自分のオーラ的なものを誤魔化していたせいで、ネコバァは俺を不思議そうな目で見ていたが、一応登録してもらう事はできた。

現在は、村にあまり人が来ていないため、新しくアイルーを雇うという人は少ないらしい。だけど、ニャンタークエストや農場の手伝いなどといった仕事場はあり、手の空いているやつはそっちをするようだ。

 

その日はネコバァの仕事が終わるまで待ち、その後は農場の方にある猫人用の家みたいな場所に送られた。どうやら未契約のアイルーはここで過ごすらしい。

中にいたアイルー達は気さくで、初心者の俺を歓迎してくれた。あまり強そう(美味そう)には見えなかったが、長い間トレーニングを積んでいるだげあり、技術はかなり高いようだ。攻防両方を鍛える訓練としてネコ拳闘を習ったが、動きに殆ど無駄が無い。初歩的な動きとして、構え方やジャブの打ち方などを教えてもらった。

この前の進化で得た【戦技早熟】の効果がでたのか、結構覚えるのは早かった。この調子で毎日練習して、自分に足りない戦闘技術を補おうと思う。

 

42日目

今日は早朝に起きて農場の手伝いをした。草むしりだったり肥料を撒いたりなどの重労働が多かったが、体力が上昇しているのでそこまで苦しいわけでも無かった。雑草の中に紛れ込んでいたムチューリップを見つけて、こっそりと頬張る。

 

『能力名【虫寄せエキス生成】のラーニング完了』

 

農作業は働くアイルーの数が多いので午前中で終わり、その後は各々がトレーニングに励む時間になった。今日も先輩アイルーとネコ拳闘をする。ジャブだとかコンビネーションだとか、学ぶことは結構多いようだ。

 

最近はあまり飯を食えていないが、ばら撒いた胞子からのエネルギーでなんとかなった。前に獲得した【禁欲者】の効果も影響しているのかもしれない。

わずかではあるが給金もあるので、貯まってから村でアイテムあさりでもしてみようと思う。ゲームには無かったアイテムも見つかるかもしれない。

 

 

43日目

 

今日はバイトでギルドに初めて入った。風呂の掃除の依頼をネコバァが受けたからだ。

うちの村のハンターズギルドは「狩猟」と「温泉」の二大産業の元締めを担っている。そのため、かなりその実権は強いようだ。

原作とは違い、温泉は男女で分かれていた。俺は男湯の方へと入ると、ヘチマのタワシを使ってゴシゴシと浴槽を洗う。かなりの重労働ではあるが、体力がつきそうな作業だ。

だいぶ綺麗になった所でその日の作業は終了した。帰る前に、ギルドのスタッフからお茶の差し入れがあった。

 

『能力名【防御力アップ(小)】のラーニング完了』

 

『能力名【ネコの弱いの来い!】のラーニング完了』

 

『能力名【ネコの胆力】のラーニング完了』

 

『能力名【ネコのすり抜け術】のラーニング完了』

 

どうやら一回限りのドリンクの能力も、俺はラーニングで定着させることができるようだ。金が溜まったら飲んでみるのも良いかもしれない。


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