Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜   作:パンダ三十六か条

7 / 25
本日は二話投稿しています。ご注意ください。


17日目〜18日目 虐殺と同族

俺たちは、【興奮物質生成】と【蜂蜜生成】で作った元気ドリンコ(仮)を飲んでから、深夜の森の中を相手の巣に向けてゆっくりと進んだ。夜はジャギィなどのモンスターが活発化するのだが今の俺たちには問題ない。普通に瞬殺して養分に還元した。

 

巣から数十メートル時点まで来ると、俺は周りのアイルーに待機するように指示を送り、【隠れ身(ハイディング)】を使いながら静かに巣に向かった。数メートルほどの所まで近づいて藪の中から様子を伺うと、そこには番をしているメラルーの姿があった。メラルーは本来飽きっぽい種族のはずなのに、そいつは気を引き締めて凛とした顔で警備していた。近くには、何かあった時に他のメラルーを起こすために小さな太鼓のような物も置いてある。

このまま正面から行くと、恐らく奇襲がバレる。だから、まずは見張りを太鼓から引きはがす事にした。

 

俺は、手に持っていた石を少し離れた所に投げる。石がそこにあった茂みに当たってガサガサと音を立てた。

「ん? 何だ? 」

風も無いのに音の鳴った事に不審に思ったのか、メラルーが茂みへと近づき、覗き込む。

そうして無防備になった後ろに気配を殺して近づくと、手に持っていたナイフを首に向かって振り下ろす。抵抗されても困るので、【竜毒生成】と【竜毒投与(ヴェノム)】と【麻痺毒生成】を同時に使って相手を完全に殺した。

「……第一段階、クリアか」

俺は小声でそう呟くと、倒したメラルーを放置して皆の元に帰った。

 

見張りの居なくなった巣の前に立ち、【気配察知】を使用。ガーグァを大量に喰って能力を強化し、メラルーの捕食で【隠れ身(ハイディング)】がどういう能力かを理解した俺には、もうメラルーの【隠れ身】は効かない。全員が巣のどこにいるかは大体分かった。どうやら起きている個体もいないらしい。

「今だ! やれ!」

そう俺が指示をすると、アイルー達は俺の元に駆け寄って、持ってきた薪の山(・・・)をばら撒き、そこに【脂質生成】で作った油を込めた玉を投げつける。今の物音で何人かのメラルーは目を覚まし、何人かは武器を取りすぐさま出てくるはずだ。だが、もう既に遅い。準備は整っている。

俺は、ある能力を発動の準備に入る。それは今まで使ってこなかった能力だ。なんせ、普通の敵に使うと一瞬で消失させられるくらい威力が高いし、一回撃つだけでも相応のエネルギーを食う、非常に使いどころの悪い能力だからだ。

今こそ使おう。火竜より手に入れた、俺の最強の攻撃能力。

「【焔火の息(ドラゴンブレス)】!」

 

 

 

 

焔火の息(ドラゴンブレス)

火竜とまで呼ばれるリオレウスの技である、火の玉を再現する能力。その威力は雷撃にも相当し、一発撃つだけでもガーグァ1体分のエネルギーを消費する。

 

身体から一気にエネルギーを持っていかれる感覚と共に放たれた炎の塊。それは積まれた木に着弾した瞬間に崩壊し、洞窟の入り口に大きな火柱を築き上げた。恐らく今の一撃で、いち早く異変に気付き出てこようとした連中は大ダメージを受けた筈だ。しかし、これで終わりでは無い。これはあくまで相手を巣の中に足止めするための行為にすぎない。

 

「皆! 今の音で周りのジャギィとかが集まってくるかもしれない! 敵がこっちに来ないよう、頼むぞ!」

『了解っ!』

俺の指示で、全員がそれぞれの持ち場に散らばっていく。俺がいなくても敵を迎撃できるよう、今日きたメンバーは全員モンスターの素材で作った装備や武器が支給されている。もしものために肥やし玉などのアイテムも持たせてあるため、少なくともこっちに敵が来ることは無いだろう。

 

俺は、巣の中を【気配察知】で探る。どうやら巣の中は寝ている奴を起こしたり何だりで大騒ぎになっているらしい。今度はそこをつく。

俺は、足元に置いておいた袋の中に手を突っ込むと、中に入っていた物を幾つか炎の向こう側にぶん投げた。

「にゃあ! 今度は何事にゃ⁉︎ 突然煙が‼︎」

「煙幕か? いや、この香りは……マタタビ?」

「ふにゃあああ! か、身体が痺れて……」

「痛い痛い痛い痛い痛い! 顔が! 顔が、溶ける!」

中からメラルー達の声が聞こえてくる。どうやら驚いてくれたようだ。

 

今投げたのは、【素材玉生成】と様々な能力の併用で作った、各種状態異常玉だ。本来なら素材玉に麻痺毒や睡眠毒は適していないのだが、アオキノコからラーニングした【薬物効果上昇】を使う事でその問題はカバーできる。

 

今の俺が作れるのは『毒煙玉』や『肥やし玉』、『閃光玉』だけじゃあない。

【蟻酸生成】で作った『強酸霧玉』

【睡眠毒生成】で作った『睡眠毒煙玉』

【麻痺毒生成】で作った『麻痺毒煙玉』

【減気毒生成】で作った『減気毒煙玉』

木天蓼(マタタビ)生成】で作った『木天蓼煙玉』

その他にも、【粘着物質生成】や【接着剤】で作った『引っ付き玉』、【爆竹生成】で作った『小型爆弾』、【蟻酸生成】に【竜毒生成】を混ぜて作った、当たると溶けた皮膚から竜の毒が入って死に至る『即死玉』、なども幾つか入っている。

この三日間、俺は何体ものモンスターを喰らい続けることにより、莫大な量のカロリーを得ている。それらのエネルギーを殆ど費やし、俺は大量の素材玉の生成をしたのだ。

 

 

投げて、投げて、投げまくる。【気配察知】で動きを読んて的確に投げているので俺のコントロールは外れない。火に炙られ、毒に晒され、ジワジワとダメージを与えられ続けるのはさぞ精神的に辛い事だろう。何て残酷な仕打ちなのだろうか。

 

まあ、そう簡単に落ちるほど相手も甘くは無い。何人かの奴らはダメージ覚悟で無理やり火の中を突っ切ってくる。

「うにゃああああ!」

叫び声をあげて、士気を奮い立たせて、体を焼かれる痛みをこらえながらメラルーが飛び出してくる。

 

 

だけどそう来る事はとっくにお見通しなので、俺はちょうど来る所に【竜尾攻撃】をブチ込んだ。刺した敵は、そのまま尻尾を使って敵に器用に投げ返して戦意を削ぐのに使った。

俺はどこまでも無慈悲に、作業的に素材玉をぶつける作業を続けた。

 

メラルー達の目に、果たして俺はどう写っているのだろうか。殺される事に関してコイツらはどう感じているのだろうか。

こんな残虐な事をしているのに、なんで俺は食欲の任せるままに暴れられるのだろうか。

 

「……お、そろそろ素材玉が切れるな」

いろいろと考えながら30分くらい素材玉で向かってくる敵を迎撃していたら、持ってきた素材玉が尽きかけていた。

「敵の気配は……まだあるよな?」

【気配察知」を使ってみた所、未だに何人かのメラルーは生きているようだった。どうやら奥の方に避難しているらしい。

 

「あれ? ニャー郎、終わったのにゃ?」

攻撃の手を止めてどうするか考えていたら、ニャー美が話しかけてきた。

「うーん、どうやら敵は奥の方に避難しているみたい……って、ニャー美はなんでここに居るんだよ。見回りはどうした?」

「一緒にやってるアイ春が、異様に張り切ってるのにゃ。ニャー郎に良いとこ見せなきゃって」

どうやら暇になってここに来たらしい。万が一の事もあるしペアの子とはあまり離れるな、と言っておいたはずなのに……。

「まあ良いか。とりあえず、今から火の向こう側に特攻してくるか。見回りの継続よろしくね」

「了解にゃ!」

ビシッと敬礼のポーズをとるニャー美。微笑ましい姿に癒された後、そのまま洞窟の方に向き直る。

 

「……なあニャー美、俺が同族のメラルーの巣を襲撃するって言った時、どう思った?」

すると、ニャー美は少々考えるような動作をしてから、こう返した。

「ニャー郎の言ってる事だし、それは必要にゃんだと思うにゃ! だから、ニャー郎についていくにゃ!」

「……そうか。ありがとな、ニャー美」

 

 

 

 

深呼吸し、熱い空気を胸の中に収める。熱が身体を巡り、血に浸透し、身体が高ぶっていくのを感じる。

「【竜鱗生成】【遮熱の毛皮】、発動」

そう呟いた瞬間、ピキピキと音を立てながら俺の皮膚が赤い鱗に覆われる。この鱗は火竜の性質を持っているため、耐火性もそれなりに高い。見た目が悪くなる所さえ許容できれば、そこそこ使える能力だ。

腕をクロスさせ、顔を守るようにしながら思い切りジャンプして炎の壁を越える。

 

洞窟の中は死屍累々だった。入り口付近には毒で動けなり、死にかけているメラルーが転がっている。かろうじて生きているそいつらの胸に自分の尾を突き刺し、確実にトドメを刺しながら、奥へ奥へと進む。

 

生きている気配を目指して進んで行くと、入り口がドアになっている所を見つけた。倉庫か何かだろうか。どうやらドアで区切ってガスが入らないようにしているようだ。完全に塞ぐことはできなくても、こうすればある程度は時間を稼げる。

中に入ろうとドアを開けようとしたが、開かなかった。蹴ったり突進したりしてドアをブチ破ろうとしても開かなかった事から察するに、扉の向こうに荷物を積み上げているのだろう。

普通の攻撃では破壊できなさそうなので、【蟻の筋力】と【猪の筋肉】と【脚力上昇】で身体能力を増強し、【角生成】で頭から角を生やす。さらにそこに【突進攻撃】と【体当たり】と【頭突き】を使用し、ドアに頭からぶつかった。

 

轟音を立ててドアが吹きとび、前に積まれていた物が周辺に吹っ飛んでいく。そこには女や子供などの弱いメラルーと、ボスの猫盗賊(メラルー・バンデッド)の姿があった。

最後の足掻きとばかりに猫盗賊(メラルー・バンデッド)は立ち向かって来たが、即座に尾で不意打ちして【竜毒生成】で毒を打ち込んだ。ボスはこちらを恨みがましそうに睨んだ後、力尽きた。

 

こうして、メラルーの群れは、一晩にして滅びた。

 

 

 

18日目

 

昨日の戦いの後、俺はメラルーの群れのボスを喰った。やはりボスというだけあり、その肉体はとても美味しい物だった。更に、幾つかの優れた能力もラーニングできた。

 

『能力名【物品鑑定(ディテクト・アナライズ)】のラーニング完了』

 

『能力名【異空間収納能力(アイテムボックス)】のラーニング完了』

 

『能力名【武芸百般の心得】のラーニング完了』

 

かなりのチート能力が手に入った。鑑定も収納も狩りをするのに使えるし、俺には戦闘センスが無かったのでこれはちょうど良かった。

 

俺は手に入れた【異空間収納能力】を使い、巣の中にあった武器や防具をアイルー居住区に運んだ。人間から奪ったと思われる道具や装備は全て優秀で、生活水準を一気に引き上げてくれそうな物ばかりだった。

食べ物や薬は残念ながら俺の毒で汚染されてしまったので、全部俺の管理下に置く事にした。

 

更に、洞窟の最奥を捜索してみた所、そこには捕虜の人間の女達の死体があった。どうやらメラルー達の発散に使われていたらしい。ボロボロで、汚れていて、目も当てられないような有様だった。

……どうやら俺は人殺しをしてしまったらしい。

 

まあ、この人達はメラルー達によっぽど酷い目に合わされてきた人のはずだ。こんな状態では、社会に戻る事も難しいだろう。だから、別にこれで良かったんだ。

 

 

 

俺はそう考えることにした。

 

 

 

手を合わせて成仏を願った後、全員余す事なく食べた。

 

『能力名【職業・重剣士】のラーニング完了』

 

【能力名【脳内地図製作技能(マッピング)】のラーニング完了】

 

『能力名【職業・狩人】のラーニング完了』

 

『能力名【職業・射手】のラーニング完了』

 

『能力名【鷹の目】のラーニング完了』

 

『能力名【職業・商人】のラーニング完了』

 

『能力名【売値三十%増加】のラーニング完了』

 

『能力名【買値三十%減少】のラーニング完了』

 

『能力名【職業・鍛治師】のラーニング完了』

 

『能力名【異種族言語(ヒューマン・ランゲージ)】のラーニング完了』

 

 

 

他のメラルーの死骸はアイテムボックスに収納しておき、時間が空いたら食べる事した。何故だか知らないが異様な程に疲れていたので、その日は全ての仕事を終えた後すぐに床についた。

 

 

 

 【レベルが規定値を突破しました。

 特殊条件《同族大量虐殺》《覇道闊歩》《転生者捕食》をクリアしているため、【猫将軍(アイルー・ジェネラル)希少種(レアスペシース)】に【存在進化(ランクアップ)】が可能です。

 【存在進化(ランクアップ)】しますか?

 ≪YES≫ ≪NO≫】

 

……え、もう進化するのか?

とりあえず、Yesを選んでから寝た。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。