パラレルタッチ 〜触れられたら即脱落の鬼ごっこ、13体の鬼を倒さないと終わらないデスゲーム〜 作:こうタロス
「はっはっはっは!!
やべぇー!やべぇーよ!!」
突如、笑い声を上げる陽向。
うん、お前は十分ヤバいよ。
もう鬼が目の前に迫っているのにふざける根性がヤベェよ。
さっきまで、頭を抱えていたのが嘘のように今はピンピンしている。
あれは、本気の痛がり方だったよな。
「おい!陽向!逃げないとヤベェーて!
あいつ来てるって!!」
「まぁまぁ、陽向!俺が今ヤベェーんだって!
ここは任せてお前は早く逃げろ!」
いやいや、完全に死亡フラグ。
でも、天才発明家だ。
死ぬと言う曖昧な概念は人一倍怖いはず。
「何か作戦があるのか?」
「あぁ、今の俺ならできる作戦がある!」
「おい、どう言うことだよ!」
「後で説明する!とりあえず今は逃げろ!」
「後って、触れられたら死んじまう」て言う気持ちをなんとか押し殺す。
なんて言ったって、もう鬼は目の前なんだ。
どうやら人一倍、笑い上げた陽向を鬼は捕捉している。
陽向のいう通り俺は逃げるべきなのか。
「早く行け!歩!」
「わ、分かった!死ぬなよ!!」
「任せろっ!
さぁ、こっちだポンコツロボット!」
陽向は屋上の角を目掛け走り出す。
それを追いかけるように足引き摺りながら走る鬼。
俺は陽向を信じ屋上の扉へ向かった。
角に自分から追い込まれる陽向。
「おい!そっからどうすんだって!!」
「下で会おうぜ!!」
「下……?」
ターゲットを追いかける鬼。
その手は陽向に触れようとする。
その瞬間、陽向は身を投げ出していた。
まさに、飛び降りだ。
俺は屋上の扉を開け階段を高速で下る。
間に合え!間に合え!いや絶対間に合わねぇ!
下で会おうって地獄か?お前は天国だろ!
てか、俺はまだ死なねぇーよ!
作戦って鬼と自分もろとも死ぬことかよ!!
あの笑いは死を悟って、いかれた笑いだったのか!?
次々と階段を下る。
階数表示板の数字は4・3・2……と小さくなって行く。
下る階段がない。
階数表示板は1を示している。
一階だ。
俺は陽向と鬼が飛び降りた場所へ向かう。
「おーい!歩!どこ行くんだ?」
突如、聞き馴染みのある声。
いや、俺が今求めている声なのか。
幻聴にしてはやけに鮮明だ。
「おーい!聞いてんのか?」
声の方向に目線をやると、そこには飛び降りたはずの陽向。
「お前、死んだんじゃ……」
「死ぬかよ!」
「ねぇねぇ!陽向!また、新しい発明?鉢が陽向になったんだけど!!」
梨緒も合流する。
「発明なわけねぇーだろ?
そんなの作れるもんなら作りてぇーよ!」
「おい!梨緒!鉢が陽向になったってどういうことだ?」
「鬼を見張っとけっていうから、屋上に行ったってメールして中庭を見たら鉢が陽向に変わっていたの」
ちょっと分からん。
陽向に聞いた方が早そうだ。
「どういう事だ?陽向」
「まぁ、見てもらった方が早いだろう……
こっちに来てくれ」
陽向の手招きで中庭へ向かう。
そこには、屋上から落とし粉々になったはずの
鉢が綺麗さっぱり無くなっていた。
陽向は設置した人体模型に触れる。
「よく見ておけよ……」
そして、中庭の端まで走る。
「いくぞぉー!」
その瞬間、目の前にいた、人体模型が消えて陽向が立っている。
中庭の端には人体模型。
「えぇーと、つまり超能力……?」
「そっ!!超能力だ!」
超能力らしい。
いや、おかしいだろ。
ていうか、デスゲームの時点でおかしいけど。
今は俺の常識を捨てた方が早そうだな。
「超能力……ってどういうことなの?
新しい発明ってこと?」
「ほんとにバカだな!超能力だって!
……ん、まぁ科学的に説明はできないが」
「おそらくこのデスゲームに何か秘密があるのかもしれんな……
何がともあれ、無事でよかった!」
「歩のあの必死な顔、傑作だったぜ!」
「うるさいな……
とりあえず、飛び降りた鬼を見に行こう」
「そうだな、流石に壊れてくれよぉ……」
「ちょ、ちょっと!鬼が飛び降りたってなに?
どういう事よ!!んもう!」
「まぁ、見たらわかる。」と言わんばかりにズカズカと鬼の落下地点へ向かう。
運動場に出ると、視界の端に黒い影。
近づいてもピクリとも動かない。
まるで、シャットダウンしているようだ。
「完全に死んでるな……」
「あぁ、死んでる……」
「これ、あなたたちがやったの?」
「ああ、俺がやった!
さっき見せた超能力でな!」
「うわぁ、陽向人殺し……」
「こいつ、人じゃねぇーから!」
鬼の肩には8の文字。
ずっと気になっていたんだが、俺の推測だとこれは、機体番号。
13体いる鬼の内、8番目の機体。
全ての鬼が機械なのかは定かではないがな。
陽向はしゃがみ込み、鬼をいろんな角度で見る。
その姿はまるで、新たなゲーム機を与えられた子供のよう。
「ちょっと陽向!手に触ったら消えちゃうよ!」
「大丈夫だろ、もう死んでるし」
とは言いつつ、慎重に鬼の手に触れる陽向。
ツンツンと人差し指で突くが身体は消えない。
それが分かったのか、ポケットから常備しているモンキーレンチとプラスドライバーを取り出す。
「くっそぉー!!なんだ?
ボルトか?ビスか?それとも溶接か?」
「どうしたんだ?陽向」
「こいつを分解したいんだけどよ、分解できる部分が見当たらないだよ!」
ネジ一本も見当たらない様から、俺は一つの仮説を立てる。
鬼は未来の機械。
そして、このデスゲームの主催者は未来人。
今はそれがしっくりくる。
突如鳴り響く、スマホ。
耳を劈くような音からこのデスゲームの通知であることがわかる。
ポケットからスマホを取り出す。
———
【ミッション1:東京に放たれた13体の鬼を討伐せよ】
残りの鬼:12体
———
スマホに表示される陽向の名前。
「え!!俺の名前じゃん!!」
「えぇ、梨緒も頑張ったのに……」
「鬼を直接、手をかけた人の名前が載るのか……」
「おっとー?歩も悔しいのか?」
名前を表示する意味はあるのか。
そして、もう一つ気がかりなことがある。
それはミッション"1"の表記。
今後、新たなミッションが出るってことか。
「とりあえず、今は陽向の超能力を使って鬼を倒していこう!」
「おい!無視かよ!」
「そうだね!歩の言うとおり、鬼を倒さないと終わらなさそうだしね!」
「おい!2人とも悔しいんだろ?なぁ?なあー!」
俺たちは学校を出て、東京中に放たれた鬼を討伐することにした。
盤上高校の生存者は何人かは分からないが、別にどうでもいい。
これはデスゲーム。
今は、超能力に目覚めた陽向の近くにいるのが安全だろう。
他に、超能力に目覚めている奴はいるとは思うが……