アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子   作:るきのるき

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29話 アン・シャーリー、ダイアナの遺体を抱えて泣く

 おれはダイアナちゃんとの約束通り、シラカバ林の空き地でチャンバラごっこをした。

 

「どうだ、まいったか」と、おれは言った。

 

 おれは10本戦って一度も相手に勝たせない。マイラに日頃料理と同じように鍛えられてるので、おれの強さは(11歳の女子の中では)プリンスエドワード島で一番だろう。剣道なら愛媛県の中学生県大会で準優勝レベルか。

 

「まだまだ」と、ダイアナは言った。

 

「ほほぉ、根性だけは認めるよ。そんじゃ、次はおれが座頭市でぇ、あんたが平手造酒。橋の上でやろう」

 

 西部劇と比べると、やる側にもかっこつけられるところ多いから、チャンバラのほうがいいかもね。斬ったあと、刀を鞘にしまうところで、ちゃちゃっと振ったり、とか。

 

「きぇぇぇぇぇっ」

 

「ぎょわわわわぁぁぁっ」と、おれたちは怪鳥が2羽戦うような声を出し合って戦い、仮想世界でなければ汗だくだくになっていたところである。汗をかかないかわりに、いきなり疲れて体が動かなくなる。つまり、体液は出ないし本当は肉体的にも疲労しないはずなんだけど、精神面でヘタるのだ。

 

「これから毎日10本、3年で10000本の試合をするのだ」と、おれはあおむけに、空き地に横たわって言った。

 

「しかし、ふたりでずーっとやってても飽きちゃわないかな。お互いに勝てるようになっても、別の剣士が出て来ると手が読めないだろ」と、ダイアナは、おれの横でごろごろしながら言った。

 

「そうね、想像力には限界あるからね。まあキルト作ってるより、ほんのすこし想像力はいるけどね。じゃあ、対戦相手をたくさん集めて、戦国武将の頂点を目指すという、武将会でもはじめようじゃないか」

 

「ぶしょう会ねえ……よそうじゃねぇか、面倒くさいから」

 

 その無精(ぶしょう)じゃないのだが。

 

     *

 

「ダイアナぁ、どうして死んじゃったんだよぉ、ダイアナぁぁぁぁ」と、おれは遺体(という想定)を抱えて、泣く真似をして、役をチェンジした。

 

「アン……どうして……って、ちょっと待った」と、ダイアナは、おれの遺体(という想定)を抱えて口ごもった。

 

「なんか「アン」みたいに、「ン」で終わる名前って、叫びにくくないか」

 

「確かに」と、おれも納得した。

 

「ヒーローは「ン」で終わる名前って、原則的にないからね。アンパンマンとかスパイダーマンとかウルヴァリンとか」

 

 どうでもいいことだけど、ちょっと気になった。

 

 あなた、「ん」で終わる日本人の名前、なにか思い当たるものはありますか。ということは、日本人で遺体になった場合、ほぼ誰でも抱きかかえられて叫ばれる。

 

 あ、調べたらちゃんといるじゃん、「蘭」とか「凜」とか。なお、ヒロアカにはいなかった。

 

     *

 

 もっと違う遊びしようぜ、と、ダイアナは言った。

 

「たとえばどんなの」と、おれは聞いた。

 

「お医者さんごっこ、とか」

 

「小学生かよ」と、おれは言った。

 

「そうだよ」と、ダイアナは答えた。

 

 どうやら、リアル世界ではダイアナちゃんは男子小学生らしい。そのうち正体を確かめてみよう。

 

「あのねえ、そういうことやっていいのはおとなになってから……って、おとながやるほうがまずいな」

 

 しかし、仮想世界の女子同士でお医者さんごっこ……楽しいか。

 

 そりゃ、読者と作者は楽しいかもしれないけど、そんな話の登場人物の気持ちはわかるか。わかるんなら200字以内で書いてみろ。ダイアナちゃんは、はぁはぁしてました、みたいな感じで。

 

「アンは童貞だよね」

 

「勝手に断言されても困るけど、まあそれでもいいや」

 

「僕の前に道はない~僕の後ろに道はできる~」

 

 ダイアナは股間に手を突っ込んで、ぼりぼり掻きながら言った。

 

「嘘書くなよ」と、ダイアナは作者に向かって怒った。

 

 ふたりとも、ワンピースふうの服なので、そういうエロい行為はやりにくいのである。

 

 ちなみに、引用した詩は高村光太郎の「道程」ね。

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