アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
おれはダイアナちゃんとの約束通り、シラカバ林の空き地でチャンバラごっこをした。
「どうだ、まいったか」と、おれは言った。
おれは10本戦って一度も相手に勝たせない。マイラに日頃料理と同じように鍛えられてるので、おれの強さは(11歳の女子の中では)プリンスエドワード島で一番だろう。剣道なら愛媛県の中学生県大会で準優勝レベルか。
「まだまだ」と、ダイアナは言った。
「ほほぉ、根性だけは認めるよ。そんじゃ、次はおれが座頭市でぇ、あんたが平手造酒。橋の上でやろう」
西部劇と比べると、やる側にもかっこつけられるところ多いから、チャンバラのほうがいいかもね。斬ったあと、刀を鞘にしまうところで、ちゃちゃっと振ったり、とか。
「きぇぇぇぇぇっ」
「ぎょわわわわぁぁぁっ」と、おれたちは怪鳥が2羽戦うような声を出し合って戦い、仮想世界でなければ汗だくだくになっていたところである。汗をかかないかわりに、いきなり疲れて体が動かなくなる。つまり、体液は出ないし本当は肉体的にも疲労しないはずなんだけど、精神面でヘタるのだ。
「これから毎日10本、3年で10000本の試合をするのだ」と、おれはあおむけに、空き地に横たわって言った。
「しかし、ふたりでずーっとやってても飽きちゃわないかな。お互いに勝てるようになっても、別の剣士が出て来ると手が読めないだろ」と、ダイアナは、おれの横でごろごろしながら言った。
「そうね、想像力には限界あるからね。まあキルト作ってるより、ほんのすこし想像力はいるけどね。じゃあ、対戦相手をたくさん集めて、戦国武将の頂点を目指すという、武将会でもはじめようじゃないか」
「ぶしょう会ねえ……よそうじゃねぇか、面倒くさいから」
その無精(ぶしょう)じゃないのだが。
*
「ダイアナぁ、どうして死んじゃったんだよぉ、ダイアナぁぁぁぁ」と、おれは遺体(という想定)を抱えて、泣く真似をして、役をチェンジした。
「アン……どうして……って、ちょっと待った」と、ダイアナは、おれの遺体(という想定)を抱えて口ごもった。
「なんか「アン」みたいに、「ン」で終わる名前って、叫びにくくないか」
「確かに」と、おれも納得した。
「ヒーローは「ン」で終わる名前って、原則的にないからね。アンパンマンとかスパイダーマンとかウルヴァリンとか」
どうでもいいことだけど、ちょっと気になった。
あなた、「ん」で終わる日本人の名前、なにか思い当たるものはありますか。ということは、日本人で遺体になった場合、ほぼ誰でも抱きかかえられて叫ばれる。
あ、調べたらちゃんといるじゃん、「蘭」とか「凜」とか。なお、ヒロアカにはいなかった。
*
もっと違う遊びしようぜ、と、ダイアナは言った。
「たとえばどんなの」と、おれは聞いた。
「お医者さんごっこ、とか」
「小学生かよ」と、おれは言った。
「そうだよ」と、ダイアナは答えた。
どうやら、リアル世界ではダイアナちゃんは男子小学生らしい。そのうち正体を確かめてみよう。
「あのねえ、そういうことやっていいのはおとなになってから……って、おとながやるほうがまずいな」
しかし、仮想世界の女子同士でお医者さんごっこ……楽しいか。
そりゃ、読者と作者は楽しいかもしれないけど、そんな話の登場人物の気持ちはわかるか。わかるんなら200字以内で書いてみろ。ダイアナちゃんは、はぁはぁしてました、みたいな感じで。
「アンは童貞だよね」
「勝手に断言されても困るけど、まあそれでもいいや」
「僕の前に道はない~僕の後ろに道はできる~」
ダイアナは股間に手を突っ込んで、ぼりぼり掻きながら言った。
「嘘書くなよ」と、ダイアナは作者に向かって怒った。
ふたりとも、ワンピースふうの服なので、そういうエロい行為はやりにくいのである。
ちなみに、引用した詩は高村光太郎の「道程」ね。