アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子   作:るきのるき

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30話 アン・シャーリー、メシマズ料理・へっぽこ二次創作の極意を教わる

 おれは、グリーン・ゲイブルズの調理場で当惑していた。

 

 食材は野菜・肉・ジャガイモその他、リアル世界で馴染んでいたものとは形がやや異なるとはいえ、どうしたらいいのかわからない。正確には、どうもうまく思い出せない。

 

「どうしたのよ、アン、料理したことないの」と、マリラは聞いた。

 

「リアル世界のおれはあるんだけどさ……設定通り、アン・シャーリーだと料理はできないみたい」

 

 ここらへん、二次創作する人間は注意だな。いかにもアン、孤児であちこちの家でこき使われたもんだから、シチューぐらい作れそうなんだけど、実はそんなことはない。子守りと、皿洗い、掃除はできるのに、料理はもうすこし家の中で身分が上ということになっている人しかやっちゃいけなかったんだ。

 

 カレーとか、肉じゃがとか、その他中華料理は普通におれでも作れるけど、ルーも醤油もCook Doもないから、この世界では無理かな。食べ物の配達は、例によって別料金であるとの話ですけどね。ミーカーワーイーツ(三河屋さん)が。

 

「それじゃ、私がメシマズ料理の作りかたを教えてあげるよ。どっか別の仮想世界で、お嬢様役だった場合、主人公にお弁当を作ってあげるのに役に立つだろう」と、マリラは言った。

 

 こんなんは、原作レイプの二次創作と同じだ、そうである。

 

「まず、弱火で10分のところを強火で5分でやる。原作は冒頭の10分でしかやらない二次創作と同じ。強火というのは最火力という意味だからね」

 

 マリラは、牛肉を焦がし、さらに炭化させた。

 

「それから、野菜を炒めるときは、ちゃんと芯が残るようにする。すこしシャキシャキしたほうが栄養にいい」

 

 それを、鍋に、肉と一緒に入れる。

 

「味つけに、塩をひとつまみ、と書いてあったら、ひとつかみ入れる。あああっとぉ、だめだよ、下見・味見しちゃ。そんなことして、途中でおいしかったらどうするんだよ」

 

「まずい浄瑠璃でもうなるというのはどうかな。味噌が腐ったり、味が変わったりするから」

 

「いいね。ここはカナダだから、賛美歌でも歌いながらかきまぜよう。……うーん、どうも狙ってたものと違うな」

 

「どこが」

 

「色が違う。なんか思ってたのより赤みが足りない。十分にいじめといたトマトと、マイノリティなタバスコと、石版ぶっこわす人参入れてみよう。あとはフェミニズムの紫かな。まあいい色になったら味見してもいいか。………これはしょっぱいな。だからと言って、薄めるなどというつまらないことをしてはいけない。味が濃かったら、違う味のものを加えてごまかす」

 

 そんなわけで、これがメシマズ料理、あるいはへっぽこ二次創作の極意だ、と、マリラは鍋の中のものをおれの皿に盛ってくれた。

 

「二期も三期もあるから、いくらでもお代わりしていいよ」

 

 無理です。

 

 要約すると、

 

・原作は冒頭の10分だけ準拠する

 

・キャラを立てるときは、芯まで火が通るようにはしない

 

・味つけは原作より濃いようにして、視聴者の意見は聞かない

 

・フェミニズム、マイノリティ、いじめ、のような今どきの素材を入れる

 

 そうすれば、昔の名作・古典でも、へっぽこ二次創作になるのである。

 

 具体的に、なにかそのような創作物が見つかった・ご存知だとしても、言わないでください。

 

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