アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子   作:るきのるき

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37話 アン・シャーリー、この仮想世界の魔法についてナンシーと語る

ナンシーは、アン・シャーリーとは別の学校に通っているらしい。ナンシーの住む家とアヴォンリーの村はけっこう離れているし、ナンシーがオリジナル版でアンに関係するエピソードは特に記録されていない。

 

「我は魔法学校に通っているのだ」と、ナンシーが説明した。いいなあ、オリジナルにほとんど出てこないキャラは自由度が高くて。テンプレではあるけどね。

 

「我の母が再婚したんだけど、新しい父の以前のツレが亡くなってから悪霊になっちゃって。以前は何度か自分も憑依されて大変困ったのだ」

 

 その悪霊を成仏させてやるために、ということらしい。魔法学校というより陰陽師学校かな。作者によると、その設定はアニメ『妻、小学生になる。』の二次創作として考えたプロットとのこと。いずれそのうちちゃんとした話にするつもりなので、あまり期待しないで待ってみることにしよう。

 

「魔法学校っていうと、ときどき魔獣に襲われたりしない? 魔王が変装して生徒会長になってたりとか? 魔石が道にごろごろ落ちてたりとか? 魔改造した自転車で通ってるの?」

 

 最後の質問以外は、ナンシーはすべてうなずいた。

 

「あんたねえ、何でも「魔」をつければいいと思うなよ。魔自転車はないことはないけど」

 

「じゃあ、ポール・魔ッカートニーとか、魔宮林蔵とか、魔夜峰央は問題ないんだ」

 

「魔夜峰央は普通だろ。「魔」を取ったら夜峰央で意味わかんないじゃん。あと、魔ダイとか魔ダコとか海産物に多いね、魔系」

 

 そしておれたちは「魔系あるある」を話した。優勝は「魔ママレード」である。

 

     *

 

「学校には、魔法のほうきで通ってるのだ。魔ほうきなのだ」

 

 いいなあ、魔法学校。テンプレだけど。おれも魔法とか剣の実技演習とかしてみたい。あまりこの方面の深堀りをすると、どこが『赤毛のアン』なんだよ、とつっこまれそうだけど、話には段取りというものがあるからね。

 

 ちょっと待つのだ、と言って、ナンシーは物置小屋に行き、どうみても普通のほうきと、ただの黒猫のぬいぐるみであるニャンシーを持ってきて、ほうきの後ろに荒縄でニャンシーを縛りつけはじめた。

 

「へえ、魔法のほうきか。ちなみに英語だと何て言うの?」と、おれは意地悪く聞いてみた。

 

「えーと、マジック…マジック…クリーニング…ホーキ?」

 

 正解はブルームスティック、broomstick、ね。英訳された『魔女の宅急便』とか読めば出てくる気がする。ただし中学生が習う単語じゃないかな。

 

 ナンシーは、現実世界でもおれたちが使っているのと同じような携帯端末を渡した。

 

「じゃあ、これから飛ぶから、ちゃんと飛んだところを撮るのだ。ワン、ツー…なんでスリーって言う前にボタン押すんだよ。もう一度やり直しね、スリー、ツー、ワン………ほら、飛んだ!」

 

 写った画像は、確かに飛んでるように見えたけど、それはただジャンプしているだけ。そんなのはおれだってできる。アド街ック天国の中でもしょっちゅう出てくる。

 

     *

 

 もうスペンサー夫人とハリエット夫人との話し合いが済んだから、帰ろう、とマリラは言った。おれぬきで話が進んでたのか。おれここに行く必要ねーじゃん。リアル中学生と遊ぶ機会はあまりないので、もうちょっといてもよかったんだけど、レイチェルが来る予定だから、とマリラはおれにタスクアプリの画面を見せた。レイチェル・リンド夫人は村のいろいろな人たちに会わなければならないから、原作ではもうすこしあとになってるところを、すこし変えてあるらしい。

 

 ナンシーがいなくなると、ちゃんと本物のネコであるニャンシーがやってきて、すばやく馭者台に乗り込んだ。

 

 気になるのは帰り道の天候で、スペンサー夫人の家に行くときに見えた黒雲は、どんどん広がっていた。

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