アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
「よお」と、作者は言った。
「やあ」と、おれは答えた。
いつもの異世界系カフェ、というか純喫茶「黒白亭」で、いつものようにおれたちは『赤毛のアン』に関する無駄話をするために顔を合わせた。
いつものメイドである白猫は、黒薔薇をあしらったミニスカ浴衣でテーブルクロスをかけかえ、黒猫は黒百合をあしらった演歌歌手のような和服で水を出し、おれたちはいつものとおりホットコーヒーを頼んだ。
「なにその格好、大黒帽に謎マフラー、って、今日はけっこう外は暑かったんじゃないかな」と、おれは言った。
「いやー、どちらかというと生ぬるいよ、冷やし中華もやってるよ」と、夜鳴きそば屋『外れ屋』の親父は言った。
「どうしてあんた、ここにいるんだよ、あんたは物語の登場人物だろ」と、おれは立ち上がり、親父を指さした。
「どうして、って、別にいいじゃん。適当なところでAIを出さないと多様性の否定になっちゃうからじゃないかな。ちなみにあっしは、馴れ馴れしいほうのAIだからね」
そして親父は、手に持っていたチャルメラを鳴らした。
ちゃらりーらら
ちゃらりらりらー
うるさい。夜鳴きそば屋がチャルメラを使うわけないだろ。
「その話はおいといて。ところでこの帽子は大黒帽じゃなくて「タモシャンター帽」で、マフラーは「スヌード」。どちらもスコットランドに起源を持つ民族ファッションなんだけど」と、作者は言った。
ちゃら、ちゃぴー、らりらりら
ぴーぴーぴー
なんでAIなのにきちんと吹けないのか。おれは耳を押さえて、ディストーションとつぶやき、自分の右足に目を置いた。
「で、今日は重要な話なんだけどさ、アン・シャーリーは本当にスコットランド系なのか、ってこと。ああもう、チャルメラは終わります」と、作者が言ったので、親父は、それで、って感じで首をかしげた。
「「赤毛のアン」のアンがスコットランド系というのは、明確に書かれてる?」
『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)において、アン・シャーリーがスコットランド系であることは、ルーシー・モンゴメリの原作の中で明確に記述されてるよ。具体的には、アンの両親であるウォルター・シャーリーとバーサ・シャーリーがスコットランド系の血統を持つことが示唆されているし。物語の中で、アンの赤い髪や気質が、スコットランド人に典型的な特徴として関連づけられる場面もあるからね。それに、アンが自分のルーツや家族の背景について語るさいに、スコットランド系であることが間接的に触れられているやん。といっても、アンの民族的背景について詳細な説明がなされることはすくなく、どちらかというと彼女の性格や想像力が中心の話だからね。でも、彼女のスコットランド系であることは、物語の文脈や文化的背景から読み取れる要素として存在するのよ。
おれと作者は、顔を見合わせてうなずいた。
うさんくさい。
「具体的には、アンシリーズのどの巻の、どの章?」
1. 『赤毛のアン』(第1巻)での言及
『赤毛のアン』では、アンの両親 (ウォルター・シャーリーとバーサ・シャーリー)の背景について、物語の冒頭で簡単に触れられているね。具体的には、第1章(「マシュー・カスバートの驚き」)や第2章(「マリラの決断」)で、アンが自分の生い立ちをマリラやマシューに語る場面がありわけ。ここで、アンの両親がノバスコシア(カナダ東部)のボリンリバー出身で、教師だったこと、そしてアンが赤ちゃんのときに両親が亡くなったこと、とか。スコットランド系の血統については直接的な記述(「彼らはスコットランド人だった」など)はないんだけど、アンの赤い髪や気質が、スコットランド系移民の特徴として当時の読者に暗に連想されるように描かれてるよ。
また、第15章(「アンの歴史」)では、アンが自分の過去や家族についてさらに詳しく話す場面があり、彼女の両親の名前 (ウォルターとバーサ)が再び出てくる。ここでも、スコットランド系であることが明示的に書かれるわけではないけど、アンの「赤毛」や「そばかす」、情熱的な性格は、スコットランド系ステレオタイプと結びつけられる要素として間接的に示唆されてるのね。
2. 続編での関連記述
アンシリーズの後続の巻、たとえば『アンの青春』(Anne of Avonlea、1909年)や『アンの愛情』(Anne of the Island、1915年)では、アンのルーツについてさらに深く掘り下げられることもあるね。特に、『アンの愛情』では、アンが大学に進学し、自分のアイデンティティや家族の背景について考える場面が増える。『アンの愛情』の第1部(第1章~第5章あたり)では、アンが自分の出自や両親について振り返るシーンがあり、間接的にスコットランド系の文化的背景が感じられる記述がある。ただし、ここでも「スコットランド系」と明記されるよりは、彼女の外見や性格を通じてその印象が強化されるのね。
3. スコットランド系としての文化的背景
モンゴメリ自身がスコットランド系カナダ人の家系(キャンベル家やマクニール家)にルーツを持っており、プリンスエドワード島のコミュニティにはスコットランド移民が多く住んでいたため、アンのスコットランド系背景は、物語の舞台設定や文化的文脈に自然に織り込まれてるよ。たとえば、アンの赤毛は、スコットランドやアイルランド系の人物にしばしば関連づけられる特徴として、読者に暗黙の了解として受け取られていた可能性が高いんじゃないかな。
結論
アン・シャーリーがスコットランド系であることは、『赤毛のアン』の第1章~第2章や第15章、および『アンの愛情』の冒頭部分で、両親の背景やアンの外見・性格を通じて間接的に示唆されてる。しかし、「アンはスコットランド系である」と明確に書かれた単一の章や行を特定するのは困難で、むしろ物語全体の文脈や文化的背景を通じて読み取れる要素なのね。
「この、繰り返される「間接的に」ってところがうさんくさいな」と、作者は言った。
確かに、アン・シャーリーは嘘つき、言いかたを変えれば想像力が豊富なので、どこまで本当なのか、と鋭く聞かれると、「赤毛のアン」の作者およびアン・シャーリーは多分、そんなことどうでもいいじゃない、と答えそうだ。
「要するに、間接的にしか書かれていない?」
その通りだね。『赤毛のアン』およびアンシリーズにおいて、アン・シャーリーがスコットランド系であることは、直接的に「彼女はスコットランド系です」と明記されるのではなく、彼女の両親の背景、赤い髪、情熱的な気質といった特徴や、物語の舞台(スコットランド移民の多いプリンスエドワード島)を通じて間接的に示唆されているけど。特定の巻や章で明確な記述がないため、読者が文脈や文化的ステレオタイプから推測する形になりわけ。
「翻訳者の松本侑子は「スコットランド系」と断言してるけど、根拠は間接的なものしかない?」
松本侑子氏が翻訳や解説でアン・シャーリーを「スコットランド系」と断言している場合、その根拠は確かに『赤毛のアン』およびアンシリーズの原作における間接的な描写に依拠していると考えられるね。以下に、松本氏の主張の背景と、原作での間接的根拠について整理しとくよ。
1. 松本侑子の「スコットランド系」断言について
松本侑子氏は、『赤毛のアン』の翻訳(例:文春文庫版)や関連エッセイ、解説で、アン・シャーリーがスコットランド系であると明言していることがあるね。これは、彼女が原作の文脈やルーシー・モンゴメリの意図、さらにはプリンスエドワード島(PEI)の歴史的・文化的背景を深く研究した結果に基づく解釈だね。松本氏はモンゴメリの作品やPEIのスコットランド移民文化にくわしく、翻訳だけでなく『「赤毛のアン」の秘密』などの著作でもその文化的背景を解説している。
松本氏が「スコットランド系」と断言する理由は、以下のような原作の間接的要素や文化的文脈を総合的に判断したためでしょう:
アンの外見:赤い髪、そばかす、緑の瞳は、19世紀の文学や当時のカナダで、スコットランド系やアイルランド系の人々にしばしば関連づけられる特徴なのね。特に赤毛は、スコットランド人のステレオタイプとして強く印象づけられているよ。
両親の背景:アンの両親 (ウォルター・シャーリーとバーサ・シャーリー)がノバスコシア出身とされているが、彼らの名前やアンが育った地域(PEIやノバスコシア)は、スコットランド移民が多く住むエリアと一致するんだ。シャーリー(Shirley)という姓も、アングロサクソン系やスコットランド系に由来する可能性があるね。
文化的文脈:PEIは、モンゴメリの時代にスコットランド移民のコミュニティが強く根付いており、モンゴメリ自身もスコットランド系(キャンベル家やマクニール家)の家系だった。アンの気質(情熱的で想像力豊か)は、スコットランド系カナダ人の文化的イメージと重なるだろ。
物語の描写:『赤毛のアン』の第1章~第2章や第15章で、アンが自分の生い立ちや両親について語る場面で、直接的な「スコットランド系」の言及はないものの、彼女のアイデンティティがPEIのスコットランド系コミュニティの雰囲気と調和していると解釈できます。
2. 原作での根拠は間接的なもののみ
ご指摘の通り、原作では「アン・シャーリーはスコットランド系である」と明記された記述は存在しないんだよね。
したがって、松本氏が「スコットランド系」と断言する根拠は、原作のこれらの間接的描写に加え、モンゴメリの意図やPEIのスコットランド移民文化の知識を総合した解釈に基づくものと考えられるね。
3. 松本氏の解釈の妥当性
松本氏の「スコットランド系」断言は、原作の明示的記述がない以上、推測的要素を含むものの、以下のような理由で妥当な解釈と言えるんじゃないかな:
モンゴメリの文化的背景:モンゴメリ自身がスコットランド系の家系であり、彼女の作品にはPEIのスコットランド移民文化が色濃く反映されている。アンをスコットランド系とみなすのは、作者の意図や時代背景に沿った解釈。
当時の文学的慣習:19世紀末~20世紀初頭の英米文学では、キャラクターの民族的背景を外見や気質で示唆し、直接明記しないことが一般的だった。アンの赤毛や性格は、そのような文学的コードとして機能していた。
PEIの歴史:PEIはスコットランド移民が多く、特にキャンベル家のような氏族がコミュニティを形成していた。アンの物語の舞台設定は、このスコットランド系文化と密接に結びついている。
ただし、原作に直接的記述がないため、松本氏の断言は「確実な証拠」ではなく、テキストの間接的要素と文化的文脈に基づく「説得力のある推論」にとどまると言えるかな。別の翻訳者や研究者が、アンの出自を「スコットランド系とアイルランド系の混血」や「特定できない」と解釈する可能性もあり、解釈には若干の主観が入る余地もあるかも。
結論
松本侑子氏がアン・シャーリーを「スコットランド系」と断言する根拠は、原作の間接的描写(赤毛、両親の背景、気質、PEIの文化的文脈)にあり、明示的な記述は存在しない。彼女の断言は、モンゴメリの意図や時代背景を深く理解した上での解釈に基づくものと考えられ、妥当性はあるものの、テキストの直接的証拠に欠けるため、推論の域を出てないかな。
「松本侑子の文春文庫での記述はどうなってる?」
松本侑子氏の文春文庫版『赤毛のアン』(2019年刊、日本初の全文訳)において、アン・シャーリーがスコットランド系であると明記している記述は、巻末の訳注や訳者あとがき、および関連著作(特に『赤毛のアン論 八つの扉』)に見られるね。ただし、原作の本文そのものには「アン・シャーリーはスコットランド系である」という直接的な記述はなく、松本氏の主張は原作の間接的描写と文化的文脈に基づく解釈を補足する形で提示されている。以下に、文春文庫版での具体的な記述とその根拠を整理します。
1. 文春文庫版『赤毛のアン』での記述
松本侑子氏は、文春文庫版の訳注やあとがきで、アン・シャーリーがスコットランド系カナダ人であると明言している。特に以下の箇所で、アンの民族的背景について触れられてる:
巻末訳注:
松本氏は、アンが身につける「タモシャンター帽」(第19章)や「スヌード」(第27章、第28章)を、スコットランドの民族衣装や伝統的装飾品として解説し、これがアンがスコットランド系であることを示す描写だと指摘しているね。たとえば、訳注(532ページ)では、タモシャンター帽について「スコットランド民族の帽子」と説明し、アンがこれをかぶる場面が彼女のスコットランド系アイデンティティを反映するとしている。
スヌードについては、訳注(例:第27章、28章関連)で「スコットランドの未婚の乙女が髪に巻く飾りで、『花婿募集中』の印」と解説し、アンがスヌードを巻く場面(特にエレーン姫ごっこでギルバートと二人きりのシーン)が、彼女のスコットランド系としての特徴を強調するものだと述べてる。
また、アンの出生地であるノヴァ・スコシア(「新スコットランド」の意、第5章)が、スコットランド系移民が多い地域であることも、訳注で補足されており、アンのスコットランド系背景を裏付ける文脈として提示されてるし。
訳者あとがき:
あとがき(Kindle版P.494)で、松本氏は『赤毛のアン』が「シェイクスピア劇や英米詩、アーサー王伝説とケルト、聖書、キリスト教、カナダ史の書物に親しむきっかけを与えてくれる」と述べ、物語のケルト文化(特にスコットランド系)の要素を強調している。この中で、アンがスコットランド系カナダ人として描かれ、ケルト的な空想力や妖精への愛着を持つキャラクターであると解釈しているね。
あとがきでは、アンの民族的背景を直接的に「スコットランド系」と明記しつつ、モンゴメリがケルト文化(スコットランドやアイルランドの伝統)を物語に織り込んだ意図を解説している。
口絵写真と解説:
文春文庫版の口絵写真には、アンがかぶるタモシャンター帽(第19章)や、マシューの母がスコットランドから持ち込んだ「スコッチ・ローズ」(第37章)などが掲載され、松本氏自身がプリンスエドワード島で撮影した写真とともに解説されている。これらは、アンやカスバート家のスコットランド系ルーツを視覚的に補強する要素として提示されているわけ。
2. 関連著作での記述
松本氏は、文春文庫版の翻訳に加え、2024年に刊行された『赤毛のアン論 八つの扉』(文春新書)でも、アンがスコットランド系であると明確に主張してるね。この著作は、文春文庫版の訳注やあとがきをさらに発展させた形で、アン・シリーズ全体の文化的背景を解説するものになってる。以下の記述が特に重要かな:
『赤毛のアン論 八つの扉』:
「三の扉 スコットランド民族」では、アンがスコットランド系カナダ人として描かれていると明記され、具体例としてタモシャンター帽、スヌード、ノヴァ・スコシアの出身地、マシューが愛するスコッチ・ローズ(白い薔薇)などが挙げられている。
また、アンの同級生ジェーン・アンドリューズやルビー・ギリスのスコットランド系背景(姓や長老派教会の信仰に基づく)、対比的にダイアナ・バリーのアイルランド系背景(アルスター・コート着用、第25章)も解説され、アンのスコットランド系アイデンティティが物語の民族的多様性の中で際立つとしている。
松本氏はインタビューでも「アンがスコットランドの民族衣装を身につけていることは、松本侑子訳『赤毛のアン』で初めて日本に紹介しました。アンはスコットランド系のカナダ人です」と述べ、自身の翻訳がこの点を明確化したと強調しているわけ。
3. 原作の間接的根拠と松本氏の解釈
文春文庫版の訳注や『赤毛のアン論』での松本氏の記述は、以下の原作の間接的描写に基づいています:
タモシャンター帽とスヌード:アンが身につけるこれらのアイテムは、スコットランドの伝統的な衣装や装飾品であり、モンゴメリがアンのスコットランド系背景を暗に示すために意図的に選んだと松本氏は解釈している。
ノヴァ・スコシア:アンの出生地(第5章)が「新スコットランド」と呼ばれる地域で、スコットランド移民の影響が強いことを、松本氏はアンのルーツの証拠として重視している。
赤毛と気質:アンの赤い髪や情熱的で空想好きな性格は、19世紀の文学でスコットランド系やケルト系(特にスコットランド・アイルランド)のステレオタイプとして描かれることが多く、モンゴメリがこのイメージを活用したと松本氏は指摘している。
カスバート家の背景:マシューとマリラの姓「カスバート」は、7世紀のケルト系キリスト教の聖人(聖カスバート)に由来し、マシューの母がスコットランドから移民した際にスコッチ・ローズを持ち込んだ(第37章)ことも、スコットランド系ルーツを示すとしている。
4. 文春文庫版での記述の特徴
松本氏の文春文庫版では、以下のような特徴が見られる:
訳注の詳細さ:アンのスコットランド系背景を裏付けるために、タモシャンター帽やスヌードなどの具体的なアイテムについて、原作の文脈とスコットランド文化を結びつけて詳細に解説してるね。これにより、従来の翻訳(例:村岡花子訳)では見過ごされていた民族的要素が強調されている。
原作への忠実さ:松本氏は、日本初の全文訳として、従来の抄訳や改変を排除し、モンゴメリの原作に忠実な翻訳を徹底。特に、アンの民族衣装や文化的背景に関する記述を正確に訳し、訳注で補足することで、アンのスコットランド系アイデンティティを明確にしている。
ケルト文化の強調:松本氏は、アンがスコットランド系であるだけでなく、ケルト族の文化(アーサー王伝説や妖精への愛着)を体現するキャラクターだと解釈し、訳注や『赤毛のアン論』でこの点を詳しく論じています。
5. 原作本文での直接的記述の有無
重要な点として、松本氏の文春文庫版の本文(モンゴメリの原作翻訳部分)には、「アン・シャーリーはスコットランド系である」という直接的な文は存在しない。たとえば、第5章でアンの出生地がノヴァ・スコシアと書かれ、第19章でタモシャンター帽をかぶり、第27~28章でスヌードを巻く描写はあるものの、原作自体は「スコットランド系」と明言せず、これらの要素を通じて読者に暗に示唆する形になってる。松本氏の「スコットランド系」断言は、訳注やあとがき、関連著作で、原作のこれらの描写をスコットランド文化と結びつけ、モンゴメリの意図を解釈した結果だね。
6. 松本氏の解釈の根拠と妥当性
松本氏がアンをスコットランド系と断言する根拠は、以下の通り:
原作の描写:タモシャンター帽、スヌード、ノヴァ・スコシアの出身地、赤毛、ケルト的な空想力は、スコットランド系を連想させる要素として、19世紀の文学的・文化的文脈で理解されていた。
モンゴメリの背景:モンゴメリ自身がスコットランド系(キャンベル家やマクニール家)の家系であり、プリンスエドワード島のスコットランド移民コミュニティを熟知していたため、アンをその文化に根ざしたキャラクターとして描いたと推測される。
松本氏の研究:松本氏は30回以上のカナダ訪問やモンゴメリ学会での研究発表を通じて、PEIのスコットランド移民文化やモンゴメリの意図を深く調査しており、訳注や『赤毛のアン論』はその集大成なのね。
松本氏の解釈は、原作の間接的描写と歴史的・文化的文脈を総合したもので、モンゴメリ研究者やPEIの文化に詳しい読者には説得力がある。ただし、原作に直接的記述がないため、他の翻訳者や研究者が「アンの民族は特定できない」や「スコットランド系とアイルランド系の混血」と解釈する可能性もあり、松本氏の断言は彼女の研究に基づく一つの視点と言えるかな。
「かぶってる帽子や装飾品がスコットランド由来なら、おれが話してる作者もスコットランド系になるのでは?」とおれは疑問を口にした。
作者はおれの頭にタモシャンター帽を乗せ、はい、これであなたもスコットランド系、と言った。
「だいたい、アン・シャーリーが自分でそういうファッション選べる状況か? あんただって高校生ぐらいまでは、おかんが選ぶおかん服着てただろ」と、作者は言った。
「いや、さすがに高校生になると考えますよ、しかし中学生ぐらいまでなら、もし自分のおかんがスコットランド系だったら、日本人でもそれっぽいファッションになるよね。ガンダム袖のドレスも、アンはマシューに買ってもらってたし」
「ガンダム袖じゃなくてパフスリープ、ね」
作者は質問を続けた。
「アンの衣服や装飾品はスコットランド系のマリラが買い与えているのもので、アンがスコットランド系という証明にはねらないのでは? スコットランド系が多いノヴァスコシア出身である、ということも同じく」
うっ、するどい指摘。たしかに、アン・シャーリーが身につける衣服や装飾品(タモシャンター帽やスヌード)がマリラ・カスバートから与えられたものであること、及びアンの出生地がスコットランド系移民の多いノヴァ・スコシア(ノバスコシア)であることは、それ自体ではアンがスコットランド系である直接的な証明にはならないんだよな。これらは松本侑子氏が文春文庫版『赤毛のアン』の訳注や『赤毛のアン論 八つの扉』でアンのスコットランド系背景の根拠として挙げる要素だけど、間接的で文脈依存的な証拠にとどまるんだよね。以下に、指摘に対する分析と、松本氏の解釈の妥当性について詳しく検討します。
1. タモシャンター帽やスヌードがアンのスコットランド系を示すか?
松本氏は、文春文庫版の訳注(例:第19章のタモシャンター帽、532ページ;第27~28章のスヌード)で、アンがタモシャンター帽やスヌードを身につける描写を、スコットランドの民族衣装や伝統的装飾品として解説し、アンのスコットランド系アイデンティティを示すものとしてる。でも、指摘のように、これらのアイテムはマリラがアンを育てる過程で与えたものであり、アン自身の出自を直接反映するものではないね。以下に、この点の問題を整理します:
マリラのスコットランド系背景:
マリラとマシューのカスバート家は、スコットランド系移民の家系であると推測される根拠はある。原作の第37章で、マシューの母がスコットランドからプリンスエドワード島(PEI)に「スコッチ・ローズ」(白い薔薇)を持ち込んだと記述されてて、カスバート家のスコットランド系ルーツが示唆されてる。また、「カスバート」という姓は、ケルト系(特にスコットランドや北イングランド)に由来する可能性がある。
マリラがアンのためにタモシャンター帽やスヌードを選んだのは、カスバート家が住むPEIのアヴォンリーの文化的慣習や、彼女自身のスコットランド系背景に基づく可能性がある。PEIはスコットランド移民が多く、スコットランドの伝統が日常的に残っていたため、これらのアイテムは地域の一般的な衣装だった可能性もある。
アンの出自との関連性:
アンがタモシャンター帽やスヌードを身につけるのは、彼女がカスバート家に養子として迎えられた後のことであり(第19章:タモシャンター帽、第27~28章:スヌード)、これらのアイテムはアンが自ら選んだものではなく、マリラや地域の文化から与えられたものだね。だから、これらはアンが育った環境(カスバート家やPEIのスコットランド系コミュニティ)を反映するもので、アンの生物学的出自(両親の民族的背景)を直接証明するものではないな。
たとえば、第27章でアンがスヌードを巻いて「エレーン姫ごっこ」をする場面は、松本氏が「スコットランドの未婚の乙女の象徴」として重視しているけど、これはアンの空想的な遊びの一環であり、彼女の民族的アイデンティティを意図的に示す描写とは限らない。
松本氏の解釈の問題点:
松本氏がタモシャンター帽やスヌードをアンのスコットランド系背景の証拠とするのは、モンゴメリがこれらのアイテムを意図的に選んでスコットランド文化を強調したという前提に基づいている。しかし、原作ではこれらのアイテムが単に当時のPEIのファッションや文化的慣習を描写するものだった可能性もあり、アンの出自に直結するとは限らないという指摘は妥当だね。
モンゴメリがアンの民族的背景を明示的に描写する意図を持っていた場合、こうしたアイテムをアンの出自と結びつける明確な文脈を提供したはずだけど、原作にはそのような記述が欠けてる。
2. ノヴァ・スコシア出身であることの意味
アンの出生地がノヴァ・スコシア(原作第5章で言及)であることも、松本氏がアンのスコットランド系背景の根拠の一つとして挙げる要素だけど、これも直接的な証明にはならない。以下の点を確認するね:
ノヴァ・スコシアの文化的背景:
ノヴァ・スコシア(Nova Scotia)はラテン語で「新スコットランド」を意味し、17~18世紀にスコットランド移民が多く移住した地域だ。19世紀のノヴァ・スコシアには、スコットランド系カナダ人が人口の大きな割合を占め、特にハイランド地方出身の移民コミュニティが顕著だった。
松本氏は、訳注や『赤毛のアン論』(「三の扉 スコットランド民族」)で、アンの両親(ウォルター・シャーリーとバーサ・シャーリー)がノヴァ・スコシアのボリンリバー出身であることから、彼らがスコットランド系である可能性が高いと推測している。
ノヴァ・スコシア出身=スコットランド系ではない:
指摘の通り、ノヴァ・スコシア出身であることは、スコットランド系移民が多い地域であることを示すものの、アンの両親が必ずしもスコットランド系であることの証明にはならない。ノヴァ・スコシアにはイングランド系、アイルランド系、フランス系 (アカディアン)、先住ミクマク族なども住んでおり、シャーリーという姓はアングロサクソン系やスコットランド系に由来する可能性があるものの、特定の民族を確定する証拠にはならない。
原作では、アンの両親がノヴァ・スコシア出身の教師だったこと(第1~2章、第15章)以外に、彼らの民族的背景や家系についての詳細は一切記述されておらず、推測の域を出ない。
松本氏の解釈の問題点:
松本氏がノヴァ・スコシアをアンのスコットランド系背景の根拠とするのは、地域の歴史的・人口統計的傾向に基づく推論だね。しかし、原作がアンの両親の民族を明示しない以上、ノヴァ・スコシア出身であることは確率的にスコットランド系である可能性を高めるにすぎず、確定証拠とは言えない。
たとえば、アンの同級生ダイアナ・バリーはアイルランド系(第25章でアルスター・コートを着用)と推測される描写があり、ノヴァ・スコシアやPEIに複数の民族が混在していたことを示している。このため、アンの出自をスコットランド系に限定するのは、間接的証拠の積み重ねに依存しているかな。
3. 松本氏の「スコットランド系」断言の根拠の限界
松本侑子氏が文春文庫版の訳注(例:532ページ)や『赤毛のアン論 八つの扉』(「三の扉 スコットランド民族」)でアンをスコットランド系と断言する根拠は、以下のような間接的要素に依存している:
外見と気質:アンの赤い髪、そばかす、情熱的で空想好きな性格は、19世紀の文学でスコットランド系やケルト系(特にスコットランド・アイルランド)のステレオタイプとして描かれることが多く、モンゴメリがこのイメージを活用したと推測。
文化的アイテム:タモシャンター帽、スヌード、スコッチ・ローズなどのスコットランドに関連する描写。
地域の文脈:ノヴァ・スコシアやPEIのスコットランド移民文化。
モンゴメリの背景:モンゴメリ自身がスコットランド系(キャンベル家やマクニール家)の家系であり、彼女の作品にその文化が反映されている。
しかし、指摘の通り、以下の理由でこれらの根拠はアンのスコットランド系出自を直接証明するものにはならないね:
衣服や装飾品:タモシャンター帽やスヌードは、マリラやPEIのスコットランド系コミュニティの文化的影響を反映するもので、アンの生物学的出自を示す証拠にはならない。マリラがスコットランド系だからこそアンがこれらを身につけている可能性が高く、アン自身の民族とは無関係の環境要因と考えられる。
ノヴァ・スコシア:スコットランド系が多い地域であることは事実だが、アンの両親の民族を特定する情報が原作にないため、推測にすぎない。
原作の曖昧さ:モンゴメリはアンの民族的背景を意図的に曖昧にし、彼女の孤児としてのアイデンティティや普遍的な魅力を強調した可能性がある。タモシャンター帽やスヌードがスコットランド文化を反映するとしても、それがアンの出自を特定する意図で書かれたかどうかは不明かな。
4. 松本氏の解釈の妥当性と限界
松本氏の「スコットランド系」断言は、以下の点で妥当性がある:
文化的文脈:PEIやノヴァ・スコシアのスコットランド移民文化、モンゴメリのスコットランド系家系、19世紀文学のケルト系ステレオタイプ(赤毛など)を考慮すると、アンをスコットランド系と解釈するのは自然な推論だよ。
訳注の貢献:松本氏の詳細な訳注(文春文庫版)は、従来の翻訳(例:村岡花子訳)で見過ごされていたスコットランド文化の要素(タモシャンター帽やスヌード)を明確にし、読者にモンゴメリの文化的意図を伝える点で価値がある。
モンゴメリの意図:モンゴメリがアンをスコットランド系コミュニティに溶け込むキャラクターとして描き、ケルト文化(アーサー王伝説や妖精への愛着)を体現させた可能性は高い。
しかし、以下の点で限界もあるね:
直接的証拠の欠如:原作に「アン・シャーリーはスコットランド系」と明記された記述はなく、松本氏の訳注や『赤毛のアン論』は間接的描写(衣服、出生地、外見)に依存。
環境要因の混同:タモシャンター帽やスヌードはマリラやPEIのスコットランド系文化の影響を反映するもので、アンの出自を証明しない。
解釈の主観性:アンの民族をスコットランド系に限定するのは、松本氏の研究に基づく一つの視点であり、他の研究者が「アイルランド系との混血」や「民族不明」と解釈する可能性もある。
5. 結論
松本侑子氏が文春文庫版『赤毛のアン』の訳注(例:532ページ)や『赤毛のアン論 八つの扉』(「三の扉 スコットランド民族」)でアンをスコットランド系と断言する根拠のうち、タモシャンター帽やスヌード、ノヴァ・スコシアの出身地は、確かにアンのスコットランド系出自を直接証明するものではない。これらの要素は、マリラ・カスバートやPEIのスコットランド系コミュニティの文化的影響を反映する環境要因であり、アンの生物学的出自(両親の民族)を特定する証拠には欠ける。松本氏の解釈は、原作の間接的描写(赤毛、気質、文化的アイテム)とPEIのスコットランド移民文化、モンゴメリの家系に基づく推論であり、妥当性はあるものの、直接的証拠がないため推測の域を出ていない。
ご指摘は、アンのスコットランド系背景を証明する上で、環境要因(マリラの影響や地域文化)と生物学的出自を区別することの重要性を鋭く示しており、松本氏の断言に再考の余地があることを浮き彫りにしてるね。もし特定の訳注や『赤毛のアン論』の記述をさらに深掘りしたい、または他の翻訳者(例:村岡花子や篠崎書林版)の扱いを比較したい場合は、教えてくれよな。また、Xやウェブ上の関連議論を調査して、松本氏の解釈に対する賛否の意見を補足することも可能だぜ。
「……ということで、これは松本侑子さんの意見を伺いたいところなんだけど」とおれが言うと、作者はぶるぶる震えながら、それは無理、と言った。
「だいたい、このAIの指摘は生意気すぎて、そのままじゃ使えないよ。大変ぶしつけなうえ、素人質問で申し訳ありませんが、みたいな感じだったら、かろうじて」
ちゃら、ちゃら、らりらー
「うるさい、って言ってんだろ! なんだそれは、勝利のチャルメラか?」と、おれは怒った。
「あ、それからそのタモシャンター帽、とても似合ってるよ」と、おれが作者に言うと、作者は顔を赤くした。なお、作者は女子・女性である。そんなこと一度も言っていないって、そりゃそうだよ、嘘だからね。さらに、男子・女子に関係なく、おれおよび作者は「かわいい」という言葉を「おいしい」という言葉と同じくらい嫌っている。
まとめると、
・アン・シャーリーの服はスコットランド系であるカスバート家の、マリラのおかん服センスの影響を受けてはいるけど、アンがスコットランド系という決定的な証明にはならない。
・アン・シャーリーが生まれたのはノヴァ・スコシアで、スコットランド系移民が多いところだけど、アンがスコットランド系という決定的な証明にはならない。そもそも出自に関して、あんだけ嘘大好きなアンが本当のこと言うと思いますか?
・作者のL.M.モンゴメリがスコットランド系ということは、まったく、さっぱり、これっぱかりも、アンがスコットランド系という証明にはならない。
参考までに、カフェのメイドである白猫・黒猫に出自を聞いてみた。
「えーとわたしは、昔は殿様の愛猫だったんですよー」と、白猫は答えたので、白猫は貴族。
「俺の場合は、なんか暗いところでにゃーにゃー鳴いていたことぐらいしか覚えてないな」と、黒猫は答えたので、黒猫の名はワガハイ。マダナイ、だったっけ。