アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
「どうだい、景気のほうは」とおれは、ロブスターそばを食べながら聞いてみた。箸を使えない人たちは、フォークとスプーンを使って、くるくる、って回して持ち上げて、ぱく、と食うんだけど、すでに箸の使用はグローバルになっている。
単に、この『赤毛のアン』の架空世界が、日本人仕様になっているだけ、という見方は、ある。
「入れ物は、フチがぎざぎざとか、いい器とかじゃなくて、プラスチックのカップか」
「プラスチックじゃなくてスタイロフォーム、ね。箸はディスポーサブルで、誰かが使ったようなもんを使い回しているわけじゃないから、きれいだよ」
発泡スチロールと割り箸、ね。でも……。
「ロブスター以外の中の具は、ちくわじゃなくてちくわぶだな」
「うちはそのほうが人気あるんだよ。味が染み込んでて、ふわふわしてて食感がよくて、これはちくわじゃなくてちくわぶじゃないか、と怒りやすいとか、利用者があって」
ちくわぶの味は、普通。めん、つゆ、もたっぷりの量があって、つまり我慢すれば食べられないことはない、みたいなこともない。グリーンゲイブルズのキッチンで食べるカップ麺より風情がある。
「じゃ、勘定をしようか。いくらだい」
「10000セント」
「そりゃ高いよ! 夜鳴きそばの値段って、16文…セントが普通だろ」
「うちは10000セントなんだよ。いいか、ちょっと財布を出してみろ」
おれは、小銭がじゃらじゃらと入っている、というか小銭しか入っていない、きんちゃく型の財布をまるごと渡し、親父はそこから5枚の1セント硬貨を取り出した。
「女王陛下の肖像があるほうを「0」とするだろ、「1」と単位が書いてあるほうが「1」ね。それをこう並べる」
10…2
100…4
1000…8
10000…16
まさかの2進法!
(また字数足りないって怒られたよ。ハーメルンの読者、そんなに1話あたりの字数凪外のが好きなのか。そりゃ長くしようと思えばいくらでもなりますよ。ずっと夜鳴きそばやにチャルメラ吹かせてたりすればいいんだから。ところで落語「時そば」に出てくる「しっぽく(しっぽくそば)」は、ほんとうのしっぽくそばとは違って、ちくわもしくはちくわぶがふたきれ入っているだけのものなのね。いろいろ入ってたら、演ずる人も食べ分けたりする演技が面倒だしね。ちゃらりーらら、ちゃらりらららー、ちゃ、ちゃ、ちゃらるりらり、らりららららり、らりぱっぱらっぱ、ぱっぱらぱー、もういいのかよ、もっチャルメラ吹かせろよ)