アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子   作:るきのるき

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61話・アン・シャーリー、ホテルでの打ち合わせに向かう

 高畑勲によるアニメ『赤毛のアン』の描写で気になるところは、春・夏に比較すると秋・冬の描写がいささか足りてないように思えるところだ。

 

 すばらしい夏の次に、さわやかな秋がおとずれ、木の葉はいそがしく色を濃緑から黄色・茶色・深紅に色を変え、森とその下の地面を染めて、乾いた枯れ葉は木枯らしで舞い、金色の空が鈍い銅色から灰の無色に変わると、雨が雪にかわり、長く暗く寂しい冬がはじまる。しかし暖炉に集まるそれぞれの家族たちは、来たるべきうす緑色の春を待ちながら、農具の手入れをしたり、動物の世話をする。

 

 アン・シャーリーとその仲間は、厚くてごわごわした服とタモシャンティ帽を含む防寒具に身をかため、ミトンの手袋に白い息を吐きながら、早朝の学校へ向かう。足元は踏み固められた雪の小道、そして左右には積み重ねられた雪の低い壁。

 

 教室は当番が火をつけておいた石炭ストーブと人の体温で十分以上の熱さになっており、教室のみんなはコートと防寒具を壁にかけ、溶けた水滴が下に垂れ、下校時間までにはかさかさに乾いている。

 

 広い道路は馬が、馬車のかわりにそりをつけ、いつものように生活必需品や食物を、雑貨店あるいは個人の家に運んでいる。そりは音がほとんどしないため、りんりんと鳴る鈴、夜の場合は灯火が必要である。

 

 というような描写は、高畑勲のアニメには比較的出てこない。

 

 北海道の冬ぐらいは参考にしたとは思いますけど、金がかかるのでプリンス・エドワード島には監督その他数人が初夏には何週間かいたとはしても、四季の風景描写をきちんと絵にするには、一年いないと難しい。さすがに1970年代のアニメ制作当時には、北海道でも馬ぞりは珍しかっただろうし、日の入り・日の出の時間まで計算してちゃんとそれっぽくするには限界があっただろう。

 

     *

 

 本来は冬に行なわれる、ホテルでのチャリティ・イベントは、バーチャル『赤毛のアン』の世界では夏の終わりになっていた。というより、作者がそうしてみた。プリンス・エドワード島の四季、特に長い冬について知りたかったら原作を読んでみてください。アニメのような雑な描写じゃなくて。

 

 雑、という言い方はひどいな。そもそもアニメは絵と動きだけのものだから、どんな作品でも限界がある。『のんのんびより』なんかずーっと夏・夏休みみたいな感じだし。『KANON』みたいに、お湯を持って凍りついた戸口のあれ、門扉の錠前に朝、登校前にかける、なんて描写は、北国生まれ・育ちじゃないと多分わからないね。体感をアニメで表現して感じさせるのはむずかしいんだ。

 

 アン(つまりおれ)とダイアナ、それに引率である若い女性のステイシー先生の3人は、イベントの前に打ち合わせをするため、海が見下ろせる例のホテルに行った。孤児院に返されるのかと絶望のどん底でスペンサー夫人の家へ行く途中に見えた、白い外観のホテルで、正式名称は(物語の中では)ホワイトサンズ・ホテルということになっている。高級リゾートホテルで、初春から初秋まで営業している。

 

 冬の間のプリンス・エドワード島でのリアル娯楽はすくないため、バーチャルな世界でも「試験運用中」ということになっていて、体験は限定されている。スキー場を作るという案もあるらしいんだけど、わざわざそこでバーチャルスキーやりには行かないだろう。

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