アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
白い双子が降りたあと、エレベーターは上に上がって、下に戻ってドアが開くと、恰幅のいい、どう見てもオーナーにしか見えない人と、おれとあまり年齢が違わないように見える、けどそれは食生活の関係だろうな、小さい紳士っぽい子が、紳士っぽい、アニメ『無職転生』で学習したかのような、おじぎをした。
「どうも妹たちがご迷惑をおかけしたようで申し訳ない」
だから誰なの。
「忘れちゃったのかー、ほらほらほら、ノヴァスコシアでお世話になったじゃないか、ハモンドだよ、ハ・モ・ン・ド!」
お世話になったというかこきつかわれた、という感じだろうか。プリンス・エドワード島につくまでの孤児院の、さらに前にいっしょに暮らしたハモンドさんである。
「こんどまたうちで働かない? 高給出すよ」と、ハモンドさんは言った。
*
ハモンドさんがアンと別れて、アメリカでどんな生活をしていたのかは、原作には書かれていない。
「再婚した相手が金持ちだったんで、ホテルの経営をまかされちゃってね。ここもそのひとつなんだ」と、ハモンドさんは説明した。
立ち話もなんだから、と、ホテルのラウンジでコーヒーという、当時のカナダでは異端者っぽいものを飲んで、おれは話をした。いちばん上の子は黙って話を聞いていて、ほかの4人はステイシー先生たちと外で別のボール遊びをしている。
「この子はヒエイ、あとの4人はミョウコウ、アシガラ、ハグロ、ナチ」
「それは「霧の生徒会」ですね。わかる人いるかな」
「じゃあ、上の子がキットで、あとの4人はキャット、ケイ、カム、コン」
それはE.E.スミスのスペースオペラ、レンズマン・シリーズに出てくる子どもたち。
作者にしかわからないようなネタを入れてくるのはやめてくれないかな、と、おれは思った。
本当は子どもは8人なんだけど、設定が難しいから、5人にしたんだ、とハモンドさんは言った。設定って。
「ところで」と、ハモンドさんは微笑を浮かべていった。
「次の学部生の試験のサポートもお願いできるかな。問題作成・監督・採点、ね。こっちのほうはあまりお金は出ないけど」
リアルではおれの先生、担当教員なのか。
ツレがリアルでは学園の理事をやってて、バーチャル『赤毛のアン』に出たい、ということで付属小学校から来てもらった、とのことである。
「ひょっとして、リアルのダイアナとも知り合い?」とおれがハモンドさんの隣りの子に聞くと、もちろん、とのことである。
なお、ハモンドさん、およびリアル世界での担当教員も女性である。再婚してからの性は不明。というか名前も原作では不明である。