アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
学生にとっての夏休みがはじまったばかりのある日、おれたち、バーチャル『赤毛のアン』の主要登場人物で、AIでない者は、作者の招待でお食事会に集まった。料理は中華料理で、席は一列。中央に作者がおり、左右に6人ずつ並んでいるのはダヴィンチ『最後の晩餐』と同じ構図である。
アーサー王と円卓の騎士でもいいじゃん、中華料理なんだから、とおれが作者に言ったら、あ、そっちのほうがいいね、書き換える? って聞いてきた。
なんだよ書き換える、というのは。おれたちはリアルのはずなんだろ。ということはともかく。
作者の向かって左の、おれ(アン・シャーリー)の仲間たちは紹介したので、おれの宿敵、シンキバ(ギルバート)と並んでいるメンバーについて話そう。
シンキバはせっせと食べて、非常においしそうな感情を顔にあらわしている。とても幸せそうで、バーチャル世界では極悪、リアル世界ではキザメガネの風情は感じさせない。
その右どなりがバーチャル世界ではリリちゃんの無口な侍従(特に名前はない)、リアル世界はスタディアディクト、勉強中毒のミノワさんである。今日の目の下のクマは若干薄めだけど、携帯端末で料理の画像をグーグル検索して、作りかたと歴史を調べ、別の携帯端末にメモしている。カロリーと栄養計算をして、不足しがちなものを補う、みたいな感じで食べている。
その右どなりが女子高生で足が太くて力士スタイルのレイチェル、あ、この人物紹介で「ちゃん」とか「さん」って言ったり、呼び捨てだったりしてるのは、なんかそんな気がするキャラで、特に意味はない、バーチャル世界ではリンド夫人。趣味と実用がキルト作りと噂話というのは、リアルもバーチャルも同じである。ときどき取り分け皿に、左右の人の食べ具合を見て追加したり、おれたちのテーブルに来て勝手に持っていき、ミノワさんに分け与えてたりする。
その右どなりはリゾートホテルのオーナーとなったハモンドさんの息子で、原作には特に名前がない。リアルではおれの先生(指導教員)の息子で、ハンドルネームはカイト。ダイアナ(リアルではダイチ)と同じ付属小学校に通っている。わりとにこにこしていて気配を普段は消しているんだけど、レイチェルがせっせと配っている料理を、普通においしそうに食べている。
その右どなりはそば屋の親父。バーチャルではアボンリーとその周辺の村で夜鳴きそば屋をやっており、リアルではジャズそば屋をやっている。マイルスと呼んでくだせぇ、と親父は江戸弁で言う。ちゃんとしたジャズの生演奏と、親父のひどいチャルメラが楽しめるらしい。料理は酒のあて程度にしかつまんでおらず、その代わりにさまざまな酒を飲んでいる。日本酒、ウオッカ、ビール、アブサン、アブジンスキー、電気ブラン。
いちばん右端はジョセフィン婆さん。リアルでも上品に和服を着こなしているけど、その下はニンジャの衣服を、コスプレではないレベルでまとっているアンダーニンジャである。リアル世界の仮名は、んー、ミカサだったかな。守りたい人がいるタイプなの、と作者に聞いたら、リアル世界での設定は一応作ってあるんだけど、話の展開には関係ないから、とのことだった。婆さん、とは言ってもそんなに年ではなく、素早くおいしそうなものを選んで取って、素早く食べて、夜鳴きそば屋の親父にアルコール入の飲み物を素早く回している。
飲みねえ飲みねえ、スシ食いねえ、プリンス・エドワード島っ子だってねえ。カナダの生まれよ。
と、くだらないネタを考えたんだけど、広沢虎造の浪曲『石松三十石船』知らないとなんのことだか不明だろうな。暇な人は検索してみてください。
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食事が終わり、お腹いっぱいになったあと、食後のおいしいコーヒーや紅茶などを、デザートのプリンやジェラートと共にいただいているとき。
さて、これから皆さんには戦ってもらおう、と作者は言った。
殺し合いですか、とおれが聞いたら、作者は首を横に振った。
違うけど、すこし似たようなところもある、そうである。