アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
おれ(アン・シャーリー)とシンキバ(ギルバート)の、リアルを賭けた草野球試合。
先攻はおれたちで、1番バッターの白猫はフォアボールで、スキップしながら1塁に行き、ピッチャーのシンキバは審判のルキフェルに抗議した。
玄人でも、体を伸ばしている猫でないと、ストライクゾーンには球を投げられない。
しょうがないなあ、バッターボックスでは猫禁止、ということになって、2番バッターは女子中学生ぐらいのサイズの黒猫である。
バットをあのレフト上空へ向け、一発飛ばしてやるぜ、とやる気まんまん、のところを見せて、ちょこん、とバント。
足がもつれたシンキバはうまく拾えなくて、あっという間に白猫は2塁から3塁へ。
1・2塁間に挟まれた黒猫は、セカンド・ミノワの股ぐらをくぐって2塁へ。
やはり抗議したシンキバの申し立てにより、攻撃中は猫禁止、ということになった。
ルールブックにそんなこと書いてないだろ、とおれは一応反論してみたけど、そもそも猫が野球をやるということが想定されていない、らしい。つまり、野球ができれば象でもキリンでも、宇宙人でもフランス人でも想定外、なので、ここは魔法じゃないからオーケー、ってのはやめよう、と話がまとまった。
守備か、守備だったら猫でもいいんだな、と、おれは心の中で、しめた、と思った。
3番バッターはいよいよおれの出番ですか、やれやれ、とおもむろに打席に向かう。狙い通りピッチャーはカッカしているな。
当然第一投は内閣高めのストレート。おれは腰を低くして重心の塩梅をはかって、思い切りバットを振った。
すこーん、といい音がして、ボールはホームラン・ゾーンに入る。先制3ランである。
どこまでもまっすぐなやつだな、シンキバは、と、おれは心の中で敬意を払いながらおもむろに、じゃなくて、ここはゆっくりと、でいいかな、各ベースを回った。
先頭の白猫はホームベースにつく前に一回転して、黒猫はガッツポーズをして、おれは、すみませーん、通りますよー、と片手でしゅっしゅっ、とやったけど、シンキバはグローブを叩きつけてマジで怒ってる。
言い忘れたけど、球審はルキフェルで、その他の審判は悪魔のような堕天使のみなさんである。
1塁はラミエル(仮)の正八面体。縦横にくるくる回りながら空中に浮かんでいて(各面にまつげ付きプロビデンスの目)、セーフの場合は青、アウトの場合は赤くなる。
あとはシヴァ、セト、アシュラと多神教だけど、レイチェル(リンド夫人)と同じ女子高生の制服を着ていて「最後のしんぱーん」とか言ってはしゃいでる。なんか女子高生っぽくないですか、アシュラちゃんって名前とか。
続く3人は三振および凡打。
小学生と、ふだんは運動不足気味の中学生と、タコにはそんなに期待してはいけないんだろう。
女子高生のソフトボール部員とニンジャ学校の先生(ジョセフィンババア)のガチ特訓を受けた相手にはかなわない。
1回の裏はシンキバ(ギルバート)側の攻撃である。
おれたちのピッチャーはプリムラ(プリシー)で、ま、ま、まかされました…、とあまり自信はあるようなないような感じだったけど、おれが自信あるから大丈夫、と一応言っておいた。
プリムラの球を受けられるのはおれだけなのである。
あっ、今気がついた(ふりをする)けど、プリムラさん「た…」のところの「…」って小さく「こ」って言ってたんだな。