アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
1回の表、おれたちアン・シャーリーチームの攻撃は、まず3点先取。
1回の裏、1番バッターはシンキバ(ギルバート)である。
白猫・黒猫およびおれを除く他のバッターを簡単にアウトにしたことで、かなり落ち着きが戻っている。というより明らかにピッチャーを見て小馬鹿にしたような面構えである。
なにしろ投げるのはプリムラ(プリシー)という、どう見ても体育会系というよりは海産物系の、くねくねした、あまり逞しさとか筋肉を感じさせない外見。すこしは日に焼けているけど、まともに球を投げたりできるように思えない。
しかしその実力は人外のもので、プリムラの投球を受け止められる人間はおれしかいない。
フォームを変えず時速100キロから150キロを投げる。
ストレート、カーブ、フォーク、ドロップ、スクリューボール、フルハウスにナイフ、そこまでは投げられないけど、あらゆる変化球を使いこなせて、ちゃんとストライクゾーンの、おれがかまえた位置にすぱすぱ、と決める。
ときどき手が吸盤つきの触手に見えてしまうこともあるけど仕方ない。
審判のルキフェルには、魔球禁止、と念を押されているけど、サンダーボールとかファイアボールみたいなのは投げられないので大丈夫。
3人のバッターを9球でアウトにしたあと、プリムラは、やった…、と喜んだ。ただ問題は。
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もう無理でした…、とプリムラは3回裏まで投げて、へばって肩で息をしている。タコの肩はどのへんにあるかは不明だけど、陸上ではヒトの格好をしているから、ちゃんと肩はある。
そうなのよ、体力が続かないんだよ、タコだから。
プリムラの正体は、タコじゃなくて、タコに似た地球外の知性体。現在はヒトに偽装して大学生としておれと同じ大学に通っているお隣さんである。
一応大学では、海のある、聞いたことのない外国からの留学生(モーリタニアやモロッコではない)として扱われていて、海産物・資源の研究をしている、ことになっている。たぶん地球侵略したときに備えてるんだろうと思う。いやすでにもうヒトの知らないところである程度は定住しているのかな。
2回表のおれたちの攻撃で、ルーキーのカナダ先住民さんがホームランを打ったので、得点差は4対0と、今のところ圧勝なんだけど、この先が自信ない。
4回表から、シンキバ(ギルバート)チームは、シンキバをちょんちょん、と叩いてにこにこしている第三段階レンズマンのカイト(ハモンドさんの息子)に交代したし。
4回裏。
一度だけ勝負させてくれ、とおれは言って、えっ、とダイチ(ダイアナ)は驚いた。そんなに驚くようなことかよ、おれの豪速球をみせつけてやる。
プリムラはレフトに回って、そこだったら、くてー、としてていいから、とおれが言ったので、本当にくてー、としている。
代わって、ピッチャーはおれで、キャッチャーはクルミ(ステイシー先生)になる。
アン・シャーリーの球を受けられるのはあたしだけだから、と、なんか覚悟を決めたような言いかただ。
そして、迎えるバッターは再びシンキバ。さあこい。おれの本気だ。
それにどうせホームラン打たれても、1点入れられるだけだし。