アン・シャーリーという名の、ちょっと様子がいい男子 作:るきのるき
試合は4X対3Xという、あいまいな決着で終わった。
おれたちのチームメンバーで外野の要であるカナダ先住民さんは、外野に飛んだどんなボールでも、ラクロスのスティックで取ってすばやく1塁やホームに回すので、相手のチームはなかなか点が取れなかったんだけど、ピッチャーの前にころころ転がすという手を使ってから、草野球では珍しいレベルのこそこそ技術の競い合いになった。
外野はホームラン級の球でも、先住民さんがレフト・ライトのくてくてメンバー(プリムラとシナノ)を放り投げて、ふわっ! と驚きながらも取る。
内野は白猫と黒猫が、ばつぐんの動体視力とすばやい動きでボールをキャッチすると、投げられないから……足でボールを蹴る。どうも猫が野球をするのはルールブックにはないけど、ボールを蹴って送球するのは問題ないらしい。
試合結果が4X対3Xなのは、6回の裏のシンキバ(ギルバート)チームの攻撃が終わった時点で、草野球場を借りている時間が終わったからだ。
最初から、この時間になったら終了するよ、って言っておいた通り。たぶんギルバートチームがちゃんと時間をかけて攻撃してたせいだろう。おれたちなんか、3球ぐらいでバットを大振りしちゃうんだけど。
応援席は、AIであるマリラとマシューは来れなかったけど、アボンリーの村の中の、リアル村人はけっこう来ていた。
ギルバートのほうも、村人・学校の仲間も含めて集まっている。しかし、圧倒的な人気なのはカイト(ハモンドさんの長男で第三段階レンズマン)を応援する小学生女子グループで、きゃあきゃあうるさい。ルキフェルがマスクを取って魅了のウインクでもしてやれば、審判がんばれ、ということになるんだろうけど、なにをがんばれというのか。
7回までやってたら、絶対おれたちの勝ちなんだけどなー、とお互いに思ってしまいながらも、お互い試合には勝ったけど勝負には負けた、いや試合には負けたけど勝負には負けた、だったっけ。試合も勝負も負けた? みたいな。
大学への進学成績を競ったアン・シャーリーとギルバートみたいな結果だ。
胴上げをする余裕なんかないから、雑にみんなでグラウンド整備して、シャワー浴びて、汗臭く泥で汚れたユニフォームを着替える。
次の試合予定は神様ぱずるチームと堕天使地獄篇チームで、審判の堕天使さんが待っているため、のたくらしてると神罰がくだりそうなのだ。
それじゃまた、リアルで会おう、と言って、ギルバートチームのみなさんは、背中を向けて手を振る、という、あばよポーズをしたのち……グラウンドを立ち去ると、夢の中の霧のように、姿が薄くなって消えた。
ということは全然なくて。
リアルでも、大学の構内や近くの喫茶店、路上では普通にあって、あ、どうも、と軽い挨拶と日常の話をする。
プリムラは引き続きお隣の天使さんで、ルキフェルは引き続きおれの部屋へ遊びに来る。
*
いつもの喫茶店のいつもの場所。
おれと作者は話をしていた。
「次の物語にも出してくれる、って約束したよね。それも主役で」
「正確には『勝ったチームには、わたしの他の物語に出演できる権利をやるよ』だね。別にあんたを主役にするってわけじゃないから」
「で、どんな話なんだ」
「異世界の探偵チームだね。チーム名は『燦光の結束団』」
「参考にします団?」
違うよ。すでにエピソードはいくつか書いてあるんだけど、またテキストのフォルダが行方不明でさ。あなたと、吸血鬼と、猫たちその他が事件捜査をする。
作者の次回作にご期待ください。
これでこの話は完結です。
感想ください(なるべくポジティブなのを)。