本日はレイトショーでMX4D鑑賞ついでに妹にCPK!を布教してきます。
部屋が暗くなる。
「いやマジで始めるの!?」
俺の抗議を無視して、巨大スクリーンがゆっくり明るくなった。
20話
「はいはい、可愛い可愛い」
「練習しすぎておなかすいた~。終わったらパンケーキ食べよ?」
「あ……私は緊張でご飯食べれんかったよ」
「体力使うんだから、腹になんか入れとけってあれほど言ったよな?」
「あ、えっと、その。ゼリー飲料は、飲んだよ?隼斗が前に買ってきてくれたヤツ」
「……まあ、それならギリ許す」
「いまだから言います。倒れた時のヤツです、ハイ」
「だろうと思ってたわ」
「彩葉全然飲まないんだもんあれ~」
「いや、だって普段のご飯はかぐやが作ってくれるのと、隼斗の差し入れで足りてたし」
『ヘイ、ベイビー』
──懐かしいような 初めてのような──
──そんな歌だ これは──
「……なあ、こん時ってさ」
「「「見えてた(!)(よ~)」」」
「やっぱり?」
「そういう風に設定したしね~」
「隼斗の楽しそうな顔、バッチリ見えてた!」
「恥ずっ」
「心強かったよ」
「そりゃ良いんだけどよ、どんな気持ちで『ヘイ、ベイビー』のアドリブかましたんだよ。俺に向かって」
「アドリブじゃないよ」
「は?」
「あれね~、ヤッチョが彩葉に『彩葉ぁ?やってくれないのぉ?』って上目遣いで頼んだの!」
「そしたら彩葉、す~ぐ『つつつ謹んで、お受けいたしますぅ~!!』って即OKしてた」
「ちょろ~」
「ちょろい言うな」
──そうよ 私──
「ヤチヨ、泣いてたろ。ここ」
「感極まっちゃって……」
「彩葉とかぐやが汗だくだったから、目立っては無かったけどな」
「で、ライブどうだった?」
「……良かったよ。可愛かったし、綺麗だった」
20話
「ちっ」
「隼斗、どうし……!」
「囲まれた」
「っ!かぐ」
「おいたはだめだよー」
「モウシワケアリマセン」
「今のは一体?何が起こってしまうんだ!?続報を待て!」
「ふふっ、みんな~!今日は本当にありがと~!」
「……ヤチヨ、今のって」
「…………う~ん、バグじゃなさそうだし、やんちゃっ子の悪戯かにゃ~?調べとくよ」
「うわ~、こんなことなってたんだ」
「こん時もこの後も、目も頭もガンガンだったわ」
「月の皆って、情報量桁違いだからね……。ごめんね、三人とも」
「ううん、ヤチヨの立場なら仕方ないよ」
「輪廻がぶっ壊れてんのなんか、この時点で分かんねえしな」
「いや~……思えばここも
「えっ」
「わたしの時って隼斗はKASSENに参加してないし、一緒に住んでないし。ってことは勿論、ライブの関係者席も無かったんだよね」
「あ~……確かにな。ってことは、ライブ後の乱入も?」
「わたしのときは意識が無かったから覚えてないけど、多分。だから、助けに入るのも遅れちゃったんだよね。驚いちゃって」
22話
「どー!?似合う!?」
「……まあ、似合ってるんじゃねえの」
「えー!隼斗、もっとなんかないの~!?」
「……いや、似合ってる、二人とも。かぐやはひまわり柄がイメージにバッチリ合ってるし、」
「彩葉は……白、そんな派手にならねえんだな。柔らかい雰囲気で、似合ってる」
「……その髪型も、普段よりなんというか、……ずるい」
「…………は?」
「な、なに。急にそういうこと言うの……そっちのがずるい!」
「いや、だって隼斗そういうの普段言わないじゃん……」
「えっ、なになに!?彩葉照れてる!?かわい~!」
「う、うるさいっ!」
「隼斗もっと言って!追撃追撃!」
「アホか、もう言わん。絶対ェ言わん」
「ヤッチョも今度、みんなで遊びに行きたいな~。遊園地とかテーマパーク!」
「おう、良いぞ」
「……正直、そういうお出かけって、あんまりしたことなかったからね。行ってみたいな」
「かぐやも行きたい!みんなで行ったら絶対楽しいもん!」
「どこ行くよ?浦安?よみラン?」
「富士!」
「絶叫系!?」
23話
「うっひょぉおお!隼斗凄ぉい!」
「ほー、やるもんだ。ほれ、景品。水琴鈴ってやつだ。厄払いだか魔除けだかの鈴なんだとよ」
「ふーん」
しゃん
「えっへへへぇ。隼斗、ありがと♪」
「おう。で、彩葉は決まったか?まだ三発あるぞ」
「ちったぁ手加減してくんねえかなぁ兄ちゃん」
「……ほんとに取るとは思ってなかった」
「欲しかったんだろ?」
「……ありがと」
「い・ろ・は~、付けないの?」
「……いまは、髪型崩れちゃうし」
「そだね~?せっかく褒められた髪型だもんね~♪」
「なっ、こら、かぐや!」
「きゃ~♪」
「なにしてんだ、ったく……。あ、そんじゃ」
「兄ちゃん、彼女ら逃がすなよ~」
「彼女じゃねえって」
「いい思い出、あったな」
「そういやこのお面、どうしてんの?」
「お部屋に飾ってる。実写配信のときはたまに着けてるよ」
「かぐやの鈴は隼斗から返してもらった!ウサギのキーホルダーと一緒に!」
「今それは聞いてねえぞ」
「ヤッチョももらったもんね~」
「ガラス細工と風鈴どうしてんの?」
「お部屋に飾ってるよ~」
24話
「かぐやは、かぐや姫じゃないよ」
「もっとはちゃめちゃで、めちゃくちゃで、だから、おとぎ話とは違う……」
「そんなはちゃめちゃかぐや姫にもお迎えが来ましたが、最後の日までめちゃくちゃ楽しく過ごしましたとさ……って、そういうのがさ、良いじゃん!」
「これがわたしのエンディング!超~楽しく、運命に向かって走ってく!」
「……それ、ただの自己満だろ」
「綺麗に締めて満足してるの、お前だけだ。連れてくって言ってたろ、俺も彩葉も」
「似合わねえ作り笑いしやがって」
「残される側のこと、ミリも考えてねえエンディングが『ハッピーエンド』なわけあるかよ」
「へへ、隼斗は手厳しいなぁ」
「…………そりゃ、本当はさ?もっともっと彩葉と歌いたかったし、隼斗とバカやりたかったよ」
「新しい曲だって、お料理だって挑戦したいの、まだまだたくさん」
「……はい、今だから言います。無理して笑ってました。そりゃ、本当は帰りたくなかったよ」
「「知ってた」」
「……でもさぁ、お仕事ほっぽり出してきちゃったのは事実だしぃ」
「……いま思えば、ヤッチョがデータをかぐやに渡しておけば良かったのかなぁ」
「そうしてたら、いまの状況はないんじゃない?」
「義体が出来てるかどうかわかんねえな」
「そうなると、ヤチヨがご飯食べられてないかもね」
「それは困る!!!」
25話
「隼斗からしたら、かぐやなんて鶫ちゃんと一緒に寝るようなもんでしょ?」
「いや待て待て待て」
「普通にハードル高ぇんだわ。妹と一緒にすんな」
「へぇ?じゃあ意識しちゃってるんだ?」
「してるわそりゃ。かぐやだけじゃなく、お前にも。気ぃ使ってんだわ、これでも」
「いしきぃ?」
「んぐっ」
「……わ、私は別にいいよ」
「おいおい、流されてねえか?」
「ない……とは言わないけど」
「信用してるの。じゃなきゃ一緒に住んでない」
「…………」
「……はぁ~~~……。わぁった、わぁったよ」
「ただし、条件付きだ」
「誰かの部屋じゃなくリビング。布団三枚。川の字。間にかぐや。……これ以上は一切譲らん」
「やったぁぁぁ!!」
「うるせぇ」
「いやぁ、隼斗もちょろいよねぇ」
「うるせえ。彩葉も彩葉だぞ」
「えっ、私?」
「お前だろ、なんでOK出してんだよ」
「えっ、だって……隼斗だし良いかなって」
「そういうとこだぞ」
「あの頃から信用してたし」
「『信用してるの。じゃなきゃ一緒に住んでない』もんね~♪」
「かぐや、真似しないで」
「『かぐやだけじゃなく、お前にも。気ぃ使ってんだわ、これでも』ね~?」
「ヤチヨも真似すんな」
「小学生の時『鶫を守る!』とか言って滑り台から飛び降りて、足挫いて泣いてたくせに!」
「」
「おやまぁ」
「昔、鶫を自転車の後ろに乗せて爆走して二人で転んでたくせに!!」
「」
「それでそれで?」
「ヒーローが自己犠牲すると毎回泣いてたくせに!!」
「おいコラいい加減にしろ」
「うるさいっ!ばーかばーか!」
「タイマン最強のプレイヤーくんにも、微笑ましい時代があったんだねぇ。ヤッチョ得した気分」
「途中煽ってたろお前」
「……それは置いといて」
「隼斗、ヤッチョに何か聞きたいことでもあるのかな?」
「……ああ。ヤチヨ、お前なんか知ってんだろ」
「隼斗にもちっちゃい頃あったんだぁ」
「あるだろ。こないだ見たろ」
「小さい頃って言うか、ガキ……」
「うるせえ、小5やそこらなんてガキだろ」
「もしかしてバイク乗ってるのって、特撮ヒーローの影響?」
「……悪いかよ。カッコいいだろ」
「その頃やってたのって、お菓子のヤツだよね~」
「お菓子!?……カッコいいのそれ?」
「カッコよかったよ~」
「劇場版が割と洒落んならないストーリーだったの憶えてるわ~」
27話
『御意』
『はーい』
──この一瞬が最高のパーティーなんだ──
──全部ギュッと憶えていようよ眩しい日を──
『チートモードだぁ!
たった今、ブラックオニキスの帝アキラ。
雷、続いて乃依にもチートモードの使用が確認されました!』
「ここなぁ……」
「ヤチヨが演出ってことにしてくれて、良かったよ」
「帝も頑張ってくれてたからね~」
「今度これを基にしたシステム実装するんだっけ?かぐやも使いた~い」
「そ~。一定時間だけの超強化バフ。時間切れでデバフかかるから使いどころがちょ~重要なやつ」
「……TRANS-AM?」
「赤く光るしね~」
「でも体の一部だけだよね?」
「じゃあ全身光らせる?」
「全身はやめときなさいって」
『ジュンヨウ!天守を落とせ!』
『隼斗っ……!』
「ハッ……ちきしょう、どちらにせよ変わんねえなら、せめて」
──ねぇもっとはしゃいで。アンコールないのって──
──おねだりして、とびきり──
──キラめいて歌おう──
からん
「はるばるようこそ。逃げちゃってゴメン!でも、すっごいすっごい、楽しかったんだ!」
「待って……。まだ、したいこといっぱいあるって……」
「…………」
「……ヤチヨ、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫」
「『わたしのときの隼斗は、なんで飛んでいっちゃったんだろうな』……って、考えてただけ」
「……大丈夫じゃないでしょ、それ」
「……うん、ごめん。大丈夫じゃない」
「だってさ、わたしのときの隼斗も、優しかったんだよ」
「……」
「彩葉のこと大事にしてたし」
「
「みんなのことを大事にしてた」
「だから、時々分からなくなっちゃうんだ」
「どうして、わたしの時には、来てくれなかったんだろうって」
「……飛べなかったんじゃねえかな、そっちの俺は」
「…………飛べなかった?」
「……あの頃の夏前、というか帝とのKASSEN前までの俺だったら」
「天守を獲りに行った」
「……!」
「帝のアドバイス通りに、勝つために動いた」
「……でも、私の手を取って、かぐやのところに飛んでくれたじゃん」
「……なんでだろうな。そん時はそうしたかったんだよ」
「なんでぇ~?」
「……ヤチヨんときの俺が、ヘタレだったからじゃねえか?」
「「「へ?」」」
「話聞いてるとよ」
「そっちの俺は真実がリタイアして、
「それが原因で一緒に引っ越さなかったし」
「一緒に引っ越さなかったから関係者席に招かれなかったし」
「招かれなかったからライブ後に乱入できなかった」
「ほら、全部俺がヘタレだったからじゃねえか」
「……輪廻が決定的にズレたのは、確かにそこからかもね」
「ま、そっちの俺を否定はしねえよ。色々考えてたんだろ、多分」
「彩葉のこと、
「自分が手を出して、ヤチヨカップで
「KASSENで俺が入ったとして、黒鬼に勝てるのか。足を引っ張る結果にならねえかとか」
「俺はその辺、思考放棄して全部放り投げて、助けを求められたから手を伸ばしただけだからな」
「……違うよ」
「違わねえよ」
「違う。隼斗はそう言うけど」
「……?」
「思考放棄なんかしてない」
「わたしはさ、前の隼斗も知ってるし、いまの隼斗も知ってる」
「だから分かるよ」
「根っこは同じ」
「助けたい人を助けたい」
「大事な人を守りたい」
「ただ、わたしの時の隼斗は、ちょっと考え過ぎちゃったんだと思う」
「失敗したらどうしよう」
「迷惑かけたらどうしよう」
「本当に自分でいいのかな」
「いまの隼斗もたまにそうなるし」
「うるせえ」
「なるよね?」
「……なるかもな」
「だからね、ヘタレだったんじゃなくて」
「ほんのちょっとだけ、自分を信じられてなかったんだと思う」
「それだー!!」
「声デッカ」
「それそれそれ!!」
「うるせえ」
「こっちの隼斗はさ!考えるより先に飛んだじゃん!」
「だからさ!」
「ヤチヨの隼斗は飛べなかった」
「今の隼斗は飛べた」
「それだけじゃん?どっちが正解とか不正解とか、優劣とかも無いよ」
「隼斗は隼斗!ただ、ちょっとだけ自信が持てなかっただけ!」
「……うん、それだけだったのかもね」
29話
「……目を開けてみろ」
「こっちだ」
「おいっ!あっ……あぁ」
「着替えるから待ってよ!隼斗もすぐ起こすから!」
「なんでツクヨミ行く前に俺起こしてくんなかったの?」
「いや、あの時はちょっと完成後でハイになってたのと……その……」
「もにゃもにゃすんな、はっきり言え」
「……寝顔がかわいくて、起こしたくなかったんです……」
「すーげぇしょうもない理由だった」
「だって、隼斗の無防備な姿ってあの頃URだったし……」
「ソシャゲみたいに言わんでくれるか」
「隼斗、朝早いもんね~」
「リビングで寝てた時も、彩葉のアラームなのに隼斗の方が起きるの早かったもんね!」
32話
―――――かぐやが最初に乗ってきた宇宙船、今どこにある?
「ゲーミング電柱からかぐやが出てきた、ってのは彩葉から聞いた」
「けど、タケノコみてえなモンがあったって話は聞いてねえ」
「『もと光る竹』……確かに、あの時そんなもの無かった……と、思う」
「一機目の『もと光る竹』。こいつは壊れてねえんじゃねえか?」
「…………壊れてない、はず。少なくとも、かぐやが来たとき身体を付与出来てるから……」
「銀の腕輪と壊れていない『もと光る竹』」
「この二つがあれば、ツクヨミ経由で月へのアクセスするのは難しい話じゃねえ気がするんだが」
「……多分、出来る、と思う」
「ツクヨミと月の世界はとても近いから、『もと光る竹』の通信機能が生きていて、腕輪の信号増幅機能と合わせれば……」
「そういえば、『もと光る竹』ってどうしたの?かぐやが乗ってきた方のヤツ」
「両方『かぐや』が乗ってきたやつではあるんだけど」
「難しいな~。じゃあゲーミング電柱の方!」
「まだFUSHIが管理してるよ~。こんど富士山に埋めに行こうって案が出てたけど、どうするの?」
「うん、一機目の方は「竹取物語」に倣って埋めに行くつもり」
「そのために諸々の手続きなり、機材なりを準備中だしな」
34話
「隼斗と彩葉がいる『今のわたし』は、ちゃんとここにいるから」
「それが消えるなんて、思ってないよ」
「……」
「だから大丈夫」
「隼斗は安心して、全力で『完全無欠の大団円のハッピーエンド』目指しなよ」
「置いてかれないように、ちゃんとついてってあげるからさ!」
「……」
「……チッ。んだよそれ」
「こっちが気ィ回してやってんのに、全部ひっくり返してきやがって」
「……調子狂うだろうが」
「……ったく」
「どっちが年上だか分かんねえな」
「ヤッチョのほうが八千年分は年上だよ~ん」
「……ふふ」
「なに笑ってんだよ」
「いやぁ?言われちゃったねぇ、って思って」
「うっせ」
「でもさ」
「そういうとこだよね、隼斗って」
「は?」
「ちゃんと考えてるとこ」
「自分のことじゃなくて、相手のことをさ」
「わたし、隼斗のそういうとこ――」
「……すごいと思うよ」
「ほら!彩葉も言ってる!隼斗考えてないわけじゃないじゃん!」
「あ~うるせえうるせえ、こん時はってだけの話だろ」
「でもずっとそうだよね。自分じゃなくて、相手のことを優先して考えてるとこ」
「……それはそうかもな」
「ヤッチョの時の隼斗もそうだったしさ、やっぱり一緒なんだよね~」
「あ・と・さ~」
「……なに、かぐや。私の方みてニヤニヤして」
「彩葉、ちょっとヘタレた~?」
「はぁ!?」
「だって~どう考えても告白するところじゃん!」
「ヤッチョも近くで見てて思った~」
「んなワケないでしょ!?」
「「違うの?」」
「……いや、その、もっと言うべきタイミングがあるかなって」
「「いまでしょ」」
「やめて?その顔と手」
「だってここで言わなかったから十年かかったんじゃん」
「うぐっ」
「やめたれ二人とも」
37話
「ご所望のパンケーキだぞ、ご査収くださ~い」
「おいこら、なんだこれ」
「こいつらの希望だぞ。いやマジで。副所長嘘吐かない」
「「うぇ~クソ不味ィ……」」
「味覚機能は正常だな」
「あんたと私で作ったんだから当然、なんだけどなんか納得いかない」
「さて、それじゃ」
「調整がてらな、『所長のかわいそうなパンケーキリメイクしてみた』、やろうぜ」
「「これホント不味かった~」」
「納得いかん」
「オメーだってリメイク後と食べ比べて変な顔してたろ」
「そりゃ手を入れればね!?高校生の頃なんてその余裕すらなかったの!」
「彩葉の料理矯正するの、隼斗も手を焼いてたね~」
「う、『この手順省けるじゃん』って思うと、ついやっちゃってて……」
「弱火で20分は強火で5分にはならねえのよ」
「ホットケーキミックスだって、混ぜる順番で生地の食感変わるんだからね~!」
「はい、今はレシピ通りやってます……」
「ま、気軽に行ってくるわ」
「待って、隼斗。ん」
「おう」
「あー!彩葉だけズルいー!」
「ヤッチョとかぐやも隼斗となかよしするー!」
「言い方なんとかならんか?」
「……へへ」
「どうした、ヤチヨ」
「手が痛いなって。ジンジンして、生きてる感じ」
「そういうこと出番前に言わんでくれ。年取って涙腺ゆるいの」
「まだヤチヨの1/10も生きてないでしょ~!」
「八千年追体験したから実質俺のが年上ですぅ~」
「行ってらっしゃい、隼斗!盛り上げといてくれないと承知しないんだから」
「保障はしねえぞ~」
「あ、復活ライブだ!」
「ヤッチョもリアルでライブやったの初めてだったな~」
「二人とも義体だしね」
「手が痛いのも嬉しかったんだよね~」
「……良かったわ、時間はかかっちまったけど」
「全然待ってないよ~」
「八千年に比べりゃな」
「かぐやは待ちきれなかった!」
「言っとくけど、最短だったんだからね」
「分かってるけどさ!」
「あ、エンドロールだ」
「ライブの曲に合わせてんのかよ、凝ってんなおい」
復活ライブが終わると同時にエンドロールが流れ終わる。
スクリーンがゆっくり暗転した。
部屋が静かになる。
誰もすぐには喋らなかった。
「……終わったね」
彩葉がぽつりと言う。
「終わったな」
「終わっちゃった~」
かぐやがソファにごろんと転がった。
「いやー、色々あったね!」
「雑」
「雑じゃないもん!」
かぐやは天井を見上げる。
「だってさ」
少しだけ、珍しく静かな声だった。
「最初の頃のかぐや、今見ると本当に子供だったなーって」
「今も十分子供じゃねえ?」
「うるさい!」
笑いが起きる。
「でも」
かぐやは続けた。
「楽しかった!」
「……」
「彩葉と暮らして」
「隼斗と馬鹿やれて」
「ヤチヨとライブして」
「みんなと会えて、楽しかった」
静かな言葉だった。
ヤチヨが隣で頷く。
「うん。わたしも。八千年歩いた甲斐があったな」
隼斗が苦笑する。
「重いな」
「重い?」
「重い」
「本音だからにゃ~」
「それは知ってる」
彩葉は少しだけ目を細めた。
「私もね」
「?」
「嬉しかった」
「みんなと出会えて、今があること」
「ちゃんと幸せだなって思った」
しばらく誰も喋らない。
静かな時間。
「隼斗は?」
「聞かれると思ったわ」
「私たちと出会って、どうだった?」
「……出会ってねえ人生を想像できねえよ」
「お?」
「やっとかよ」
「ね、遊園地調べようよ」
「もう調べてありま~す!絶叫系いっぱいあるところ!」
「行動力の化身~」
「四人分のフリーパス、予約しちゃって良い?」
「……アラサーで遊園地かぁ」
「諦めなさい、私はもう諦めてる」
「もうヤッチョが予約してるよん」
「先を越された!?」
「なにを競ってんだ、なにを」
笑い声に包まれながら、四人並んでシアタールームを退室していった。
残っているのは、照明の落とされたスクリーン。
それと、テーブルの上に開かれた小冊子。
ドアが閉まって気圧差で起きた風で、パラパラとページが送られる。
表紙に題されたタイトルは────。
あ、最終回ではないです。
暁月252519さん、通りすがりの伐採者さん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録、ここすきをしていただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。