・鳶色の短髪
・長身(黒鬼の帝、雷よりちょい低いくらい)
・橙色の垂れ目の三白眼
になります。
ツクヨミだと髪色がアッシュブロンドになって髪型、特徴的な目は変わらず。
羽根が後頭部から前髪へ回り込むようにあしらわれている感じになります。
ツクヨミのライバー用コーデは鷹匠の着物をモチーフに黒を基調として差し色に深緑を配色、
動きやすいように上着の裾を詰め、足袋を履いたものになります。
プライベート用のコーデは黒一色の着流しに黒の中折れハット(白いロゴで『TSUKUYOMI』と入っている)を合わせた上で下駄を履いています。
夏休みの学生なんぞ、午前中は惰眠を貪ってなんぼ。
とりわけ配信者なんてものをやってればなおさらだ。
……なのに、俺は朝10時からなにをやってるんだろうな。
と、夏場は欠かせないサングラスの下からカンカン照りの太陽を恨めしく見上げる。
ここは最寄りからモノレールで二駅。
駅直結のショッピングモール。
そんなアクセスの良さにも関わらず、我儘お姫様が「バイク!乗りたい!乗せて!」などと宣ったせいで、このクソ暑いのに後ろからひっつかれてタンデムする羽目になった。
……で。
「なんでお前までいんの?」
「ウチがいちゃ悪い?『おにーちゃん』」
「ウチ不機嫌です」と顔に書いたままぶんむくれているのは、我が妹、鶫。
「別に悪いとは言ってねえよ、なんでここにいるんだって聞いてんの。単純な疑問」
「あの女が配信で言ってたから。『明日隼斗と買い物デートなんだ!水着買いに行くの!』って」
ヘルメットを脱いだかと思えば、解放された長髪を振り乱し「あっつ~い!」とがに股でヘドバンをかましているかぐやを指差す。
クソほど情報漏洩じゃねえか。
女配信者と買い物デート匂わせとか、『ジュンヨウ』側が燃える案件だろこれ。
なんで燃えてねえんだ俺は。
隠す気ゼロだから逆に燃えねえのか?
そんで残念美少女すぎんだろアイツ。
「そういやお前、ちゃんと挨拶してねえだろ?」
「……は?」
「この残念生物に」
「残念生物言うなー!」
がばっとかぐやが食いつく。
「えっとね!かぐやはかぐやだよ!隼斗のぉ――」
「隣の騒がしいやつ、兼配信者仲間」
「ちぇー」
「なんだよ今の間は」
不満げに頬を膨らませ、唇を尖らせるかぐやを見て鶫はじとっとした目を向けた。
「……うさんくさっ」
「酷くない!?」
「だってなんか距離感バグってるし……」
「よく言われる!」
「自覚あんのかよ」
呆れたようにツッコむと、鶫は今度はこちらを指差した。
「……ウチは高羽鶫。これの妹」
「知ってるー!隼斗から聞いたことある!」
「えっ」
「やめろコラ」
余計なことを言い出す前に、ヘルメットをかぐやの顔面へ押し付けた。
むぐぐぐ、とヘルメット越しに抗議するかぐやに呆れつつ、鶫が追加で質問してきた。
「……で?いろPってやつはいないの?」
「あいつは絶賛バイト中。……てか、お前会ったことあるだろ」
「は?」
「いろPの中身、酒寄だぞ。隣の部屋の」
「……はぁ!?彩葉お姉さん!?」
モールのバイク置き場に、鶫の驚愕の声が響いた。
「バイクの風も良かったけど、すずし~い♪」
「ねえちょっと、本当に彩葉お姉さんがいろPなの!?あの狐の!?」
エントランスを抜けると、強めの冷房が熱を持った体を心地よく冷やしてくれる。
ぐいぐい引っ張んな、裾伸びんだろ。やめてくれ。
「あ、かぐやちゃんに高羽くんこっちこっち……ん?その子は?」
「ま、また綺麗な人……」
「あーすまん、うちの妹。かぐやが配信でポロったせいで来ちまったらしい。
追い返すのもアレだから、連れていきたいんだが……」
待ち合わせ場所のコーヒーショップに向かうと、相手の綾紬は既にフラペチーノ片手に足を組んで待っていた。
まだ待ち合わせ10分前だってのに、やけに絵になるなおい。
「こんな可愛い子ならもちろん大歓迎。ね、お名前は?」
「高羽鶫、です」
「おいくつ?」
「9歳、小学4年生……です」
「じゃあ、真実のとこの弟くんと一緒だ。もしかしたらクラスメイトかもね」
「私は綾紬芦花。
高羽くん……お兄ちゃんのクラスメイトで、かぐやちゃんのお友達。よろしくね」
にこっと笑った綾紬は、少し屈んで目線を合わせると鶫へ手を差し出す。
「ツグちゃんって呼んでいい?」
かぐやもだが、こいつも大概人たらしだよな。
流石美容系インフルエンサー。
初対面の懐に入るのが早すぎる。
……あ?確か鶫もフォロワーだったような。
「えっあっもしかしてROKA!?!?!?」
気付いたっぽい。
「うっ、ウチ!ずっと見てます!この間のメイク動画、すごく分かりやすくって!」
「見てくれてるんだ、ありがと。もしかして、そのリップ」
「はい!ROKAさんの動画で出てたやつです!
ウチにはちょっと大人っぽ過ぎるかなって、思ったんですけど」
差し出された手をギュッと握り、ぶんぶんと上下に強く振る鶫。
迷惑そうな顔を欠片も見せずににこやかに対応する綾紬。
「そんなことないよ、似合ってる。
ただ、私の紹介するコスメってハイティーン向けで、ローティーン向けじゃないんだよね」
綾紬は鶫の唇を見ながら、少し困ったように眉を下げる。
鶫の手を握ったまま、綾紬はそっともう片方の手を添える。
真剣な目つきで、鶫の肌の様子を確かめている。
「ツグちゃんの今のお肌は、それだけで完成された宝石みたいなものなの。
だから大人と同じものを使ってその輝きを隠しちゃうのは……
美容家としてはちょっともったいないかなって。
発色とか成分とか、ちょっと背伸びした子向けだから。
ツグちゃんくらいの子だと、刺激も強いかも」
「う……」
「でもオシャレしたいって気持ちはすっごく分かるの。私もそうだったし」
綾紬はそう言って笑うと、鶫の握ったままの手を軽く揺らした。
「だからね、ここのところちょっと考えてたんだ。
最近はツグちゃんくらいの子も結構見てくれてるみたいでね。
もっと年下の子向けのメイクとか、スキンケアとか、そういう動画もやってみようかなって」
「……え?」
「ツグちゃんみたいな子が、『ちょっとオシャレしたいなぁ』って思った時に見れる動画。
あった方が良いでしょ?」
ぱぁ、と鶫の顔が明るくなる。
ぶんぶんと、取れるんじゃないかと思うくらいに頷く。
「でね?もしツグちゃんが良かったらなんだけど――」
綾紬は少しだけ悪戯っぽく笑った。
「モデル、興味ない?」
「……………………へ?」
鶫がぽかんと口を開けたまま固まる。
「実際そのくらいの年の子が使った方が分かりやすいし。
リップも『これくらい薄く塗ると可愛いよ』とか紹介できるから」
「え、え、えっ、ウチが!?ROKAさんの動画に!?」
「もちろん、お兄ちゃんが良いって言ったらだけど」
すっと視線が飛んでくる。
綾紬の悪戯っぽい視線と、鶫の今にも拝み倒してきそうな視線。
「おいなんで保護者面談みたいになってんだ。許可取んなら俺じゃなくて親だ親」
妹のあまりのテンパりっぷりに頭痛を覚えながら答えると、鶫は感極まったとばかりにその場に立ち尽くした。
あー完全にやられたなこれは。
そんな兄妹のやり取りをどこ吹く風で、かぐやがフラペチーノの結露を指でなぞりながら口を開く。
「ねえ芦花ぁ。真実は?」
「あの子は去年の水着で良いって。
彼氏と選んだって言ってたし、他の男の子と水着買いに行くのは気が引けるんでしょ」
「なんで一緒に海行くのはOKなんだろうなぁ……」
「あ、そうだ。ツグちゃんも一緒に海行く?急でごめんね、明日なんだけど」
「行き!ます!!」
「声デッッッカ」
「芦花さん、これどうですか!?」
「背伸びしすぎだろ」
「お兄ちゃんには聞いてないもん!」
「うーん、ちょっとツグちゃんには大人っぽ過ぎるかな。
こっちのパステルカラーの方がツグちゃんっぽくて可愛いと思うよ」
「分かりました!じゃあこれにします!お兄ちゃん、これ」
「せめて試してから強請れや」
「隼斗!これ見て!」
「馬鹿野郎こんなもん只の眼帯じゃねえか戻せ戻せ!」
―誰も止められやしない、歌わずにはいられない―
―もしもで諦め
かぐやが防水ケースに入れたスマホで流していたオリ曲、『私は、わたしのことが好き』の再生を止めた。
そのまま画面をスワイプし、ヤチヨカップのランキングを表示する。
現在順位、280位。
獲得ファン数、193621。
……今、37人増えたな。
もうアーカイブで登録稼げるレベルか。
「……高羽、あんた大丈夫?」
「……前準備の段階で疲労困憊だわ……」
昨日の買い物だけで、もうだいぶ体力を持っていかれている。
ここは最寄りから電車を乗り継いで1時間40分。
バイクなら国道を延々南下して2時間ちょい。
隣のチェアでは、酒寄がスライスオレンジの刺さったドリンク片手に優雅に脚を組んでいる。
なんで俺だけぐったりしてるんだ。
濃紺のサーフトランクスに、白地にネイビーのボタニカル柄と暗めの赤が差し込まれたアロハシャツ。
胸ポケットに差し込んでいた愛用のサングラスをかける。
一応それっぽい格好はしてきたが、暑いもんは暑い。
暑さだけじゃねえけどなこの疲労感。
「椅子も持ってきてくれたし、かぐやのことも……ありがとね」
「あー……いい、いい。
どうせ実家の押し入れで埃被ってたモンだ。使ってくれるだけありがたい」
お互いサングラス越しでも、申し訳なさそうに眉を寄せているのがわかる。
そんな酒寄はパステルグリーンのセパレートタイプ、ホルターネックの水着を着こなしていた。
髪は綾紬のスタイリングでポニーテール、スポーティな印象が似合っている。
胸元がフリルで隠されてるのも、スカートタイプなのも露出控えめで正直助かった。
「こないだの歌配信めっちゃ良かったけど~」
「ね~。かぐやちゃん、ゲームも歌も上手いよね」
三つ目の焼きそばを啜りながら言う諌山と、その諌山の髪の毛をせっせと結っている綾紬。
白にパステルブルーのガーリーなチェックのオフショルダーに、水色のフレアスカートを合わせている諌山。
綾紬は胸元から肩を通って背中まであしらわれた、黒と白のバイカラーフリルが特徴的な黒いワンピースタイプ。
さらにその肩からは、恐縮しきりの鶫が一生懸命に編んだ太めの三つ編みが流れている。
こっちは視線の置き場に困る。
特に諌山は彼氏持ち、なんで同行を許されたんだ俺は。
「高羽くんなら大丈夫でしょ」って何が大丈夫なんだ。
あれか、配信者だから炎上リスク的に安心ってことか。
否定はできねえ。
「天っ才!歌姫ですから!」
「調子に乗るなバかぐや!ゲームはお兄ちゃんに教わってるからでしょ!」
にひ、と膨らませた浮き輪の上でどや顔を浮かべ、ピースサインを決めるかぐやと、それに釘を刺す鶫。
かぐやは太陽を思わせるようなオレンジ色のワンピース。
大きなボタンの装飾と袖口のフリルが、元気なイメージによく合っている。
綾紬にスタイリングされた大きめのツインテールも、その印象をさらに強めていた。
……だがばっくり開いた背中とハイレグなのはどうかと思う。
いや、あの眼帯みたいな布より遥かに良いんだが。
鶫は綾紬に選んでもらったパステルイエローのタンキニ。
お腹が少しだけ覗くセパレートタイプで、下はショートパンツタイプ。
本人の『背伸びしたい』欲を絶妙に満たしつつ、胸元の控え目な白いレースが年相応の可愛さを残している。
「ってことはぁ~? 歌は認めてくれてるってこと~? つぐみ~?」
「んっ……再生数は、回ってるし」
「……で?」
不意に、鶫がじっとこちらを見上げてきた。
「なんだよ」
「なんかないの」
むすっと唇を尖らせながら、くるりとその場で一回転する。
「水着、感想」
あー、それか。
「つぐみ可愛いもんね~」
「ね~。お兄ちゃん的にはどうなの?」
面白がったかぐやと諌山まで乗っかってきた。
やめろ、そのニヤニヤ顔。
「……別にィ。似合ってんじゃねえの」
「隼斗雑ゥ!」
即座に飛んでくるブーイング。
だが、なんでか鶫はぴたりと動きを止めた。
「……ほんとに?」
「は?」
「その……子供っぽいとか、思わなかった?」
視線を逸らしながら、指先で裾をいじる鶫。
だから俺は、さっき思ったことをそのまま口にした。
「いや。確かに背伸びはしてっけどよ、無理してる感じはなくて良いと思った」
「……っ」
「年相応で普通に似合ってんじゃねえの」
数秒固まったあと、鶫は顔を真っ赤にして。
「~~~っ!!」
ビーチボールをぶん投げてきた。
「お兄ちゃんそういうのサラッと言うのズルい!!」
「褒めてんのになんでだ」
顔面に向かって投げられたボールをパシっと受け止める。
するともう一人のお姫様が、ニヨニヨしながら近づいてきた。
「隼斗ぉ~。かぐやの水着は~?」
「攻めすぎ。足回りと背中、目のやり場に困る」
「酷ぉい!?」
「でもまあ、お前らしさはある」
「……へ?」
「太陽みたいに元気で目立って、騒がしくて。似合ってんじゃねえか。綾紬に感謝しろよ、二人とも」
はた、とこちらも固まった。
数秒後、ようやく意味を理解したらしいかぐやが、真っ赤になってジタバタと浮き輪を揺らした。
「褒められた! 隼斗にかぐや自身を全肯定されたぁぁぁ!!」
「るっせぇ、暴れんな。……ほら、二人とも固まってないで水辺行ってこい海だぞ」
隼斗がしっしっと手で促したが、勢いづいたお姫様は矛先を別の獲物……酒寄と綾紬、諌山へと向けた。
「よしっ、この際だ! 彩葉と芦花と真実もレビューして!褒めたげて!
隼斗、この三人の水着はどうなのよ!」
「え、ちょっ、かぐや!?」
突然の無茶振りに、酒寄が裏返った声を出しながらドリンクで顔を隠す。
綾紬はといえば、面白そうに小首を傾げて隼斗の言葉を待っていた。
「酒寄か。……まあ、お前は一言で言えば『安心感』か?」
「……あ、あんしんかん?」
「スポーティな中にポニーテールの爽やかさがあって、色もあって清楚な感じがよく出てる。
その、露出控えめなのも……正直、俺としては助かった。お前らしくて良いんじゃねえの」
「~~~~っ!!」
逃げ場をなくした酒寄が、今度は両手で顔を覆って椅子に沈み込んだ。
それを見ていた綾紬が、いたずらっぽく唇の端を上げる。
「じゃあ、私は?」
「綾紬は……なんていうか、撮影現場か?
普通なら水着に着られそうなのに、お前は逆に着こなしてんのズルいわ。
本職の凄みを感じるっていうか、素直に綺麗だと思った。……うん、これで勘弁してくれ」
「ふふっ、光栄。勘弁してあげる」
さすが場慣れしているのか、綾紬は余裕の笑みで受け流す。
と、そこで今まで黙々と焼きそばを啜っていた諌山が、期待に満ちた目でこちらを向いた。
「ねえねえ、私トリ?私のことも褒めてくれるの?」
「……っ、真実さんはダメです!!」
隼斗が口を開くより早く、鶫が鋭い声を上げた。
「なんでぇ?」
「だ、だって彼氏さんいるのに、お兄ちゃんがそういうこと言うの、なんかヤです!」
「え~、ケチんぼ。高羽くんの語彙力、結構楽しみにしてたのにぃ」
「ケチじゃありません!そ、それに彼氏さんと選んだ水着なんでしょ!」
必死に兄の視線を遮ろうとする鶫に、隼斗は肩をすくめる。
「だ、そうだ。……つーか、俺の精神衛生上もそれが助かる。
なんせ彼氏持ちと海に来るって、どこの地雷原だよ」
この流れを作り出した月のお姫様がむふふ~。と腰に両手を当ててドヤ顔をしている。
……なんかムカつくな。
「コラ、お前結構な爆弾放り込んだ自覚あんのかおい」
「あてっ」
受け止めたビーチボールを放り投げ、かぐやの頭に当てる。
「だって褒められるの嬉しいじゃん!」
「時と場合ってもんがあんだよ」
「でもさ、そういう真っ直ぐさって強いと思うよ?」
そういうところがウケてるんでしょ、と綾紬が言う。
「オリジナル曲も良かったしさ。歌詞まんまじゃん?」
「分かるぅ~」と諌山も頷く。
鶫にダル絡みするかぐやに、綾紬と諌山が褒める褒める。
お姫様は鼻高々だ。
……物理的に鼻伸びてねえか?
そんな絶好調なお姫様は、ぐいっと酒寄へ顔を向けた。
「だって!よかったね!」
それを受けてようやく再起動した酒寄は、ドリンクを顔の前に持ってきて防御姿勢だ。
お前それさっき俺にすら抜かれたやつだろ。
「あれ作ったの彩葉なの?」
「彩葉可愛いうえに天才すぎ~」
「彩葉お姉さんすごぉ……」
案の定、貫通。
「あ、あれは昔作ったやつだから……。かぐや、余計なこと言わないで」
「じゃあほんとに彩葉お姉さんがいろPなんだ……」
まだ信じてなかったんかい。
「でもまだまだ足りない……!どうすればいいのだぁ……んぬぬぬぅう!」
「お兄ちゃんの方がランキング上だもんね~♪」
兄の威を借りるなよ。
……確かに、現時点のランキングはかぐやいろPよりもJunY0uの方が上だ。
だが、かぐやいろPにあって、俺に無い武器がある。
オリジナル曲だ。
ライブ権狙いのヤチヨカップで、自前曲持ちって時点で強い。
しかも酒寄は作れて、かぐやは歌えて踊れる。
配信者としては、普通に反則級だ。
「う~ん、もう結構いろいろやったしねぇ」
「やはりここは彩葉が着ぐるみを脱ぐことによって新たな需要をだねぇ」
「彩葉お姉さん脱ぐんですか!?」
その言い方は語弊エグすぎるだろ。
諌山が箸を置いてどや顔で言い放った提案に驚愕する鶫。
……あ、酒寄が立ち上がった。
「うぉおぉ!?ウソぉ今のウソ!」
憐れ諌山。
三皿目の焼きそばが、サングラスを額に上げた酒寄の口の中に消えていった。
空っぽになったプラ皿に涙を浮かべる諌山。
……よく一呼吸で全部いったな。
かぐやが勢いよく立ち上がり、元気に手を挙げながら言う。
「やっぱ歌!オタクもみんな喜んでたし」
「オタク言うな」
「彩葉~新曲作ってよ~。伴奏もしてぇ~?」
両手を組んであざとくねだるかぐや。
そんなかぐやに、腰に手を当てた酒寄は言う。
「これ以上勉強とバイトの時間は減らせません!」
「でも海来てんじゃん!」
酒寄はフッと鼻で笑い、上げたサングラスをかけ直しながら。
「マジなエリートは遊びもおろそかにしないはず。睡眠時間削ってでも遊ぶ!」
「倒錯してるなぁ~」
「やっぱ寝ないで努力しないといけないんだ……!」
「お~い、酒寄さ~ん。小学生の教育に悪うございます~」
うっ、と居心地悪そうにサングラスの弦を弄る酒寄。
「つ、鶫ちゃんは良く寝たほうが良いかな!
ほら、身長とか寝てる間に伸びるし、寝る子は育つって言うし!」
「分かりました!」
「ちょろすぎんだろ」
心配だよホントに。
「……このままじゃ、優勝できない……」
肩を落とし、目を伏せたかぐや。
さっきまでとは別人みたいな雰囲気に、思わず口が開く酒寄。
「かぐやのこと助けて……。彩葉に、演奏してほしい……」
しおらしい雰囲気のまま、一歩一歩酒寄に近づいていくかぐや。
哀れな声で、涙を浮かべ、お互いのまつ毛の本数まで分かるのではと思うほどの距離で見つめる。
あーあ、酒寄さんこれに弱ぇんだわ。
「うっ、ぐ……うぅ……」
歯を食いしばって『絶対に嫌』と言おうとでもしているのだろう。
……サングラス掛けてんのに、目を逸らした時点で負けだろ、もう。
「まあ……時間が、空いてたら……」
ほら。
「よっしゃー!もっともっと配信するぞ~!」
「なぜ断れない……なぜ……!」
天に拳を突き上げるかぐやと、膝を付いて砂を握りしめる酒寄。
「彩葉お姉さんの方がちょろくない?」
「しっ、言ってやるな」
「ちょろは~」
「ちょろはだねぇ」
「言ってやるなって」
「でも彩葉、明るくなったねぇ」
と、諌山がしみじみと言った。
言われた本人は鳩が豆鉄砲食らったかのようだ。
「突然、ふっ……っていなくなっちゃいそうだったもんね。高羽くんと絡み始めてからは、マシになったけどさ」
今度は俺が豆鉄砲を食らった。
確かに見ちゃいられねえからと、メシを差し入れ始めたのはそうなんだが。
バレてたんか、恥っず。
「かぐやちゃん、どんな魔法使ったんだろ。ちょっと悔しいけど、本気で応援したくなったかも」
波打ち際で鶫と水を掛け合うかぐやに、複雑な思いの籠った視線を送りながら、綾紬が髪の毛をかき上げた。
「今まではちょい役だったけど。本気でコラボ、しちゃおうか」
「いいね~」
……おいおい。
登録十万超えが二人。
そんなの、下手な企業案件より拡散力あるだろ。
「もちろん、高羽くんにも協力してもらうからね」
「いや、俺にとってアイツは競合なんだが」
「してもらうからね」
「あの、だから……」
「鶫ちゃん、モデルやれるって、嬉しそうだったね?」
「……協力します」
……こんな強かだったっけか、コイツ?
「……チョロ羽じゃん」
「チョロ羽くんだねぇ」
酒寄うるせえ、意趣返しすんじゃねえ。
お気に入り登録いただいた方々ありがとうございます。
とても励みになります。
更新頻度についてアンケートは一旦締め切らせていただきます。
現状の更新頻度を望む方が多かったため、行けるところまではこの更新頻度を保とうと思います。
このままだと早々に息切れしそうですが、それでも毎日更新は保てる目算です。
【更新頻度についてアンケート】読んでいただきありがとうございます。現在は 0:00 / 8:00 / 12:00 / 16:00 / 20:00 の1日5話更新を行っています。今後の更新ペースの参考にしたいため、よろしければ投票いただければと思います。
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① 今のまま(1日5話・時間分散更新)
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② 1日5話一括更新(5話分まとめて更新)
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③ 1日の更新話数減、時間分散更新
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④ 1日の更新話数減一括更新