綾紬と諌山の後押しを受けた『かぐやいろPチャンネル』はコラボを戦略として取り入れた。
今まではあまり出ていなかった、複数ライバーでの企画配信にもかぐやは嬉々として飛び込んでいった。
MCの一人、忠犬オタ公が次のお題を画面に表示する。
『それでは次の質問です!『無人島に一つだけ持っていくとしたら』?
皆さんお手元のフリップにお書きくださ~い』
無人島なぁ。
脱出前提か永住前提か、あるいはウケ狙いかで回答変わってくるよな、これ。
……まあ、これで良いか。
ペンを走らせ、回答をMCに送信。
『回答が出揃いました~!それでは一斉にオープ~ン!』
もう一人のMC、乙事照琴が各ライバーの回答を表示する。
『包丁』
料理系ライバー『米斗王理』が腕を組みながら頷く。
王理さん、あんたならそうだよな。
『過去!』
おっとり系ライバー『マル・マリー・真珠』が自分の回答へのリアクションもそこそこに、
前の席のかぐやの回答に身を乗り出している。
……嫌な予感がすんなぁ。
『魔術大全』
中二病系ライバー『オ・ランダム・オメガ』が片手で右目を隠しながら。
……片目キャラ被ってねえかな、これ。
『プロテイン』、その脇に『山崎8年』と書き足されている。
二人で活動している、バ美肉ライバー『神北林檎』と
トレーニング系ライバー『運銅寺睡馬』が二人でケラケラ笑っている。
『サバイバルキット付きアウトドアナイフ』
なんか埋もれてねえか、この回答。
まわりが濃すぎる。
俺だけガチで生き残ろうとしすぎた。
さてかぐやは、
『彩葉と隼斗』
「かぐぴ?」
「そこの馬鹿野郎!本名出すなっつってんだろ!!!!」
「放送して大丈夫?www」
「生じゃなくて良かったね、ジュンくん」
「生だったら放送事故っすわこんなん!!」
「だって彩葉と隼斗いればサイキョーじゃん!」
「一つだけってレギュレーション守れやせめて!!」
爆笑してんじゃねえ琴ォ!!
モザイクだモザイク!
編集で絶対ピー音入れてもらうからな!
オタ公も限界オタクみてぇな顔してんな、何とかしろMC陣!!!
……なぜか、俺まで呼ばれることが多かった。
くそ、酒寄が表に出ないから猛獣の手綱握れってか。
注目度が上がっても、酒寄は相変わらず勉強とバイト優先。
配信への出演頻度そのものはそこまで変わってねえ。
一方のかぐやはというと、コラボに限らず活動全般のモチベーションがブチ上がり。
「隼斗、行っっっくよぉー!!」
かぐやが担いだ砲口がこっちを向いた。
「おい待てなんでこっち向けてやがる人に向けるなってあれほど」
「Fire!!」
「いやまあ避けれんだけどさ」
「くそぉ!」
「……あ、まだ水残ってんぞ」
「ぶべっ、ちょ、待っ、冷たぁ!?」
「あーもう全く」
自作のペットボトルバズーカの試射動画を上げたり。
俺は顔出ししてねえので、隼をモチーフにした和装の仮面をつけて出演。
「彩葉ぁ、今日の夕飯はビーフシチューだよ。ち・な・み・にぃ~?
明日の歌枠配信、いろPが30分伴奏してくれたら丸一日じっくりコトコト手間暇かけて煮込んだ
タンシチューにグレードアップ!」
「メシ質はズルいじゃん!」
「一配信丸々伴奏してくれたらぁ、隼斗の付け合わせもついちゃう!」
「……ち、ちなみにメニューは?」
「夏野菜のグリル。昨日道の駅行ったら安かったから買い込んできた。
あと焼きたてバゲット、角のパン屋のヤツ」
「うわっ、絶対美味いやつ……!」
「デザートは苺のパンナコッタだな。苺も安かったから。お前好きだったろ、確か」
「やります」
「即堕ちじゃねえか、メシに弱すぎんだろ」
「うああああ……もう粉と水のパンケーキに戻れない……」
「明日は何食べたい、彩葉?」
「俺はそろそろ焼き魚とか食いてえ。ちゃんと出汁取ったみそ汁と合わせて」
「良いねぇ!おみそ汁の具は?」
「油揚げ好きなんだよな。出汁がじゅわっと染み出てくるやつ」
「あさりのおみそ汁も良いよねぇ。砂抜きとか殻とかちょ~っと手間かかるけど、
その分美味しいよねぇ」
「言葉だけで飯テロしないで!……もう、最近暑くて食欲終わってたのに」
「オメーそれを良いことに飯抜くなよ、節約じゃねえぞそれは」
てな具合で酒寄を懐柔して伴奏させたり。
それでもアバターとはいえ顔出しは嫌なようで、やっぱり狐の着ぐるみ姿だった。
『芦花~真実~。彩葉忙しそうだし、隼斗配信中だからゲーム教えてぇ(´;ω;`)』
『いいよー』
『おけおけー』
「今流行ってるのは何と言っても『KASSEN』!」
「基本は陣取り合戦!今回は三人だからモードは『SENGOKU』!」
「大量のミニオンを倒しながら、左右どっちかのやぐらまで進行して」
「牛鬼を倒して占領すると、敵陣地に大将落としが出現!」
「それを」
「天守閣に」
「「打ち込む!」」
「おぉ~!」
「かぐやちゃん筋良いね~」
「SETSUNAで怖~いお師匠様に教えてもらってたおかげかな~?」
綾紬と諌山の二人に教わって、KASSENの『SENGOKU』の初見プレイをしたり。
……まあ、そう簡単に負けるようにコーチングしてねえ。
「なんでアイツの配信に俺が行くんだよ、保護者じゃねえんだ俺ァ」
「俺にも俺の配信があんだよ。てーことで、今日はアコギ練習配信な。
メン限だから情報漏洩すんなよ、とくにかぐやに」
「かぐやが買ったんだが全く使わねえし。
……とうとう配信用の小道具が俺んちに浸食し始めてよ……」
「あとまあせっかく仮面も買ったし、半顔出しみてえなのもやるかぁと」
「妬むな妬むな。さーて……今日こそFコードを攻略してやる」
「表の配信でも弾ける程度にはなっときてえしな」
と、俺は俺で新しい挑戦を始めてヤチヨカップに臨んでいた。
で、問題はここからだった。
俺はその日も酒寄宅で相伴に預かり、洗い物をしている最中だった。
「そんでな、ハマグリの出汁を濃縮したいときはぁ生で剥いて洗えば」
―かぐやちゃん結婚して 1500ふじゅ~
―結婚しよう! 800ふじゅ~
配信中に届けられたスーパーチャット。
それを皮切りに、同じようなコメントが大量に流れてくる。
珍しく雑談配信に狐の着ぐるみアバターで同席し、
モデレーター権限を持っている酒寄が削除対応を行う。
だが。
―俺の嫁になってよ! 1500ふじゅ~
―ケコーン汁 1400ふじゅ~
―添い遂げよう! 4000ふじゅ~
―お前に拒否権ねえかんな 3500ふじゅ~
―かぐやちゃん可愛すぎ 4000ふじゅ~
―一生大事にしてあげる 20000ふじゅ~
―いろP結婚して! 5000ふじゅ~
―ジュンヨウは貰った 613ふじゅ~
―かぐやたん♡いと恋し♡ 7777ふじゅ~
―ご両親にあいさつしなきゃね♡かぐやママもかわいいんだろうな~ 4500ふじゅ~
―いろPとジュンヨウも入れて4人で暮らそう 1680ふじゅ~
色付きスパチャが雪崩みてえに押し寄せる。
流石の酒寄も対応が間に合わない。
……しれっと俺も巻き込まれてんな?
かぐやも困ったような顔で汗を流しながらリスナーに釘を刺す。
「んん……あのさぁ~みんなかぐやに会ったこともないじゃん?
我儘ですぐ暴れるしぃ超めんどくさいよ?」
自覚あるんかい、といった顔で酒寄が呆れる。
「キュートな
―そこがいい! 4000ふじゅ~
―それでもいい 10000ふじゅ~
―困らせてほしい 30000ふじゅ~
―悪童なかぐやちゃん好き 20000ふじゅ~
―顔が良いから全部オーケー 30000ふじゅ~
―かぐーやいつもありがとう 10000ふじゅ~
―おもちゃいっぱい買ってあげる♡ 50000ふじゅ~
―踏まれたい 30000ふじゅ~
が、逆効果だったようだ。
むしろ色とりどりだったチャットが、殆ど高額の赤チャットに変貌してしまった。
……アカ名覚えたぞ。
難しい顔をしていたかぐやが指を弾いて何かを閃いた顔をした。
おい碌なことにならねえぞこれ。
「よし!いろPとジュンヨウに勝ったら結婚な!名付けて!『かぐや争奪KASSEN選手け――」
配信切れ酒寄!
自分でもヤバいと思ったのか、一瞬で酒寄が配信を蓋絵に切り替えた。
一瞬、部屋に静寂が流れる。
「はっ?ヤバッ何言ってんの、取り消して!!」
「酒寄ぃ、もう遅ぇ。拡散されてらぁ……」
かぐやの黒Tシャツの首元を掴んで前後に振る酒寄。
そんな彼女に向けて、スマホの画面を見せる。
SNSのニュースフィードには「『かぐや争奪KASSEN選手権 feat.ジュンヨウ』開催!」の文字がはっきり表示されていた。
……しっかり俺も巻き込まれてやがる。
「ごめぇんついノリでぇ。いろP、ジュンヨウ、守って~」
首元を掴んだ酒寄の手を、そのまま両手で握ってウィンクまでしてくるかぐや。
最近コイツ、自分の顔面が強いって理解し始めてる節がある。
酒寄と顔を見合わせると、どちらからともなく溜息を吐いた。
そうして始まってしまった『かぐや争奪KASSEN選手権 feat.ジュンヨウ』。
種目は『KASSEN』のSETSUNAモード、1vs1のガチンコバトル。
以前、俺がかぐやにコーチングを行ったアレだ。
普段のSETSUNAは二本先取。
だが今回は設定変更で一本先取。
……参加者が多すぎて、そのくらいじゃねえと回らねえ。
『どうも~。かぐいろジュンのためにわんわんお!
かぐやちゃんに頼まれました、解説の忠犬オタ公で~す』
『同じく、かぐやちゃんに頼まれました、実況の乙事照琴でーす』
無駄に
「はぁ……」
「こうなったからには配信盛り上げるしかねえか……。いろP、行ったれ」
「このスキン、ヒットボックスデカいんだけど……」
「魅せプだ魅せプ」
酒寄は事ここに至ってもいまだに着ぐるみを脱がない。
あれ結構なハンデになるんだが。
……まあ、大丈夫だろ。
一人目の挑戦者は、大型の手甲を両腕に装備したリスナー。
対するいろPは、分割したキーボードブーメランを両脇に浮かべた狐の着ぐるみ姿。
そのちょうど真ん中に、立会人のかぐや。
ゴングが鳴ると同時にリスナーが動く。
―――目にハートを浮かべながら、一直線にかぐやに抱き着こうと飛び込む。
いやんいや~ん、と身を捩るかぐや。
スッ、と二人の間に身を滑らせる狐の着ぐるみ。
意識の外からそのままコンボを叩き込む。
二人目。
竹林ステージ。
二刀のキーボードブーメランで攻め手を全て弾かれ、体勢を崩したところに一閃。
近くの竹ごとずんばらりん。
三人目。
川上の橋。
前回俺とかぐやが対戦したステージ。
今回の相手の武器は鎖分銅。
自由自在に動く鎖が動きを制限する。
しかし。
『躱す!避ける!これじゃーい!』
『このスキンのヒットボックスで!?』
解説の琴と実況のオタ公も興奮を隠さない。
空中から狐が奇襲。
飛び蹴りを叩きこもうとするが躱される。
着地を狩ろうと鎖が伸ばされる。
が、織り込み済みだった狐はまた空中へ跳ぶ。
そのままリスナーの肩を踏み台にして強引に体勢を崩す。
そこへ本命の回し蹴りを叩きこみ、橋から吹き飛ばす。
吹き飛ばされたアバターが、水切りみてえに川面を跳ねていった。
こんな調子でリスナーを次々薙ぎ倒したいろP。
数人を倒した後、狐の着ぐるみがふとこちらに戻ってきた。
「はあ、ちょっと疲れた。ジュンヨウ、タッチ交代」
「おう、休んどけ」
『ここで満を持して、ジュンヨウの登場だー!』
『ちょwタイマン最強持ち出すとかwww』
ステージに移動。
同時に、眼帯を外す。
UI操作で外してるだけだ。
なのにわざわざ、芝居がかった動きで眼帯を剥ぎ取ったように見せる。
武器も、以前かぐやと配信した時とは違う。
大剣を分割した二刀。
目の前の相手を完封するための、手数重視の装備。
「さぁ、斬られたいヤツからかかって来いよ」
『ガチモードやんけ……』
『さーあこの最強の保護者、倒してみろやぁ!』
「あ、ちょい待ち」
タイム、とジェスチャーしながらウィンドウを操作する。
実況解説はもちろん、かぐやもいろPも、コメント欄までまとめてずっこけた。
えーとまず最優先でコイツ。
コイツは冗談にもならん、かぐやだったから良いものの、他だと通報案件だ。
あとはコイツら。
コイツらがギリ冗談の範囲だ。
だから見せとく。
一線踏み越えた馬鹿がどうなるかを。
数秒後、ステージに四人のアバターが転送される。
周りをきょろきょろ見回しているあたり、呼び出しの心当たりはないらしい。
「ようこそ」
招待者に向けて満面の笑みで歓迎する。
「な、なんで呼ばれたんすか?」
「俺、入室申請出してなかったけどな……」
「わたし、KASSEN触ったこともないんだけど……」
「俺も……」
……あ、女性リスナーも混ざってんのか。
まあ性別がこれからの対応を左右することは一切ないが。
えーと、『
『白玉あんみつ かぐや推し』に『逆関節愛好家』ね……。
……最後のヤツその名前でKASSENやったことねえの?
再度ウィンドウを操作して、呼びつけた4人それぞれにメッセージを送りつける。
受信したそれを開いた瞬間、全員が全員「ピシッ」とフリーズした。
「心当たり、あるよな?」
送ったのは、連中が投げたスーパーチャットのスクショ。
―お前に拒否権ねえかんな 3500ふじゅ~ STR1VE@かぐやちゃんガチ恋
―ご両親にあいさつしなきゃね♡かぐやママもかわいいんだろうな~ 4500ふじゅ~ 塩さば定食
―おもちゃいっぱい買ってあげる♡ 50000ふじゅ~ 白玉あんみつ かぐや推し
―踏まれたい 30000ふじゅ~ 逆関節愛好家
「自治厨みたいになるからよ、あ~んまりこういうことしたくねえんだけどよ、
ちょ~~~っと教育に悪ぃかな~って思うワケ」
「す、すいません!ついノリで!」
「オメーが一番怖ぇんだよSTR1VEゥ!
お前、さっき『拒否権ねえ』って言ってたよな? 今、それ俺がオメーに言いてぇんだわ」
STR1VEのアバターの目の前に、ウィンドウがポップアップする。
内容は『JunY0uからSETSUNAの対戦が申し込まれました。受諾しますか? Yes/No』。
ウィンドウを操作するアバターの指先が震えているのが見て取れる。
『No』の方に伸び掛けた指を見て、挑発を投げた。
「来いよ、俺を倒せばあとはいろPだけでかぐやと結婚だぜ?」
させる気はさらさらねえが。
覚悟が決まったかのように指先の震えが止まった。
ウィンドウ操作のSEが響くと同時にHPバー、残り時間などのUIが表示される。
3カウントが終わったら、対戦開始。
「やったらぁ!ガチ恋の名前は伊達じゃねえ!かぐやちゃんと結婚すんのは俺だ!」
「その意気だ、俺に勝てねえような奴に渡さねえけどな」
「やらねえよ」
「……庇護欲ってか独占欲?強すぎじゃない?」
「かぐやは嬉しいけどね~♪」
『さぁ始まりました『かぐや争奪KASSEN選手権 feat.ジュンヨウ』、第二部のジュンヨウ戦!』
『眼帯外して両目解放、しかも武器は大会出るときの二刀。ガチすぎワロタw』
『ですが……ジュンヨウさん、リスナーの猛攻に防戦一方ですね?』
『あれがアイツのガチ戦法っす。異常な動体視力と反射神経の暴力。
相手の攻撃を完封して、カウンターを叩きこむ。ただ、ガチだけどまだ
『HP1ドットも減ってませんけど、あれで!?』
『傍から見て『防戦一方』ですからね。
本気だったら攻撃の『起こり』から潰しに行ってなんも出来なくさせてますよアイツ』
一応まだ『配信映え』が頭に残ってるんでしょ、と解説の琴の声が聞こえる。
それもあるが、一番デカいのは別だ。
同じステージの端で身を震わせてる3人のリスナーに「ライン超え」の末路を見せる。
対戦相手が何も出来ずに敗退していくより、全ての攻撃が通用しないことを目で見てわからせる。
その方が『何をしても勝てない』『次は自分だ』との思いが強くなり、頭に染み込む。
「くそっ、ホントバケモンだな!」
「バケモンだったら諦めれんのか?」
「冗談!」
一度、STR1VEが距離を取る。
得物の日本刀を脇に構え、突進してくる。
突きか、確かに一番防ぎづらい。
――まぁ。
「だからって、通るとは限らねえ」
「マジ、かよ」
左の刀の切っ先を、突きだされた相手の刀の切っ先に寸分違わず合わせて突進を止める。
数ミリどころか、ほんの僅かでもズレていればそうはならない神業。
残り時間も多くはねえし、十分見せられたろう。
右手の刀で切り上げるように一閃。
『決まったー!突きに突きを合わせて止めたー!その隙を逃さず一閃ー!』
『決め技が変態すぎんだろw』
「っかぁー……やっぱ強いわ、ジュンヨウ!」
「なんだ、恨み言はねえのか?」
「無い無い、あんだけ綺麗にやられちゃそんな言葉も出てこねえよ!」
それに格ゲー勢としてジュンヨウと対戦出来たのはある種トロフィーだ。とまで言ってのける。
あっそ、それは良いんだが。
「それはそれとして、イエローカードな。
初回は大目に見るが次やらかしたらチャンネル出禁だから」
「えっ」
「ハイ一旦退場」
驚愕の声を上げながら、ステージから強制排除されるSTR1VE。
「してなぁい……」
「わたしKASSEN初見なのにぃ」
「あれにどうやって勝てというのか」
「隼斗強~い♪」
「だから名前……まあいいや、私のじゃないし」
おいこらいろP、雑だぞ個人情報の扱いが。
というか俺の扱いが。
まぁ、いいや。
雑に扱えるくらいの関係になったってことだと思おう。
ウィンドウを操作してSETSUNAの設定を変更。
同時に残りの三人、『塩さば定食』『白玉あんみつ かぐや推し』『逆関節愛好家』に、
まとめて対戦を申し込む。
対戦設定は1vs3。
勿論俺が1だ。
ハンデなんていらん。
初見勢二人がハンデみてえなもんだろ。
「三人纏めて来い、コーチングしてやるよ」
コメントのマナーもな。
「オラ塩さばァ!オメーが唯一の経験者なんだ日和ってどうする!
そんでコメントの内容は単純にキショい!」
「酷い!?」
「あんみつは筋は良いが攻めっ気が強すぎる!攻めた後を考えろ!金の使い道も考えろ!」
「くぅっ耳が痛い……!」
「逆関!お前はステップ踏みすぎだ!別ゲーの
SETSUNAは生身だぞ
「公開処刑だこれ。でもコーチングはマジだ」
『……これ、むしろご褒美では?』
『プロの指導になっちゃってて草』
『まーでも、これ目的でライン越えのコメントしないようにしてくださいね~』
『ジュンヨウその辺シビアだから、次はレッドカード一発退場でしょ』
当たり前だろ。
「オメーら全員イエローカード、次やらかしたら出禁だからな!!」
「「「ありがとうございましたっ!」」」
K.O.した三人に最後通牒を叩きつけると、全員が腰を直角に折り曲げ、頭を下げて退出していった。
……あれ、白玉のアカウント名が変わった。
『白玉あんみつ かぐや ジュンヨウ二推し』……えぇ?
何故に???
「隼斗おっつかれ~☆」
「オメー反省しろよちょっとは」
「にへへ。でもぉまだまだ対戦希望のリスナーいるから、頑張って☆」
「ったく。……おかしいな、待機人数増えてね?」
「かぐやへの求婚者以外に、ジュンヨウへの挑戦者も増えたみたいよ」
「うへ……今日中に寝れんのか、これ」
「私は明日も朝から予定があるから、先に寝るからね」
「明日はバイトじゃねえだろ……」
「勉強も予定!」
数十分後。
「オラ次だ」
「お願いします!」
「来い」
KASSENのステージへ転送。
カウント開始。
開幕。
「次」
また転送。
カウント開始。
開幕。
その頃には、もう配信の空気は完全に変わっていた。
最初は、
「かぐやと結婚したい」
だの、
「いろPをください」
だの、
そんなコメントで溢れていたチャット欄も、今では。
「どうでもよくなってきたとはなんだ!?」
「うわぁ、なんかもう趣旨変わっちゃってるねぇ」
「半分くらいジュンヨウへの挑戦者じゃん、これ……」
呆れたように酒寄が零す。
かぐやはというと。
「隼斗つよ~い♪」
「はいはい」
「楽しそうじゃ~ん♪」
「別に」
「ウソだぁ。ちょっとテンション上がってるもん」
「……るっせぇ」
否定はできなかった。
次の対戦者が転送される。
気付けば時刻は深夜三時を回っていた。
明日、どころか今朝も早いいろPは既にログアウト済み。
「……っあー、もう無理。ここまで。頭ぁ痛ぇわ」
「おつかれぇ、最強の保護者♪」
「だぁから保護者じゃ――」
反射的に返しかけて、途中で止まる。
視界の端に流れる文字。
コメント欄が笑いで埋まっていた。
『あ、ようやく終わりですかぁ……』
『7時間ぶっ続けとは……』
「……寝るぞ、もう」
深々と溜息を吐きながら、眼帯を付け直した。
その横で、悪びれもせず笑うかぐや。
「守ってくれてありがとね、隼斗♪」
「……いろPにも言っとけよ、それ」
あと、名前で呼ぶなって。
tdzさん、ROSOさん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
【更新頻度についてアンケート】読んでいただきありがとうございます。現在は 0:00 / 8:00 / 12:00 / 16:00 / 20:00 の1日5話更新を行っています。今後の更新ペースの参考にしたいため、よろしければ投票いただければと思います。
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② 1日5話一括更新(5話分まとめて更新)
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③ 1日の更新話数減、時間分散更新
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④ 1日の更新話数減一括更新