そんな騒がしい配信活動を続けているうちに、かぐやいろPチャンネルはぐんぐんとヤチヨカップの暫定順位を上げていった。
……その流れで、JunY0uチャンネルまで数字が伸びていた。
街中ではかぐやのアバターぬいをカバンにつけた高校生をちらほら見かけるようになった。
SNSにはかぐやのオリ曲『私は、わたしのことが好き』に合わせて踊るショート動画までアップされ始めていた。
それを映したスマホを、かぐやが俺と酒寄に突きつけてくる。
ここまで来ると、もう小遣い稼ぎって額じゃない。
かぐやはふじゅ~の振り込まれるウォレットを見て「うひひひひひ」と怪しい笑いを浮かべている。
俗すぎねえかこのかぐや姫。
「言っとくけど、こんなのは所詮あぶく銭。水物なんだよ?」
酒寄が椅子に座り、右腕を背もたれに預けて呆れながらかぐやに説教する。
というか、さっきから説教に力がこもっていない。
ついこの前の長時間配信の疲れが抜けていないのか、それともこの尋常じゃない室温のせいか。
おいアチぃと思ったらまたエアコン切ってんじゃねえか、死ぬぞマジ。
だがこの悪童はどこ吹く風で、額に上げていた妙な形のサングラスを掛けながら。
「でも合法でございましょ~?」
などと抜かしおる。
そのサングラスなに?
アラレちゃんのうんこみてぇな形しやがって。
どこで売ってんだそんなモン。
間違いではないため反論は出来ず、それはそれとしてムカつくのか拳を握る酒寄。
「せ、せめて部屋は片づけてよ!高羽の部屋にまでガラクタ置いて」
「え~、無理だよー。この部屋狭すぎるもん。そうだ、引っ越そうよ!
良いとこ見つけたんだ~♪」
「ああ、良いんじゃねえの。二人だと手狭すぎるだろこのアパート」
収入的にはもう心配ねえし、セキュリティ的には心配が過ぎるし。
……引っ越し、ね。
不覚にも「…………寂しくなるな」なんて、柄にもない感傷が頭をよぎった、その時だ。
「ねぇ~ちゃんとバイク置けるとこ探したんだ~。隼斗はどう思う?」
「は?」
「え?」
なんでバイク置き場あるとこ探してんだ、コイツ?
「いや、お前らだけだろ、引っ越すの」
「え~~~~!?!?!?!一緒に行こうよぉ!!!!
一緒いたほうが楽しいじゃん!!!!」
「声デッッッカ」
「なんでぇ!?彩葉と隼斗のいるところがかぐやの帰るとこって前言ったじゃん!」
「高校生の家族でもねえ男女が普通一緒には住まねえの」
「家族じゃん!」
「マジで言ってるの、それ……」
酒寄が頭に手を当てながら、呆れたように言う。
その顔色は普段より冴えないが、気ぃ張ってんだろ、くらいにしか思ってなかった。
「大マジだよ!あ、でもその前に時間だよ、彩葉!」
「ああ……はいはい」
「頑張れよ~」
「他人事だと思って……」
「まずは大掃除!おりゃあああ!」
ガラクタを両腕でまとめて壁際へ押し込み始める。
何とか二人分のスペースを確保して、俺と酒寄に向かってピースサイン。
それ掃除じゃねえからな、押しのけてるだけで。
ガラクタを隅に押し込み終えるや否や、かぐやは平然とその場で動きやすい服に着替え始め――って。
「馬鹿野郎俺がまだいるだろうが!」
「高羽早く戻って!かぐやあんたは説教!」
「なぁんでぇ~」
今日はかぐやの初ソロライブ。
いつもの歌枠配信や路上ライブではなく、ツクヨミ内のライブハウスを予約して、宣伝を打って、
スタッフを雇い、観客を入れて行う正真正銘の音楽イベント。
伴奏はかぐやたっての希望で、いろPが担当。
着ぐるみは着たまま、しっかりとギャラも払うということで何とか話がまとまった。
自室に戻って、スマコンを装着。
ツクヨミにログインしてライブハウスに向かう階段で二人と合流。
かぐやはいつも通り。
酒寄は着ぐるみの頭を小脇に抱えて、難しい顔をしている。
「……本当に私も行くの?」
今更過ぎんだろ、腹括れ。
「にひっ、来て!い・ろ・は!」
と、じゃんけんのチョキを突き出した。
おずおずと酒寄も同じようにチョキを突き出して、指をくっつけてから挟みあう。
それから、お互いキツネのハンドサインをくっつける。
「かぐやと彩葉の合図。仲良しのヤツ♡」
「なにそれ」
と、言いつつも少し緊張がほぐれたようで、眉間のしわが取れた酒寄。
微笑ましいもんだ、と見ているとかぐやはなにを勘違いしたのか。
「隼斗!隼斗も!」
「あ?俺も?チョキか?」
「あれはかぐやと彩葉のヤツだから、隼斗はパー!手出して!」
「パー?」
手を開いたまま、差し出す。
そこに、かぐやがパァン!と手のひらを叩いた。
触覚は未実装のはずなのに、勢いが凄まじくて痛みを感じたような気がする。
「おっま」
「次、隼斗ね!」
「あ?……こうか」
入れ替わり、かぐやが手を差し出す。
それを上から、良い音が鳴るようにパァン!と叩いてやる。
「そんで、最後!上!」
「ハイタッチね、ほれ」
手を叩く音が三度、階段に響いた。
それを見ていた酒寄が、おずおずと。
「……高羽、私も」
「オメーもかよ、そんなキャラだっけか?」
「いいから、グー出して」
「はいはい」
拳を酒寄に向けて突き出すと、酒寄も拳を突き出した。
コツン、と控えめなグータッチ。
「ま、気軽にやって来いよ。楽しむのが一番だぞ」
「ん」
「隼斗もステージ上がって欲しかったんだけどな~」
苦笑いで応える。
「オメーの初ライブだろ、チャンネルに名前のねえ俺が上がれるステージじゃねえよ」
「でも~」
「良いから行くぞ、リハとかあんだろ」
わちゃわちゃと階段を上がる三人の背中を、ツクヨミのミラーボールが照らしていた。
言うまでもないが。
かぐや初のソロライブは、大盛況のうちに幕を閉じた。
あの日のコメント欄の熱狂は、今でも脳裏に焼き付いている。
それが先日のこと。
各種SNSには数日経った今でも、熱狂冷めやらぬといった感じで反響が止まない。
とうとう、かぐやいろPチャンネルはJunY0uチャンネルのランキングを追い抜いた。
あんときのかぐやの煽り顔は忘れらんねぇ。
とはいえ、あくまでそれは『ヤチヨカップ』での話。
チャンネル自体の規模としてはまだウチの方が上だ。
コラボしてたおかげで、ウチにも多少は客が流れてきてる。
……ま、それもそのうち抜かれるだろうな。
今は昼の料理配信。
フライパンの上で油が弾ける音を聞きながら、コメント欄の流れを眺める。
「チャーハン。男の一人暮らしの味方。米と卵ありゃ出来んの楽だよな」
適当に返しながらフライパンを振っていると、テーブルの端でスマホが震えた。
画面に表示された名前は『かぐや』。
「……あ?」
配信中に電話なんて珍しい。
嫌な予感がした。
通話を取った瞬間、耳に飛び込んできたのは。
いつも聞いている声の、聞いたことのない声色だった。
『隼斗!?』
掠れてる。
息が上ずってる。
『彩葉が、彩葉が!』
フライパンを振る手が止まった。
コンロの火を止める。
配信を蓋絵にして、マイクをミュートする。
「落ち着け。酒寄がどうしたって?」
『彩葉が急に蹲っちゃって、身体アツアツで』
「意識はあんのか?顔色は?」
『今はある!でも苦しそうで、顔も真っ赤で、めまいするって!』
「場所は?」
『駅前の不動産屋さんの前!』
アプリを操作して、すぐさまタクシーを手配する。
一瞬救急車を呼ぶことも考えた、だがアイツは絶対病院に行くことを嫌がる。
俺のバイクじゃ、体調不良者を運ぶのは難しい。
『ねえ、どうしよ。かぐやどうしたらいい!?』
「良いか、今タクシー呼んだ。駅前だからすぐ来る。
たぶん熱中症だから、来るまでその不動産屋で休ませてもらえ」
『分かった、ねえ他はどうしたらいい?』
「自販機でスポーツドリンク3本くらい買ってこい。
脇の下に挟んでやって身体を冷やすんだ。飲めるようだったら飲ませてやれ」
『ねえ、隼斗。彩葉、大丈夫だよね?死んじゃったりしないよね?』
「大丈夫だ、とりあえずアパートの前で待ってるぞ」
『うん……』
通話を切る。
なにが、大丈夫だ。
まだ受け答えは出来てる。
……でも、あの酒寄がまともに立てなくなってる。
分かってたはずだ。
気が付いていたはずだ。
付けてないエアコン。
顔色の悪さ。
力のない説教。
ライブ前の、弱気な雰囲気。
緊張しているのだと思った。
慣れないステージに立つ前で、気が小さくなっているのだと。
──楽しかったから、それから目を背けた
──雰囲気を壊すのが、怖くて
──無理にでも休ませておけば
「わりぃ、ちょっと事情で今日の配信はここまで。今日も暑いからお前らちゃんと休めよ」
「ありがとよ、いつも助かってるぜ」
─ありがとうございますありがとうございます 50000ふじゅ~ 白玉あんみつ かぐや ジュンヨウ二推し
配信を閉じて、スマホのアプリを起動する。
二人を乗せたタクシーはもうすぐそこまで来ていた。
「隼斗!隼斗ぉ!」
タクシーのドアが開くと同時に、泣きじゃくるかぐやが飛び出してきた。
「おう、良く出来たな。すいません、あとはこっちで」
「お手伝いしなくて大丈夫ですか?随分体調が優れないようですが……」
「はい、大丈夫です。……よっ、と。支払いはアプリから済ませてあるので」
「ええ、いただいております。それでは、失礼します。……お大事に」
タクシーの運転手に一言添えて、酒寄を横抱きに抱える。
抱き上げた瞬間、服越しでも熱が分かった。
「……っといて、……ぃき、……りで」
「黙って助けられとけ」
意識があるのか、うわごとなのか。
いつになく弱々しい酒寄の言葉を切り捨てる。
走り去る車の音を背中に受けながら、階段を上った。
「かぐや、鍵開けてくれ」
「う、うん!」
かぐやが震える手でカバンを探って、鍵を開けた。
いつか渡したウサギのキーホルダーが、状況に似合わずちゃり、と鳴る。
ドアを開けると、閉め切られていた部屋の熱気がむわっと頬を撫でた。
無言でリモコンを手に取り、エアコンをつける。
「物片づけて、布団広げてくれ」
「わかった!」
かぐやが広げた布団に、酒寄を寝かせる。
さて、とりあえず。
「俺は色々買い出しに行ってくる。かぐや、酒寄の面倒見ててくれるか?」
「なにしてれば良い!?」
「まず、とにかく身体冷やしてやってくれ、シャワーでも良い。
着替えも頼む。多分一人じゃ無理だし、俺がやるワケにもいかねえ」
あとは、と壁に目を向ける。
びっしり書き込まれたスケジュール。
今日はもともと一日休養日。
バイトは無かったはずだが『バイト』と、書き込まれていた。
「バイト先へ休みの連絡。体調不良なので休ませます、ってな。
その後は寝かせといてやれ。吐くかもしれねえから、顔は横向きで。
汗掻いてたら拭いてやってくれ」
「わかった……。ねえ、隼斗。彩葉、大丈夫だよね?」
「ああ、大丈夫だ。口答えする元気はあるみてえだしな」
頼んだぞ、とかぐやの頭を撫でてやって退室する。
自分の部屋に戻って着替え、メットを持って部屋を出る。
バイクのエンジンをかけながらも、頭の中は後悔で埋め尽くされていた。
もし、本当にあいつらと一緒に暮らしてたら。
かぐやの言うように、一緒に引っ越せば。
酒寄の異変にも、もっと早く気付けていたんだろうか。
今度こそ、ちゃんと止められるだろうか。
「やばい、バイト……」
「彩葉、しんどい?」
「……平気、すぐ出るから」
ドアを開けた瞬間、酒寄の焦った声が耳に入った。
意識の戻った酒寄が、スマホで時間を確認して無理に体を起こそうとする。
勿論、その体調でそんな無理が効くはずも無く、ふらっと布団に倒れこんだ。
かろうじて腕で身体を支えているものの、その腕すら小刻みに震えていて、自分の体重を支えきれていない。
そんなヤツがバイトに行ったところで、まともに動けるワケねえ。
「馬鹿野郎が、そんな身体でバイト行ってどうすんだ」
「高羽……」
「あっ、ねえ彩葉。バイト休む連絡入れといたから!……彩葉ぁ、もう休んでぇ~」
「……えっ……」
料理中だったのか、エプロン姿で涙ながらに訴えるかぐや。
いつもの媚びじゃない、本気の懇願。
酒寄がスマホを確認する。
目を丸くしているところを見ると、かぐやはキチンと連絡を入れてくれたようだ。
「ありがとう、かぐや……」
「あっそうだ、病院!病院行こ!」
指を鳴らして、「これだ!」みたいな顔をするかぐや。
が、酒寄は顔を逸らして。
「……お金かかるから、ヤダ」
と、きた。
「そんなもん、かぐやに任しとき!」
おたまを握った右手に力こぶを作ってみせるかぐや。
「でも……」
床に目を伏せて、酒寄は続ける。
「全部ギリギリで予定組んでるから、何日も休んだら……っ、もう、追いつけないよ……」
髪をかき上げて、頭に手をやりながら。
「そしたら、奨学金も……出ないかも……」
「そう考えてると思ったぜ、ったく」
どうせ身体が弱っているせいで、考えが全部悪い方に向いてんだろ。
だが、初めて聞いたコイツの本気の弱音だった。
どさっと、ドラッグストアのビニール袋を床に置く。
経口補水液、スポーツドリンク、ゼリー飲料。
新品のタオルに冷却シートに氷、ヘアゴム。
ついでに、クラッシュアイスが入っているパウチのバニラアイス。
「状況からしてどう考えても熱中症だ。身体冷やして休んでろ」
「……ごめん、高羽。お金は、あとで……」
「いらねえよ。代わりにエアコン欠かすな」
ぶっきらぼうに言い捨てて、氷とアイスを冷凍庫にしまう。
だが酒寄はそれでもなお、唇を噛み締めていた。
「……でも、ダメだよ。私がちゃんと、一人でどうにかしないと……っ」
酒寄は、申し訳なさそうに視線を落としたまま黙り込む。
部屋にはエアコンの風の音だけが流れていた。
その沈黙を破ったのは、かぐやだった。
「なんで彩葉は、そんなに一人で頑張らないといけないの?」
最初、かぐやの声だとわからなかった。
初めて聞くような、弱々しい声だった。
「うっ、うっ、ひっ……私も、めっちゃムリ言っちゃったし……
彩葉、死んじゃったらいやぁだぁ~!!」
涙も鼻水もぐちゃぐちゃにしながら。
目が零れるんじゃないかと思うくらいの大号泣。
「お、大袈裟な……死にゃしないよ」
「だって映画とかだと人間ってすぐ!死ぬ!じゃぁん!
わ~ぁあ~あ~ぁあぁ~!!!」
「大袈裟なもんかよ、マジで危なかったんだからな」
ちょっと遅れたらどうなってたことやら。
泣きながら腕を脚を振り回す大暴れ。
感情豊かなかぐやだが、ここまで泣いたのは記憶にない。
なぜか病人の酒寄がかぐやの背中を摩っているのを見ながら、そんなことを思っていた。
『なんで彩葉は、そんなに一人で頑張らないといけないの?』
泣き止んだかぐやは、改めて酒寄にそう尋ねた。
う~ん、う~~~ん、と頭を悩ませる酒寄と、なにかを言おうとしては黙り込むかぐや。
俺は最初から、なにも聞かず。
ただ黙って酒寄が口を開くのを待っていた。
酒寄はしばらく俯いたまま黙っていた。
胸元に抱えたぬいぐるみを、きゅっと抱きしめる。
やがて、絞り出すみたいに口を開いた。
幼いころ、父親と曲を作ったことが楽しかったこと。
母親はそれを聞きながら、穏やかに本を読んでいたこと。
優しかった父が亡くなり、厳しかった母がさらに厳しくなったこと。
母からの防波堤となり、慕っていた兄が家を出て行ってしまったこと。
母親の放つ正論に潰されそうになってしまった彩葉自身のこと。
母は、自分が同じ歳の頃には一人で出来てたって、何度も言っていたこと。
そんな母と同じように出来れば、ちゃんと認めてもらえる気がしてたこと。
「それで、私が一人で学費も生活費も賄うなら、ってやっと折り合いついたんだよね」
「……えらい簡単に言ってるけど、みんなそんなことしてなくない?隼斗だって……」
酒寄の隣で話を聞いていたかぐやは眉を顰める。
かぐやの抱えたぬいぐるみに力が入っている。
「……俺は学費は出してもらってるし、家賃と食費分は仕送り貰ってるからな。
もう手ぇ付けてねえけど」
「お母さんはそのくらいのこと平気でやってたし、私も譲らなかったし」
何かを思い出すように、窓を見る酒寄。
「最初にここで目ぇ覚ました時のこと、よく覚えてる。
なんにもないし、誰にも頼れないけど……自分の力で生きるんだって思ったら、
めっちゃ力湧いてきた。なんか、ラッキー……みたいな?」
「いやいやいやラッキーじゃないっつーの!
宇宙人調べでもそのお母さん激ヤバおかしいって!!」
おかしーぃ!おかしいおかしいおかしーい!と騒ぎ立てるかぐや。
「……なんか事情があるのは分かってたし、納得はともかくある程度理解はした。
他所様の家庭事情だからあんま首突っ込む気もねえし、無責任なことも言えねえけどよ」
一度言葉を切って、酒寄に目を合わせる。
「同じことなぞろうとすんのは無理だろ。母娘だろうと土台、別人だろうが。
母親が出来たからって、娘が同じこと出来るとは限らねえだろ」
特にエアコンやら、生活費やら。
気温も物価も、その頃とは様変わりしている。
酒寄は、目を伏せた。
目を伏せて、ぬいぐるみに爪を立てて。
「かぐやと、高羽には…………」
そこまで言って、止まる。
珍しく、言葉に詰まっている。
言葉を探してるってよりは。
飲み込んでる、みたいな間だった。
ああ?とかぐやが口を開けて、酒寄の言葉を待っている。
「はぁ~……いや、なんでこんな話してんだろ」
キッチンで鍋の吹きこぼれる音。
そういえばかぐやは料理中だった。
ヤバー!と急いで立ち上がり、火を止めに行くかぐや。
パタパタとあわただしく動くかぐやを見ているうちに、さっきまでの重たい空気が少しだけ薄れていった。
「……ま、とりあえず飯食って寝て、最短で体調戻せ」
「高羽……」
「予定崩れんの嫌なんだろ?」
「今日のメニューはネギ味噌ショウガと卵おじや!アツアツだからフーフーして食べてね!」
トレイに乗せられたどんぶりのおじやと、汁椀のネギ味噌ショウガ。
すこしトレイに零れているのは、まあ良いだろ。
酒寄はネギ味噌ショウガのお椀を口に運ぶと「あちっ」と一度舌を引っ込めた。
今度は息を吹きかけて冷ましながら慎重に口に運ぶと、その表情がほっ、と綻んだ。
「……ちょーうまい」
それを受けたかぐやの反応はというと。
満面の笑みでくるっと回り、腕を交差してピースサイン。
渾身のどや顔だった。
「あと暫くエナドリ禁止だ。
夜勉強ん時にあんなん飲んでっから睡眠の質が悪くなって体力落ちてんだ」
「えっ、ちょっ」
「かぐや、冷蔵庫GO」
「あいさ~!」
燈耶さん、評価いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
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