① SETSUNAリスナー参加型対戦・レビュー配信
「よー、ジュンヨウだ。今日は参加型SETSUNA。
初心者から上級者まで歓迎。ライン越えた煽り・中傷は俺が直々に斬るんでよろしく」
画面端の観戦席ウィンドウに、かぐやと、そしてもう一つ。
見慣れないアバターが並んで表示される。
「かぐやっほ~♪月からやってきたかぐやだよ~。今日は特等席でお師匠の応援にきましたー!」
「い、いろっぴぃ~……。いろPでーす……」
「誰が保護者会だ。ほら、さっさと始めんぞ。初心者から来い」
転送されたのは、夜の川上ステージ。
崩れかけた橋と篝火。
対面の初心者が突っ込んでくる。
流れるような槍の軌道を、俺は刀の腹で受け流す。
「──ほら、かぐや。今の突き、お前ならどう受ける?」
「えっ!?いきなり振るの!?えっ、えっと、横にローリング!」
「それだと次の薙ぎ払いからハメ殺される。
相手の軸足を見ろ、右に逃げる準備してんだろ。
ここは一歩前に出て懐に入るんだよ。……いろPならどうする?」
「えっ、わ、わたし!?えっと……わたしなら、ワイヤー置いて突進狩るかな」
「いろP容赦なっ」
「……お前とやるときはそれ注意しとくわ」
相手のHPを削り切り、K.O.
「いろPにはコーチングいらねえけどな。こいつKASSENで小遣い稼げるレベルだぞ」
昔なら淡々と弱点を指摘して終わっていたはずが、今や画面外の二人のリアクションを拾いながら、半分は指導のような形になっている。我ながら、随分と甘くなったものだと思う。
② ジュンヨウ・かぐや・いろP 桃鉄三年決戦配信
「よー、ジュンヨウだ。というわけで今日は三人で桃鉄やっていきまーす」
「かぐやっほー!かぐやだよー!ジュンヨウに勝つにはアクションは無理!運ゲーしかねえ!」
「いろっぴぃ~……いろPでーす……。短時間で終わるならと遊びに来ました~……」
「なにぃ!?なんか言いたいことある!?」
かぐやがコメントに抗議する。
「……だってかぐや、絶対キングボンビー擦り付けに来るでしょ」
「勝負なんだから当たり前じゃん!」
「ほら」
「まだ何もしてないのに!?」
「まあそういうゲームではあるわな。とりあえず始めるぞ~。三年決戦な」
そうして始まった、三年決戦。
最初の目的地は───
「『広島』!……って、どこ?」
「中国地方、日本列島の左端に近いところだな。マップ開いてみ」
「ヴェッ、遠っ!?」
「ま~最初だしどうしようもねえな。ふつーにサイコロ振るか、
急行周遊使ってサイコロ二個振るかだろ」
「……かぐや、ぶっとびカード使ってもいいのよ」
「へ?何それ」
「いや博打すぎんだろ。しかも9割負けるやつ」
「ねーねー、ぶっとびって何?」
「あー……全国の物件駅に飛べんだよ。ランダムで」
「へー……」
「一番かぐや!ぶっとびまーす!」
「やると思った」
「オメー悪魔か」
赤い機関車から変貌した、ヘリコプター。
反時計回りに回転しながら進路を取り──
「「あっ」」
「上いったー!?!?!!?」
「彩葉ぁ!!!」
「使ったのはあんた。私は責任持ちません。あと名前呼ぶな」
「悪魔かオメー。……俺は堅実に急行周遊で」
カードを使い、サイコロを二個振る。
出た目は「5」と「6」で合わせて「11」。
「うわ~ずっる~ぃ」
「ズルくねえだろ。運だぞこんなもん」
「とはいえ目的地まで……53マス。道はまだまだ半ばだね」
「…………」
進んだ先は千葉県の房総半島、止まった駅はNの文字がある黄色いマス。
「あんたガチすぎんでしょ」
「かぐやがあんだけ遠くにいるからな、ボンビー付けられるリスクは低い」
「んぎぎぎぎぎ」
「俺は集められるだけカードを集めてやる。デュエルしようぜ、カードは拾う」
「はよスロット止めなさいよ」
「言われんでも」
出たカードは「新幹線カード」。
悪くないが、取り立てて良いカードでもない。
「悪くはねえな」
「クソ、デビル引けばいいのに……」
「怨嗟の声がすごい、オメーの番だぞ」
「分かってるわよ」
いろPもまた急行周遊カードを使い、サイコロを二個振った。
出た目は「3」と「4」で合わせて「7」。
ギリギリ房総半島には届かない目だ。
「ちっ」
「舌打ちすんなよ」
「……なら仕方ない、普通に進むか」
広島への最短距離を進むいろPの黄色い機関車。
止まった物件駅で幾つか物件を購入して、1ターン目が終わった。
「うおおおおかぐやだけなんか遠い!」
「頑張れよ、ヘリポート止まれればワンチャンあるぞ」
「ちまちま進んでくか……」
その後は
「そろそろ房総半島出なさいよ、良いカードいっぱい出たでしょ」
「いや、まだだ。まだ舞える……!」
「そろそろ揺り戻し来るでしょ」
「はやとずるぅ~いぃ」
「「あっ」」
「……?どったの?わっ、なんかコバエみたいの出てきた」
「……リトルデビル引いた……」
「せっかくならキングデビル引きなさいよ」
「うわっ、三年決戦だから額がデケエ!」
「ほ~ら、そろそろ巣立ちしたほうが良いんじゃないの~?」
「くそっ、その煽りムカつくな……」
「あっ、ヘリポート行ける!」
「おっ、良かったな」
「これ行先見れないの?」
「止まんないとね」
「行くしかないか~」
「うおおおお!広島まで10マス!」
「ヤベヤベヤベヤベ」
「巣立ちの時間ですよ~~~?」
「うっざマジ」
「待って待って待って!」
「どしたの彩葉?」
「なんで私にボンビー付いてるのよ!ジュンヨウに付く流れだったでしょ!」
「俺がのぞみカードで爆速で巣立ちしたからな。いまどんな気持ち?」
「くっ、煽りが返ってきた……!」
「んでもかぐやが一位だもんね~」
「すぐ逆転してやるわよ!」
「よし、次でスペシャル使って目的地行ける」
「お、隼斗一位見えてきた?」
「見えてきた」
「それは困るなぁ」
「嫌な予感しかしねえ」
「にひひ」
「……なんだその笑い」
「隼斗、かぐやの持ってるカード忘れたぁ~?」
「……待て待て待て、いろPにキングボンビー付いてんだぞ、その状況で使ったらお前まで」
「次ターンサミットカード予告しま~す!!」
「私はすっごい助かる!」
「
「楽しかった~!」
「戦略を悉く豪運で潰されたんだが」
「私は最後に買えたこのパンケーキ屋と生きていく……」
③ マシュマロ・コメント雑談配信
「よー、ジュンヨウだ。今日は雑談。ゲームなし。マシュマロ消化しながらダラダラ喋る」
「……いろっぴぃ~……。今日は裏方じゃなくて、ちゃんと表に出てきました……」
「なんでお前ら、こいつ出るだけで浄化されてんの?」
「刺激物ってなんだよ。人を香辛料みたいに言いやがって。……んじゃ、一通目」
カチ、とマウスを鳴らしてマシュマロを開く。
『ジュンヨウさんは料理も掃除も出来て、しゃべりも上手くて、バイクの免許持ってて、
気遣いも出来て、ゲームも強いのにどうして彼女がいないんですか?』
数秒の沈黙。
「知らねぇよ」
「……普通にモテるのにね。
顔は良いし、身長高いし、勉強も出来るし、腹筋割れてるし……
配信者やってるからか、しゃべりも面白いし。……でも彼女いないんだ。……ふぅん」
「いろPまでなんなん?そっくりそのままお返ししますけど???勉強はお前の方が上だろうが」
「えっ……いや、だって普通に……」
「やめろ。真顔で言われるとダメージ入る」
「照れてねぇ」
「あーうるせえうるせえ。そもそも彼女作ろうと思ってねえ」
「えっ」
「配信者の身ぃだかんな、下手な炎上リスク負えねえわ」
「……そ、そうなんだ」
「あと、他人の人生背負えるほど自分の事を信用できてねんだわ。
進学先もまだ決めてねぇんだぞ俺ァ」
「ゴールは最終的にそこになんだろ」
次のマシュマロ。
『いろPさんに質問です。ジュンヨウさんってリアルでもあんな感じなんですか?』
「あんな感じってなんだ」
「……えっと、リアルでもわりとそのままかな。優しいし……」
「おい」
「でも、口が悪い」
「おい」
「あと、なんか、すぐご飯作ろうとする」
「オメーが目を離したら飯抜こうとするからだろ」
「だから誰がおとーさんだ」
『ジュンヨウさん、同居始めてから明らかに声が柔らかくなりましたよね?』
「気のせい。それはマジで気のせい」
「……前より、笑う回数は増えた気がするけどね」
「今日なんなん?俺のブランディング壊しに来てる???」
「えっ……だって本当に……」
「……」
「ほら、前は皮肉気な笑いはしてたけど、口開けて笑うことは少なかったかなって」
コメント欄が一気に加速する。
「はい次」
『ジュンヨウさんは、同居人の中で誰が一番手がかかりますか?』
「あー……」
「…………」
「…………うーん」
珍しく、ジュンヨウが真面目に悩む。
「かぐやはうるせぇけど放っといても生きてる。飯も自分で作るし」
「いろPは放っとくとエナドリで生活し始めるから危ない。睡眠もメシも削るし」
「それで、結局誰なの?」
「……いろP?」
「えっ!?」
「お前、集中すると飯食わなくなるだろ。あと寝ない。
バイトも入れすぎだろ。シフト入ってねえ日も後輩の代わりに出ようとするし」
「うっ……」
「だからたまに生存確認しないと不安になる」
「……っ」
数秒、コメント欄が止まる。
「いや、別に深い意味じゃねぇぞ?」
「フォローが下手」
「うるせぇ」
その時。
ガチャ
配信マイクが、小さく拾う。
「隼斗ぉ~、冷蔵庫のプリン食べていいー?」
「あ?」
「あっ」
コメント欄、爆速。
「それ俺があとで食う予定だったやつ」
「えぇ~ケチ~」
「人が作ったプリン勝手に狙うな。てかオメーもう食ったろ」
「半分こ!」
「嫌です」
「……ってことで、今日はこの辺で終わりな」
「終わり方ざつー!」
「プリン防衛戦が始まるから忙しいんだよ」
「じゃあなお前ら、夜更かしすんなよ。お疲れ」
「いろっぴぃでした~……」
「かぐやはプリン食べまーす!」
「食うなっつってんだろ!また作ってやっから食うな!」
配信終了画面へ切り替わる直前まで、
マイク越しに騒がしい声が響いていた。
④ 雑料理配信
「よー、ジュンヨウだ。今日は雑料理配信。冷蔵庫の余りモン全部ぶち込んで、なんか作る」
「今日のテーマは『賞味期限が近いヤツ救済キャンペーン』な。
もやし、卵、豆腐、あと昨日の余りの焼肉のタレと半端に余った豚小間」
「万能だからって全部焼肉味にする奴、料理ヘタ説あるけどな」
「まずフライパンにごま油。んで、あったまったら豚小間を雑に投入。
固まってても気にすんな。フライパンの上で広げりゃいい」
ジュワァァァ……
「料理ってな、結局『火力』と『勢い』なんだよ」
「空腹って最高の調味料なんだよな」
「ほんでもやし。食感残したいときはもうちょい後だけど今回はそんなん知らんので」
「過激派いんなぁ。気持ちは分かるけどさ。
麺食いたいときにもやし入ってくると『お前じゃない』ってならねえ?」
「次、豆腐を手でちぎって入れる」
「深夜に洗い物増えると人類のやる気って死ぬから」
「んで、卵を三つ……」
コンコン、パカ
「……あっ」
「殻入った」
「俺をなんだと思ってんだ、人間だぞ。……菜箸でいけるか」
そこへ。
ガチャ
「隼斗ぉ~!」
「なんだようるせぇな、今配信中」
「配信終わってお腹すいた!」
「見りゃわかる。だから作ってんだろ」
「かぐやもやるー!」
「やらせた瞬間キッチン爆発する未来しか見えん」
「だいじょぶだもん!かぐや、料理できるし!」
「配信中のお前の信用がない」
「酷くなぁい!?」
「……じゃあ、混ぜるだけな」
「わーい!」
カシャカシャカシャ!!!!
「勢いが強ぇ!!」
「隼斗見て!いい感じ!」
「お前それ『混ぜる』じゃなくて『殴る』なんよ」
「んで、最後に焼肉のタレを適当に……」
ドバッ
「あっ」
「色がもう終末なんだけど」
「えへへ」
「笑って誤魔化すな共犯者」
「……まあいいや。こういうのはな、『失敗したと思ってからが本番』だから」
「あと『砂糖は思てる倍、コショウは三倍いれろ』って言う先人の知恵がな」
数分後。
「……できた」
「『焼肉タレ雑炒め丼』です」
「ネーミング終わってる!」
「事実しか言ってねぇだろ。
……あ、冷凍のネギ散らすか。アーカイブで見られたらうるせえのいるし」
「いただきまーす!」
「熱いから気ぃつけ……」
「あっつ!!!!」
「だから言ったろうが!」
「でもおいしい~!!」
「……ならよかったよ」
コメント欄が少し静かになる。
「誰が保護者だ。……ほら、お前らもちゃんと飯食えよ。以上、雑料理配信でした」
「かぐやでしたー!」
「フライパン洗っとけよ」
「えぇ~!?」
配信終了直前まで、
二人の騒がしい声と笑い声がマイクに乗り続けていた。
蠱毒は孤独さん、匿名希望sさん、評価いただきありがとうございます。
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とても励みになります。
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