ツクヨミからログアウトし、マンションを後にする。
一度自宅へ戻った後、俺と彩葉はバイクで送電塔へ向かっていた。
「しっかりグリップ掴まってろよ。不安なら腰に手ェ回せ。そっちのが安心するだろ」
「うん、大丈夫」
公園に併設された送電塔は、当然ながら柵で囲われており、部外者が立ち入れるはずもない。
スマコンのARモードを起動し、タンデムシートのキーロックを外し収納部を開ける。
するとそこから白いモフモフがぽんっと飛び出してきた。
「あー窮屈だった!」
「サイドバッグなんか取り付けてなくてよ、悪ィな」
「ご、ごめんねFUSHI。私が一緒に行きたいって我儘言わなければ」
「腕輪が要るんだから彩葉も必要だろ!」
それに、二人と一緒にいれてボクも嬉しいんだ。
と、小さくそっぽを向きながら言うFUSHI。
なんだコイツあざといな。
公園脇の道路にバイクを停め、駐禁を取られないように俺は待機する。
彩葉はFUSHIを連れて送電塔へ向かった。
遠目に様子を眺めていると、FUSHIが彩葉の肩から飛び出し、柵の中へ入っていくのが見えた。
数分経って、しょぼしょぼした様子のFUSHIが彩葉の肩に戻った。
向かった時に比べて明らかに勢いが弱い。
俺が戻ってきた彩葉の目を見ると、彩葉はふるふると首を横に振った。
「ハズレか。ま、こっちじゃねえんじゃねえかな~とは思ってたとこだ」
「なんだって?」
「ヤチヨは『かぐやの身体を付与出来てた』っつってたからな。ならまあ、かぐやを拾ったっつう電柱の方だろな、と」
「言ってくれれば良かったのに」
「答え合わせは後の方が面白ぇだろ」
言いながら彩葉にヘルメットを放り投げる。
FUSHIをシート下の収納に押し込み、ARモードを終了。
放られたヘルメットをキャッチしながら、彩葉は拗ねたように唇を尖らせた。
「ほら、行こうぜ」
「……変なとこ子供っぽいんだから」
「男ってのはそういうモンらしいぜ」
ヘルメットを被り、あご紐をきちんと締めた彩葉。
タンデムシートに跨り、腰に手を回したことを確認すると、俺はアクセルを捻った。
十数分街中を走らせ、旧居のアパートへと向かう道中。
運転中の俺には直接見えなかった。
けど、腰に回された腕に力が入ったことで察した。
間違いない。
『もと光る竹』は、この先にある。
予感は、外れていなかった。
到着してすぐARモードを起動し、FUSHIを解放すると開口一番。
「……ある、そこに『ある』ぞ」
電柱にFUSHIが近づくと、途端に七色に光り出した。
昼の街並みの中で、それだけが明らかに異質だった。
昼間だから夜ほど目立ちはしない。
それでも、明らかに異様だった。
「え、これどうするの?どうしたらいいの?」
バイクから降りたものの、明らかにテンパってる彩葉。
「かぐやの時はどうだったんよ」
「あ、あの時は竹みたいな取っ手が付いてて、勝手に観音開きで開いて」
「彩葉、腕輪を付けてるほうの手で電柱に触るんだ」
落ち着かせるようにFUSHIが彩葉に声をかける。
「そ、それだけでいいの?」
「ああ、今の『もと光る竹』に実体は無いからな。腕輪に回収できる」
言われたとおりに彩葉が触れると、七色の光が吸い込まれるように腕輪へ集まっていく。
ほんの一瞬だけ腕輪がじん、と熱を帯びた。
七色の光が消えると、腕輪は何事も無かったかのようにちゃり、と音を鳴らした。
「……これで良いんだな?」
「ああ。もう一度ヤチヨのところに戻ってくれ。そこで実体化させて、機能を確認しよう」
「早くいこ、隼斗」
「おう。……法定速度でな」
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