一機目の『もとひかる竹』を回収したその日から。
ようやく、俺たちの日常は少しずつ動き始めていた。
「よー、ジュンヨウだ。久々の配信だから雑談でリハビリしてくぞー」
「わりーわりー。俺なりに色々考えることあってな」
「あー、かぐやは今ちょっと遠いところに行っててな。
ライバー引退もそれ関係。詳しくは話せんけど」
「いろPは普通に一緒に住んでる。今後ちょっと生活変わるかもしれん」
『別れるわけないじゃん』
「いろPちょっと言い方考えてくれ。カップルか夫婦みてえになる」
「待て待てお前ら話脱線してる。俺が言いたいのは今後の配信頻度とかの話な」
『作る?』
「頼むからレールに戻した端から脱線させんでくれ」
「あ~……まず、多分配信頻度はか~な~り落ちると思う。俺も進路とか考え始めてな」
「まあちょっと、将来のことを考え出した結果、そこそこの大学には行っとかねえとな、と」
「どうせやるなら、狙える範囲で一番上かなと」
「……まあ、黙秘で」
「……まあ、かぐやだけじゃねえけどな」
流れるコメントを見ながら、ゲーミングチェアに深く腰掛ける。
彩葉に『自分のやりたいことを手伝ってほしい』と言われた時のことを思い出した。
「ヤチヨに体を作ってあげたいの。これから迎えに行くかぐやにも」
しかもそれだけじゃない。
ツクヨミに触覚、味覚、嗅覚まで実装するつもりらしい。
「……お前それ、とんでもないこと言ってるの自覚してるか?」
「分かってる。どれだけ難しいことかも、多分」
技術的にも茨の道だろうが、俺が言ってるのは───
「お前、文系選択だろ。今から理転すんの、かなりキツいぞ」
「それでも、やりたいの」
強い意志の籠った瞳で見つめてくる彩葉。
……あー、これはもう腹決めてるヤツだ。
「……で?それを俺に言う目的は?」
「……隼斗にも、手伝ってほしくて」
そんなこったろうと思った。
「俺のやりたいことは手伝ってもらうわけだしな、良いぜ」
「理転のことは、お母さんと先生にはもう話してて───ん?今なんて?」
なんだよ、聞いてなかったのか。
人に聞いてんだから、答え待ってから続き話せよ。
「『俺のやりたいことは手伝ってもらうわけだしな、良いぜ』って」
「え、言っといてなんだけど、良いの?」
「テメーが言ったんだろが」
「いや、そりゃそうなんだけど……将来のコトだよ。もっと考えなくて良いの?」
そもそも進路とかロクに考えてなかったからな、俺。
「細けえことはそん時考える」
「それより今は、『お前のやりたいこと』に付き合う方が面白そうだ」
「……どうせなら世界変えるくらい、デカいことやった方がいい」
「それに―――」
まあ、一番デカい理由は───
「オメーがやるって決めたことだろ。
オメーは出来ないことを出来るたぁ言わねえ奴だが、無茶しがちだからな」
「んぐっ……。ひ、否定できない」
胸を押さえてダイニングテーブルに手を付く彩葉。
自覚が出てきたようで何よりだ。
「隣で支える奴がいた方が成功率上がんだろ。お前、一人だと平気で無茶すっからな」
「……ありがと」
「……今さらだろ」
「ほんと、後悔しても知らないからね」
「お前は後悔させてくれるような奴じゃねえだろ」
「……ばか」
「……ま、そういうワケでな。
受験対策だのなんだので、今までよりは配信頻度下がるって話。すまんね」
「いや完全に止めると家賃払えなくて死ぬ。これで食ってるから俺」
「東大」
「理一」
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本編はあと僅かになりますが、走り切りますので見守っていただけると幸いです。