今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

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Ex.十年後③

「隼斗ー!彩葉ー!ヤチヨー!!早く早くー!」

「元気だなおい……」

 

……眠ぃ。

ほぼ徹夜みてえなテンションだわ。

三人は朝から部屋の露天風呂入りやがって……。

大浴場行ってて良かったぜ……。

 

「あんまり寝れなかったみたいだけど大丈夫?」

「ま~配信やってるときはこんなもんだしな」

 

ヤチヨが顔を覗き込んでくる。

 

「昔私にあんだけ言っといて、自分が睡眠不足じゃ世話ないわね」

「……誰のせいだよ誰の」

 

彩葉が腰に手を当てて呆れている。

コイツ、よくそんな澄ました顔できるな……。

 

「お猿さんいっぱいいるよ!」

「そうだな~」

「あの水場、温泉みたいだね」

「ホントだ、湯気出てる」

 

今は草津熱帯圏に来ている。

サル山だの熱帯ドームだの、動物と触れ合える施設が集まった観光施設って感じだ。

 

「可愛い~温泉入ってる~」

「サルってホントに温泉入るんだね」

「気い付けろよ~。糞投げてくることあっから」

「「ばっちぃ~」」

 

かぐやとヤチヨが口を揃えた。

……息ピッタリだな。

思わず吹き出してしまった。

 

「ね、みんな。かぐや熱帯ドーム行きたいな!」

「先にドーム?ふれあいは後で良いの?」

「お楽しみは最後に取っとくの!」

「ヤッチョもドーム行きたーい!」

「したら向こう行くか」

 

二重になっているドアを潜って、ドームの中に入る。

……まあ、勿論『熱帯』とついているので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ、あっつ~い……」」

「温感機能は問題なしだな」

「発汗機能もね」

「このマッドサイエンティストどもめ~」

「人の心とかないんか~……?」

 

人の心があるから茶化してんだわ。

全員いきなり薄着になりやがって。

 

「わっ、カメの甲羅と同じ重さのリュックだって!」

「彩葉背負える~?」

「わたしはちょっといいかな。隼斗は……もう背負ってる!?」

「そりゃ背負えるなら背負いたいだろ。亀仙流だぞ」

「これ背負って修行したら元気玉使える!?」

「元気玉は界王さまに教わらないとね~」

「……何の話?」

 

そりゃドラゴンボールよ。

嫌いな男子いねーだろ。

……あの二人も似たような感性してるし。

 

「ワニデッカ!」

「ヘビなっが~」

「あ、ヘビのふれあい体験だって。……やるの?」

「「やる!」」

「おう、じゃあ写真撮ってやるよ」

「「いぇーい!」」

 

あー、ようやくいつもの調子に戻ってきた気ぃするわ。

 

「首に一周させるのは危険なので、かけるだけにしてくださいね~」

「はーい!」

「りょ~♪」

「……フリじゃねえからな~」

 

まあ首絞められたくらいで壊れる義体じゃねえけど。

それはそれとして職員さん驚かしちまうからな。

 

「楽しそうだね」

「ん?ああ、そうだな」

 

いつの間にか隣に来ていた彩葉。

 

「お前は楽しめてるか?あの二人のテンション付いてけてるか?」

「お構いなく。かぐやとヤチヨが楽しんでるの嬉しいし、私は私なりに楽しんでるから」

 

それならいいんだが。

 

「今日の晩御飯は飲み放題付けてもらってないからね」

「……今それ言うの止めねえ?」

「素面なら聞いてくれるんでしょ」

 

沙汰を待つ亡者の気分なんだが。

 

「よーし!メイン!ふれあい行くよっ!」

「うさぎとかモルモットとか、あとナマケモノとかアルマジロも居るんだって」

「フェネックもいるんだって、彩葉のお仲間~」

「確かに狐だけどさ」

「むっ、うさぎもいるからかぐやもいるよ!」

「ハヤブサいねえだろ、仲間外れにすんな」

「メンダコもいないよ~ヨヨヨ~」

「仲間外れは仲間外れ同士で仲良くしような、ヤチヨ」

「くっ、まさかヤチヨ、これを狙って……!」

 

乗ったけどなんだこの茶番。

 

「ひよこいっぱいいる~♪手に乗せちゃお~」

「モルモットって本当にぷいぷい鳴くんだ」

「割と嚙むから気ぃ付けろよ。……えっ、アトラスオオカブトいんの?コーカサスも?

 テンション上がってきた」

「男の子ってカブトムシ好きだよね~」

 

カブトムシとクワガタが嫌いな男の子なんていねーから。

うわギラファもいる。

 

「「…………」」

「……なぁ、ナマケモノ見てて飽きねえ?」

「「全然」」

「さいですか……。あれ?彩葉は?」

「あっちー」

 

ナマケモノから目を離さずに指を差したかぐや。

その方向を見ると、フェネックにおっかなびっくり手を差し出してる彩葉。

なんだそれ可愛いな。

指をペロッと舐められて「わっ」なんて声を上げてる彩葉。

あざといなコイツも。

…………あー、寝てねえ上に暑いとこいたから疲れたわ。

ちょっと座ろ。

 

「……ん?おいこら、勝手に人の膝乗んなよ」

 

座って休憩してたらうさぎが勝手に膝の上に乗ってきた。

ぴょんじゃねえのよ。

ここ、うさぎのふれあいコーナーだったか……。

……これ寝てねえかコイツ?

 

「仕方ねえなもう……」

「(……かぐやとかヤチヨとかによく『あざとい』って言うけど、隼斗も大概だよね)」

「(あれ天然なんだもんね)」

「(……あざとい)」

「……にひ♪」

 

あー……手触り良いなぁ。

……ん?

 

「……なにしてんだ」

「うさぎ増えたよ?」

「……デケえうさぎだなぁ」

 

左手で膝の上のうさぎ、右手で金髪のうさぎを撫でる。

……十年前と変わんねえなぁ、これじゃ。

 

「ずる~い。今度はヤッチョの番~♪」

「ああんはや~いぃ」

「順番待ち発生してんのこれ?」

 

べりっとかぐやを剥がして今度はヤチヨが来た。

 

「メンダコがきたよ~♪」

「メンダコのふれあいも出来んのかぁ」

 

白髪のメンダコを撫でる。

気持ちよさそうに目を細めた。

…………頑張って良かったなぁ。

二人のこんな顔を見られるなら、十年なんてあっという間だった。

 

「(ほら、彩葉!行きなよ!)」

「(流石に恥ずいって!)」

「(なに言ってんの!昨日裸で迫ったくせに!)」

「なっ、あんた起きてたの!?」

「(声が大きいって!)」

 

「なあ、ヤチヨ(かぐや)

「なぁに?」

「いま、幸せか?」

「……ふふっ」

 

「(大丈夫だった、なんか向こうエモいやり取りしてた!)」

「(あの後にわたし行くの!?)」

 

「隼斗と彩葉のおかげで、ちゃんと幸せだよ」

「……そうか。なら良かった」

 

「(ほら、今!今行けるって!ヤチヨはかぐやが剥がしに行くから!GoGoGo!)」

「(ええい!昨日あんだけやったんだから、今さらこの程度……!)」

 

「は~い、メンダコの時間終了でーす。今度は狐さんが来ますからね~」

「ヴェ~早いよぉ~」

「ローテーションなの?シフト制なの?」

 

かぐやがヤチヨを剥がして連れてった。

代わりに彩葉が隣に来て。

 

「こ……コンコン……」

「あざとすぎるって」

 

なんだコイツ可愛いな。

……まあ、仲間外れにするわけにもいかんか。

 

「んっ……」

 

黒髪の狐を撫でる。

気持ちよさそうに目を細めて、肩に頭を預けてきた。

……体温高ぇなコイツ。

 

 

 

 

 

 

「(写真撮っちゃお)」

「(じゃあヤッチョは正面から行くね)」

「(正面は危なくない!?)」

「(今の隼斗ならイケる!完全に油断してるから!こんなチャンス次八千年はこないから!)」

「(流石に八千年は隼斗気ぃ張りすぎって話になるよ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし膝の上のコイツは起きねえなぁ。

無理やり退かすのはしのびねえんだけどな……。

……まあ、良いか。

この十年走り続けてきたんだ。

こういう時くらい、彩葉も俺もゆっくりして良いだろ。

 

 

 

 

 

結局、うさぎが起きるまで俺は彩葉を撫で続け。

しびれを切らしたヤチヨは左隣に、かぐやは背中に引っ付いて、

「「ま~だ~?」」と急かしてくるのだった。

……俺も足痺れてきたんだからもうちょっとだけ待ってくれ、コイツ全然起きん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、素面の状態だけど」

「……はい」

「聞いてくれるのよね?」

 

宿に戻り、夕食を食べ、部屋に戻った後。

布団に正座し激詰めされている男ありけり。

というか俺だった。

 

「そりゃ、勿論」

「……なんで正座してるの?」

「雰囲気的に……」

「なんか浮気を叱ってるみたいになるから、やめてそれ」

「はい……」

 

すごすごと足を崩す。

 

「……あっちで話そっか」

 

と、彩葉は広縁を指差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほれ、コーヒー」

「ありがと」

 

ミニキッチンで淹れてきたコーヒーを彩葉に手渡す。

暖房は入っているとはいえ、広縁は窓越しの冷気で少し肌寒い。

 

「……いつも飲んでるのとは違うね」

「そりゃアメニティのだからな」

 

コーヒーを啜りながら答えた。

……美味いけどな、これも。

 

「隼斗が淹れてくれるやつの方が好きだな」

「そりゃ光栄なこって」

 

 

 

 

 

 

少し沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

 

「……本題に入れよ」

「……今日、月綺麗だね」

「まだ死ぬわけにゃいかないだろ」

 

 

 

 

 

 

再び、沈黙。

湯気の立つコーヒーを抱えながら、彩葉は目を伏せた。

 

「……私は、隼斗のことが、好き」

「……おう」

「でも、かぐやのことも好き。ヤチヨのことも好き」

「奇遇だな」

 

ぴくり、と。

彩葉は肩を弾ませた。

 

「……だから、この関係を壊したくなかった。

 進めようとしたら、壊れちゃうんじゃないかって怖かった」

 

そこで彩葉は一度言葉を切った。

覚悟を決めるように、息を吸った。

 

「私は、隼斗と、かぐやと、ヤチヨ。全員と一緒におりたい。

 みんな好きで、順番なんて決められへんから。

 そやったら、今の関係性のまんま、進めちゃえばええんやって」

「……なんかそれ、昔かぐやも言ってたな。コラボライブん時」

 

『彩葉と隼斗と結婚しよっかな~↑』とか。

 

「……じゃあまず、帰ったら行かなきゃいけねえところがあるな」

「……どこ?」

「朝日んところと、……お前の実家。京都だっけか」

「それって……」

 

目を丸くして、ようやく俺の目を見た彩葉。

その目は涙で潤んで、反対に頬は緩んでいる。

 

「……四人じゃ、まともな結婚の形にはなんねえけどさ。

 それでも俺は、お前らと生きるって決めたから。筋は通しておかなきゃよ」

「……じゃあ、私たちも隼斗のおうちに行かなね」

「いらんいらん。こっちは鶫とお袋がうるせえだけだわ」

 

テキトーにメッセージ入れとくわ、と言おうとしたら、彩葉に手を繋がれた。

繋がれた手が少しだけ震えている。

震えを止めてやるように、少しだけ力を入れて握り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろの方から、空気をブチ壊すような「ドタタッ」という音が聞こえた。

ゆっくり、ゆっくり振り返る。

洋室のドアから盛大にすっ転んだかぐや。

その背中に、巻き添えになったヤチヨが折り重なっていた。

二人ともテヘヘ、といった顔で舌を出している。

 

「……お前らなぁ、のぞき見、盗聴は犯罪だぞ?」

「かぐやたち月人だも~ん」

「日本国の国籍無いも~ん」

「理屈通ってる屁理屈言いやがって」

 

いつものやり取りに彩葉が吹き出して笑った。

二人が広縁に駆け寄ってくる。

 

かぐやが彩葉の後ろに、ヤチヨが俺の後ろに位置取った。

そしてそのまま、にやけた顔のまま両手で顔を抑えて振り向かされ───

 

「っ、あんたらねえ!」

「いや~感極まっちゃって!」

「隼斗のふぁーすときす奪っちゃった~♪」

「いやちょっ、わたしのファーストキス返して!?」

 

かぐやと彩葉。

俺とヤチヨ。

それぞれのシルエットが重なった。

……こいつらは本当に。

 

「まあノーカンっしょ!かぐやたち義体だし!」

「……にしても隼斗は動揺してないねえ、ヤッチョの初めてなのに。

 ……もしかして初めてじゃなかったり?」

「…………ノーコメント」

「キリキリ吐きや、どこで捧げてきたん?」

「圧が強ぇ」

 

 

 

 

 

……これ俺だけの恥じゃねえんだよなぁ……。

 

 

 

 

 

 

「……3歳の頃の鶫に」

「「「あっ」」」

 

ほら、こうなるから噤んでたんだよ口を。

目を逸らしていると、彩葉が一度だけ、かぐやとヤチヨを見た。

二人がにやにやしながら頷く。

 

「…………」

「ちょっ、んっ」

 

覚悟を決めた顔の彩葉に、そのまま唇を奪われた。

ちょっ、待っ、舌入れ──!?

 

「うわぁーぉ……」

「目の前でされると……」

 

お前らも顔赤くしてんな!

指の間から見えてるだろそれ!

 

 

 

 

 

 

 

「……ぷはっ」

「頭茹だりそうなんだけど」

 

彩葉が真っ赤な顔のまま、椅子から離れる。

逃げるみたいにかぐやの後ろに隠れた。

 

「大丈夫そ~?」

「これからみんなでお風呂入るのに~」

「はっ?」

 

そこの露天!?

四人で入れる広さじゃねえぞ!?

 

「無理やり四人で入るよ~ん」

「ちょっと待ってまだそこまでは覚悟できてない俺」

「その後は四人で寝るからね!」

「もう逃がさないからね~♪」

「なあちょっとアクセル緩めてくれパンクするって」

 

展開が怒涛すぎる。

助けを求めるように彩葉を見る。

真っ赤な顔は変わらず、潤んだ上目遣い。

 

「……今日は我慢せんって、昨日言うたやんか」

 

かぐやとヤチヨが悪戯が成功したガキみたいな顔でにやけた。

……あー、もう。

今夜も寝れねえなこれ。

 




雪月雪さん、ひよこんさん、蒼月紅羽さん、評価いただきありがとうございます。

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お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。
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