目が覚めて一番に思ったのは、体のダルさ。
次に思ったのは、なんか重いな。
昨日は───
そこまで思い出して、勢いよく目を開いた。
同じ布団でまだ眠ってる、裸の三人。
……あー、全ッ部思い出した。
だからって朝イチで見るもんじゃねえだろこれ。
うわ、パリパリで気持ち悪い……。
朝風呂しよ……。
「ふぃ~さっぱりした」
「あ~隼斗だけ先に起きてる~~~」
「お、はよさんかぐや」
「おはよ~」
最初に起き出してきたのはかぐやだった。
「風呂入ってこい、気持ち悪ぃだろ」
「……」
「どうした?」
「なんか今の良かったぁ」
「変なとこ刺さってんじゃねえよ。コーヒー淹れとくからさっさと行ってこい」
しっしっと手をやってかぐやを露天風呂に追いやる。
広縁から露天風呂に行ったかぐや……ん?戻ってきた?
「覗いても良いよ?」
「はいはい」
「ぶー、なんか隼斗余裕できちゃっててつまんな~い!」
肚も決まるわ、一気に三人だぞ。
「おはよー……お水ちょうだい」
「お、おはようヤチヨ……少しくらい隠せよ」
「隠す必要ある?」
「恥じらいってもんがあんだろ」
何も隠さずにミニキッチンまでやってきたヤチヨ。
一杯の水を渡したら、腰に手を当てて一気。
……温泉だけどさ、牛乳でねえのそれは。
「彩葉はまだ寝てんの?」
「うん、ぐっすり。わたしとかぐやは色んなのオフに出来るけど、彩葉は出来ないからね~」
けだもの~とからかうような笑いを向けてくるヤチヨ。
いや、う~ん……?
「お前らの方が彩葉に色々してたような……」
「あっ、お風呂入ってこよ~」
逃げやがった。
露天風呂に繋がるドアが開きっぱなしで、二人がわちゃわちゃしている音が聞こえる。
「風呂場で転ぶなよー」
一応声だけかけておいた。
……お、湯沸いた。
彩葉はまだ寝かせとくとして、とりあえず今起きてる三人分で良いか。
昨日も淹れたアメニティのコーヒーを三人分準備する。
淹れ終わったころに、丁度二人が髪を拭きながら戻ってきた。
隠せってだから。
せめてTシャツ着ろ。
あ、寒かったのか着た。
「ほれ、コーヒー」
「ありがと」
「ブラックぅ~?カフェオレに出来ないの~?」
「牛乳ねえからな。ミルクポーションとガムシロならあるけど」
「3つずつちょうだい!」
「ガムシロ3つは甘すぎるだろ……ほれ」
呆れながらかぐやに手渡す。
木製のマドラーも一緒に。
「……こーひーのにおいがする……」
「お、起きてきた」
「おはよ、彩葉」
「おはよー!」
「あんたら元気ね……私は腰が痛いわ……」
「かぐやたちはオフってるもん」
「クソ、ずるいな……」
「コーヒー淹れとくから、風呂入ってこい」
「……」
「どうした?」
「なんか今の良かったなって」
「変な刺さり方すんなってだから」
はよ風呂入ってこいって。
「今入ってくるんだったら髪乾かしてやるぞ」
「すぐ上がってくる」
「ちゃんとあったまってこいよ」
「え~かぐやの髪も乾かしてぇ~!」
「ヤッチョもヤッチョも~!」
「一人ずつな~」
言った途端にじゃんけんし始める二人。
何度かのあいこの果てに、勝利を勝ち取ったのは。
「イェーイ!ヤッチョの勝ち~」
「なんでっ……なんでかぐやはあの局面でチョキをっ……」
「じゃんけんに局面とかねえだろ……。ほれ、ヤチヨ来な」
「は~い♪」
洗面所に椅子を持って行って、ヘアブラシを持って待つ。
ヤチヨがてちてち歩いて、椅子にぽてっと座った。
「じゃ、乾かすぞ」
「お願いしま~す」
まあもうほとんど乾いてるようなもんだけど。
ヘアブラシで優しく髪を梳かす。
絡まりをほぐしたあと、ヘアミルクを馴染ませる。
しっかり馴染ませた後、ドライヤーの温風で乾かしていく。
「~♪」
「ぐぎぎぎぎ」
ヤチヨは鼻歌を歌ってご機嫌だ。
洗面所のドアから歯噛みしているかぐや。
どっからハンカチ出したそれ。
「ね、隼斗」
「ん?」
「今度はヤッチョが聞いていい?」
後ろに立っている俺を、見上げる形の上目遣いでヤチヨは聞いてきた。
「いま、幸せ?」
「……お前らのお陰で、不幸になる暇なんてねえな」
答えを聞いたヤチヨと、それからかぐやも。
満面の笑みを浮かべた。
そんな顔をされると、こっちまで照れ臭くなる。
照れを隠すように艶のある白髪に手櫛を通して乾かして、冷風で仕上げる。
「ほれ、終わったぞ」
「ありがと」
手でばさぁっと髪を広げてご満悦のヤチヨ。
「
たったいまヤチヨが席を外した椅子にどかっと腰掛けるかぐや。
苦笑しながら、今度は金の髪にヘアブラシを入れた。
「いいお湯だった……でも沁みた……」
「生々しいなおい」
髪をタオルドライしながら彩葉が戻ってきた。
……良かったちゃんとTシャツ着てる。
コーヒーのカップを渡しながら洗面所に誘導する。
「乾かしてくぞ」
「お願い」
椅子に座ってコーヒーを啜る彩葉。
コーヒーの香りが洗面所に広がる。
「……夢じゃないんだよね」
「まだ寝ぼけてんのか?」
……ったく。
ドライヤーをオフにして、後ろから抱きしめた。
「ちょっ、いきなり、んっ」
後ろから抱きしめながら、首元に跡が残るくらいの口づけ。
「これでもまだ夢だと?」
「もう……どうすんのよ、これ」
「冬だし目立たねえだろ」
これが残ってる間は、夢だなんて疑うこともねえだろ。
……あと、俺のものって牽制でもある。
…………ああ、いや。
それもある。
それもあるが。
そう言う意味なら、これが残ってる間に。
「指輪、買いに行くか。全員分」
「っ……」
「起きた時にそれ見りゃ、夢だなんて思わねえだろ」
四人で、なんて制度には当てはめられねえ関係だ。
だから、目に見える形で示しておきたい。
「じゃあ、帰りに見に行こ!」
「朝日のとこに行く前には欲しいよね~」
かぐやとヤチヨが洗面所に入ってくる。
まだヘアミルクの最中だぞ。
「おう、お前らはどんなのが良いよ。石ゴテゴテのは勘弁な」
「え~派手派手なのダメ~?」
「俺も同じの付けんだから当たり前だろ」
全員お揃いだろ。
でないと意味ねえ。
かぐやに呆れながら、彩葉の黒髪に手櫛を通す。
「俺はそれ以外希望とかねえから、材質とかデザインとかはそっちで決めていいぞ」
「……全員で決めなきゃでしょ」
彩葉が気持ちよさそうに目を細めながら、呟くように言った。
「四人のものなんだから」
「だってさ、隼斗」
「……了解。ただ俺にセンスを期待すんなよ」
冷風で仕上げる。
ドライヤーの電源を切って、彩葉の肩を叩いた。
「そしたら、まず朝飯食いに行くか」
「今日こそ朝食バイキング全メニュー制覇する!」
「太るよ」
「義体だもーん」
「……あんたたちの体、ちゃんと食べたら食べた分増量するようになってるからね」
「初耳!?」
「ヤッチョは知ってたよ~ん。その分昨日運動したもんね」
「あっ、じゃあかぐやも動いてるからダイジョーブ!」
「朝からよう食えるなお前ら」
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