今日も世話を焼く   作:ディアーリーズ

53 / 75
読者募集ネタになります。
ちょっと前話と順番を間違えてしまったので、本日二話分投稿いたします。
致命的な順番違いでなくて良かった……。


Ex.とあるコテハンを見つけた

夜、スマホでなんとなくネットサーフィンをしていると、気になる文字列が目に入った。

……ぬちゃんねる?

ん~……確かヤチヨの8000年の記憶にな~んか引っかかるものが……。

あ。

 

「な~ヤチヨぉ」

 

ダイニングテーブルで日本酒をちびちびやっていたヤチヨが顔を上げる。

 

「なんだいなんだい?」

「ちょっと聞きたいことあるんだけど」

「うん?」

 

スマホの画面をヤチヨに見せる。

 

「このYachi8000ってコテハン、ヤチヨだよな」

 

ヤチヨの動きが、ぴたりと止まった。

おちょこをテーブルに置いて、冷や汗を掻きながら立ち上がる。

 

「今日はこの辺にしとこっかな~!さらば~い」

「逃がさねえよ」

 

椅子を引いて座ろうとした瞬間に立ち上がろうとしたヤチヨの肩を、片手で押さえる。

 

「なんで分かったの~」

「Yachi8000の8000が気になって掘ったら面白えもん出てきた。大分名を轟かせてたみたいだな?」

 

椅子に座り直したヤチヨが、ばつが悪そうに日本酒のおちょこを揺らす。

 

「証拠はあるの?」

「コテハンのトリップ元がそもそも『Yachiyo』だろ、これ。あと記憶でチラッと見たし」

「……それ普通は分からないよ?」

「暇つぶしに調べた。で、いつからだ」

「……インターネットが始まった頃から」

「Windows3.1の頃か」

「っ……!よく調べたね……!」

 

ヤチヨが両手で顔を覆う。

 

「ザコンってなに?」

「……秋葉原の電気街にあった、パソコン専門店のこと……」

「今もあんの?」

「もう無いよぉ。今はサブカルの複合施設になってる」

「混んでたって書き込んでっけど、行ってたのか?FUSHIの体で?」

「行ってるわけないじゃん、想像だよぉ」

「Windows95に買い替えたいって書きこんでたけど」

「……あの頃は3.1しか持ってなかったんだよ……!」

「実家住まいを馬鹿にしてたな」

「……電話回線を親と共有してる人が多くて……モデムが占有できないのが不満で……。

 ネット越しでしかコミュニケーション取れなかったから、長い時間お喋りしたいし……」

「ぬちゃんねるのスレも見た」

 

ヤチヨが頭に手をやりながら天井を仰ぐ。

 

「あれは……若気の至りだよ……」

「若気って。八千年生きててなに言ってんだ。2005年の書き込みの話だぞ」

「……インターネット黎明期だから……まだ若かったの……ネットリテラシーとかそういうの」

「そうか、んじゃ次」

 

画面を横にスクロールして、例のスレを開く。

 

「ピラミッドどうやって作ったか聞かれて『自分で調べろカス』って返してるな」

「ワロタ……」

「笑い事か」

「いや……だってあの時もう何百回も聞かれてたから……さすがに……」

「弥生時代以前の飯はもう食えないって書いてたな」

「いや、そもそもご飯食べらんなかったけどね!」

 

急に前のめりになる。

 

「隼斗とかぐやのご飯が一番美味しいよ!!」

「そうか。そりゃ飯当番として冥利に尽きるわ」

「うう……八千年生きてきて今まで受けたことのない辱めを受けているよ……」

「あともしかしてこのショート動画ってよ、Yachi8000が投稿した設定だったりすんの?」

 

動画サイトに投稿された『進捗どうですか?【月見ヤチヨ】』と題されたショート動画を再生する。

 

「あっ、ちょっ」

『進捗どうですか~?』

「うっ」

『原稿捗ってますか~?』

「うぐぐっ」

『みんなの素敵な作品を楽しみにしてるよ~☆』

「投稿日冬コミの三週間前って。ただの煽りカスじゃねえかこれ」

「そ、そのタイミングでショート動画見てる人のお尻を叩いてあげようかなって……」

 

同人誌の締め切りってよく知らねえけど。

修羅場真っただ中だったんじゃねえの、作家の皆さん。

 

「……ぬるぽ」

「ガッ。……あっ」

「大分染まってんな」

「隼斗ぉ!」

「すまんすまん。……最後に一個だけ、本当に気になってたやつを聞いて良いか?」

「……なに、言うだけ言ってみなよ」

 

ヤチヨがおちょこをぎゅっと握る。

 

「ピラミッド、実際どうやって作ったんだ」

「……」

 

しばらく沈黙。

 

「……自分で調べれば?」

「おい」

「でも隼斗なら調べたら分かりそう」

「そういう問題じゃないだろ」

「……そもそもさぁ、ヤッチョ日本から動けなかったんだよ?知ってるわけないじゃん?」

「そりゃそうかぁ。……じゃあ邪馬台国とかは?」

「……どうだろうね?」

「知ってる口ぶりだろそれは」

 

ヤチヨが目を逸らしながら、ぼそっと。

 

「次の料理配信で、隼斗が美味しいって言ったら」

「交換条件か」

「うん」

「……分かった」

「でも、忖度はしないでね」

「すると思うか?」

 

ヤチヨが満足そうにおちょこを傾けた。

 

「ちなみに他にも色々あるんだけど、それは見てない?」

「他にも?」

「mixiの頃とか、あと個人ブログも書いてたし、Twitterも初期から」

「良いこと聞いた。全部掘るか~」

「さらば~い!」

「逃がさねえって言っただろ」

「……かぐやと彩葉には言わないでね?」

「なんで」

「絶対からかうから」

「……うーん、じゃあ本能寺の変の真相を教えてもらえれば考える」

「交渉上手になったね隼斗ぉ!!」

「お前に言われたくない」

 

否定しないってことは知ってんのかよ真相。

テーブルの上のスマホが、Yachi8000のスレを静かに映していた。




アルトノアさん、評価いただきありがとうございます。

エルウェストさん、海の坊主さん、ROSOさん、感想いただきありがとうございます。

お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。

活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。