①乃依「アバター女装配信」
「……よー、ジュンヨウだ。本日は諸事情により、いつもと違う見た目でお届けするぞ~……」
配信タイトルは【女装してみた】JunY0u×乃依×ROKA【アバター改造】
「ROKAはもう来てる。乃依は……」
「スタンバイできてるよ~♪」
「……お前絶対これ楽しんでるだろ」
「楽しんでるよ?」
「誤魔化しもしねえでやんの」
「いいじゃん、リアルは絶対NGって言うからアバターにしたのに」
「……んじゃ早速行くか。ぱっぱと終わらそ。ROKAよろしく」
「任せて。ジュンくん、まずアバターエディタ開いて」
「開いた」
「髪から行こっか。今のアッシュブロンドはそのままで……まず長さを伸ばして……
そうそう、ちょっと長めに」
「文字がうるせぇ~」
「リスナーが正しいから従ってね」
「ROKAまでそれ言うの?」
「……まあ、プロの言う通りにするよ」
数分後。
「……」
「どう?」
ROKAが嬉しそうに問いかけてくる。
「……普通にキャラ変わったんだが」
画面に映るのは、いつものアッシュブロンドのままだが、髪が鎖骨まで伸び、眼帯が外れ、
代わりに片目に細いアイラインが引かれたアバター。
衣装は黒の着流しではなく、白いシャツに黒の細身のスラックス。
「言いたいことは分かる」
「長身だからどうしても男性的に見えるんだよね。だからあえてシンプルにしてみたんだけど」
「ROKAの審美眼どうなってんの」
「褒めてるよ?」
「乃依はどうだ」
「うん、良いと思うよ。タッパあるとこういう感じの方がむしろ映えるし」
「……そりゃどうも」
「……やめろよ、照れんだろ」
「かわいいは余計だ」
「かわいいよ」
「乃依まで言うか」
「事実だし~」
「……ROKAと仲良くなってるじゃねえか」
「この仕事してると分かり合えることがあるんだよね」
「……まあ、こんなもんで良いか。こっちの方が動きやすいのは認める」
「でしょ」
「普段から眼帯外せば良いのに」
「視界絞んねえと情報多すぎてな。……ま、今日はこれで行くか」
「……そうだなぁ。雑談でもするか。乃依、お前も残るか?」
「良いよ、どうせ暇だし」
「ROKAは?」
「私もいる。後でコラボ申請するね」
「おう。……っていうか」
少し間を置く。
「……こういう機会でもなきゃ三人で話すこともねえしな。まあ、悪くねえか」
「……ジュンくん、そういうとこだよ」
「なにが」
「な~んでもない♪」
「
「ハラスメントだろこれ」
②雷「釣り配信」
「……よー、ジュンヨウだ。今日は珍しく外ロケな」
配信タイトルは【釣り配信】渓流釣り堀で雷と二人でのんびりしてみた【JunY0u×雷】
「よろしく」
「よろしくな。……いや、まじで船釣りが出来なかったのは残念だったな」
「回線が不安定になるのは仕方ないだろ」
「まあそりゃそうなんだが。渓流はどうなんだ、お前」
「初めて」
「俺もだ。まあ、釣り堀だしな。気楽にやろうや」
「釣りも初めて」
「お前良くそれで釣り配信リクエストしたな」
「……まあ、のんびり行こうぜ。竿は……ここの貸し出しのでいいか」
「ああ」
「浮きと針だけのシンプルなやつだな。じゃあ始めるか。エサはどっちがいい?
ブドウ虫といくらあるけど」
と、雷に話しかけると受付のおっちゃんが話しかけてきた。
「ブドウ虫の方が食いつきが良いよ。いくらはどうしても持ちが悪いから」
「へ~。……ああ、針刺すからっすね」
「そうそう。中身出ちゃうからね」
「なるほど、したらブドウ虫ください」
「はいよ。500円ね。無くなったらまた買いにくれば良いよ」
「あざっす~」
しばらく、静かに釣り糸を垂れる二人。
川のせせらぎと、木々の間を抜ける風の音だけが続く。
「……なあ、雷」
「ん」
「お前、釣り初めてとか言ってたくせに、めちゃくちゃ絵になってんな」
「……そうか?」
「そうだよ。俺の方がどう見てもソワソワしてる」
「……釣りは、待つものだろ」
「そりゃそうなんだが、お前それ座ってるだけじゃねえか?」
「待ってる」
「……なるほどな」
数十分が経つ。
雷の竿に引きが来た。
「お、来たぞ」
「……」
無言のまま、雷がゆっくりと竿を立てる。
水面を割って、銀色の魚体が飛び跳ねた。
「おっ、でかいな」
「……ああ」
そんな中。
「あっ、あー……やっちまったか」
カメラの外から、隼斗のぼやく声が聞こえた。
画面には竿を持ったまま椅子に座っている雷の姿だけが映っている。
「ご、ごめんなさい……」
聞き慣れない、小さな声。
「あー大丈夫大丈夫、こんなんすぐ解ける。お前名前は?」
「かずき……」
「よし、そしたらかずき。父ちゃん母ちゃんとこ戻ってな。おっちゃんが解いといてやるから」
「うん……」
「あ~泣くな泣くな。ちょっと待ってろな」
画面の雷はというと。
竿を持って椅子に座ったまま、のんびりと川面を眺めている。
「……解けたか。……かずき~、解けたぞ~。……ああ、いえこっちも不注意でしたので。
申し訳ありません、後から言うのも卑怯だと思うのですが、現在配信中でして。
顔などは配信には乗っていませんが、おそらくかずき君の声が配信に乗ってしまっているかと。
ええ、ご希望でしたら配信も終了しますし、アーカイブも……あ、大丈夫ですか?
でしたら申し訳ありませんが、こちらに承諾のサインだけ……。はい、ありがとうございます。
おーう、デケエの釣れてるじゃねえかかずき!やるなぁ!」
そんなやり取りの後、隼斗がカメラの前に戻ってくる。
「……雷、お前な」
「何が」
「オマツリしてんの見えてただろ」
「見えてた」
「なんで来なかった」
「お前の方が向いていると思った」
「……まあ確かにそうかもしれんけどよ」
「……向いてるのは認める。別に怒ってるわけじゃないけど、一言くらい声かけてくれよ」
「……次からそうする」
「まあ次があるかは分からんけどな」
「……なあ雷、結局お前の竿どうなった」
「逃げた。針から外せなくて」
「あー……まあ、ゆっくりやろうや」
二人、しばらく無言で釣り糸を垂れ直した。
③帝「黒鬼一日加入配信」
配信開始。
しかし、画面は真っ暗。
静かなピアノの旋律だけが流れる。
Black onyXの代表曲『OnyXXX』。
聴き慣れたイントロだ。
やがて暗闇を裂くようにスポットライトが落ちた。
画面の中央。
赤と黒の衣装を纏う帝。
その左右に乃依と雷。
三人が揃った瞬間、コメント欄が爆発する。
帝がゆっくりとマイクを持ち上げた。
「――ようこそ、子ウサギ共」
客席から歓声。
「今日は祭りだ」
さらに歓声。
帝が笑う。
「だから一匹、獣を連れてきた」
スポットライトがもう一つ灯る。
ステージの端。
黒の着流し。
深緑の帯。
はだけた胸元には深緑の羽根のような紋様。
肩にはエレキギター。
そして、額には一本角。
「……よー、ジュンヨウだ」
短く手を挙げる。
「今日は黒鬼に混ざる」
それだけ。
だがコメント欄はさらに荒れた。
コメント欄と客席の歓声に、ダルそうに。
「一夜限りだ、目に焼き付けろよ。子ウサギども」
乃依がくすくす笑う。
「結構ノリノリだよね~」
「うるせぇ」
雷が一言。
「似合っている」
「お前まで言うのか」
帝が満足そうに頷く。
「よし」
そしてマイクを掲げる。
「子ウサギ共」
会場が静まる。
「祭りを始めるぞ」
一瞬の静寂。
次の瞬間、ジュンヨウのギターが唸った。
そしてドラムが走る。
ベースが唸る。
そして、歌い出し。
──お前の手に届けるのか?──
──ささやかなるオレの喜びを──
帝と雷の二人から始まった。
原曲はどちらかと言えばゆったりとした曲調だが、ジュンヨウのギターによって荒々しくアレンジされている。
──オマエの目に収まるのか?──
──すこやかなるオレの偽りが──
次いでジュンヨウのギターボーカルと、乃依の歌声。
ギターが吠える。
ジュンヨウの右手が弦を叩きつけるたび、原曲には無かった荒々しい熱量が曲へ流れ込む。
帝が笑う。
乃依が楽しそうにステージを跳ねる。
雷は静かな表情のまま、誰よりも正確に音を支えていた。
──この世の全てを見る勇気はあるか──
──我欲に飲まれるな 理性の進化──
──あの盆が火蓋を切る──
──来世を見たか──
──祭りがはじまるな──
──準備はいいか?──
サビの終わり。
本来ならそこでコーラスに入り、一度落ち着く。
だが。ジュンヨウのギターが止まらなかった。
「――っ!?」
帝が思わず横を見る。
荒々しい速弾き。
和ロックとメタルを無理やり融合したような、
原曲とはまるで違うギターソロ。
だが、不思議なほど曲に馴染んでいた。
実際、打ち合わせには無かった。
帝は一瞬だけ目を見開き――
次の瞬間には獰猛に笑っていた。
「いいじゃねぇか」
マイクを握る。
「子ウサギ共!」
歓声。
「祭りだろうが!!」
そして四人は、観客の熱狂を巻き込みながら次のサビへ雪崩れ込んだ。
最後のコードが鳴り響く。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間。
会場を揺らすような歓声が爆発した。
帝が息を吐く。
「……いやぁ」
肩を竦めながら笑った。
「お前ら盛り上がりすぎだろ」
「それはそう」
会場が笑いに包まれる。
乃依も笑いながらマイクを取る。
「いや~、でも今日の主役は帝じゃないかもね」
「誰のことだよ」
「お前だよ」
ダルそうに返すジュンヨウに帝が即答した。
「ギターソロ」
帝が指を向ける。
「打ち合わせしてねぇよな?」
「してないな」
「だよな?」
「なんか行けそうだったから」
雷が静かに頷いた。
「楽しそうで良かった」
「お前は年下に甘いぞ雷」
「事実」
帝が笑う。
「ったく。一番暴れてやがんな」
「祭りなんだろ?」
「そうだな」
二人が笑う。
すると乃依がマイクを持ち上げた。
「じゃあせっかくだし聞いてみようか」
ジュンヨウへ視線と自分の持っているマイクを向ける。
「どう? 黒鬼は」
「どうって」
ジュンヨウが肩を竦める。
「曲終わった直後に聞くことか?それ」
「答えてよ~」
「……」
少しだけ考えて。
「ま、悪くねぇよ」
会場が沸く。
「ただ」
ジュンヨウが続ける。
「こっちが聞きたい」
帝を見る。
「お前らにとって俺はどうなんだ?帝よ」
「おんなじだよ」
帝が笑う。
「悪くねぇ。だから祭りに呼んだんだろ」
「……乃依は?」
「使える~。他の企画にも来たら?」
「お前の企画鬼畜なの多いじゃん。雷は?」
「……また来ると良い」
「……まあ、今日限りだ」
照れ隠しか、ジュンヨウが肩にギターを掛け直す。
「お前らには今日だけ世話になる。そういう企画だろ」
その返答に、帝がニヤリと笑う。
「へぇ、次も呼ぶわ」
「黒鬼加入じゃなく普通にゲストとして呼べよ、そしたら出てやる」
「つれないねぇ」
「一匹狼が性に合ってる」
「ハヤブサの癖に~」
「断っても呼ぶ」
「おい」
「……さ、次の曲行くぞ」
「照れてる~」
「反応に困ってるだけだ」
黒陽さん、評価いただきありがとうございます。
ROSOさん、かけはしさん、夜霧さん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。