「よー、ジュンヨウだ。今日はKASSEN選手権でのリスナー希望企画をやる。ゲストもいる」
「かぐやっほー!かぐやだよ~」
「いろっぴ~。いろPでーす」
「ヤオヨロ~!月見ヤチヨです!」
配信タイトルは【一日限定】居酒屋隼鷹開店【JunY0u×かぐやいろP×月見ヤチヨ】
「盛り上がりすぎだろ」
まあ、分からんでもないけどな。
料理配信はやってきたが、居酒屋形式は初めてだ。
「今日のコンセプトを説明する。居酒屋隼鷹、一日限定開店だ。
俺が料理と酒を担当する。かぐや、いろP、ヤチヨの三人は客として飲み食いしながらトーク。
リスナーはその様子を眺めながら一緒に呑む、という形式だ」
「呑みながら見る配信良いよね~」
「ドリンクは一応聞いとく。かぐや、いろP、ヤチヨ。それぞれ何にする?」
「かぐやはビール!」
「私は……梅酒のソーダ割りかな」
「ヤッチョは?」
「日本酒!冷やで!」
「即答だな」
「居酒屋といえば日本酒でしょ!」
「分かった。ただ今日は料理に合わせて途中で変えてみるか。肉豆腐にはぬる燗の方が合う」
「任せる!」
「……素直だな」
「さて、まず本日のメニューだ」
カメラを手書きのメニュー表に向ける。
【居酒屋隼鷹 本日のおすすめ】
お通し
・だし巻き卵
おつまみ
・砂肝のコンフィ
・山芋のワサビ醤油漬け
・スモークサーモンとクリームチーズのブルスケッタ
・鶏皮の塩ダレポン酢
・タコの唐揚げ
・肉豆腐
〆
・だしおにぎり
「砂肝のコンフィは低温のオイルで長時間加熱するやつだ。昨日から仕込んである。
配信前からバタバタしたくないんでな」
「なんか料理解説始まった」
三人分の飲み物を用意しながら、まずお通しのだし巻き卵を出す。
一人一皿、大根おろしを添えて。
「はい、お通しだ。西の方じゃ突き出しって言うらしいけど。居酒屋で頼んでもいないのに最初に出てくるやつな」
「え、これお通しなの!?豪華~!!」
「まあ、うちのお通しはだし巻きだ。食っといてくれ」
かぐやが一口。
「ん~!!出汁の味がすごいする!!」
「関西風に薄めに焼いてある。箸で切れるくらいの柔らかさが目標だ」
彩葉が一口。少しだけ目を細める。
「……好きな味だ」
「知ってる」
ヤチヨが一口。
「……ん。やっぱり好きだな、だしの味」
「やっぱり?前も食ったのか」
「隼斗の作ったやつじゃないけどね。でも隼斗のが一番好き」
「そりゃどうも」
「日本酒と合う?」
「合う。冷やのすっきりした感じとだしの甘みが一緒になる感じがする」
「良い飲み方してるな」
「……じゃあ本題入るか。まず山芋のワサビ醤油漬けと鶏皮、二品まとめて出す」
鶏皮の塩ダレポン酢を皿に盛る。
カリカリに焼いた鶏皮に、ねぎと塩ダレとポン酢をかけたシンプルなやつだ。
隣に山芋のワサビ醤油漬けの小鉢を並べる。
「これだ」
「「「わぁ~!!」」」
三人の声が揃った。
「かぐや、鶏皮はビールと合うぞ」
「知ってる!!」
かぐやがビールのジョッキを傾けながら鶏皮をつまむ。
「んまーーーーい!!!ビールにめっちゃ合う!!」
「いろPはどうだ」
「梅酒と合う。さっぱりする」
「ヤチヨは」
「カリカリのとこが好きだな。……山芋の方も食べてみていい?」
「どうぞ」
ヤチヨが山芋を一口。
「……あ、ワサビの辛みが後から来る」
「ワサビ醤油に一晩漬けてある。
山芋のねばりがワサビを包むんで、最初は辛くなくて後から来るんだ」
「日本酒に合いそう」
「合う。山芋とワサビは日本酒の定番だ」
「カリカリに仕上げるコツはよく水気を切ることと、中火で動かさないことだ」
かぐやが山芋の小鉢に手を伸ばしながら。
「ワサビ醤油漬けってかぐや食べたことなかったかも」
「好みが分かれるからな。辛いの大丈夫か?」
「平気!……っ、本当に後から来る!!」
「だろ」
「でも美味しい!!」
「次、砂肝のコンフィだ」
昨日から仕込んでいたオイル漬けの砂肝を取り出す。
スライスして皿に盛り、岩塩と刻みパセリをかける。
「これはオイルごと低温で加熱してある。普通に炒めた砂肝よりずっと柔らかくなる」
「え、砂肝ってコリコリじゃないの?」
「それが普通の砂肝だな。コンフィにすると全然違う食感になる」
かぐやが恐る恐る一口。
「……っ!!柔らかい!!なにこれ!!」
「だろ」
「でもちゃんと砂肝の味する!!」
「それがコンフィの良いとこだ。旨みが逃げない」
「いろPは?」
「……柔らかい。居酒屋で頼んだことあるけど、これの方が断然美味しい」
「そらどうも。ヤチヨは?」
「ねえ、隼斗。これずっと食べてたい」
「今日はまだタコ唐と肉豆腐とブルスケッタと〆がある」
「全部食べる」
「そりゃ良かった」
「次はタコの唐揚げだ」
タコを一口大に切って下味をつけ片栗粉をまぶし、高温でさっと揚げる。
皿に盛って、レモンを添える。
「外はカリッとして中がやわらかい。レモンを搾って食ってくれ」
「「「わぁ~!!」」」
またしても三人の声が揃った。
かぐやがレモンをぎゅっと搾って一口。
「外カリッカリで中もちもちしてる!!ビールと合う~~~!」
「タコは火ぃ通しすぎっと固くなるからな。時間が命だ」
彩葉が一口。
「……あ~ビールが欲しくなる味だ~」
「日本酒でも合うぞ」
ヤチヨが日本酒を一口含んでから、タコを一口。
「……あ、本当だ。合う」
「タコの塩気と日本酒の旨みが合わさるんだ。レモンを搾ってからの方がより合う」
「また一個食べても良い?」
「どうぞ」
中盤。
スモークサーモンとクリームチーズのブルスケッタを出す。
「バゲットは昨日焼いたやつだ。スモークサーモンとクリームチーズを乗せてケッパーを散らした。これはワインが合うんだが……」
彩葉が梅酒のグラスを傾けながら一口。
「梅酒でも合う」
「梅酒の酸みがケッパーと似た働きをするんで、まあそうなるな」
「分析すんのやめてくれない?美味しく食べてるのに」
「……う~ん」
かぐやが一口齧ったブルスケッタを持ち上げながら。
「ねえ、この上のヤツ……」
「ケッパーな」
「これなんか酸っぱくてしょっぱくて不思議な味がする。ちょっと苦手かも」
「好みは人それぞれだしな。ケッパーだけ除けな」
「良いの?」
「残してくれりゃ俺が食う」
「ならそうする!」
ヤチヨがも同じように、一口齧ったケッパーをじっと見つめている。
「ヤチヨはどうした?」
「……なんか、白ワインが飲みたくなる味がする。でも今日は日本酒で通す」
「無理に合わせなくていいぞ」
「合わせてみたい。日本酒って大抵のおつまみと合うから面白いんだよね」
「よく知ってるな」
「居酒屋で勉強した」
「……どこの居酒屋?」
「ふふ、ないしょ~」
「ね~♪」
「なんだよ、俺には教えてくれねえのか」
「拗ねない拗ねない~♪」
「別に拗ねてねえけど」
終盤。
肉豆腐が煮えてきた。
「〆の前に肉豆腐だ。これは煮込みながら食う」
土鍋ごとテーブルに出す。
牛肉と豆腐と玉ねぎがぐつぐつと煮えている。
「うわあったかそう~!!」
「居酒屋の肉豆腐って感じだ」
かぐやがビールのお代わりを注ぎながら。
「隼斗はお酒飲まないの?」
「今日はちょっとな」
「え、どっか運転行くの?」
「どこもいかねえけど。配信中に全員酔っぱらって収拾つかなくなったら困るだろ」
「……まあ、一杯だけなら」
棚に保管しておいたウィスキーをショットグラスに注いで、乾杯する。
「「「かんぱーい!」」」
「おう」
「肉豆腐にはぬる燗の方が合う。切り替えるか?」
「切り替える!……ぬる燗って、冷やより味が丸くなる感じがするよね」
「温度で香りと甘みが開くからな。分かってるじゃないか」
「隼斗に言われると嬉しいな」
肉豆腐をそれぞれ器に取る。
「……うまいな」
「でしょでしょ!隼斗が作ったんだから当たり前だよ!」
「俺のセリフじゃね?」
ヤチヨが器を両手で持ちながら、ぬる燗を一口。
「……ね、隼斗。今日の料理、全部好きだよ」
「そうか」
「全部また食べたい」
「また言え。作れるもんは作ってやる」
「……うん」
「冷やとぬる燗、どっちが好みだった?」
「ぬる燗の方が好きだった。肉豆腐と飲んだら余計に分かった」
「覚えておく」
「覚えててくれるの?」
「料理に合わせて出せるからな」
「〆のだしおにぎりだ。食えるか?」
「食べる!!」
「食べる」
「もちろん!」
にぎったおにぎりを三つ並べる。
梅干しと、塩昆布と、焼きたらこ。
「お好みで選んでくれ」
「かぐやは全部食べたい!から全部一個ずつ!」
「一個ずつな、はいはい」
「好みで出汁茶漬けにしても美味いぞ。茶碗と出汁と薬味はこれな」
小皿を出す。
薬味は大葉、みょうが、刻んだ梅干し、わさび。
「出汁は注ぐだけ、薬味は好きなもん乗せてくれ」
「え、お茶漬けにできんの!?」
「お茶漬けって言うと出汁が怒るかもしれんが、まあ似たようなもんだ。どうする?」
「やる!!」
「……私も茶漬けで」
「ヤチヨは?」
「おにぎりのまま食べてみたい。で、残ったら茶漬けで」
「欲張りだな。まあそれで良いぞ」
かぐやが薬味を山盛りにしようとする。
「あ~待て待て。薬味は多すぎると出汁の味が消えるぞ」
「じゃあどのくらい?」
「一種類につき一枚か一つまみで良い。あと全部乗せじゃなくて、好きなのだけ選べ」
「う~ん……大葉とみょうがとわさびで!」
「ちゃんと考えたな」
「梅干しは苦手なの~」
「そうか。彩葉は?」
「梅干しとわさびで。さっぱりしたい」
「ならそれが合う」
出汁を注ぐ。
湯気が立ち上って、だしの香りが広がった。
「「「わぁ~……」」」
今度は静かに、三人の声が揃った。
かぐやが一口。
「……しみる~……」
「飲み食いした後の出汁はこういう感じだ。胃が落ち着く」
彩葉が静かに一口。
「……美味しい。梅干しの酸みが丁度いい」
「わさびは溶かし込んで食うと全体に回るからな」
ヤチヨがおにぎりを一口食べてから、茶漬けに切り替える。
「……あ。おにぎりと茶漬けで全然違う」
「同じ飯でも食い方変えると別もんになるからな」
「どっちも好きだな」
「……そりゃ良かった」
「今日はここまで。居酒屋隼鷹、閉店だ。おつかれ~」
「またやってほしい~!」
「楽しかった!」
「また食べたいな」
「……まあ、また気が向いたら」
配信を切った後。
「隼斗、今日美味しかった」
「そうか」
「本当に。……ありがとう」
彩葉がそう言って、梅酒の最後の一口を飲み干した。
「……次は俺も普通に呑めるようにするわ」
「そしたら今度はかぐやの枠で『小料理かぐや』やる!」
「じゃあ次も四人で乾杯だね」
「飲みすぎたヤチヨの面倒は見切れないけどな」
「飲みすぎてないよ!たぶん!」
「酔っぱらいの「たぶん」が一番怖えんだよ」
しおぜるさん、ポジテンさん、評価いただきありがとうございます。
ROSOさん、感想いただきありがとうございます。
お気に入り登録いただいた方々もありがとうございます。
とても励みになります。
活動報告の方でネタの募集も始めておりますので、ご一読いただければと思います。